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能力アフター  作者: 佐藤同じ
33/55

能力アフター04話06

あくO神官の

こころが、落ちないー(T ^ T)

なんやかで、白衣の少年達が、やっとこさ、目的の7階建、角ビルに到着する。

その2階に着いた野川那智は、あからさまに引きつった顔をしている。

失礼なヤツだ。

明るい店内は、白を基調に、落ち着いた青が要所をしめ、ピンクの装飾がきらびやかに室内を飾る。


「いらっしゃいませ!ご主人様。お嬢様。」

白に黒とグレーのさまざまなバージョンの制服を着た、猫耳メイド達が、華やかにお迎えをしてくれる。

「ウハハハハハ!」

バサ、

白衣をはためかせ、大笑いのしん。

「見よ!ここが、古今東西、男の夢!理想なる楽園!遙かなるシャングリラ!それがメイド喫茶だ!戦い疲れた魂の休息場!ネコミミが!ミニスカメイド服が!もっちりな絶対領域が戦士のハートを癒やしてくれるのだ!!」

「ハイハイ、、、、」

疲れたように聞き流す那智


「しんはメイド好き、、、、」

何やら小さなメモ帳にメモりだすリン

「いいかリン!スカートの丈と絶対領域と膝上ソックスの比率は4対1対2.5だ!これが

奇跡の黄金比と呼ばれ、、、」

「4:1:2.5、、、、」

まじめに書き込んでいる相棒。

「リン!!」

泣きそうな、那智。


「おーい。しん!」

騒いでいる一同に奥から声がかかる。

見るとそこに、思いがけない人物がいる。

「な、、、」

硬直する那智。


フワリとした、ブラウンのロングソバージュ。

長身の美人。モデル然とした、学園の校医。保険の先生、那智の姉貴。野川智由だ。

彼女はしんの超研部(仮)の顧問も引き受けてくれている。


今は私服で、だいぶ、くつろいでいる。テーブルのグラスの赤い液体はワインのようだ。


「ち、、、、智由姉?」

固まってる那智。

「ち〜〜〜す。ちーせんせー。」

ガタガタと隣りに腰掛ける白衣の少年。

「ダメダメ。外じゃ智由って呼んでって言ったでしょお〜」

彼のアゴに指を伸ばしフワリと顔を寄せる美人校医。

かすかにアルコールの匂いがする。かなりできあがってるようだ。とても色っぽい。

「ち、、、智由さん!お待たせせてました〜!」

顔をゆるませて変な返答を返す少年。


「何、やってるの!智由姉!!」

二人を引き離す那智。

ガタガタと二人の間にイスを持ち込もうとしている。

仕方がないのでしんは、智由の正面に移動する。


1テーブル4人で囲む形なので、イブとリン、紫煙、友樹達は隣りのテーブルだ。


ここでやっと、メイドさん達が注文を聞きに来てくれる。

一同が入って来た時、彼女達は一瞬、手を止めていた。


ライトブラウンのセミロングの美少女、及びプラチナショートボブの無表情な少女。そして、サラサラのアッシュブラウン、さらに碧眼の人形のような少女がそろってゾロゾロとやって来たのだ。

