能力アフター04話02
かぶり物が
凄い
面白いです。
アメリカ、テネシー州、オークリッジ国立研究所、17:00
総合管理練のシャッターを上げる、痩身の金髪の美女。
研究所、所長、テレスティア•マーレイだ。
絞り抜かれた肉体の体脂肪率は、一流アスリートに迫る数値を保つ。
革ジャン、革パンツ、グラサン、咥えタバコ(※電子タバコ)のワイルドっぽい格好だ。
無造作に下げたバックには、着替えやウージー、ハンドガン、銃弾が放り込んである。
管理練、整備区には彼女の大型車両、ハマーH1,6•5Lターボ、ディーゼルワゴンの姿が見える。軍用車両を乗用車にした、化け物のような車だ。
ナビシートにバックを放り投げ、戦闘機のコックピットのような、計器に囲まれたドライビングシートに滑り込む。
サイド部分に設置された、キーボードを操作すると、鈍い音を立てて後部ラゲッジスペースに置かれた灰色のコンテナカプセルが起動する。
カプセルに設置されたモニターの波が息を吹き返したように、反応を見せ始め、起伏を徐々に大きくしていく。
それは、人間のバイタルサインに似通った曲線を描いていく。
中の物が目を覚ましたのだ。
巨大な棺桶のような、それは、白い冷気を吐き出しながら、上部がゆっくり観音開きに開いていった。
無骨な手のひらが、棺桶のヘリを掴み、口をへの字に曲げた影が上半身を起こす。
その大男は、構成するパーツの全てが、荒く、ゴツゴツとした分厚い筋肉でできており、問答無用の戦闘力を周囲に発散している。
面白そうに、後部ラゲッジスペースを見ながら、テレスティアが笑う。
「どう、アダム?その戦闘用ボディは?」
大男はうめく。
「フガ、」
大変不服そうに、口をへの字に曲げている。
今、月の量子コンピュータのアダムが制御しているのは、第4世代の戦闘用アンドロイドの試作品だ。
世の中が、やっと第3世代アンドロイドの実用化にメドをつけている頃、軍ではもう第4世代の軍用モデルが開発されていた。これは、そのコンペに出品されたものの一つだ。
開発部門のコネで回してもらえたものだ。
人工皮膚に覆われ、見た目は人間と区別がつかない。
アダムとの接続が絶たれても、ある程度のスタンドアローンの行動も可能だ。
彼女とおそろいの、革ジャン姿の大男はハマーH1を揺らしながら、バックをどかし、テレスティアの隣へ移動する。
「バルカンは問題ない?」
彼女の問いに答えるよう、左手を変形させるアダム。
凶々しい、6本の銃身をもつ、電動ガトリングガンが姿を現す。毎分6000発の発射速度を誇るM134だ。製造ナンバーTー900の兵装の一つだ。
サングラスの大男が笑う。
そのサングラスが赤い立体スクリーンを映し出す。
[しかし、なぜこいつは、音声回路が不完全なのです?お袋のチェリーパイを食わされる気分だぜ。]
テキストが表示される。
「フガ、フガフガ、」
不平タラタラに奇声をあげるアダム。
急な配備に、調整が不十分だったのもあるが、これは、普段アダムの屁理屈、無駄口に閉口したテレスティアの嫌がらせであった。
「うっさい!別に支障ないでしょ。」
なんとか、表情を引き締めて、エンジンをかける。
1,700rpmのパワーが3•6トンの車体を凶悪に加速させる。
「さあ行くよ!私たちのイブを取り返しに!!」
ノックスビル、TN空港から一路、日本、東アルカへ。
白いハマーH1がハイウェイを疾走する。
翌日、
日本、午前7:00
東京湾の人工島、東アルカのやや南より、
オフィス街と商業区域の境にある、5200平方メートルのハドリアの豪邸にて、
ひとり、優雅に朝食をたしなむ、この人工島の支配者、ハドリア・S・フィールズ。
高級アンティークに囲まれ、ゴシック調のトレーサリーに飾られた窓辺からさす淡い朝日が優しく部屋を満たしている。
ブレックファーストのメニューはサーモンがメインのノルウェー風の料理だ。
サラダには、ホワイトアンチョビと、ドライクランベリーが添えられた、ケールたっぷりのシーザーサラダが用意されている。
一流専属シェフの繊細かつ芳醇な味を、ゆっくり、楽しめるのはなかなかに、貴重なひとときであろう。
「失礼します。」
そこへ、ドアをノックして小柄な、彼の美人秘書が入って来る。
