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能力アフター  作者: 佐藤同じ
39/55

能力アフター05話02

では、投稿します。

7月1日、午前9時30分  東アルカ、ターミナルタワー、


抜けるような、真夏の蒼穹を、6機のジェット機が轟音を上げ、切り裂いて行く。

アフターバーナー付きターボファンエンジンが2,100kgの推力を生み出し

鮮やかな青と白の重量3,840 kg の機体、Tー4Xを上空にいざなう。


ブルーインパルスのアクロバットチームによる、オープニングセレモニーに集まる観衆が、歓喜の喝采を送る。


一糸乱れぬバレルロールからのフェニックスループが色鮮やかな6色のスモークの軌跡を上空に描き出す。

高度9,000フィート(2,740m)での絶技であるが、ターミナルタワーの中腹の高度でしかない。

ターミナルタワーとは、アダムと接続するための、アシンブルシステムを含む、ビルではあるが、300m級の高層ビル群をはるか、眼下に見下ろし天空に霞む、超巨大集積回路の塊、5,000mを超える巨大メガストラクチャーである。


軌道エレベーター技術、液化ジャイロの循環、超高油圧ダンパー等数々の技術により、重力平衝形状など、物理常識を覆し、天空にそびえる、科学のバビルの塔だ。


四方に散った、6機のジェットが再び集まり、垂直上昇と6機が絡み合うような、キリモミを始める。

ヴァーティカルローリングシザーズだ。

上空5,000mで散開、6色スモークによる、螺旋のもう一つのターミナルタワーを見事、上空に描き出した。


一斉に打ち上がる花火。観客の興奮はピークを迎える。


腹部に響く、花火の炸裂音が、ここ、住宅区の学園科学研究区にいても聞こえてくる。


「うっせーなあ。」

黄色いツインテールのし巻八重が、不機嫌そうに口を曲げる。


「中央のセレモニーが始まったみたいにゃ。にぎやかだにゃー」

フワフワのロングヘアの和久井リラが眠そうに後に続く。


完全に遅刻なのだが、天宮一高に向かう鬼の元風紀委員長と元風紀副委員長の二人。


以前、白衣の少年が起こした盗撮事件の際、それを利用して瀬里奈への嫌がらせで事件を起こした彼女らは、長らく謹慎を食らっていたのだが、たまに補習で学園に呼ばれていた。

今日はたまたま、その日らしい。


「うっとーしい、、、、バックれっか。」

「ダメにゃ〜〜〜〜〜!八重!謹慎が長引くにゃーーーー!」

「くっそ〜〜〜〜!」

グラウンドに開いた、大穴のヘリをリラに押されて、渋々、学園に向かうし巻。


部室練、3階、超研部(仮)


「お〜〜〜すげーな花火。」

窓から顔を出すと、ここからでも、青い空に咲く火薬の火球が見える。通常より明度が高い燃焼物質を使っているのだろう。


「休みにすりゃーいいんだよ。こんな時にさ。」

右手奥の自席にて、パソコンゲームにいそしむ茶髪メガネ。

山下しんと彼は、例によって、部室でのサボりを満喫中である。


授業と言っても、生徒たちは、全員、気もそぞろ、まったく集中できていないのは明白で、授業内容など頭に入ってはいないだろう。

効率の悪い事、この上ない。


「まぁな。みんな、お祭り気分だろーしな。」

独り言のように呟く、白衣の少年。

彼にしては、珍しくゲームに全く集中できていない。


アダムの開通に合わせて、各種ネットゲームの日本運営が、新イベントを目白押しにしている。更に通信インフラの高速化による、ハードモードプレイが可能になる等、彼らにとって、待ちに待った記念日のはずだったはずだ。


