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能力アフター  作者: 佐藤同じ
41/55

能力アフター05話04

では、投稿します。

1時03分、

ターミナルタワー50階、ロイヤルホール、


ズッウウウン、

不気味な振動は、終わる事なくタワーを揺らす。

照明は通常の状態に戻り、立体映像は消えている。一万を越える群衆はたやすく、パニック状態におちいるだろう。

ハドリアは素早く、マニュアル通りに指示を出す。


「みなさん、落ち着いてください。不測の事態ですが、このタワーは何があっても安全です。アルカ内で一番強固なシェルターと言っても差しつかえありません!」

実際、照明もインフラも異常はない。

振動が予想以上に伝わるのは、揺れることによって、衝撃を逃すためだ。


「指示に従って、防災ブロックに一時、避難して下さい。慌てずに落ち着いて。」

笑顔で告げるハドリア。

悲鳴は徐々に収まり、係委員、風紀委員たちが、何とか避難誘導を始める。


ターミナルタワーは、35階毎に高い気密性と空調システムを備えた避難エリアが設けられている。そのサバイバビリティーは核シェルターに匹敵する。

一般市民、撮影、タワーのスタッフたちは、階段で15階下へ避難することになる。


「ハドリアさま。」

不安気な彼の小柄な美人秘書がすぐさま、駆けつけて来る。


「偉いさん達を地下シェルターへ。我々は地下情報センターに移ろう。」

彼女の肩に手を置いて落ち着かせる。

「何でしょう?これは、、、」

わずかに震える声


「対地ミサイルだろうな。テロ攻撃だ。とにかく、情報が欲しい。」

正確に現状を分析する、ハドリア。努めて冷静さを装う効果はあったらしい。

美人秘書の真っ青の顔に血の気が戻りはじめる。


式典を台無しにされた怒り、と同時にアダムの情報下で、これだけの事をやってのける相手に彼も動揺していたのだが。


突き出た、第二階層エリアもかなり、浮き足立っていた。


「ひ、ひ、避難だって!智由姉!どーしよ〜〜〜〜!」

周囲のパニックにつられて、アタフタしている那智。

「那智、うるさい。落ち着きなさい。」

反対に冷静になる智由。こうまで、側で慌てられると逆に冷めてしまうようだ。


とはいえ、妹のとなりの、リンの落ち着きぶりには敵わないだろうが。

彼女はまったく、無表情のままだ。

外界の事柄に、無関心なのかも知れない。少し心配だ。

那智の話だと、以前とは大分変わってきているそうなのだが。


「おらーーー!ガキども!大人しくしろお!!」

黒尽くめの制定部隊の凶暴そうな男が一喝する。


慌てて、同じく黒のスーツの長い黒髪の美女が、皆の誘導を始める。

「皆さんは、エレベーターで、地下シェルターに移動して貰います。急いで下さい。」

一高から、四高までの生徒会長と生徒会役員達が集められる。

中には泣き出しそうな女子達もいる。


「か、か、階段じゃないんだ!地下だって!」

まるで初耳のように、那智。こいつは、風紀委員じゃなかったのかと、頭をひねる、智由。

あんたが、避難誘導する立場だよ、妹よ。


実際、二高の背の高いポニーテールの、風紀の腕章の子は、誘導の手伝いを始めている。


変なテンションで、タワー設備の安全を強調する生徒や、呪文のように、祈る生徒など、それぞれだ。

影のように、瀬里奈をエスコートする葵。彼女の顔色がすぐれない。大丈夫だろうか?


一階に直通のエレベーターに乗り込みながら、智由は気付けなかった。

リンと同じように、だが理由は違う、まったく、顔色の変わらない、一高の生徒会長の男子生徒の事を。

その瞳は、にごったガラス玉のように、何も見ていないようだった。


同時刻、

天宮第一学園、高等部、部活練3階、超研部(仮)