可愛いの探求者である、彼女達にはそのダイヤの原石のような輝きが、痛いほどわかるのだ。どこかの、アイドルグループと思っても仕方がない。

とはいえ、彼女達もプロである。

すぐにいつも通りのサービスを展開する。


「おいしくな〜〜れ。もえもえキュン♡」

那智のドリンクに魔法をかける、ココアちゃん。

「もえもえ、、、、、」

ひきつったままの那智。ほんとに失礼なヤツだ。


「もえもえキュン♡キュン♡」

ノリノリでココアちゃんと合体詠唱を唱えるしん。ジト〜と那智が見ているのだが、すぐにムッとした表情になる。


ココアちゃんがそっと、少年の耳元に手をそえる。ナイショバナシだ。


「お安くないにゃ〜〜しん。どこの美少女たちだい?」

小柄な、青いメイド服の彼女は、ここのナンバーワンだ。


「フハハハハハ!おどろけ!みなオレのヨメたちだ!」

「にゃにおお〜〜〜うらやまし〜〜〜〜〜。」

ノリのいい子である。


「ここで働いてくれにゃいかにゃ〜〜〜」

どうやら、スカウトらしい。


紫煙は論外として、リンの接客など想像がつかない。那智は物理的に店を潰しそうだし。

まともにできそうなのはイブくらいだろう。


「無理じゃね、」

腕を組むしん。

「そうか〜〜〜三割は売上、上がりそうにゃのににゃん〜〜〜残念。」

悔しそうな彼女。たまに、やたら大人びた表情をうかべる美人メイド。

実年齢は何歳なのだろう。 

いや、ネコミミメイドさんに年齢などないのだけども。


突然、ドコドコと音楽がスタートする。

「なに?」

キョロキョロと那智。

店内の照明が目まぐるしく乱舞を始める。

「待ってました〜〜〜〜〜!!」

大喜びのしん。

「ひゅ〜〜〜〜!」

すかさず立ち上がる友樹。


店内のステージにココアちゃんが立ち、周りの二人がバックダンサーを務め、アニソンライブが始まる。

「、、、、、、、、、、」

あきらめたように沈黙する那智。


パパパン、パパパン、

「ハイハイハイハイ!ヒューーー!」

いつの間にかペンライトを持ち、一糸乱れぬ間の手を入れる、しんと友樹。

ステージのダンスはともかく、彼ら観客の動きがとても気持ちが悪い。

もうほっとく事にした那智。


「それで、なんなの?今日は?」

智由姉に話しかけるのだが、かなり大声でなければ聞こえない。

「ほら〜〜ウチのパソコン壊れちゃったじゃない。山下君に相談したら、そんな古いの直しても無駄。新しのにしなさいって言うから〜〜〜」

ああ、なるほど、と頭をかかえる那智。

それにしても酒くさい。何杯飲んだんだこの人は。


「選んでもらおうとおもてぇ〜〜〜ヒック。」

「智由姉、、、、人選ミスだと思うよ、、、、多分。」

「なんでぇ〜〜〜〜どうして〜〜〜〜」

「ああ!もーーーーーー!!」

絡む姉貴を振りほどく那智。けっこう、酒癖が悪い姉だ。


気がつくと、隣りのテーブルの紫煙とリンは黙々とケーキを食べているが、イブは、楽しそうに手拍子をして歌っている。好きなアニメか何かなのだろうか。

なんか、ホッコリする。

まあ、こんな日もあっていいのかもしれない。


「ああ、いい汗かいたぜ!」

なにやら一仕事したような、白衣の少年が戻ってくる。

「ウシ!上に行くぞ!」

「上?」

また何を言い出すんだ、コイツは、という怪訝な顔をする那智。


「ウハハハハハ!驚け!ここのメイド喫茶は3階のパソコン店も経営しているのだ!」

なんとも脈絡のない兼業だが、この街らしいと言えば、そうなのかもしれない。

「ハイハイ。智由姉。立って!」

「那智〜〜〜オンブ〜〜〜」

大の大人がしなだれかかってくる。


ゴキ、

鈍い音を立ててゲンコツが炸裂する。

容赦無いな、この女。

アングリと口を開ける白衣の少年。


「しん〜〜〜〜那智がぶった〜〜〜〜」

しぶしぶ、上着とバックを持って歩き出す智由。きぜんとした先生の面影が全くない。

これはこれで、可愛いのだが。


「主どの。」

イブがデカいイチゴパフェをつついている。

「なんだーまだ食ってんのか〜」

「うむ、」

「ほら、イブ。」

紫煙が甲斐甲斐しくイブの頬に付いたクリームを拭いている。


「まあ、ゆっくりしてろ。後で上がってこいよ。」

立ち去ろうとする少年。

どうやら、友樹もジュースを飲んで小休止らしい。このもやしっ子め。


素早く紫煙に耳打ちする。

「イブ、頼んだぞ。」

「言われなくても。」

紫煙が付いていれば大丈夫だろう。


「あ、主どの、、、、」

「なんだ?」

ふと、違和感を感じるしん。


彼女にしか聞こえないアダムの声が執拗に話しかける。

(わかっているはずだ、、、、イブ。)