「なんだよ。なんか変だぞ。お前?」

さすがに気になって、聞いてくる茶髪メガネ。


「わかんねー、なんかなー」

自分でも、ワケがわからない白衣の少年だった。

何か、見落としている。

そんな気がする。

理解不能、意味不明な、漠然とした不安が、つのる一方だった。


皆と同じでお祭りムードに浮かれてるだけかも知れない。

そう思うのだが、胸騒ぎは一向に治らなかった。


正常性バイアスというものがある。


危機に際して、自分は大丈夫と思い込む、都合の悪い情報を無視する、危険を過小評価するなど、場合により、取り返しのつかない事態におちいる心理状態だ。


今の彼は、まさしくそうなのだが、それを思い知らされるのは、まだ少し後の事だった。


同時刻、天宮一高、中等部、3年1組、


「たーーーーまやあーーーーーー!!」

中等部、ここ1組では、さらに収拾のつかない状態になっていた。

生徒のほぼ、全員が窓辺にそろって、花火見物を始めていた。


最初は紫煙他、数人だったのだが、気が付けばイブも、最年少、飛び級小学生の天地も一緒になって騒ぎに巻き込まれている。

「かあーーーーぎやあーーーーーーー!!」

皆と一緒によくわからない、掛け声を上げていた。

心の隅で、集団、群集心理での暴走なのは分かっていたが、とにかく、楽しかったので、止めることのできないイブだった。


遠くに、遠近感が狂って見える、巨大なターミナルタワーの周辺に、光の華が咲くたびに、少し遅れて腹部に響く炸裂音が届く。皆の興奮は最高潮だ。


「みなさんーーーー!!席に戻ってくださあーーーーーい!!」

小柄なサイドテールの女担任の大西先生が、泣きそうになっているが、誰も聞いてないようだった。


同時刻、ターミナルタワー、南口、中央広場、


火事とケンカは江戸の花ともいうが、お祭り騒ぎに乗せられて、血気盛んな乱闘を始めるやからもいる。

ここは、江戸ではないのだが。


ドカン、

噴水前広場の地面を削り、のたうつ、炎のムチ。

「一度、あなたと戦ってみたかったですわ!」


突っ掛けるのは、炎のような赤いカーリーウエーブのセミロング。

あざやかな緑の夏服の天宮第三学園の炎のAクラスのエース、

王城 たまき、だ。


「バカなことはやめなさい!あなたも風紀委員でしょ!」

踊るように軽やかに、炎鞭をかわすのは、長身、ポニーテール、真紅の夏服の天宮第二学園の雷神トールの異名を持つ電撃のAクラス、日向まこだ。


ゆるやかな、ハイポニー、残念ポニテのみず希しずくとは違い、完成された美しいポニーテールの究極形とも言えるそれは、白衣の少年がみたら、きっと大喜びだろう。


どちらも、目を見張るほどの、美少女だ。


「あれが、二高と三高のエースか!スゲーな!」

ワイワイと目の肥えた観客が集まって来る。彼女たちは有名人でもある。

上空では花火が炸裂し、完全にお祭り騒ぎだ。


「いけーーー!たまきーーーー!」

「負けるなーーーー!まこーーーーー!」

二高と三高の風紀委員たちは、応援合戦を始めている。一応、観衆達を騒ぎから遠ざけているが、悪ノリしているのは確かだ。


「まったく、、、、、」

頭を抱えているのは、三高の風紀委員一年、伊勢理しょう子。

王城たまきとは、小さい頃からの親友なのだが、たまに、風紀の助っ人でやってくる、たまきには大分、手を焼かされていた。


実力はピカイチなのだが、お嬢様育ちの彼女はワガママ、気まぐれ、奔放で、勝気、プライドが高く、あちこちで衝突を繰り返す。

そのたび、火消しに奔走し、たまきと周囲の人間関係を保つ、苦労人だ。

黒髪セミロングのハーフアップ、しっとりと落ち着いた小柄な中々の美人さんである。


年に数度のバーチャルシミュレーションの大会で、個人戦には出場しない、まことは、ついにたまきは戦う事がなかった。


イヤな予感はしていたのだが、広場で日向まこを見つけるなり、

「アイサツして来ますわ!オーホッホッ!」


と、あれよあれよと言う間に、戦端を開いてしまった。


「オーーーホッホッ!いつまでも、逃げてばかりでは、いられませんわよ!」


ゴオオオオ、

彼女の後方に、巨大な複数の炎のムチが形成されていく。