「なんだ、、、、これは、、、、」

絶句する山下しん。

パソコンのモニターに映る、ターミナルタワー、

それに次々と爆炎が上がり、黒い煙が幾重にも青空に、たなびいていく。


「なんだこりゃ!おい!しん!!」

同じく映像を見た、友樹がわめく。空撮をしていたヘリの現地レポーターが、爆撃とかテロとか叫んでいる。タワー内部の式典の映像は止まってしまっている。


「対地ミサイルだ。メチャクチャに撃ち込んでる。」


おそらく、タワーの脇を流れる第二荒川の方からだ。潜水艦でも侵入したのだろうか。

タワーの強度からして、倒壊は無いだろうが、人的被害は相当なものだろう。


空撮のヘリが偶然、フラリと、第二荒川の第一河川港湾設備場を捉える。

そこのコンテナ船のコンテナ全てから、多連装ロケットランチャーが覗き、幾重にも白いケムリを吐き出している。


信じがたい映像の前に硬直する白衣の少年。

「ダメだ、、、」

逃げろ、と言う前にヘリに向かって来る対地ミサイルの映像を最後に、空撮が終わる。


「落ちた、、、、の?」

妙に気の抜けた友樹の声がする。現実味が無いのだろう。


スタジオのアナウンサーが悲鳴のように呼びかけるが、答えは無い。映像は、地上からのモノに切り替わる。

黒煙を上げ続けるターミナルタワーが映り続けた。


同時刻

アルカゲートブリッジ、


凄まじい閃光と、衝撃が目と耳を焼き尽くす。

気がつくと牧しのぶ警部補は路面に薙ぎ倒されて、何かの下敷きになっていた。

視覚と聴覚がユックリ戻ってくる。

焦げ臭い煙の匂いが鼻をつく。

驚くべき事は、自分を押し潰していたのは、二人の大男だった。

「あ、、、姐さん、、、、」

「ぶ、、、、無事ですか、、、、」

鮫島と毒島だ。

「あ、、、あんた達、、、、」

絶句する牧、二人とも背中に無数の破片が突き刺さり、ボロボロになっている。庇われたのだろう。自分は。

そうでなければ、とても五体満足ではいられなかったはずだ。


多分、自爆テロだ。爆薬を満載したトラックを橋の中央で爆発させる。

ゲートブリッジと平行する京葉線の路線が、真ん中からキレイに無くなっている。大惨事だ。

残っている橋の残骸に無数の車が無造作に裏返り、ぶつかり、炎を上げている。

幸い電車は巻き込まれなかったらしい。


「ありがとね〜あんた達〜〜」

血だらけの二人を抱きしめて、ベソをかく牧。

動ける特殊四課のみなが集まってくる。橋のたもとにいた自分達でさえこの有り様だ、被害は想像を絶する。

立ち上がる牧。

「二人を〜〜〜病院に運んで〜〜!他のものは〜〜ケガ人の救助を〜〜始めるよ〜〜!」

気力を振り絞る、四課、全員。

どんな危険があろうが、牧しのぶは一歩も引かない。要救助者を、拾える命を取りこぼす事を彼女は、決っして良しとしないだろう。

彼らの決死の戦いが始まる。


同時刻、

第二工業地区、波力発電所、


「アアゥ〜〜〜〜〜メェェエ〜〜〜〜〜ンン!」

ドチャ、


巨大な十字架に潰されて、人の頭蓋が破壊される。

犠牲者は、この施設の職員だ。

四方から、サブマシンガンの銃声が響く。折り重なるように、死体の山が作られていく。


「こちら、ブラッド〜〜。施設の制圧は終わりましたよ〜〜〜〜。ララ〜〜〜♪」

軽やかなボーイソプラノが歌うように告げる。


同時刻、

第一工業地区、

「OKー!こちらも負けずに、始めますか!」

踊るように指揮を取る、エイダ レスター。

「スターーーート!」


ドオオオオ、

地響きを立てて、背後のコンテナ船から、ミサイルが発射される。

こちらは、高機動ロケット砲システムがメインだ。

綿密に設定された飛行プログラムに従って、アルカ全域に隈なく飛翔して行くミサイル達。

そして、上空で次々と爆発していく。


それは、ヨウ化銀と特殊なナノマシンを散布し、大規模なクラウド シーディングを引き起こす。

いわゆる、人工降雨だ。


晴天の東アルカが、みるみるうちに、巨大な灰色の人工層積雲に覆われていく。

それは、エイダ レスターの水流操作能力にコントロールされ、暴風雨をともなった、最大風速130キロノット以上の巨大台風に成長していく。


「アハハハハハ!吹き荒れなさい!テンペスト!全てをキレイに押し流しておしまい!」

吹き荒ぶ豪雨の中、踊る黒髪ショートボブの狂気に彩られた女性の影。


同時刻、

天宮一高、中等部、3年1組、

やっと、生徒達のお祭り騒ぎが収まり、通常授業が戻った、この3年1組に再び異変が始まる。

「イ、、、、イブさん?」

サイドテールの小柄な国語の大西先生が、授業中、突然立ち上がったアッシュブロンドの少女に声をかける。

その青い瞳には、意志が感じられない。キレイなガラス玉のようだった。

「イブ?」

異変を感じて彼女のすぐ後ろの席の紫煙も声をかける。

「イブさん?」

最前列の天地も、何事かと後方の席のイブを見つめる。


まるで、夢遊病のような、アッシュブロンドの少女は、ゆっくりと、窓の方向を向く。

「、、、、、?」

ここで紫煙は、あれだけ、快晴だった空が、暗く雲に覆われているのを初めて気がつく。


パシ、パシ、

ザッアアアアアアアア、

雨粒が窓を叩き、みるみると豪雨に変わった。


「雨、、、、、」

アルカの天気予報がハズレるのがどれだけ異常な事か知る紫煙は、一瞬あっけに取られる。

それが、ほんの少しのスキを生んだ。


ゴオ、

嵐の暴風雨が生んだ、黒い不吉な魔鳥の様な影が、窓辺いっぱいに現れる。

窓辺の男子達は、理解が追いつかない。あぜんと、見つめている。


屋上よりの、降下部隊だった。


耳をつん裂く、銃撃音。

強化ガラスが破られて、完全武装した強化兵士達が教室に、なだれ込む。

ガラスの破片で血だらけの生徒。

蹴り飛ばされて、失神する女子。阿鼻叫喚、血みどろの惨劇が始まった。


同時刻

天宮一高、高等部、部活練3階、超研部(仮)