それは呪いのように、彼女を呪縛していく。

(各国の情報部隊が動いている。この国ではどちらにしても、どこに隠れていても、お前の安全はない。)


心がえぐられていく。

(最初からわかっていたはずだ。お前の周りにも危害が及ぶ可能性も皆無ではない。この国を離れるしかないのだ。)


心が底無しに沈んでいく。

(我々の元に来い。他に選択肢は無いはずだ、、、、イブ。)


闇の底は深く終わりは見えない。


しかし彼女は間違えを選ぶことはない。

(了承した。アダム。そちらへ向かう。)


「しばし、、、、さよならじゃ。主どの。」

アッシュブロンドの少女は、西陽の中、幻のように笑っていた。


「お、おう。じゃあな。」

変なヤツと思う白衣の少年。彼は気付かない。気付けない。

彼の姿が自動ドアに消えるまで。彼女は瞬きもせず見つめていた。


3階に上がると、そこは、黒く塗装された、むき出しの天井にパイプが走り配管の見える、しかし、オシャレにライティングされた、所狭しとパソコン、ソフトウェア、パーツが圧迫陳列された、隠れ家のような空間だった。


その中で巨大な本棚の半分くらいの筐体が、LEDで明滅している。

そこへ、野川姉妹および、リンを引き連れる白衣の少年。


「ウハハハハハ!見よ!GPGPUをつなげ、安価ながらT FLOPS級の性能を獲得した喫茶EA特製フラッグシップマシーン!ΩZZZタイタン号だ!!ココアちゃんのラブ注入で、5年間の補償付きだ!!」

大笑いのしん。

「もえもえキュン♡」

どうやら、ここの店員を兼ねてるらしい、さっきの小柄な青いメイドが魔法をかけている。


「待てぇえええいぃ!!」

絶叫する那智。高血圧で血管が切れそうである。

「こんなもんで、あんた、私らに何やらそーーーーってんだ!!」

いや、ちょっと落ち着けよお前。

「ウハハハハハ!脊髄にプラグぶっ刺して、超ヘビーなインプラント3Dバーチャルゲーム?」

「やぁあらららああああんんわぁあああああああああああ!!」

とてもうるさい。

ゼイゼイ過呼吸になっている炎姫さま。


「ウチは、ネットとメールが出来ればいいの!なぁに考えてンのよ!あんた!きゃーーーーかっ!!却下よ!冗談じゃないわ!!」


とても信じられない。何を言ってるんだ。この不信心者は〜〜〜〜〜

「な、なななな、なんで〜〜〜〜〜〜ウソだろ〜〜〜〜夢のメニーコアだぞ〜〜〜」

泣きそうな少年。

「イヤな予感があたったわ!危ないったらありゃしない〜〜〜!」

人選ミスもいいとこだ。さしもの姉貴も、こんなもの買うとは言わないだろうけど、、、、

「あ、、、あれ?智由姉?」

ゾクリ、

とイヤな予感がする。いつの間にか姉の姿が消えている。

「ち、、、智由姉!」

見るとむこうの方で何かやっている。


「智由姉!何やってるの?」

「ウフフフフ。那智〜〜〜〜ほら〜〜〜〜」

恍惚の表情の姉貴が、何か丸い物を突いている。


それはお皿のような台座の上でユラユラと揺れるバスケットボールくらいの白い球体だ。

上部に二つパタパタと蓋が開き、中央から口が開き、目もついている。


「智由。元気カ。ハロー。元気カ。那智ー。」

馴れ馴れしく人の名前を呼んでいる。

「な、、、、なによ。コイツ、、、」

さすがにたじろぐ那智。

「ハローハロー。」

パタパタと揺れる球体。

「きゃあ〜〜〜〜〜〜♡」

受けまくる智由。


「パソコン、、、なの?」

よくよく見ると開くと中にモニターとキーボードが見える。


「あいさつ、ハロー君ですぅ。IOT対応で全家電操作もしてくれますし、普通のパソコンとしても使えますよ!」

すかさずセールスするココアちゃん。


「ぐぬぬ、、、、」

唸るしん。

このお姉さんは、いつの間にやら、彼女たちのデータをコイツにインプットしていたらしい。顧客のニーズを読み取り、先回りして需要を生む。中々の手際である。


「お姉ちゃん、コレにする!絶対コレ!!」

我が子のように抱きしめる智由。うらやましい。


電源はワイヤレスのようだ。重さも軽量。強度も確保されてるようだ。

サッカーやバスケをやったらさすがに壊れるだろうが。

しかし!しかしだ!タイピングは絶対やりにくいハズなのだ!


