能力アフター04話09
遅れました(T ^ T)
ゴーーン、ゴーーン、
誰一人、人影のない天宮第一学園の深夜にグランドに、巨大な十字架を背負った、ビヤ樽の様な神父が立っている。
十字架が奏でる鐘の音は、辺りを聖域化し、神父の祈りのままあらゆる、属性を周囲にもたらす特性を持っていた。現在は人払いに用意られているようだ。
やがて世にも美しい、ボーイソプラノの讃美歌が聴こえてくる。
I am the day, soon to be born
(まもなく生まれ来るその日)
I am the light before the morning
(私は夜明け前の光)
恐るべき事に、その天使の歌声は、ブクブクに太ったオッサン神父のサンタクロースの様なヒゲもじゃの口から流れてきている。
I am the night, that will be dawn
(もうまもなく終わりを告げる闇)
I am the end and the beginning
(私は終わりであり始まりです)
I am the alpha and omega
(私はアルファでありオメガなのです)
The night and day, the first and last
(夜と昼 最初と最後).
オッサン神父の讃美歌は佳境を迎える。なぜか、汗だくだ。
とても気持ちが悪い。
Illuminosa, immortalis
(永遠の輝き)
Sancta gloriosa
(聖なる栄光)
「ハイハイ、ライブ中、悪いけどブラッド、お客さんだよ!」
グランドと校舎を隔てる段差の階段に座っていた、深紅の革ジャンを羽織った黒髪ショートのエイダ レスターが、パンパンと手を叩き、立ち上がる。
歌声は一級だが、このオッサンの口から、奏でられるチグハグさが、人の体調を狂わせる。
「あらーこれからいーとこなのにーわたくし、くやーしいー。」
キンキンの変声前の子供の声で、文句を言うブラッド神父。
「まあ、そう言うな。後でお祈りしてやるから。」
安請け合いする黒人、丸坊主のジノ フィッシャー
讃美歌はブラッド神父のただの趣味だ。
「ホント!約束だよージノ!あらたもねー。」
「、、、、遠慮しておく。」
珍しく、とても嫌そうに首を振る。天宮第一学園、生徒会長、不知火あらた。
彼のお祈りは、病的に長いからだ。
「よいしょっと。」
片手で軽々と2メートルを越す巨大な十字架を担ぎ上げる神父。
「あれが、悪い子ちゃん達ねー。」
丸坊主、糸のような、細い目が笑っているようだ。
白色の顎ひげを楽しそうに右手でいじっている。
グランド、ほぼ対角線の向こうのフェンスを飛び越えて、奇妙な集団が降り立っていた。
デブと七三分けのサラリーマンコンビ、
赤いランドセルのおさげの女の子を連れた、太ったおばさん。
キャリーバックを転がす、老夫婦。
そのどれも、感情の消えた無表情のままであった。
国籍、正体不明のフリーランスの殺戮集団、グール達だ。
多少の情報があるだけで、その素顔は、あらた達にもわからない。
「エサに釣られて、間抜けな話ね。」
両手に圧縮された水流を集め始めるエイダ。
とある少年が作った、イブのID偽装装置が階段に置いてある。
「まあ、これだけ派手に人払いを展開すれば、確認に、来るだろさ。」
そう言うジノだが、アルカの場合、他の能力者が寄って来る可能性もある。
まあ、彼らには関係無さそうだが。
ジノはH&KUMPのサブマシンガンを用意する。かれの趣味らしい。
「手はず通り行こう。僕は、結界師、フェイ ウォンだ。」
あらたは、老夫婦に向かう。
なぜか、相手は、二人なのだが。