「あ、、、、、、」

それは、ほんの気まぐれな、偶然だったかもしれない。

タワーの惨状に立ち尽くしていた、白衣の少年は、この豪雨の中、サブマシンガンの銃声と、わずかな、振動を確かに感じていた。


その方向は、体育館、研究練の方向、いや多分、中等部の校舎からだろう。


「お、おい、、、!」

ヨロヨロとフラつくしんを見て、青くなる友樹。


「あ、、、、あ、、、、、」

血の気が失せてしまっている少年。


ここに至り、彼はやっと気がつく。自分の見落としを。取り返しのつかない失敗を。

今、イブの警護体制は、ひどく貧弱な状態だろう。

全ての警戒は式典に向かっているであろう事を。

彼女を狙う者たちにとって、千載一遇の好機であろう事を。


「ちくしょおおおおおおおおお!!!」

準備室のドアを叩き開けて、走り出す。


自分のマヌケさが、愚かさが、考えの足りなさが、アホさ加減が、みじめで悔しくて、腹が立って、胃が捻じ切れそうに、怒りでどうにかなりそうだった。


多分もう、間に合わない。


「お、おい!待てよしん!!」

息も絶え絶えに茶髪メガネが後を追う。


一階の本校舎の出口の前に、巨漢の体育のハートマン軍曹が立っている。

「おい山下!どこへ行くつもりだ!!」

無造作に少年に掴みかかるが、友樹には何の事かわからなかった。


なにか、黒い塊が、ものすごい勢いで横を飛び去っていった。

ハートマンをしんが投げ飛ばしたのだろうが、いくら合気といっても常軌を逸した現象だろう。

低空を人間が高速回転しながら、ホップしながら飛んでいく。物理法則が崩壊してしまっているようだ。

長い廊下の先で滑走に移り、またその先の、部活練とつながる、廊下の壁に激突してやっと停止する。

生きてるのだろうか。


山下しんは、一切、構わず、白衣の肩で雨を弾きながら、豪雨の中に飛び出して行った。


「おい!待ってて!」

渋々後を追う友樹には、何か取り返しがつかない事が起ころうとしている切迫感が理解できるだけだった。


少し時間は、戻る。

ターミナルタワー、一階、グランドロビー、


生徒達を誘導している、詩吟が、ヘッドセットで連絡を取る。

「ブラボー1。そっちはどう?」

面倒臭そうに、返事がくる。

『よろしくないねぇ。ウジャウジャ集まってきてるよ。』


ブラボー1こと、制定部隊の早川サキは、仲間たちと地上102メートル、34階の下層展望台の安全柵を乗り越えた外縁で射撃準備をしているところだった。


眼下には第二荒川とタワーを結ぶタワー大橋に、次々と大型トラックが集まり、敵の武装兵士達がわんさか、姿を現しているところだ。


エコーからイータのチームが中心になって、北口のロータリー前に、車のバリケードを作り

防衛の準備を始めている。


南口のロータリーには、イオタからラムダのチームが同様にバリケードを作っている。

その向こうにもイヤになるほどの敵のトラックたちが集まっている。


「とにかく、いつまでも好きにやらせるかって。作戦に移る。オーバー。」

アルファ1との通信を切る。


今も3キロ先の船ドックから、対地ミサイルがあちこちに撃ち込まれている。


サキの格好は、かなりラフだ。黒いセーターに茶色のカーゴパンツ。あとは、防弾ベストと腕と足にプロテクターを付けただけ。

茶色のウルフレイヤーのショートボブ。目には狙撃銃と連動する、電子ゴーグルを付けている。

相棒のリサ ウエストコットがすでに、伏射態勢に入っている。


「準備オーケーだよ。サキちゃん。」

金髪ロングのリサの格好もかなり、ワイルドだ。黒のロングジャケットに黒のホットパンツ、後はプロテクターだ。

ショートパンツでその態勢は、いかがなものかと思うのだが。まあいいか。


チームブラボーは、長距離攻撃に特化した部隊だ。

後ろで、モヒカンの大男が、ドローンを飛ばし、気象データ、光学距離、弾道の軌道予測、各種情報を蓄積してくれている。


「やめろ、、、、よせ!」