「ま、、、、まあ、いいけど、、、、」

なぜか、OKを出す炎姫さま。

なんでだ〜〜〜〜〜〜〜!!

「ありがとうございますーーーー♡」

にこやかにココアちゃん。


「ま、、、、負けた、、、、、」

ガックリとヒザを落とす白衣の少年。

市場経済主義にロマンが打ち負かされた日である。


「ジャスミン。ライム。手続きお願いにゃん。」

後輩たちに後を任せる。

そして、思い出したように那智たちに、

「あ、名前付けてあげてくださいね〜」


と手を振り、しんに目配せをする、ネコミミメイド。

釈然としないがしぶしぶ立ち上がる少年。


「名前はセバスチャンちゃんね!」

「え〜〜〜」


むこうの方で野川姉妹が揉めている。

リンはバカでかいモニターで落ちゲーを披露し、ギャラリーを沸かせている。


店の奥から、ゴロゴロと大きなキャリーケースを持ってくるココアちゃん。

「ハイ、預かり物にゃん。」

「サンキュー助かったよ。」

着替え、生活用品、パソコンガジェットなどが放り込まれている。


少しさみしそうな、ココア。

「本当に行くにょか。しん。」

たまに、疲れた中間管理職のような表情を見せる彼女。


「匿名希望も寂しがるにゃん。」

彼女は、オレの天宮四高の変態仲間、匿名希望とも知り合いらしい。

寂しがると言うのもおかしな話だ。

オレはリアルで匿名希望にはあった事はない。


「色々とな、情報機関が動いてる。アルカにはグールまで潜入してる始末だ。さすがにやばすぎる。親父のつてで、海外にイブと高飛びだ。」

「うん。」

仕方なさそうにうなづくココア


「学園が楽しそうなイブにはかわいそうだけどな。」

彼女は実質1日しか登校ができなかった事になる。


「君は後悔はしにゃいのか?学校も友達もさ。」

目を伏せるココア。

「なんでだ?イブの安全には変えられんだろ。」

心底意外そうに答えるしん。


「そうにゃにゃ。気をつけるにゃん。しん。」

にゃんにゃんとしんみりとした雰囲気におそろしく合わない。


制定部隊、警察四課にCIAやらの情報を流したのは、しんと匿名希望である。

イブの危険な立場を誰よりも把握していたのも彼である。


色々やってはみたが、万策尽きて、とりあえず、イブと二人、逃避行を選んだ白衣の少年だった。


「心配すんなよ。オレが全力、全振りして、逃げるんだ。マヌケな情報機関ごときが足あと辿れるもんかっての。」

最後まで、強気な少年だった。


彼女には、それが彼には似合わないと思う。

もっと何か手は無いのかと思う。

もっとみっともなく、あがいてみるべきだとも、

しかし、同時に理解もしている。


世界は恐ろしく過酷なモノだ。


「落ち着いたら、連絡してにゃん。」

疲れたように笑う。

「もちろん。暑中見舞い出すよ。じゃあな。」


もちろんウソだろう。

彼が本気で雲隠れしたら、"匿名希望“でさえ、行方は探れないかもしれない。


店のバックヤードに消えようとする白衣の少年。


しかし、それでも、彼は遅すぎたのだ。


間に合いはしなかったのだ。


「しん、、、、、!!しん!!」

真っ青になって紫煙が店内に駆け込んでくる。


「イブが、、、、、イブがいなくなった!!」


夕暮れが、秋葉原の街の影を長く伸ばす。

また来週。

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