ボ、ボ、ボ、
と、あらたの周囲に鬼火のような、赤い炎が灯り出す。彼の異能、不知火である。
「私らは、運び屋フリオ&ルージア兄弟ね。」
エイダとジノは、サラリーマンコンビが相手のようだ。
「わたくしは、慈愛のマリーベルだね。まさか、極東の地で巡り合うとはねー」
巨体を揺らしウフフフと高い声で笑うブラッド神父。
彼は女の子を連れた買い物おばちゃんに向かう。
学生達が普段、生活する平和な学園で、今宵、いずれも劣らぬ、人外の魔人たちの殺し合いが始まろうとしていた。
発端は、なんの前触れもなく突然、淡々と始まった。
ドカン、
地を割る、巨大な十字架。
「悔い改めなさいーーーー!」
歌うように、巨大な鈍器を振り下ろす神父。
「エセ神父がほざくなよ!」
驚くべき敏捷さで、身をかわす、母娘。表情は依然、張り付いたような無表情だ。
「ウフフフフ、いつから、子持ちになったのです?マリーベル。」
水平に十字架を薙ぐブラッド。
カチン、
とサイドの十字架が割れて、内臓マシンガンが姿を現す。
ドガガガ、
血しぶきを上げて女の子が引き裂かれていく。無惨に赤いランドセルが千切れバラバラと教科書や、ノートがばら撒かれる。
「アゥウーーメィーーーーーン!」
十字を切るブラッド神父。
しかし、買い物おばちゃんは、特に気にしたようもなく、女の子を首を掴み乱暴にズタボロの身体から、引き千切る。
バキン、
強化フレームの十字架のサイドが、バターの様に切断されていた。
巨体に似合わぬスピードで距離を取る神父。
「な、なんたる不信心、、、!」
うなるビヤ樽神父を追撃する、刃。
それは女の子の脊髄だった。全長3メートルに伸びる、高周波振動する、変幻自在のブレード。
趣味の悪い事に柄の部分のおさげの女の子の首が、
「お母さん。痛い、痛い、」
と泣いている。
正気の人間に耐えられる光景ではない。
「お母さんのために、我慢なさい。」
慈愛のマリーベルが、悪鬼のように笑う。
噂は本当のようだった。
運び屋フリオ&ルージア兄弟は、アイテムボックスを持っている。
その身体内に、異次元の収納スペースが存在しているのだ。
ジノのライフル斉射も、エイダのウォーターカッターも、体内の収納スペースに抵抗なく、飲み込まれていた。
一人が盾となり、一人がH&KG36Cサブマシンガンで攻撃して来る。
盾役は、能力に集中するためか、攻撃精度は若干低い。
しかし兄弟の連携はかなりのレベルで、ジノとエイダを持ってしても、攻めあぐんでいた。
ウォーターカッターの円盤で銃撃をかわしながら、エイダが、ベッドセットに叫ぶ。
「どうするの?ジノ!ラチがあかないわ!」
ジノは変速の高速機動で位置を撹乱している。
「攻撃役を倒す。合図したら、後ろの七三分けを狙え!」
彼は、何故二人が、攻守をスイッチして戦っているのかを考えている。
そして、ある仮説を立てて、試そうとしていた。
「今だ!」
兄弟に突っ込むジノ。黒いレザーコートが羽のように広がる。
その彼を包むようにいく重ものマッハ3に達する水の槍が広がる。
グワゴッッ、
後列の七三分けが、難なくウォーターカッターを飲み込む。
「そうさ。交代の時間だ。」
手前の太ったハゲサラリーマンの腹部にサイトするジノ。
「正解です。」
作り物の笑いを浮かべる部長サラリーマン。
つまり、兄弟のアイテムボックス、展開には、時間制限があるのだろう。そのための交代。
タイミング的に、今、デブサラリーマンは、吸収できない!
「その通り。でも、排出はできるんですよぉ。」
いつの間にか、二人の間に、モスグリーンの弁当箱が、現れている。
(クレイモア、、、、、!!)