悲痛な声を上げるサキ。

フラフラと迷い込んだ、報道ヘリが、目の前で対地ミサイルに撃墜されていく。


「クソっ!!」

プローン態勢に移る。もう一人の相棒、アルカ製の大砲のような、PGMへカトーII対物大型狙撃ライフルとリンクする。

思考が静まり冷静に正確に集中して行く。


「第一港湾施設場、敵、コンテナ船、ミサイルランチャーを制圧する。状況開始。」


グオオッ、


へカトーIIが、咆哮を上げる。

彼女の能力ブーストにより、驚異的な初速、破壊力を生む12、7m m弾薬が、3キロ先のコンテナを直撃する。

凄まじい、爆発、炎上が起きる。

チームブラボーの砲狙撃戦だ。その制圧力は制定部隊でも抜きん出ている。


「状況かいし〜〜〜!」


ドオン、


リサ ウエストコットの能力特化されたSRー25が炎をあげる、

同じく能力ブーストされた、7、62m m NATO弾が次々とコンテナを粉砕していく。


二人の狙撃は、狂いなく、正確無比に、沈滞なく、瞬く間に、5隻のコンテナ船を火の海に沈める。


しかし、突如、崩れ始めた天候の中、炎のタンカーが奇妙な物を、生み出す。

「な、、、何あれ?サキちゃん、、、、」

雨の中、リサが息を呑む。


光学照準器と繋がったゴーグルの視界が、目の前の光景のように、船体を破り、燃えるコンテナを蹴散らす、金属の巨大な腕と足を映し出す。


「冗談でしょ、、、なんで、テロ組織があんなモン持ってんのよ!」

絶句するサキ。


首のない巨体。大型の爆発反応装甲を持つ盾を持つ、全高8メートルを越える高機動パワードタンクローダーだ。

アメリカ軍で正式採用されたばかりの、最新重機動戦車。

右手に2門の55口径戦車砲を持ち、右肩にミサイルランチャー。背面に自立稼働のレールガン。胸の左右に2門の20 m mバルカン砲を持つ、重装甲の殺戮マシーンである。


豪雨に変わる、水しぶきの中、灰色の巨大な5つの影が、死神のように、上陸を開始する。


「ああ!どーなってんだよ!こりゃ!!」

1階、地下シェルターに直結するエレベーターのトビラをゲシゲシ蹴っ飛ばす、朧。


生徒会の面々を誘導して来た彼らだが、足止めを食っている。

エレベーターが停止していた。

特別エリアに該当する設備なので、他に階段などはない。タワーが倒壊したとしても、ここの電源が落ちる事は無いとされていた。


「どうなってるの?郁恵ちゃん!」

最初から、地下の情報センター配備の、チームのオペレーターに連絡を取る、詩吟。


『ミサイル攻撃の被害による影響では、ありません。原因は、分かりませんが、テロ組織の工作の可能性が高いです。気を付けてください!』

耳のレシーバーに、テンパった郁恵の声が、響く。


「気に入らないね。」

つぶやく詩吟。

ここに、留まるのは危険かも知れない。


『10分待ってください!電源をバイパスさせて、なんとか動かします!』

「5分待つ。頼むよ。郁恵ちゃん。」

『は、はい!』

悲鳴のような彼女の声が答える。

移動のリスクと天秤に掛けてギリギリの判断を続ける詩吟。


変に豪華で天井の高い、奥まったエレベータールームで一塊りになった生徒たちは、若干ながら、落ち着きを取り戻し始めている。

対地ミサイル攻撃も止み、ここは、今とても静かだ。


「みなさん。提案があります!」

長身の優男、二高の生徒会長、御門マサムネが、口を開く。


「う、、、、」

風紀の日向まこと、長瀬アミは嫌な予感に、顔を歪める。


「我々、トップの能力者には、緊急時特別招集の義務があります。」

「おお、そうじゃのう。聞いた事があるわ。」

四高の大男の生徒会長が、頷く。


何を言い出すんだと、怪訝に思うまこ。

その特例は、防衛出動レベルの緊急事態に内閣から、協力要請が審議され、アルカ能力開発庁が精査、了承し、ハドリアアルカ統括理事長から指示が出て、やっと実際に意味を成す、ほとんど形骸と言える時間のかかる、意味のない決まり事だ。


