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能力アフター  作者: 佐藤同じ
4/55

能力アフター 1話 04

師走ですねー

同日 19:00

東アルカ  研究学園区内 第三創薬基盤研究所

3階建、近代的な施設の、車両搬入口に、2tの白いドクターカーが横付けされる。

搬入される医療カプセルは、シールドに覆われ、中の人間は見えない。


医療スタッフに混じり、長身の黒いロングコート、ジノ フィッシャーと白いコート、赤いミニドレスのエイダ レスターの姿が見える。


「ミスタージノ!」

グレイのオールバック、髭面、神経質そうな白衣の男が歩み寄る。

外資系の施設だからか、スタッフの大半は外国人だ。

医療カプセルを、次々と施設の機材と繋いでいる。


「困りますよ。こんなモノ持ち込まれても。専門外です!」

片手で頭を掻きながら、小声で訴える。

禿げた黒い頭、丸い小さなサングラスの男は表情を変えない。

明らかに、違法の検体だ。厄介事に巻き込まれるのは、目に見えている。


「大丈夫。大丈夫だ先生。」

肩を叩いてやる。

後ろでエイダが冷ややかに笑う。


「上の指示通りにしていれば、間違いはない。

ほら、サポートの増員も、置いていく」

後ろをうながす。

「ひ、、、、」

怯える研究所主任。


いつの間にか、幽鬼のような影がたたずんでいる。

黒いウエーブがかかった髪が、幾重にもコケた頬骨にかかる。鋭利な瞳には、ユラユラと狂気が宿る。両耳に二つずつ、赤いイヤリング。

ボウ、

薄いくちびるに貼り付くタバコが、突然、発火する

「の、、、能力者、、、、」

後ずさる主任。


「ミスター溝口だ。Bクラスの火使い。都合の悪いものは何でも焼却してくれるよ。」

ささやくジノ。

「君たちのガードマンだ。」

見張り役、なのだろう。


「わ、、、わかりました。」

ゴクリと息を飲む、神経質そうな研究主任。


スタッフ達が、医療カプセルとの、接続を終わらせる。

「体温、呼吸、脈拍、血圧、すべてのバイタル。正常です。」

女性スタッフがデータを読み上げる。


カプセルのシールドがゆっくりとクリアになっていく。

「Aー01、、、アンバーTYPE1、、、、」

思わず口ずさむ主任

「これが、、、アメリカで昔、開発された、違法クローン。生体有機バイオ コンピューターか、、、」


カプセルに眠るのは、年の頃14才くらい、アッシュブロンドのストレート、ロングヘアー

陶器のような白い肌、短い手術衣のみの少女である。


ユラ、

カゲロウが揺れる。


「、、、、、、、?」

目をこする、主任。

アンバーシリーズはどれも、白人系アメリカ人のはずであった。それに一瞬、黒髪の少女

の面影がよぎった様なきがした。

「なんだ、、、これは、、、」


同時刻、スプロール スラム

アルカ工業区域の地下に点在する、開発が止まったスラムだ。IDのない者、不法密入国者、犯罪者の巣窟になっている。


赤錆た鉄骨。巨大なガスタンク、無秩序に這い回る鉄パイプ。

その通りの中央には幾重もの錆びたレーンが走り両サイドには、ボロボロのレンガ造り。

一見すると中世、古いヨーロッパ風の街並みが並ぶ。

開発が放棄された地下生活ブロックを利用、改良、増設された街だ。


他の住居区は、鉄骨の隙間にホロを張っただけ、とか、鉄板で視界を遮っているのみとか、

酷いものだ。

通りを行く人々はスカーフで口元を覆い、足早にすぎ去る。灰色のデストピアに相応しい様相を見せている。


通りのハズレにある、古びた酒場。

看板にブルーラグーンの文字が読める。

確かに、ここはひと昔前、海の底だ。


まばらに居る客達は、異様に静かだ。声を潜め、騒ぎ声はない。

IDチップを持たない彼らは、当然、医療用ナノマシンの恩恵も受けられない。

この地下街で、伝染病、ウイルスに飛沫感染した場合、即、死に直結する。