猛烈な速度で距離を取るフリオとジノ。
グオオオン、
炸裂する、指向性対人地雷。
ミスナイ・シャルディン効果により、前方に爆風が集中し、700個の鉄球と破壊エネルギーがジノ フィッシャーを直撃する。
サブマシンガンがバラバラになり、ジノもボロボロになる。
身体強化に優れる彼にしても、戦闘能力の半減は免れない。
「ジノ!」
エイダがフォローに入る。
ベッ、
と鉄球を吐き出すジノ。
「クソ!お気に入りのコートがボロボロだぜ。」
サブウェポンのハンドガンを取り出す。
戦況は、あまりかんばしくない。
「、、、、、まずいな。」
思わず漏らす、あらた。
本音を言えば、グールなぞ、初撃でまとめて、焼き尽くせばそれで済んだのだ。
後々を考えて、どれかを生捕りにして、背後関係を探ろうと思ったのが誤算のようだった。
結界師、フェイ ウォンは、キャリーバックを中心に奇妙な魔法陣のような物を構築し、
意外な善戦を見せている。
彼の異名の一つが、能力者殺し。
まさか、それがここまでの物とは思わなかった。
今彼は、それを我が身で体験していた。
力の半分以上が減衰している。
夫婦の片割れ、老婦人が、人間離れしたスピードとパワーで、猿のように襲いかかる。
奇妙に刃の部分の長い、暗器、がびしを片手に2本、計4本を振り回す。
「、、、、、、、。」
あらたの赤い炎が幻のように迎撃する。彼の周囲のそれらは、攻防一体の不知火。位置偽装の特性を持ち、相手は気づいた時は、炎に包まれる。
グワゴッッ、
吹き飛ぶ、老婦人。
「、、、、、?」
煙の中から、構わず老婦人が襲いかかる。
皮膚が肉が剥がれ落ち、灰色の強化フレームが剥き出しになっている。
「かかかか、」
顔も半分以上、肉が削げ落ち、からくり人形のような、マスクがあらわになる。
作り物の口が不気味に笑う。
その表面には、耳なし芳一のように、びっしりと梵字が書き込まれており、対能力の効果を果たしているらしい。
グワァ、
ドゥン、
周囲の炎を破壊し、迫る。
いつの間にか、腕がそれぞれ二つに分かれて、計4本の腕が、縦横無尽に襲いかかる。
足も同様に分かれ、4本足による、変速高機動を見せる。
ウォンのもう一つの異名は、人形使いだ。
ホラー映画顔負けの化け物が、冗談のように、襲いかかる。
人形は、アタッカー、ウォンは後方支援らしい。
老人は、古い木製のボウガンを片手に、奇妙な軌跡を辿る、毒矢を放つ。ボウガンの下部には、巨大なドラムが設置され、連写が可能のようだ。
左手には、ブルパップ型アサルトライフル、QPZー95持ち、直線的な、狙撃を試みる。
前衛の人形の被害を考慮しない、それらの攻撃は、さしものあらたにも、かなり煩わしいものだった。
「アサルト モオオーーーード!」
歌うように奏でる神父。
無事の方の十字架のサイドが開閉しマニュピレーター付きの複数のヒートブレードが現れる。
ガギャアア、
ガチャガチャとそれぞれ生き物のように動くヒートブレードが、女の子の脊髄の高周波ブレードを払いながら、マリーベルに襲いかかる。
「懺悔なさぁーーーい!」
子供のような高い声で、迫るビヤ樽神父。
「ほざけ!」
マリーベルが手首を捻ると、高周波ブレードの先端が、やつまたに分離する。
八方から迫るムチが、ヒートブレードを払い、一つがブラッド神父の右手を貫き、十字架が遥か後方に、地響きを立てて吹き飛んでいく。
「オオ、、、、、」
悲痛なうめきと共に動きを止めるビヤ樽神父。
「ここまでだな。エセ神父!」
残虐に笑う太ったおばちゃん。
「オオ、、、、、オオオ!神よ!神よ!」
満面の笑顔で天を仰ぐ、ビヤ樽神父。両目からは、涙が溢れこぼれ出す。
「きさま、、、、、!?」
異変を感じ取るマリーベル。
高周波ブレードが、固定されている。びくとも動かない。
よく見ると、神父の右手からは、一滴の出血も無い。
「原罪を!すべての人類の罪を、我が身を贄に救済を示せとおっしゃるのですね!」
感極まるブラッド。
「ああ!ああ!この、素晴らしきスティィィグマーーーをわたくしにぃぃぃ!