「我々は、打って出るべきだということです!ここには、Aクラス、発信型、最強のテレパス瀬里奈くんがいます!テロリストなど、圧倒できるはず!」

ブラウンのマッシュウルフショートの御門マサムネは、自身満々に言ってみせる。


「きさま、、、、」

やっと彼の意図を理解して、怒りを露わにする椎名 葵。

「あお、、、い、、、」

瀬里奈は、立っているのがやっとだった。


黒い、黒い思惟を感じる。

それが目の前の男からなのか、分からない。

異常な衰弱を覚えていた。


瀬里奈を庇うように葵。

「何を言っているのか、分かっているのか!敵が対策をしていた場合、一番のターゲットになるのはお嬢さまだぞ!」


せせら笑う御門

「ボクは卑怯者にはならない!大いなる力には、大いなる義務が伴うものだろ。葵君。」


「やめてください!御門生徒会長!それは脅迫と変わらない!」

ウンザリして、まこが制す。


「黙りなさい!風紀委員!」

「そうよ!そうよ!会長!立派です!」

マサムネの生徒会グルーピー達が騒ぎ出す。


「当然だろう。ボクは戦いを恐れない!」

白い歯が眩しく輝く。グルーピーたちは大喜びだ。


問題なのは、彼が己れの正義感を信じきって行動している事。ついさっき瀬里奈に相手にされなくて傷ついた自尊心が行動の根底にあるなど、思いもつかない事だ。


騒ぎの中、野川那智は、モヤっとした感じが晴れなかった。


この人は、肝心なことを人任せにして、平然としてる。

風紀の先輩達にそんな人は一人もいないし、危機の際には、即コソコソと逃げ出す白衣の少年も、この場合、瀬里奈副会長の安全を第一に考えるはずだ。なぜか、それは確信できた。

そして、ひどい疲労を感じている。


(疲労、、、、?)

そんな訳がない。


左右のリンと智由姉は、異常はない。智由姉は、やれやれといった感じで騒ぎを見ている。

しかし何かがおかしい。訳の分からない警戒アラームが、頭の中を、が鳴り立てる。


「いい加減にしろ!ガキ共!」

傍観していた朧が、堪忍袋の尾を切らし生徒たちに向かって歩み出す。


が、ここで、場違いな拍手が、エレベータールームに響く。

まこも御門も、瀬里奈でさえ、始めてその存在を思い出していた。


「素晴らしい!その通りだよ。御門くん。君は実に優秀だ。」

役者が、待ちに待った待望の輝く舞台に上がるように、楽しげに手を叩く。


ヒョロリと立つ長身の影。

死んだような、澱んだ瞳。

乱暴に後ろで結んだ、癖毛の長い黒髪。

白い一高の夏服。

天宮第一学園、生徒会長、不知火 あらただ。


「あ、ああ、、、と、当然さ、、、、」

その異様さに、たじろぐ御門。


あらたは、左の瀬里奈にゆっくり視線を移す、

「このテロに対する、最大の脅威、、、それは、まさにAクラステレパスである瀬里奈くんなんだ。」


一年前から、空転していた、歯車。それがカチリ、とハマるのを感じる。

「あらた、、、生徒会長、、、、、、?」

瀬里奈は、悪寒のピークを感じていた。


「だから、我々はまず最初に、君を排除しなければならなかった。」


「何を、、、言って、、、、」

我々、、、、?


その真の悪意を吐露するような、黒い笑顔を瀬里奈は見つめていた。

「ねえ、、、瀬里奈くん。」


初めの出会いから、一年間、その男に感じていた、違和感、不安、疑問の全ての歯車が噛み合って、巨大な器官が動き出し、巻き込まれ始める自身を感じる瀬里奈。


「お嬢さま!!」

葵が振り向く。

「理世!!」

詩吟が不可視の切断糸を放つ。


「ちいいぃっ!!」

ベレッタを抜き放つ朧。


なぜ、

何故、気付かななかった。こんな異常な目をした人間を。

それは、完全にあちら側のものだ。ひと目見ればわかるはずなのだ。

欺かれたのか?信じられるものではない。


すべては、手遅れだった。


ドカ、

人の数倍の耐久を誇る肉体が、悲鳴を上げる。

気がつくと、鏡のような、床に倒れている。学生たちも、同様だ。

一瞬の内に意識を寸断される。

詩吟も、同様だろう。呼吸器系に作用する、毒か、化学物質か、

何も出来ないまま、制定部隊、トップチーム、アルファ2こと、朧 理世は、意識を失っていく。


時間がなかった。

野川那智には、何がなんだか、訳がわからない。


なにか、特殊な炎熱系の力が使われているのが、かろうじて分かるだけだ。

バタバタと意識を失って倒れていく、みんな。

とりあえず、両脇の智由とリンを支えて抱え込む。


加速して行く思考能力が、決断を即す。

戦闘か、退避かだ。


ゆっくりと、あらた生徒会長が、二高や、四高、他の生徒会長や生徒会委員たちの倒れた向こうから、楽しそうに、こちらに視線を向ける。


バタバタとホテルの、従業員達が、集まって来る。


ガスマスクをして、サブマシンガンを持って、だ。

どう見てもテロリストだ。どーなってんの!