過去、世界を席巻したCウイルス等の脅威は、徹底的なID管理とナノマシンのおかげで克服された。

しかし、それは地上の話。ここ地下街では依然として、脅威であり続けている。


「しかし、いいのかい?あらた。」

褐色の肌、ダークブラウンのウエーブしたロングヘアに真紅のバンダナが巻かれる。

ひどく、筋肉質な長身の女性。この酒場の女主人、アルマがカウンター越しに話しかける。


「あんたの、妹。あんな連中に、預けちまって、さ」

ジノとエイダ達の事だろう。強い意志を宿す左眼が、あらたの表情を窺う。

右目は閉じられたまま、上から下に走る傷跡に埋もれている。

昔から彼女は、そのスカーフェイスをまるで隠そうとはしない。


なんで、ここのビールは、炭酸ばかりが、こんなに強いのだろう。

わずかに、顔をしかめながら、答える、あらた。

「立夏を上の施設に移すのは、計画の内です。」


立夏というのは、アンバーTYPE01。生体有機バイオコンピュータのクローンの事だ。

アルマ達にはその方が通りがいい。


「どうかと思うぜ。俺はよ〜」

ひと席置いた隣から太ったアル中のワイズが口を挟む。

アルマの古い仲間だ。

仲間はもう一人、カウンターの奥でコップを磨いている。痩せた褐色の肌。短く切り揃えられた白い髪の毛。一部の隙のない無口な男。クルト。


ここら一帯を仕切る、勢力のひとつである彼らは、なぜか、身寄りのない自分達を何かと気にかけてくれた。


12年前、

空の無い地下街に、シトシトと雨が降る。

地上の雨が、巡り巡って何処かから、伝わりしたたり落ちてくるのだ。


水滴は、赤茶けたサビの味がした。それとも、自らの血の味か。

死にかけ、水溜りに突っ伏す子供には、判然としない。


この街は、ほんのひと握りの食料の奪い合いで、簡単に命が消えていく。

ありふれた風景だ。足を止める者は誰もいない。


しがみつき、泣きじゃくる妹の声が意識から遠くなっていく。

バシャ、

立ち止まる三つの影。


葬儀屋だろうか。新鮮な遺体から、内臓を取り出し売買する。心臓、肺、肝臓、腎臓、角膜、ごっそり無くなった友達の遺体を見た事がある。

臓器ブローカーに人気は、やはり腎臓だ。世界的ニーズは数百万を超える。


「ワイズ、そのチビ。店まで、運びな。」

「あねさん〜勘弁してくだせ〜よ。」


それでも、太った影が、子供を抱き上げる。

しゃくり上げる妹の前にしゃがむ女。

「おいで。」

片目の眼差しは、どんなものだったのだろうか。

少女はおずおずと、その手をつかむ。


雨と泥に汚れ、痩せて冷え切った身体が、抱き抱えられる。

彼女が感じたのは、安堵だったのかもしれない。

そのまま意識を失う。


その日、ふたつの、か細い命は、生きながらえた。


ノドを通るビールが苦い。

後でアルマに聞いたが、それは、ほんの気まぐれだったそうだ。

不思議と彼らとの縁は、いまだ、続いている。


「あの、ハゲとケバい女。おりゃあど〜も信用なんねぇ。」

クダを巻くワイズ。

「立夏ちゃ〜ん。大丈夫かよ〜〜」


「大丈夫ですよ。」

そう言うどんよりとした、瞳を眺めるアルマ。


「ふん、まあ、いいさね。」

再びカクテルのかくはんに戻る。

「ほら、ほら、ほら〜あねさん、ど〜も昔っから、このヒョロ長ノッポに甘い〜〜〜!な〜〜〜クルト〜〜〜!」

完全に、からみ酒の太っちょワイズ。

「ふん。」

取り合わないクルト。


「順調ですよ。カウントダウンは確実に進んでいる。」

グラスを置く、あらた。誰に語るでもなく、つぶやいていた。


終わりは、近づいている。少しづつ。だが、確実に。




翌日。四階、生徒会会議室。


窓から見える空は、抜けるように青く、高い。

広がる蒼穹の向こうに、かすむ対岸。透き通る陽の光が、みなもに反射し眩しく輝く。


どんよりとした、瞳が、外を眺めている。

「会長?」

時々、人の話を聞いているのかと思う、し巻風紀委員長。

今日の会議室には、あらたと自分。そして、リラの3人だけだ。