「ハドリア様。テレスティア所長が、先日、アメリカを出立し、日本へ向かっているようです。」
ブハアッッ、
ノルウェー風サーモンを吹き出す、ハドリア。
ゲホゲホと激しくむせる。
「そ、そ、それは、マズイんじゃ、、、、いや、まあ、突然だな、ハハハハ、」
赤くなったり青くなったり、冷や汗を流している、長身の男。
そうとう、あの所長が苦手らしい。
挙動不審に立ち上がり、熊のようにウロウロしている。
何があったかわからないが、直接会ったら、大変な事になるようだ。
「予定を変更する!」
引きつった笑いを、顔にへばり付け、指示を出す。声が裏返っている。
「わ、私は、USアルカの記念式典に急遽参加する事にする!葵を呼んでくれ!」
小柄な美人秘書は、特に気にしたようでもなく、彼の意を汲む。
「わかりました。テレスティア所長には、葵さんについてもらいます。」
「あ、ああ。」
たまに察しが良すぎるような女性だ。テレパスではないだろうが。
「すぐに自家用ジェットの用意を。スケジュールの調整、頼むぞ。」
「はい、」
先を行くハドリアに沈滞なく追従する。
ブワサッ、
謎の白いマントをひるがえす、ハドリア
「ナーブ、制定部隊には警戒を厳に。油断するなと、徹底させてくれ。」
思い出したように指示する。
「アルカに入り込んだ、各国の情報局員たちの事ですね、」
後を受ける秘書。
(そうだ。向こうの関係筋に圧力をかけておくか。うむ、別に、あの、おっかさんが怖くて日本を出るのではない!)
「ウハハハハハ!では、行こう!」
気を取り直し、一路、成田からアメリカへ。テレスティアと入れ替わりに日本を立つハドリア。
虚空を横断する、飛行機雲に彼の笑い声が溶けていく。
その翌日、朝。
川崎、7号土手、山下邸。
白を基調に、黒の家具で統一された2階の6畳、少年の部屋は、意外なほど整理整頓され、片付いていた。
世話好きのお隣さんの監視、アンド指導の賜物であろう。
本人は、多少煩わしく思っているようだが、額を地面に擦り付けて、感謝すべきだろう。
ベッドのサイドテーブルに置いた、携帯がアラームを鳴らす。
目覚ましにかけておいたものだが、夜更かしをした少年は、すんなりとは起きられない。
なにやら、意味不明なうめき声を上げながら、ジタバタと止めようするのだが、一向に上手くいかない。
となりに、身に覚えのない障害物が存在していた。
ムニュ。
右手に、えも言われぬ、やわらかな感触が。
本能のおも向くまま、モミモミしながら、やっとこさ頭に血が巡り始めたようだ。
まるで、ビスクドールの様な、一糸まとわぬ、美しい白磁の裸体。
その発達途上の胸の柔らかな双丘がの一つが、彼の手により、さまざまな変形を見せていた。
「おおおおおおおおおおおおおっっ!!何だっ!イイイ、イブかっ!!」
何だも何もないだろう。
一瞬の躊躇もなく、彼女に体重がかからないよう、上に覆い被さる少年。右手の動きは止まるどころか、加速している。
どうやら、彼が寝ている間に、イブがベッドに侵入していたらしい。
「おはよう、主どの。しとねを共にするのは、夫婦なら、当然の、事じゃ、からの。」
彼の下で、妖しく身悶えする少女。蒸気した吐息が、声がかすれる。
愛おしむように、彼の顔を包むイブの両手。
「イイイイイ、イブーーーーーーーーー!!!」
蓄積され、圧迫され、決壊するダムのように、エロの本能の洪水のまま、生まれてまだ、0歳の少女を襲い出す、少年。倫理的にも常識的にもタブー、アウトであろう。
「ししし、しんぼーーーーたまらんんーーーーーー!!」
「ああ、、、あるじ、、、どの、、、」
彼の触れる場所、すべてが、痺れる感電のような、細胞のひとつひとつがスパークするような刺激を与える。めくるめく快感が、脳内を駆け巡っていく。
大脳内、下垂体前葉から放出されたエンドルフィンは、中脳腹側被蓋野に作用し、ドーパミンを遊離、促進させ、その全てを分析、解析する少女を余裕なく追い立てていく。
「わ、わらわは、、怖いのじゃ、、、主どの、、、」
必死の問いかけに、わずかに理性を取り戻す少年。
「集積回路と、、、人を模したプログラム、、、、それが造られた器に在るのが、妾じゃ、、、、そんな虚ろな存在が、人と言えるのか、、、、」