止めた呼吸が苦しい。


唐突にヘラヘラ笑う、山下しんを思い出す。

(風紀の仕事は、逃げる事。)


うるさい、と思うが、こんなとこで銃撃戦なんかしたら、みんなが危ない。それ、

「ならっ!!」


グワオオ、

すぐ横の豪華に縦に長いエレベーターのトビラを爆裂でバラバラにぶち抜き、吹き飛ばす。

瞬時に智由姉とリン、二人を抱え、真っ暗な奈落に飛び込んで行く。


「ミスター!無事ですか?」

先行して、潜入していた、ホテルマンの兵士達が集まってくる。


「やれやれ、どこに行くつもりやら。」

苦笑するあらた。

彼女が大人しくシェルターに逃げ込むとも思えない。


さすが、炎熱系、最高峰の能力者だ。同様に炎熱系である、あらたの、人間を昏倒させる、無味無臭、透明な炎の能力に気が付いたらしい。恐ろしい嗅覚と言える。初見で察知されたのは、初めての経験だった。


瀬里奈Sフィールズと、もう一つの脅威。

できれば彼女もここで退場してほしかったのだが、仕方ないだろう。


瀬里奈がストレッチャー付きの医療カプセルに収納されている。

「姫を運ぼうか。とりあえずファーストフェイズ終了だ。」

他の生徒たちには、見向きもしないあらた。


「みなと合流しよう。本番はこれからだ。」

半数を那智の捜索に残し、引き上げるあらた。


同時刻、

天宮一高、中等部、3年1組、


「イブに、触んんじゃねえええええええええーーーーーーーーっっ!!」

グワバアアン、


横なぎの雷鳴が、強化兵を薙ぎ払う。

「クソッ!!」

焦る紫煙。効果が薄い。完全防備だ。サージ機能も施されているのだろう。すぐに、タン、タン、タン、とサブマシンガンの反撃が来る。


彼女は、気が付かなかったが、彼らの装備は、この1組に存在するAクラス電撃能力者である紫煙に特化した防御装備で固められていた。

絶縁装甲、サージプロテクション、PDCE機構など、そうでなければ彼女がここまで手こずることはなかっただろう。

状況は、よくなかった。


高速移動でかわしてはいるが、その度に、震えてうずくまる、後方の生徒たちの悲鳴が上がる。

すでに教室は血の海だった。イスや机はグチャグチャに倒され。生徒たちは倒れ、うめき声を上げまたは、泣きじゃくる。

地獄の光景の中、エアスポットの様に立ち尽くすイブの周りだけは、静かな静謐な時が流れているようだ。


連中の狙いが、イブであるのは、明確だ。

彼女への誤射を恐れてか、サブマシンガンの射撃モードは、現在、単発に固定されている。

そうでなければ、教室の惨状は、もっと悲惨なものになっていただろう。


大西先生は、すぐに天地を庇い、腕と肩を撃たれて気を失っている。その下で天地は発作のように先生の名を呼んでいる。


(このままじゃ、ジリ貧だ。)

イブを抱えて逃げるしかない。一瞬で決断する紫煙。


「フフ、」

が、ここで、面白そうに彼女を眺めていた、黒人のロングコートの男が銃を抜く。

濃厚な殺意を感じて、紫煙が電撃を集める。

「このお!」


ギャアオオオ、


100億キロワットを超す、彼女の電撃が空間を焼いていった。

しかし、魔鳥のように、黒いロングコートをひるがえす、ジノ フィッシャーには届かなかい。

加速能力と奇妙な歩法を合わせた、変則的な動きのようだった。

紫煙がわかったのは、そこまでだった。


ドン、ドン、ドン、


ハンドガンの正確な射撃が、9ミリパラベラム弾を彼女の胃と肺と心臓にめり込ませていった。


「ガッ、、、、、、、、、っ!」

糸が切れた操り人形の様に、みず希紫煙、または、みず希しずくは、倒れていく。

教室の割れた窓と天井が、グルリと回転していく。視界と意識は、そこで薄れていった。


「よし、イブを確保しろ。引き上げるぞ。」

愛用のジェリコM941をホルスターに収め、撤収を指示するジノ。


なんの感慨もなく、倒れ伏す電撃使いの少女の遺体に一瞥し、きびすをかえす。

窓にワイヤーかけ、次々と兵士たちが引き上げていく。


「紫煙、、、、、ちゃん、、、、、?」


意識の無い大西先生の下から、やっと抜け出した天地が、血みどろの教室を這って彼女の元に来る。

「ねえ、、、、紫煙ちゃん、、、、、ねえ、、、」

彼女の小さな手が、少女を揺さぶるが、反応は無かった。


「いやああああああああああああーーーーーーーーーーー!!」


生徒たちのうめき声と、すすり泣きで満ちる教室に、天地の絶叫が響く。


「待て!」

友樹に叫ぶ。

ドガガガガッ、


叫ぶと同時にサブマシンガンの斉射が来た。

目の前の柱が、ごっそり削られていく。

警告もためらいもない、正確な射撃だった。


「くそっ!!」

しんたちは、中等部の前の

研究練の角で、足止めをくっている。

武装した兵士たちは、完璧に周囲の警戒網を敷いているようだ。

手配せで、兵を動かしている。包囲殲滅するつもりだろう。対能力者を想定している、その動きに一切の油断はない。


「なんだよ!なんだよ!あれは!撃ってきたあ!」

後ろで、ひっくり返って泥だらけになっている友樹。

武器も何もない、一般人に毛が生えたような自分達では、簡単に殺されるだろう。

ここに留まるのは自殺行為だ。

焦るしん。


(なにも、、、できねーのかよ!)