「な、、、何やってるの!たまき!」

真っ青になる、しょう子。

彼女の最大火力の攻撃の一つ、ハンドレット フレイム ウイップだ。

人に向けていい能力ではない。


回避不能の高火力を察知した、まこもその能力を解放していく。

「ミョルニル!」


グワラッガアアアッ

長身の彼女が、上げた右手に、天空より数条の稲妻が収斂される。その総エネルギーは200億キロワットを軽く凌駕する。

北欧神話の神の武具の名を冠する戦鎚が顕現する。


「ハンマーーーーーーーーーーー!」

振り下ろされるウオーハンマー

「舞いなさい!フレイム ウイップ!」

炎の濁流がそれを迎え撃つ。


凄まじい轟音が辺りを包み、みなが、取り返しのつかない被害を予感した時、


「エクスプローーーージョン!!」


グワゴッッオオオオオオオアアアアッ、


一条の爆炎が二人の中を裂き、その計算され尽くしたエネルギーが、二人の炎と電撃を相殺し、キレイサッパリ消しとばしていた。

おおよそ考えられない、馬鹿げた、非常識な、桁の違う、デタラメな能力の行使である。


地響きが、巨大な噴水の水面を吹き飛ばし、蒼穹に虹を描き出す中、一人の少女が舞い降りる。


「あれが、、、、」

思わず息を呑む、しょう子。


白い一高の夏服、フワリとしたブラウンのセミロング。深いトビ色の瞳、少しキツめだが整った目鼻立ち、発展途上だが、抜群なスタイル、文句なしの16歳の美少女。


東アルカ、日本能力者最高教育機関で、いや、アジア全域において、唯一無二、最強を謳われる炎熱系のAAAクラス、炎姫、野川那智、彼女がその人だ。


「なーーーにやってんの!二人共!ここは、演習場でも、シミュレーション場でもないぞ!」

激オコの炎姫さまだ。腕を組んで、仁王立ちしている。


「あ、、、あれが、、、、アジア最強、、、、一高のスーパーエース、、、」

ひっくり返っていた観客達が、やっと事態を把握する。


「な、、、な、な、な、なななな、、、、那智〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

真紅のカーリーウェーブヘアーの王城たまきが、ギリギリと歯ぎしりしながら、何とか立ち上がる。

向こうで、吹き飛ばされていた日向まこもその長身を起き上がらせていた。


「どーせ、オージョーさんが、つっかっかてたんでしょー!しょう子さん!」

トビ色の瞳がコチラを向く。

それほど、面識はないのだが、しっかり名前を呼ばれて面食らってしまう。

「は、ハイ!」

「しっかり手綱を取らないとダメだよお!」

「あた!」

いつの間にか那智の隣りにプラチナショートボブの小柄な少女が立ち、彼女の耳を引っ張っている。

「那智、、、、余計なお世話、、、」

名前は忘れたが、確か、彼女も一高の風紀委員だ。喋っているのは、初めて見たような気がする。


「那智〜〜〜〜!あなた!一度勝ったからって、調子に乗ってるんじゃないですわよ〜〜〜!」

「た、たまき!よしなさい!」

突進しそうな彼女をなんとか、捕まえるしょう子。

とは言え、中等部のシミュレーション戦、個人決勝で、彗星のように現れた新人、中3の時、初出場した、野川那智にコテンパンに敗北したたまきは、さすがに、那智の前で無茶はしないだろう。


「おぼえてなさい〜〜〜必ずリベンジしてさしあげますわ〜〜〜〜〜!」

イキリ立つたまきをほっぽいて、向こうで、

まこにアイサツしている那智。


「うわーやっぱ、大きい〜〜〜〜」

まこを見上げる那智。個人戦不参加の彼女とは、那智も戦ったことがない。ほぼ、初対面だ。那智も身長は低い方ではないが、180をこえる日向まこの前では、大人と子供の差がある。

「痛い痛い痛い!」

やはり、耳を引っ張るリン。

「那智、、、、失礼、、、、」


「よ、よろしく、、、、」

苦笑いしている、まこ。


「うし!もうすぐミーティングだよ!みんな!いそごーーーー!」

クスクス笑いながら彼女を囲む、一高の先輩達。高位能力者は、集団から浮いてしまいがちだが、彼女はそんな事は無いようだ。那智の人柄か周囲の人間に恵まれているのか分からないが、雰囲気はよく見える。