「フフン、ぶぁかだな。お前は。」
再び、せっせと行為に戻る変態。
「虚じゃない人生を送れる人間が、一体どれだけいるってんだ。それが、人じゃないってんなら、世の中真っ暗闇だ。まあ、悩むだけ無駄ってもんだ。イブ。」
どうも、まともに答える気はないようだ。熱に侵されるように、女体の探求に没頭する少年。
「論点、、、ズレておる、、、、ずるい、、、主どの、、、あっ、、、」
月の巨大量子コンピュータが身動ぎしたようだった。
刹那の触れ合いに全部、委ねてしまいたかった。
ただ抱いて欲しい。強く。もっと強く。
「にょほほほほ〜〜〜」
奇声を上げ、あまりに無防備な少女の下半身に愛撫を移そうとする少年。
「なああああにぃぃぃおぉしておるかあああああーーーーーーーーーーーーっ!!!」
絶叫と共に大質量の水流が、濁流の如く6畳間を押し流す。
グワゴッッガアアア、
バキバキ、
ズワアアア、
空間から瞬時にかき集められた水流は、10トンを越え、500キロジュールを越えるエネルギーで正確に少女にのしかかる、変態を吹き飛ばし、ベランダをぶち抜き、遠い彼方へ押し流す。
「こおおおのっ!バカーーーーーーーーーーー!!」
私服姿、ポニテに緑のリボン。前髪で表情の分かりにくい、お隣の地味子さん。
天候操作能力、AAクラス、みず希しずく、である。
分かりにくいと言っても、今に限っては、おだやかな彼女らしからぬ、怒髪天を突く激昂状態だ。
とても怖い。
ゴオー、
扇状のリビングの3人掛けソファーに腰掛けたイブがしずくに髪をドライヤーで乾かされている。
直撃はしなかったものの、大量の水しぶきを浴びたイブを、お風呂に入れて乾かしているのだ。
Tシャツとジャージ姿ではあるが、愛らしさは少しも損なわれていない。美少女と言うのはこう言うのを言うのだろう。
ため息が出そうなしずくであった。うらやましいらしい。
「あ、あのぅ、、、しずく?しずく、、、さん?」
ポタポタと髪の毛から、水滴をたらしながら、トランクス一丁の変態が、フローリングに正座させられている。
2階からお隣のしずくの家付近まで、濁流に押し流された、山下しんである。
その割に、とくにケガもなくピンピンしている。
「うるさい。」
ジロリと睨みつける、地味子さん。
「ぴゃい!」
濡れねずみの少年が、ガチガチと縮こまる。少女の背景に夜叉の鬼面がやどる。彼女は本気で怒らせてはいけない一人なのだ。
「君は何をやっているのかな?何をやってるのかな!?」
怒りのオーラが物理的圧力を持って、少年を押し潰す。
「信じられない!信じられない!信じられない!!」
「ご、ごめんなさいーーーーーーー!!」
これは、あかん、とゴリゴリとフローリングに額をこすり付ける少年。
会心の土下座だが、一向に効果がない。
「しん!あなたって人は、、、、14歳の女の子を、、、実年齢は0歳を、、、、、」
ミシミシと見えない圧力が上がる。
屠殺場の豚のような悲鳴をあげる少年。
「ま、、、まぁまぁ、しずく殿、、、、」
見かねて声をかけるイブだが、
「イブちゃんもそこに正座!!」
「うううう、うむ!」
恐るべき剣幕は、分け隔てなく、アッシュブロンドの美少女にも向けられる。
ソファーとフローリングに正座させられている二人に説教するしずく。
はたから見ると奇妙な構図だが、本人たちはそれどころではない。
「イブちゃんも、いいですか!!ここにきて数日、まさかとは思ったけど、こんな事になるなら、あなたをここに置いてはおけません!」
「し、しずく殿!」
青くなるイブ
「学園には寮もあるし、うちで引き取っても構いません!」
こいつ、本気だ、、、とビビる少年。
矛先はイブに向かっている。
「学生とかそれ以前の問題です!あなたはまだまだ、未熟過ぎます!いくらすんごく頭がよかろうと、何の意味も関係もありません!!」
ヒートアップしていく地味子さん。
「男女関係のリスク、責任の意味、はっきり言ってこの男はまったくそんな事を理解していない!ケダモノ以下の変態だってことを、肝に銘じてなければならないの!」
なにやら、ひどい事を言い出す地味子さん。へこむわ〜〜。