ハァレレレレルゥヤアァァァーーーーーーーーー!」
恍惚の神父。彼には、世界が輝いて見えている。
「この、狂人め!!」
八本の一つを切り離し、思わず距離を取るマリーベル。
高周波ブレードは、その機能を回復する。
神父は、更なる奇行を始める。
右手の細い高周波ブレードを掴み、ズブリ、と自らの左手を刺し貫く。
「おお!おおお!人に磔刑を!人々の罪は我が身と共にぃぃ!」
聖痕は、二つになる。
「救済を!!」
ゴオオ、
両手から血しぶきの竜巻が上がる。
これが、ブラッド神父の能力。
血流操作であった。
自らの血液を鋭利な剣に、岩をも通す弾丸に変える。
その威力はエイダのウォーターカッターをも凌駕する。
「アゥウーーメィーーーーーンン!!」
スドウゥゥン、
「ギャアアアア!」
肺と腹部を貫かれるマリーベル。
血だらけになりながら、逃走を開始する。
黒いコートを広げながら、疾走するジノ。
「エイダ。援護を頼む。そろそろ、遊びはやめだ。」
地を、空を走る水の槍が、彼の動きに合わせてジグザグの軌跡を描く。
「了解。」
銃撃を躱し空を舞うエイダが笑う。
更に加速する、ジノが、ハンドガンを乱射する。
盾役の七三分けルージア弟に向かう。
そこへ殺到するウォーターカッター。
ドガガガ、
「無駄な事を。」
笑うサラリーマン。
いつの間にかジノが彼の後ろを取り、ガッチリ、ネックロックをしている。
そのまま、脊髄を捻じ曲げる。
しかし、その運動エネルギーは、体内の収納スペースに吸収され、効果は全く無い。
「それは、どうかな?」
するりと距離を取るルージアを、更に銃撃するジノ。
「兄貴?」
異変が起きていた。
彼をサポートするはずの後衛のフリオの援護がない。
「ゲボッ、」
血反吐を吐きながら、向こうの方で、デブのサラリーマン。兄のフリオが糸が切れた操り人形のように、地に倒れ伏す。
「あ、兄貴!」
混乱が彼を襲う。見ればフリオの首は、あらぬ方向を向いている。
ジノ フィッシャーの能力は、念動の軍隊格闘術だ。
通常は打撃、関節技の念動の強化のみだが、ある程度の距離ならその念動を離れた位置にコントロールできる。
彼の動きをトレースする、遠距離攻撃が可能なわけだ。
つまり、前列の弟ではなく、後列の兄を狙ったサブミッションだったのだ。
「ち、、、、ちくしょう!」
敗走を始めるルージア。能力のタイムリミットが来れば、彼は確実に殺されるだろう。
「やるものだね。」
周囲を巨大な盾を持った三体のマリオネットに、守らせるフェイ ウォンは、仲間たちの様子を見ながら感心する。
ちなみに、マリオネットは、刑天という首の無い妖怪を模してあり、老婦人のキャリーバックに隠していたものだ。
フリオが死亡し、マリーベルも、瀕死だ。
グールがここまで被害を出したのは久しぶりだろう。
そういう自身も、どちらかと言えば防戦一方だ。
梵字でコーティングされた、刑天たちの盾も、ひっきりなしの炎弾の雨あられの攻撃に晒されている。
しかし老練の彼は、相手が優勢と思ってくれたなら、隙もできるのを理解している。
左袖より、札を出し話しかける。
同様の札を仲間に預けており、専用のネットワークになっている。
「集まりなさい。罠をかけるよ。」
普通の老人に擬態したひとみが、妖怪のように光る。
「なんだ、、、、、?」
突然、あらたから老婦人からくり人形が、離れていく。
見ると、七三分けサラリーマンと、買い物おばちゃんが、フェイ ウォンの元に集まっていた。
「仕上げだな。」
見た目、ボロボロのジノが現れる。
「どうする?生捕りにする?あらた。」
エイダの姿見える。
彼女は無傷だ。
「神のみもとに送りましょう。死こそが彼らの免罪符でーす。」
高音で笑うデブ神父も現れる。両手にでかい穴が開いていた。
グラウンドの東端、野球のバックネットのフェンスを後ろに、包囲されるグール達。
「どうする?続けるか?」
違和感を感じるあらただが、会話をしてみる。
この手の連中は、戦闘継続不能なら、迷わず自害か逃走を試みるはずなのだが、、、、
「お優しいのぉ。お若いの。長生きはできないの。」
ニコリと笑うフェイ。
ガサリ、
と三体の首の無いマリオネットが動く。
ドガアアアグワッ、
一斉に爆破する。
「なんだ!」
たじろぐジノだが、威力は大したことはない。
ゲホゲホとむせる。
しかし、一面に黒い霧が立ち込め、空気に溶けて消えていく。