「なるほど、」

思い出したように、こちらを向くあらた。

手に持つ、彼女の報告書を見つめる。

「依然、手掛かりなしか。」

やっと、窓辺から離れ、テーブルの方に歩み寄る。

「盗撮犯、、、少しアプローチを変えてみるか。」

独り言のようにつぶやく。


どうも、この男は、勝手が違って苦手だ。何を考えてるかサッパリ分からない。

とはいえ、恐ろしく有能なのは、事実。

気のりしないが、不確かな情報でも伝えてみなければならない。


ほんとに気のりしないが、口を開くし巻。

「天宮の他校から、入った情報ですが、不確かながら犯人の容貌がわかりました。」

「ほう、」

資料から顔を上げる、あらた。後ろのリラの気配が、わずかに動いたような気がする。


「小柄で、なぜか、いつもブカブカな白衣を着る人物。だ、そうです。」


「、、、、、、、、、」


三人の間に、何故か、変な間ができる。


「ダウトにゃ!」

「何がうそよ!」

「間違えた。ビンゴにゃ!」

リラが思い描いているのは、当然、昨日の乱入者。だろう。

山下しん、ふざけた、チビだ。


「さっそく、締め上げるにゃ!」

腕まくりする、リラ。飛び出しそうな勢いだ。


「まあ、待ちたまえ。うん、、、そうだな。」

何か思い付いたのか、向こうのイスに座り、クルリと背を向ける、あらた。


「昨日、しずく君を調べて見たら、あの少年と親密のようなんだよ。

彼女から、近づいて見たらどうだろう。」


「みず希しずく、、、、」

つぶやくし巻。

それも、そうだ。いくらなんでも、証拠も情報も、少なすぎる。

それに、犯人像はかなり狡猾でズル賢い人物だ。下手にチョッカイをだせば、証拠を消される可能性もある。

それに、、、、ある事を思いつき、ほくそ笑む、し巻。


「わかりました。会長。彼女に接近して見ます。行くよ。リラ。」

きびすを返す、し巻。

「待ってにゃー八重〜〜」


慌ただしく廊下に続く方の入り口から出て行く、ふたり。

ポツンとひとり残る、あらた。


窓辺からは運動部のかけ声が遠く聞こえてくる。


彼としては、要注意人物である、みず希しずくに何かアプローチをかけてみたかっただけだ。

風紀委員たちにそれほど、期待しているわけでもない。


それに、

「山下しん、か。」


ホームページから追跡できる、犯人の足跡は海外のプロキシサーバーを経由していて追跡できないという。


面白くないと思う。


やっている事は、幼稚な遊びのような事なのに、その手際は中々のモノだ。

そのチグハグさが、彼を不安にさせる。


「我ながら大人気ないと思うが、、、、」

携帯を取り出す、あらた。

サウンドオンリーだ。


「立夏、頼みがある。」

どんよりとした、瞳が眠そうにまたたく。


研究学園区内 第三創薬基盤研究所


厳重なセキュリティーの元、管理された科学設備の一画。

ひと気のない、計器類の光が明滅する暗闇に、青白い光が灯る。


蛍火の鼓動のような、光に照らされるカプセルに眠るのは、

年の頃14才くらい、アッシュブロンドのロングヘアー

短い手術衣のみの少女である。


閉じた、まぶたが、かすかに動く。

(なんですか。あらた。)

ゴッソリと感情を削ぎ下ろした声が応える。

あまり、聞きたくない声だ。


「ある、アドレスを追ってくれ。外の代理人サーバー経由だ。」

(、、、、)

少し間がある。


(ご存知のように、現在、世界のインフラの大部分が、量子コンピュータのアダムによって管理されています。この国はそれの使用権の準批准国。

アダムへのアクセスも制限され、情報開示などとても望めません。)


ゆっくり、背もたれに体重を乗せていく、あらた。ここのイスはクッションが良すぎる。いまだに慣れない。


「許可などいらない。アダムをハッキングして、サーバーの管理者から情報を盗め。」


なんとなく、携帯の先から躊躇する気配がしたような気がした。

気のせいだろうが。


(わかりました。侵入を開始します。)


