能力アフター04話07
ガチャ当たりました!
周年前に、運を使い果たしたような、、、、
黒いワゴン車が、秋葉原の大通りを曲がり、パソコン店、カレー屋、そば屋の並ぶ通りを進むと、工事中の現場が広く広がっている。
再開発の進むこの街は、至る所に鉄パイプ、白いモルタルの壁、クレーン、工事車両がひしめく殺風景な景観が多く見られる。
隣りで小太りの男が電話をしている。
相手は先行していた、協力者らしい。
「李さん。アメリカの博士さんに、近づく人間があるよ。」
日本でのサポート役だが、変な日本語で話しかけてくる。
舐めているのかと思うが、どうでもいい話だ。彼は吊り目で、頬骨が出た、いかにもアジア人と言った小太りの男だ。
車を止め、町中に配置した、術符をチェックする。
電柱の札が、各国、情報機関の動きを伝え、ヒリヒリとした緊張感が流れてくる。
「どうやら、彼女らしい。やれやれ。」
ダークグレイの背広、長身の李 運陣の唇が静かに何かをつぶやいている。
今日は右目を呪符の眼帯で覆っている。動きやすさを優先したのだろうか。
残りの左目が糸のように光を湛える。
ゴオ、
電柱の呪符が光を放ち始め、次々と街の至る所で、光が灯り出す。
これで誰一人、目的の場所には、たどり着けない。
李 運陣の陰陽呪術である。同業の結界師、フェイ ウォンに匹敵する彼は、隠形にかけては、彼以上とウワサされる。
「フフフ。クイーンを取るのは我々だ。」
見上げる夕空に風が舞い上がって行く。
最初に影響を受けたのは、落ちゲーを終えたリンだ。
「な、、、那智、、、、、」
感度が高すぎる彼女は、遮蔽しても影響を受ける。
「な、、、、何コレ、、、、、!」
高位能力者の那智も頭痛のような影響を受ける。
首を一振り、アルコールを一瞬にして0に分解した智由が分析する。
この凄い代謝能力は、後で聞いたのだが、智由センセーの能力の一種らしい。
「人払いの結界ね。街のど真ん中でよくやるわ。」
ポン、
とライムちゃんにセバスチャンちゃんを渡し上着を羽織る。
能力の低い白衣の少年には、彼女達の異変は全くわからない。
彼はそれどころじゃなかったのだが、
「どうしてだ!紫煙!お前が付いていてなんで!」
「イブ、、、自身が出ってたんだ、、、トイレに行くって、、、、」
同様に紫煙も苦しそうだ。
「クソ、、、、、!!」
そのままひとりで、出てったのだろう。
こと電子戦に関しては、紫煙並みのレベルのイブだった。
完全に少年の油断である。
「友樹、、、が外を、、、、探している、、、、」
ギリギリと歯軋りする紫煙。奥歯が砕けそうだ。一番悔しいのは彼女なのかもしれない。
「クソ、、、、、、クソッ!!なんでっ!!」
うめく、しん。
夕日に溶ける彼女の声がする
しばし、、、さよならじゃ。主どの。
なんで気付かなった!なんで!!
「落ち着きなさい!しん!」
意外な腕力で彼をゆする、智由。
「イブちゃんが出て行ったって、なんなの?何があったの?」
話を聞かれたらしい。
「30文字内で、端的に説明しなさい。10秒以内!10、9、」
なにやら、無茶を言い出す先生。
必死に考える少年。珍しくパニックを起こしそうになっていた自分に気がつく。
「各国の、、、、情報機関が、、、イブを狙ってて、、、なんでかイブがそいつらのトコに、、、自分で、、、、」
シドロモドロだ。
「よし!わかった!悪者をやっつけて、イブちゃんを保護すればいいのね。那智!」
簡単に言ってのける養護教諭。
「リン!イブの場所、わかる?」
即座に応える那智。
「、、、、、」淡い燐光を放つ薄い虹彩の瞳。
「確定は、、、、無理、、、、大体なら、、、、、」
コレは異常事態だ。リンのプロビデンスサーチを阻害する術式という事だ。相手の力量は相当なものだろう。
「まあ、行ってみればわかるか!」
フンス、
と腕まくりする那智。もう夏服の半袖であるが。
「ま、待てって!ほんとに、やばい相手だって、、、、、」
わかってないのだ。なにも!