「どんな形にしても、それらを本当に理解して、自覚して覚悟があってそうなったんなら、私だって、それは思うことはあっても、まあ、しかたが無いと思はなければ、ならないのだけど、今のままでは全然、ダメだし納得もいかないんだよイブちゃん!!」
なんだか、だんだん変な方向へ進む説教。
「う、ううむ。あいわかった。しずく殿。」
「わかってない!!」
泣きそうなイブだが、解放する気のないしずく。
男子学生がいるのだが、お構いなく、男女の性教育、女性の身体、心と身体の変化、第一次性徴、第二次性徴、妊娠と出産、性感染症の予防や避妊など克明に延々と、遅刻寸前まで、説明、説教を続ける事になった。
感情的になった彼女は、とても恐ろしい。
6月終盤にしては、肌寒い朝である。
「ぶわっくしょいぃぃぃ〜〜〜〜。」
鼻をすすりながら、カチリと玄関の門扉を開ける少年。
河原の土手の上には抜けるような青い空が広がる。
濡れねずみで放置された彼は、風邪をひく寸前である。
「説教長いんだよ!ったくよぉ〜〜〜あの地味子〜〜〜〜」
かくれて文句を言うくらいしかできない、白衣の少年。
「うむ。でも、不思議じゃの。」
袖を通したばかりの、眩しい白いセーラー服のイブが姿を現す。
天宮の四校、全般に共通しているのだが、女子は冬服はブレザーなのだが、夏服はセーラー服になる。女子には、負担になると言う意見と、可愛いいからいいだろうと言う意見に二分されている。
見てるだけの男子からしたら、一粒で二度美味しい、学園だ。
事実、長いアッシュブロンドの両サイドを黒いリボンでツーサイドアップにしたイブのセーラー服姿はまるで天使が降臨したように、愛らしい。
天宮第一北高の制服は白を基調にしている。中等部と高等部と若干デザインが違うが、大体同一と言っていい。ただ、スカートとラインの色が異なっている。
そして、白いセーラーは透けにくい生地を使用しているため、下着が透けず評判はいい。
自分の事は、棚に上げて、イブをそんな目で見る奴がいたら、目玉をくり抜いて、目玉焼きにしてやろうと決意している白衣の少年だった。
「所々、飛躍したり、矛盾していても、しずく殿の話はなぜか説得力があるの。」
不思議そうに小首をかしげるイブ。
「しずく姉の人徳ってやつだよ!」
靴をトントンやりながら、お隣から、こちらはノーマルなツインテールの紫煙が現れる。
今日は、中等部に通う紫煙が身体を担当する日らしい。
しずくと異なり、髪をアップにする紫煙は、黒い瞳がキレイな普通に美少女として通っている。
通い始めて数週間、男子たちに瞬く間にウワサになったが、中身はネジくれた凶悪なひねくれ者だ。アプローチに来る男子たちを、物理的にも精神的にもズタボロにして焼け野原を築いているらしい。
みず希しずくに突如現れた、第二人格、電撃系Aクラス、みず希紫煙。
交代に、高校と中学に通う様になったのだが、何と言っても涙を誘うのは、中等部に通っても全く違和感のない、しずくの幼児体型だろう。ドンマイ。
まあ、こいつが同じクラスなのだ。イブの初登校も安心だろう。
なにか、フラグでも立てたいのか、紫煙はジャムを塗ったトーストを咥えてモグモグしている。
「モグ、ング、ほんじゃ行こう、イブさ、、、、イ、イブ!」
紫煙はまだ、イブに敬語を使うのを中々改められないようだ。コイツが、緊張して、しゃちこばるさまは、見ていて面白さを通り越して不気味ですらある。
「う、うむ、、、あ、主どの、、、」
なにかモジモジしているイブ。
「?」
「ど、、、どうかの。主どの。」
片手で、セーラーの裾をもって赤くなっている。
なんたる失態!万死に値する!初登校、初制服のインプレッションがまだだったのだ。
確かに少年らしからぬ話だ。レディに対して何というマナー違反か。
すぐさまビシリと親指を立てる、しん。
「ナイスだ!イブ!世界一可愛いーぜ!!うちの系列の女子制服は、可愛さ30%マシだ!全国制服マニア垂涎だぞ!!」
「何だそりゃ、、、モグモグ」
顔をしかめる紫煙。何かイヤな誉め方だ。
「そ、そうか!うむ!それでは登校しようかの!」
イブは気にせず嬉しいらしい。
「あ、ちょっと!イブさ、、、、イブ!待ってよ!」
ズンズン先に行くプラチナブロンドの少女。追いかける紫煙。
3人は駅に急ぐ。
何気ない1日の始まりのようだった。
また、来週。