ブン、

研究所の全電力が眠ったままの少女を中心にフル稼働に入る。計器類の明滅が光の奔放に霞む。

アダムへのハッキング。


古今東西それがなされ成功した事は、皆無だ。

月面に存在したオーバーテクノロジーの量子コンピューター。

それは、先端にして最古。前文明の遺跡か、異星人の遺物か。


発見から、なんとか利用に漕ぎつけたのはつい最近。

世界各国で厳しい協定を設け、その利用割合を競っている。


いまだ、1パーセントにも及ばない稼働率だが、その演算能力は世界のインフラを片手間に制御する。

そのセキュリティーは人知を越えていた。


日本の1人の生徒会長の気まぐれが、世界史に残る奇跡を起こそうとしていた。


天空の絶対叡智に拮抗するのは、研究所の最先端の設備ではなく、1人の少女の脳味噌だった。

クローン技術によって、生体有機バイオコンピューターとして生まれた

アンバーTYPE01。

なぜか、あらたに、妹の名前。立夏と呼ばれるスリーピング ビューティ。

眠ったままの少女が奇跡を紡ぐ。


同時刻 天文部

「しずくー、なんだか、風紀のし巻先輩が呼んでるよ〜」

小型の天体望遠鏡のメンテナンスをしている、彼女に声がかかる。

「え、、、あ、ハイ!」

たまに、二年の先輩が顔を出すだけ。ほぼ、一年生、女子だけの、お気楽サークルだ。


ある意味、有名人の風紀、上級生が、訪ねて来るなど、大事件である。みんなの、視線が集中している。


「な、なな、なんでしょうか?」

挙動不審してしまう、しずく。


「ちょっと、話を聞きたいの。付き合ってくれる?」

ツインテールのし巻八重。

「世間話にゃ。」

笑う、フワッとウエーブロングヘアーの和久井リラ。


昨日、生徒会室で見かけた、風紀委員長と副委員長だ。

「は、、、ハイ。」

緊張するなと言うのが無理な話。不安で一杯になる、少女。

そして、それは的中してしまう。



同時刻 天文部、すぐ隣、超研部(仮称)


目の前のパソコンが小さなアラームを連発する。

「あら、、、、あらあららら。」

突然、前のめりにパソコンにかぶりつく少年。


「ど、した。レアモンスターでも出たかー?」

興味なさそうにたずねる友樹。こちらも、ネトゲに専念している。


「い〜〜あんばいに頭のネジが吹っ飛んだ奴が、いるようだ〜」

忙しくコマンドを打ち込んでいく。しん。

なぜか、異様に楽しそう。


自宅、川崎の七号土手の家。

3台のメインコンピュータが、オートで立ち上がる。

匠の一品。こだわりのベクトルプロセッサー。

演算速度は 400ペタフロップスを越える。

いわゆる、スーパーコンピューターである。


ふたたび、天宮第一高。超研部(仮)。


「さーーーて、行ってみよか!」

机のキーボードの両サイドにバーチャルのキーボードが、

モニターの両脇にも電影モニターが投影される。

自宅のスパコンのリモートだ。

合わせて3つのオペレーションを開始するしん。


「お前、汚いぞ〜複垢でレイドか!バンされろ!」

ながらプレイで、文句を垂れる友樹。

「今はネトゲじゃないよ。お前も手伝え!」

忙しそうな少年。猫の手も借りたそうだ。


「オレもいそがし〜の。イベント、クライマックスじゃ。」

まったく取り合わない友樹。


「はくじょーなヤツだ〜いやいやいや、これ、すげーぞ!人類初!

歴史的快挙じゃね!」

さらにのめり込むしん。血相変えて、ブツブツ言い出している。


「、、、、、」

またか、と横目で少年を見ながら思う友樹。こうなると、何を言っても聞きゃしない。

ほっといて、ネトゲに没頭することにする。


(、、、、、、気付かれました。)

淡々と状況の説明が、携帯から流れる。

「さすが、アダム。か。」

クルリと窓方面に向きを変えて、くつろぐ、あらた。


しかし、瞬時にソースコードのファイルの整合性の異常を、察知できるものなのか。

「常時、世界中をスキャンできるわけは、ないだろうし。」

ひとり、ごちる


(アダムではありません。犯人です。)