感心して見ていた、まこだが、那智がトコトコと三高の集団、王城たまきの元へよせば良いものを接近を始め、肝を冷やす。


「ねー、オージョーさん。」

「な、なんですの?那智!」

一触即発なのだが、まったく意に解さない那智。周りはイイ迷惑だ。

しょう子は真っ青になっている。


「いつから風紀委員になったの?あんな面倒なモノやらないって言ってたじゃん?」

那智と同じ緑の腕章を、たまきもつけている。


「り、臨時ですわ!助っ人!パートタイム!わたくしが居ないと三高の風紀は成り立ちませんのよ!オーーーホッホッ!」

なぜか勝ち誇るたまき。

性格を除けば、実力は本物だ。先輩方も不承不承で認めているらしい。


「は〜〜。しょう子さんも大変だ〜〜」

同情し、ため息する那智だが、しょう子の立場からすると、これ以上、炎上の火種を投下しないでほしかった。寿命が縮む思いである。


「あ!」

何か思い付いたらしい。

那智の聞いた話だと、王城さんは、瀬里奈副会長には、とてもかなわないが、足元にも及ばないが、ソコソコのお嬢さまなんだそうだ。

口調が似ていたので、なんとなく思い出していた。


「オージョーさんとお嬢さんって似てるよね!」

さも、大発見のように、目を輝かせている。


「あ、な、た、、、、わたくし、そこはかとなく、バカにしてるでしょ、、、」

なめやがって、このガキ、と壮絶な殺意がダダ漏れのたまき。自制しているのがある種の奇跡と言っていい。


「痛い痛い痛い!」

再びリンに耳を引っ張られ離れていく那智。

さすがに、空気を読んで那智を回収に来る、一高の先輩達。

ウチの若いモンがスイマセンしたって感じだ。ヤンチャな新人に苦労するのは三高も同じだ。

それは、三高と妙な連帯感が一高の風紀との間に生まれた瞬間だった!


どうでもいいけど。


(野川さん、ああ、ホントに天然さんなんだ〜〜)