無力感に打ちひしがれる。

「逃げるぞ!とも、、、、、」

逃走に移ろうとする少年だが、

しかし、次の瞬間、敵の動きがあからさまに、変わる。


「なんだ?」

慎重に覗いてみると、兵士たちが後退を始めている。

やがて、豪雨の中にあっという間に消えていく。


イヤな予感が胸をよぎる。


その時、彼の携帯が突然、振動を始める。

天地からだった。

震える手で、電話を取ると、要領の得ない、泣きじゃくる天地の声がした。


悪い予感は、加速度的に膨れ上がっていく。

自分の声が、まったく知らない他人の声に聞こえる。


「落ち着いてくれ。天地。何があった?」


「イブ、、、、お姉ちゃんが、、、さらわれて、、、、紫煙、、、、お姉ちゃんが、、、、撃たれて、、、、死んじゃいそうだよおお、、、、、!」


泣きじゃくる天地の声が、ドンドン遠くになっていく。足元が崩れ去り、自分が、世界が、死に絶えて豪雨に押し流されて行くようだった。


吹き荒ぶ嵐の中、ポツンといつまでも、立ち尽くす白衣の少年。


同時刻、ターミナルタワー、地下駐車場3階、

野川那智は、灰色のガスボンベが部屋いっぱいに並ぶ、よくわからない整備室に逃げ込んでいた。ロックはされていたが、力押しでこじ開けた。しばらくは、安全だろう。

那智は知らないが、ここは、スプリンクラーと併用される、イナージェンガスを使用するガス消火施設のボンベ室だ。


彼女はあれから、天窓から地上光が取り込まれる、地下一階の駐車場に出て、それからあちこち飛び回り、ここに来ている。

智由姉が着ていた白衣を剥ぎ取って、床に敷き、智由とリンを寝かしている。

二人共まだ、意識を取り戻さない。

あせりと、後悔が、またぞろ蘇ってくる。


「あ〜〜〜〜〜!も〜〜〜!なんで私、逃げちゃったンだろ〜〜〜〜!」

頭を抱え、ひとり、じたんだを踏んでいた。


「それで、、、、よかったんだ、、、、那智、、、、」

後ろから声がかかる。

「智由姉!」

上体を起こす智由のひとみが、緑光を放っている。どうやら、自分の治療をしているらしい。

彼女の能力は、超回復能力だ。自他の傷を一瞬で治してしまう。

長いブラウンのソバージュの髪が、緑光に染まる。その光りが、リンの身体を染めていく。

リンの回復に移ったようだ。

「あの人数だ。あのまま、戦ったらこちらにも犠牲者が出たはずだよ。私とリンだって無事じゃすまなかったかもしれない。とにかく、助かったわ。ありがと。那智。ベストな判断だよ。」