「ヤバイよ。これってもしかしたら、、、、」
相手は人民連の高位術師フェイだ。
「新鬼煩寃旧鬼哭!」
ドン、
彼の最終奥義が、グラウンドを揺らし展開される。
「オオオ!マイ ゴッド!」
神父たちを押し潰す圧力がかかる。
「く、クソ!」
うめくジノ。身体が、重い。力が何処かに流れ出ていく。最悪の二日酔い明けのようだ。
「ウソ、、、!」
エイダの水流が、力なくグラウンドに散っていく。
「、、、、、、、、、」
成る程、と翁を見つめる、あらた。
彼の不知火も、次々と消えていく。
「お若いの。これが私の本当の能力者殺しだよ。」
妖怪のようなひとみが弱体化した、自分達を静かに観察している。
「設定はこの街、最強のAAAの炎の姫に、合わせてある。誰にもこの陣は、破れないよ。例え彼女であっても。」
効果を確信したのか、気味の悪い声で笑っている。
老婦人の人形が、守る魔法陣の中央のキャリーバックから奇妙な機械が見え稼働している。
簡易のキャンセラーだ。
超能力者を収容する刑務所は、キャンセラーと超能力を阻害するナノマシンの注射により、完全に能力の行使を不可能にするシステムがある。
先程の三体のマリオネットの爆発は、そのナノマシンを散布するためのものだろう。
それと、キャンセラーとフェイの術。
ジノ達は完全なただの人間となっていた。それどころか、まともに動けない。
「クソ!」
ガキャ、
ジノのハンドガンがルージアのサブマシンガンに飛ばされる。
「兄貴の仇だ。」
嬉しそうに笑う七三分けのサラリーマン。
「殺せ。」
沈滞なく命じるフェイ。一斉に発砲するグール達。
グワアアアアッ、
並の人間ではひとたまりもない。
夜空の月が雲間から覗き、静かに辺りを照らす。
「なん、、、、じゃと、、、、、!」
目を剥くフェイ。
幻影のような赤い炎が、ジノたちを包む。それが凶弾から、彼らを守る。
「サンキューあらた!」
「ヤーウェはわが力、わが盾。わたしの心は大いに喜び、歌をもってヤーウェをほめたたえまーす!」
エイダがサムズアップし、神父が歌い出そうとする。
「歌わなくていい、、、」
死んだような瞳のあらたが無表情に、能力を展開する。
瞳に赤い光点が灯り、癖毛の長髪が、紫に輝き出す。
グワアアアアッ、
荒れ狂う青い炎の暴風。
バックネットのフェンスが軋む。
「な、、、、なぜじゃ、、、、、なぜ力が使える!」
たじろぐフェイ。
ありえない光景が彼らを包む。
「お前たちは、厳密にはAAAを理解してはいない。野川那智にしろ、AAAとは呼べないのだ。」
冷たく告げるあらた。
フェイにはとても理解できない。
「この街の本当のAAAは、あらたしか存在しないという事さ。」
ジノが事実を告げる。
ただわかるのは、彼の術では、あらたの能力が抑えられないという事だけ。
高温が、グールを溶解していく。
「ギャアアアア!いやじゃ!嫌じゃ!た、助けてくれ!」
悲鳴を上げるフェイ。
「そして僕は彼女ほど甘くはない。」
真っ直ぐグール達に向けられる、ヒョロ長い腕。
「御老人。もう十分に生きただろう。死ね。」
公式には、使われたことの無い彼の能力が解放される。
爆発的なエネルギーが、収斂する。
「FAEデトネーション、、、、、」
グワアアアアッゴオオオオオ、
秒速2,000メートルもの高速で噴出する可燃性物質が自由空間蒸気雲爆破をおこし、長時間、連続して、全方位から襲う圧力波が、グール達を内部から焼き尽くし、跡形もなく吹き飛ばす。
人への殺傷力に特化したそれは、破壊力も凄まじく。グラウンドを削り、フェンスを飴のように溶かし、向こうの駐車場の車を薙ぎ払い、校舎の強化ガラスをすべて割っている。
「相変わらず凄まじいねぇ。」
エイダ達にしろ、あらたの炎に守られてなかったら、とても無事ではいられないだろう。
彼の炎は、野川那智のものと違い、エネルギーを別方向に逃がす方法で使用者を守る。
後には何も残らなかった。
巨大なクレーターの底には、ドロドロに溶けたグラウンドがくすぶり、夜空に白煙がモクモクと上がっていく。
ドカン、
と地面に巨大な片方が欠けた十字架を立てたビヤ樽のような神父が、十字を切る。
「アゥゥーーーーーーーメェェーーーーーーーーーンン。」
ボーイソプラノで、歌うように結ぶ。
悪夢の様な魔人達の宴は、終わった。
静かにアルカの東を朝焼けが染めていく。
また、来週。