ギュウ、
なぜか、豊満な智由先生の胸に抱かれている、少年。
「はぐ、、、、」
「君は、よく、ガンバった。イブちゃんを守ったんだろ。だれにもできないさ。だから、もう大丈夫。後は任せて。了解?」
なぜか、泣きそうになった。オッパイが柔らかいからだろうか。
那智が生暖かい目で見ている。
「あんた、、、、バカでしょ。私らを誰だと思ってんの。言いなさいよ。バカ。」
アジア最強を冠する、少女が優しく笑う。
「先行する。」
ゆらりと消えるリン。
たちまち、3人の姿がかき消える。能力の高速移動に移ったら、彼には追いようがない。
正体不明ながら、あの保険の先生もそうとうな能力者のようだ。
「ゲ、置いてきぼりかよ!」
慌てて後を追う紫煙。
コレで完全にひとりだ。
「あ〜〜〜〜クソッ!」
ジダンダ踏む彼を、トン、と押す、事態を見守っていた青いネコミミメイド。
「行くにゃん。そして今度はちゃんとイブちゃんを捕まえるにゃぞ。」
クスクス可笑しそうだ。
「おうよ!イブ!待ってろ!!」
ドタバタ出ていく白衣の少年。カッコ悪いったらない。でもその方が彼らしいと思うココアであった。
長く影を伸ばす、夕焼けの秋葉原の街はずれを、ゼーゼー走るしん。
奇妙なのは、人っ子一人、誰も、通行人もなにも存在しない事だ。
智由が結界と言っていたが、そんな芸当ができるのは、人民連の李 運陣だろう。
調べまくった情報から、該当人物を引っ張り出す。
「っったくよ〜〜〜どこ行った?イブ。」
ガラン、
とした印象の工事中の塀を見ながら汗だくになっている。
これでも、変な感じのする方へ向かっているのだが、いかんせん、捜索範囲が広すぎる。
ついでに彼の低い能力適正では、ほぼ、当たるも八卦、当たらぬも八卦である。
李先生に占ってもらいたいものだ。
おかしなことがある。
「なんで、、、情報局ごときが、、、オレの妨害、、、かわして、くんだよ!」
息も絶え絶えだ。
情報機関の動きが正確すぎるのだ。少なくても、彼の動きを察知するのは数日後になるハズだった。
携帯が鳴る。
面倒なので小型のヘッドセットで聞いてみる。
〈ソレハネ〜〜〜アメリカノ博士ガ、コッチニ来テルカラヨ〜〜〜〜〉
まるで、彼の文句を聞いていたように電子音声のお姉言葉の天宮四校の変態仲間が答える。
もう細かいこと考えるのが面倒になっていた少年は、彼?もしくは彼女?の匿名希望に八つ当たりをする。
「テレスティア マーレイか!あのクソババア!!」
彼は一度彼女に誤認逮捕でえらい目に遭わされている。まあ、紫煙が悪いのだが。
イブのメインプログラマー、あの博士が、何も考えず動き回ればそりゃあ何もかんも、台無しになるだろう。
彼女をマークしていれば自然とイブのとこへ連れて行ってくれるわけだ。
〈アダムチャンモ、一緒ミタイヨ〜〜〜ン〉
では、イブを呼んだのは、能なしアダムだろう。
あのポンコツ!
ハッキングして、デリートしてやったら、どんなにセイセイするだろうか。
〈ソレジャ頑張ッテ〜〜シン〜〜〜死ンジャイヤヨ〜〜〜〜ン〉
不吉な事を言って切れる電話。
「おい!匿名!」
思わず立ち止まる少年。
その彼を、じっと電柱の防犯カメラが見つめている。
狭い小部屋、グルリと周りを取り囲む幾つものモニター。
そのひとつが道端で立ち往生している白衣の少年を写している。画像は微妙に乱れている。
そして、その彼に迫る影も。
暗い部屋の中、ウサミミのフードを被った小柄な少女がクスクスと笑っている。
「ピンチだピョン〜〜〜しん。」
ボリボリとポテトを頬張る少女。
「でもさあ、グールはアルカに閉じ込めてあげてるんだから
感謝してほしいピョン〜〜〜〜」
これは限定的な情報封鎖が少女には、可能という事だ。この完全なるアダムが支配する世界で。
「多分、グール達は君たちには手に余るかもしれないからピョン。でもサービスはここまでピョン。ガンバッテなんとかしてピョン〜〜〜〜」
匿名希望と呼ばれるウサミミフードの少女は実に楽しそうに、カウチポテトを楽しんでいる。
一瞬の出来事だった。
警戒していたにもかかわらず、白衣の少年は、正体不明のヒモのようなものにがんじがらめに拘束されていた。
「ウギャ!」
もつれてうつ伏せにひっくり返るしん。
よくみると、呪符がつながった帯のようなものだ。こうなると、彼の唯一の取り柄、接近格闘も意味をなさない。
「李運陣、、、、、」
思わず口をつく。
「正解。」
意外そうな声が頭の後ろから聞こえる。
学生風情に、名を呼ばれるとは思わなかったのだろう。
同時にゴリ、
と重い重量が後頭部を圧迫する。マジもんの拳銃だ。躊躇なく引き金にかかる指の動きが伝わり、心底キモが冷える。
「おや、おやおやおや。」
スッと圧力が消える。
「ここに入ってくる以上、能力者と警戒してましたが、、、あなたでしたか。」
男が屈む気配がする。
「イブのマスター。」
ささやく、男
ジワリと冷たい汗が噴き出る。
「運びなさい。丁重にな。」
ゾロゾロと続く無言の男達にワゴンに放りこまれるしん。
とりあえず殺すつもりはないようなので文句の一つもわめこうとする少年だが、察したように口も呪符で封じられる。
「フガーフガーーーー!!」
ひどい連中だ。
ナビシートに座り、すぐ後ろで、もがく白衣の少年を眺めながら笑う李。
「フフフ、どういうわけか、今日は最悪の易だったんですが、そうでもないようです。」
あら、マジで占いすんだ。コイツ
「フガ。」
李を見ようともがくが、うまくいかない。
「おめでとう。最高の切り札が手に入ったよ。」
なんとか、糸のような左目が薄く光るのが見えた。背筋が凍りつく小年。それは、彼の知らない人外の底のない裂け目のようだった。
また、来週。