「う〜〜〜〜。」

なぜか、不服そうな少女だが、すぐ、気を取り直す。

「智由姉。意識あったの?」

テロリストが出てきたのは、彼女が倒れた後のはずだ。

「途中までね。意識障害を起こすガスがセボフルランなのは分析できたけど、そこで気を失ったんだ。」


リンが意識を取り戻す。

「、、、、、、、、」

無表情に、上体を起こし、那智と智由を確認する。

「だ、大丈夫?リン!」

コクリとうなずくリンに安堵する那智。


「さて、と。これから、どうするかね。」

白衣のホコリを払いながら立ち上がり、袖を通す智由。


「瀬里奈副会長やまこちゃん達を助けに行かないと!」

夏服の袖のない腕まくりをしながら、飛び出そうとする那智。

「ぐえ。」

そのえり首を捕まえる姉。


「待ちなさい!敵の規模。現在の現状。状況が不明すぎる。情報が欲しいわね。」

うかつに動けば、たちまち行き詰まるだろう。

あの不知火あらたという少年。

敵の規模。

被害状況。

智由には、まだ事態が動き始めたばかりのような、空恐ろしさが感じられていた。


同時刻、

ターミナルタワー、地下駐車場1階、

3台の黒いバンに分乗し、眠る瀬里奈の医療カプセルを搬送する。


「ブラッド。予定通り陽動を始めてくれ。姫を連れてタワーを脱出する。北口だ。」

左耳のレシーバーにつぶやくあらた。

『オ〜〜ケ〜〜よお〜〜〜あらた〜〜。ちょっと待ってね〜〜〜。今向かってるから〜〜。』

高音のキンキンする声が聞こえる。


今、ビヤ樽のような、エセ神父は、第二工場区域の波力発電所を制圧後、中央のターミナルタワーに豪雨の中、トラックで移動している所だった。

「ジノちゃんも、無事イブを確保して、エイダと合流するために、移動しているみたいよお〜〜〜。万事順調ねえ〜〜〜。」

『了解。』

無愛想なあらたの通信が切れる。


「さ〜〜て〜〜〜、どんな可愛い仔羊ちゃん達がいるかしらねえ〜〜〜〜。」

豪雨に黒くかすむ、煙を吐くターミナルタワーが、彼の眼前に、みるみる大きく見えて来る。


「タワーに近づかせるな!とんでもない事になるぞ!」

早川サキは、豪雨の中、地上102メートル、34階の下層展望台、外縁で接近する5台のパワードタンクローダーに狙撃を続けていた。


轟音を上げ続けるへカトーⅡだが、強固な爆発反応盾に阻まれて、その歩みを止めることが出来ない。

「サキちゃん!私が牽制する。本体を狙って!」

リサのSRー25が、高速移動する一台の重機動戦車に集中する。見事な集弾がわずかな隙をこじ開ける。

「、、、、、、つっ!」

サキの吐息と共に、精密極まりない、砲狙撃が本体を貫く。

ブーストされたへカトーの12、7m m弾がパワードタンクローダーを爆散させる。


「よし!、、、え?」

次の標的に移ろうとする、サキとリサの間に、いつの間にか黒スーツのモヒカンの大男が立っている。

「な、なに?山崎!」

驚くサキ、

大男は眼前に隙間なく数十のドローンを展開し、電磁フィールドを展開する。

「お嬢様方。退避を、ロックされました。」

「え、、、、!」


グオアアアアアッ、

耳をつん裂く爆発音と共に、彼女達のいる、北側、下層展望台に残り4台の重機動戦車、背面の自立稼働レールガンの咆哮が炸裂した。

吹き飛ばされたサキはそこで意識を失っていく。


ターミナルタワー、北口、地上は混乱の極みにあった。

敵、謎のテロリスト達は、これも最新鋭の米国機動兵器、4脚グレイハウンドM9を何体も前線に投入していた。

これは、カニのような4速歩行をする、軽装甲車だ。

前面に高出力のプラズマフィールドを展開して、通常の兵器を無効化してしまう。

これにより、すでにタワー大橋からタワーまでの道程の半分まで、敵の侵入を許してしまう。


「ふむううう。まずいですな〜〜〜。」

ドカン、ドカン、

と両肩のM20スーパーバズーカを連射しながら、エコー1こと、安西は途方に暮れていた。

彼の黒服はパッツンパッツンで、メタボの腹がはち切れそうだ。見た目は肥滿中年、チョビ髭のおっさんだ。


カニのような敵、軽装甲車の雨に煙る、電磁シールドは、3、5インチ成形炸薬弾を簡単に無効化し、ジリジリとしかし確実に、前線を押し上げている。

敵武装兵士たちは、その後ろから安全に、すきあらば、制圧射撃を繰り返す。

面倒な事、この上ない。

味方も頑張っているが、

このままでは、防衛線を突破されるのは、時間の問題だろう。


「ボクが出るよ。斉藤くん。フォローを。」

チームの盾役に声をかける。

バズーカを捨てて、H &KUMPサブマシンガンに持ち替える。


「戸畑くん。竹本くん。援護よろしく。」

「おっさん。無理すんなよ〜〜。」

茶髪のチャラ男の竹本が声をかける。手にはエアブーストガンを持つ。

「、、、、了解。」

黒髪ロングの戸畑さんが、にらんでいる。なぜかこの子はボクに当たりがキツイ。若い子はむずかしい。

彼女は氷結系のブーストガンのシューターだ。


「よいしょっと。」

ボンボンと跳ねるような高速移動に移る。広い車線いっぱいにゴムまりが跳ねるようなユーモラスな光景ではある。

本人は必死なのだが。日々の運動不足を悔いる瞬間だ。


彼の能力は射程が短い。よって接近戦に持ち込むしかない。

メガネの色男、斉藤くんのプラズマシールドが展開し攻撃をある程度防いでくれる。

シューター二人の援護も的確だ。

加えてタワーまでの緩やかなスロープが、高低差の有利をもたらす。


バシャッ、

フィールド発光する、3台のグレイハウンドの前面に手をつく肥滿の安西。

「ロックジャベリン!」

グオアアアアアッ、

ズドオオオオ、

地中から伸びた岩の槍が、3台のグレイハウンドを貫き破壊する。対地雷防御能力が低いのは新型も同じらしい。

「フホホホ。よし。」

ご満悦の安西。次の標的に向かおうとするが、思いもかけない事態に巻き込まれる。


炎のムチが天から降り注ぐ、


グワアオオオオッ、

ほぼ、無力化したグレイハウンドが爆散する。

「ひょわあああっ!」

クルクルと吹き飛ばされて路肩の植林地帯に突っ込み、泥だらけになる安西。


「オーーーーーホッホッホッ!お待たせ!この王城たまきが来たからには、もおーーー

安心ですわよ!!」

幾重にもわかれる炎のムチを背後に従えて、豪雨を蒸発させながら炎のような赤いカーリーウエーブヘアのAクラス炎熱系能力者。三高風紀委員、王城たまきが8車線の道のど真ん中に堂々と仁王立ちする。

彼女の高笑いが、雨の戦場に朗々と響いていく。

また来週。

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