携帯を落としそうになる、あらた。

彼を知るものが、この場にいたら、目を丸くしただろう。

死んだような、濁った瞳に走るのは、紛れもない、驚きの感情だった。


「状況を、教えてくれ。」

リモコンで会議室をロックする。携帯のモードを全方向モニターに切り替え、音声はワイヤレスイヤフォンで対応する。

彼を囲むように、中空に電影モニターが、いくつも配置される。


カプセルの少女のバイタル、創薬基盤研究所のデータ。さらに、アルカ中の関連施設から、総動員している、電力、マシンパワーの数値。

そして、立夏とアダム。盗撮犯をわかりやすく配置した、相関図が表示される。


(犯人はまず、私の追跡を躱すためダミーデーター、妨害処置を開始。

と同時に、私がアダムに開けた穴を利用。時限式、リモート式、幾つものウイルスを侵入させ被害を拡大させています。さらに、アダム第二層のセキュリティーの分析をしている模様。)


ケラケラ笑う少年を思い出す、あらた。

苛立っているようだが、自覚はない。


「止め、、、」

(一方で、)

説明が続く。

(アダムの侵入口から、こちらのシステムに潜入。現在、グリッドしている、周辺研究施設が次々とダウンしています。)

たしかに、モニタの相関図、立夏の周りの研究所が、ポツリ、ポツリとブラックアウトしていく。


「ふざ、、、、」

口ごもる、あらた。

冗談ではない。確かに犯人が警戒していたなら、侵入を察知する可能性は0ではない。

しかし、アダム、第一層を突破する立夏のオペレーションに対応するのは無理なのだ。

人間では。


だが、例外は何にでもある。特にこの街では。


瞬時に、認識を改めていく、あらた。想定外の事が、多い。

「犯人は複数なのか。」


これほどの、多方面からの、攻撃、防御は組織化された、グループでなければ不可能だ。


(いいえ、オペレーションのアルゴリズム。パターン。ロジック。あらゆるモノに共通するものが多すぎます。オペレーターはひとりです。)

当たり前のように、否定する、立夏。


「、、、、、、、」

あらたはもう、驚く事をやめた。


同時刻  超研部(仮)

「ギャハハハハ!ヤッパ、あっっっめ〜〜〜〜んだよ!防御が、スッカスカじゃねーーか!」

まあ、全能力をハッキングに注ぎ込んだ立夏は、見事にスキを突かれてしまっていた。

「もうすぐ、、、もうすぐだよおお。ウサギちゃん!!穴ぐらから、ほじくり出してまっ裸にひん剥いてやるうう〜〜〜」

血走る眼、泡を吹きそうに興奮する少年。


「、、、、、、、、、」

側から見ると、とても気持ちが悪い。付き合うの止めようかと思う友樹。


「ウハハハハハ!」


タイピングがとてもうるさい。

彼からしたら、身元バレも内職も、もう、どうでも良くなっていた。


アダム、第一層の突破。

前人未到の奇跡を見せた人物の、情報が、どうしても、死ぬほど欲しかった。

もう、訳も分からず、パソコンにのめり込む、しん。


同時刻  生徒会 会議室


中空の電影モニターにレッドアラートが増加していく。

脱力したように、腰を下ろす、あらた。

「立夏。状況を予測してくれ。」

それでも口調はいつも通りだ。


(犯人が私にたどり着くのは、阻止できそうですが、そろそろアダムが事態を収拾し、こちらの探索に移る可能性が、あります。)

当然だろう。

(現状での私の存在の発覚は、計画、遂行の妨げになるでしょう。いかがしますか)

わかっている。しかし、珍しく躊躇する、あらた。

一白の後。

「盗撮犯の追跡は中止だ。足跡を残すな。すべて、シャットダウンしろ。」


(わかりました。)

データの撹乱と共に、次々とアクセスの切断を始める、立夏。


(残念。もう少し彼と遊んでみたかったですね。)


周囲の電影モニターが次々と消えていく。うるさいアラームも一斉に途絶えた。

川崎方面の対岸が夕日をバックに美しいシルエットを東京湾におとす。

オレンジ色に包まれる会議室に静寂が戻っていた。


しかし、醒めない悪夢の中に醒めてしまったように、硬直している、あらた。

アンバーTYPE01の最後の言葉。

それは、まるで、人間のような感情が溢れていた。


昔、彼のそばにいた、大切な人間の声、そのものだ。


夕日を浴びて長く、延びていく影。

やがて辺りは闇に閉ざされていく。


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