しみじみと思うしょう子だが、げっそりと、頬はこけ、泣きそうになっていた。


7月1日、午前10時00分

ターミナルタワー、一階、国際会議ホール、セキュリティーメンバー合同ミーティング、


収容人数300人を越える広々とした、会議ホールに100人を超える民間警備部隊とその後ろに80人強の一高から四高の風紀委員達が並ぶ。


正面の巨大スクリーンに各部隊の配置が表示され、あらためて、確認と情報共有がなされる。


スクリーン横の司会台にいるのは、オレンジ頭の両サイドにミカンの様なお団子がついた

謎の制定部隊の隊服、黒いワンピース姿の設楽 郁恵ちゃんである。


彼女もしょう子同様、野川那智、被害者の会のメンバーで、アンバーTYPE01の事件の際には大変な目に遭っている。始末書は増える一方だ。


彼女の隣には、サポートとして、仲良しの童顔オカッパ、黒髪、小柄なメガネの少女、イオタチームの高坂ヒロミが付いている。

こちらは、白のティアードスカートに隊の黒ジャケットを合わせた、夏向きの格好だ。


なにげに、エリート部隊である、制定部隊は既に、各所の警備についている。

ここにいる民間警備部隊は国に許可を受けた武装は有しているが、能力者は存在しない。


ただ、郁恵達の他に、暇つぶしで見学している、アルファチームの、朧 理世と黒髪ロングの麗人、千里詩吟が、ホールの後方右側の壁にもたれ、郁恵達を見物している。


「おーーーい!おーーーーい!おぼさーーーん!詩吟さーーん!」

後方右端に配置された一高の野川那智が、彼らをめざとく、見つけ必死にアピールしている。


「ケッ。」

三白眼のトゲトゲ頭の朧はあからさま、無視しを決めこんでいる。

詩吟は、にこやかに手を振る。


「痛い痛い痛い!」

再び会議に集中するよう、冬木リンに耳を引っ張られている、那智。


「概要は以上です。何か質問のある方は?」


「ハイ!」

伊勢理しょう子が気がついた時には、もう王城たまきは挙手し、立ち上がっていた。

頭の中を警報が鳴り響くが後の祭りだ。


真紅のカーリーウエーブヘアーの少女は自信満々に言う。


「納得いきませんわ!なぜ、私たち風紀委員が巡回警備、避難誘導任務だけですの?言ってはなんですが私たちは一般人と比べれば、はるかに戦力になりましてよ!」


一見、傲慢不遜に見える彼女だが、これはあながち間違ってはいない。

4班、20人の風紀委員たちは、一個小隊の戦力と同等と評価されている。

ましてや、Aクラス能力者の彼女は、単独でそれと同等とされる。


二高の向こう、7列最前列の三高の列には、たまきとオロオロしてる、しょう子しかいない。

「まったく、も〜〜〜〜!」

リンが止める間も無く、しゃがんで、移動を開始する那智。


「な、那智さん?」

「し〜〜〜〜!」

二高の日向まこの後ろ通り、目的地に向かう。


「拠点防衛でも遊撃でも、そちらの方がはるかに有益ですわ!」

警備部隊がざわつくが、一切気にも止めないたまき。


「う、、、、んと、」

親戚の姪っ子に駄々をこねられているような感覚に落ちいる郁恵。


「それは許可出来ません。」

「なぜですの!」


「あなた達は学生だからです。」

むしろゆっくり諭すように、郁恵。


「あなただって、学生ですわ!」

一歩も引かないたまき、

「少なくてもあなたよりは、戦力になりましてよ!」

自信満々だ。


「う〜〜〜〜〜ん。」

途方に暮れる郁恵。確かに力的には彼女の言う通りだろう。しかし彼女には理解できていない事がある。

それがわからなければ、必ず取り返しのつかない事になるだろう。

どう説明したものか、考え込んでしまう郁恵だが、思わぬ援軍が現れる。


「ぴぎゃーーーーーああ!!」


素っ頓狂な悲鳴を上げて飛び上がるたまき。

ゴソゴソと這ってきた那智が、彼女のお尻を思いっきりつねったのだ。


(な、、、な、な!なにをするの!那智!!)

涙目で抗議するたまき。

真っ赤になってお尻を抱え座ってしまっている。

ゴソゴソと彼女の空いている隣に腰掛ける那智。


「いーから!郁恵ちゃんの話を聞きなさい!」

有無を言わせぬ迫力で睨みつける那智。


激オコの那智は、実は中々怖い。Aクラスだろうと物理的拘束がかかるほどの殺気を放つ。

さすがのたまきも渋々ほこを収める。

その隣のしょう子は白目を剥いて失神しそうになっている。


「な、那智さん!」

状況を理解して、嬉しそうに笑う郁恵。

ヒラヒラと手を振って応える那智。


その後の、役割分担、巡回ルートの取り決めは、つつがなく進み、一同それぞれ一斉に立ち上がり移動を開始する。

「覚えてなさい〜〜〜那智〜〜〜〜〜〜!」

お尻をさすり、しょう子に引っ張られていくたまき。


一人、三高の席に残る那智は、大任を終えて、向こうでヒロミと喜び合う郁恵を、ボンヤリながめていた。


(良くも悪くも学生、、、、、か)


昨日話していた、白衣の少年の言葉を思い出す。

しかし、彼女には、郁恵たちと自分の違いが解らなかった。


いつの間にか、リンが隣に立っている。

「那智、、、、行こう」

「ま、いーか!」

勢いよく立ち上がる少女。


とりあえず、後でしんに問いただそうと決意する。どうもアイツは説明不足だ。全部ヤツが悪い。

よくわからない結論に達し、意気揚々と移動を開始する少女。


「ケッ。どーなんだよ。ヒヨッコどもをウロチョロさせんのはよぉ。」

壁にもたれる朧が不機嫌極まりなく、うなる。

彼は学生たちを現場に入れる事さえ、毛嫌いしている。


「宣伝、プロパガンダでしょ。」

身も蓋もなくつぶやく詩吟。

「良くも悪くも、風紀のあの子達はこの街の象徴だわ。アルカ上層部が考えそうなことよ。」

「くだらねぇ」

さらに、目つきの悪くなる痩身の男。

「私たちがシッカリ、仕事すればいいだけでしょ。守ってあげないとね。」

意地悪そうに笑う美人。


「知った事か!とっとと行くぞ!」

ツカツカと郁恵の元へ向かう朧。


「おらーーーーーーー!いつまで遊んでやがる!」

「ぎゃーーー!朧さん!タンマタンマ!」

郁恵のえり首を捕まえて振り回す朧。


ため息して、後に続く詩吟。

誰に言うでもなくつぶやく、


「長い一日になりそうねぇ。」


また、来週。

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