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能力アフター  作者: 佐藤同じ
25/55

03話09

ドラクOの日

キターーーー!

みなもから、大空を渡る風が、

彼女の絹のようなアッシュブロンドのロングヘアーを流していく。


「わらわの名は、イブじゃ。いずれ山下を名にし、悠久の時を、主人どのと歩む者じゃ。

ウフ、、、フフフフフフ。」


(なんか、笑ってる〜〜)

いやおかしいだろ。オレのイブは、こんな変なのじゃ、、、、、

〔アダムや、他のプログラムのせいで、多少パーソナリティが、、、、、〕


理事長の話が脳裏をよぎる。


変わったのだ。なんか、残念なパーソナリティに。


「永遠にやちよに、よろしくしてたもれ。」


だがしかし。世の中たいがい、思い通りになるものでは無い。

そして、彼は間違っても、据え膳を食わないと言う判断はしない。あったら、皿まで喰らい尽くす事を信条としている。


わずかに震える、イブの唇はとても柔らかかった。


白衣をひるがえして、二人が降りてくる。


友樹とクロ兄は歩道の方に退避している。

クラッシュしたワゴン車は動かせないが、数人のドライバーが停止表示器材などを配置し

救急車、警察を呼んでくれたようだ。

遠くに、パトカーのサイレンが聞こえる。


「しん!」

友樹が、親指を上げる。

ふたりとも動けないようだが、ひどいケガではなさそうだ。


「とにかく、、、よかったでござる。イブ氏、目覚めたでござるな!」

愛車、全損でも、笑う勇者、クロ兄。


「おー!なんか、ちょっと変なヤツだけどな!」

サムズアップを返す少年。

「なんじゃと!」

キュ、

後方から首を絞めてくるイブ。

ジタバタとギブアップするしん。


「まあ、キスしちまったからな!間違いなく、コイツはオレの嫁!オレのイブだ!」

高笑いの白衣の少年。

後ろで、アッシュブロンドの美少女が、赤くなって、クネクネしている。照れているらしい。


「、、、、、なに、、、、」

「でゅふう〜〜」

硬直する二人。


落ちていた携帯を拾う、しん。

再び、G棟のハドリアが現れる。


『うむ。残念だが、彼女は君に託そう!イブよ、何かあったら私に相談したまえ!

さらばだ!!』

『ちょっと!待ちなさい!!何があったの!!説明しなさい!ハドリア!!』

アメリカのテレスティアが画面に、割り込んでくる。


ハドリアは頭の痛い、事後処理に移ろうとしていた。


これは一歩間違うと、国際関係をこじらす程度ではすまない事案に、発展するだろう。

携帯を切るハドリア。


「問題は、、、、君が何を手に入れてしまったのか分かっているか、、、、だな。

しん。」


非常に楽しそうなハドリア。後ろで、生きた回線を、手当たり次第使って、テレスティアがわめく。

「説明しなさいーーーーーーーーーー!!」


川崎、七号土手、山下宅、地下。

ガシャン、

投げ捨てられるマシン インターフェイスのヘッドギア。


「クソッ!!クソ!クソ!」

アームレストを引きちぎり、叩きつける紫煙。


「山下しん、、、、、!」

原因は、あの変態がつくった、訳のわからないあのデータだ。


アダムに届かなかった。怒りの持って行き場のない彼女は、そう決めた。


まるで、子供のような、八つ当たりだ。そう、恐ろしく冷淡で残酷な躊躇のなさで。


「殺してやる、、、、、、!」

地下室のドアを叩きつけるように、一階へ向かう少女。


東京湾の埠頭、

Tの字を横に寝かしたような埋立地に、倉庫と並ぶ巨大な自動車整備工場がある。

数台の整備車両に並んで、一見するとテレビの大型中継車に見える白いトラックが止まっている。


その内部は、ぎっしり詰まった、電子機器とたくさんのモニター。EMスペクトラムの戦術展開を目的とした、電子戦車両だ。


「、、、、、、、、、」

その中で、ワカメのような黒髪を、無造作に後ろで束ねた、

長身のヒョロ長ノッポ、

どんよりとした瞳の不知火あらたが立ち尽くしている。


サブモニターから、ジノ達の悲鳴のような、連絡が続いている。


アンバーが起動した。

まったくの予想外の事態だ。下手をしたら、作戦の全ては、これで終わる。


そして、彼らの知る、アンバーTYPE01からの連絡は、途絶えたままだ。

「立夏、、、、、」

ポツリとつぶやく、あらた。


彼女は消えてしまったのだろうか。

ゴソゴソと携帯を取り出してどこかに、連絡する。


路肩にうずくまる、クロ兄の携帯が鳴る。

相手の名前を見て、無視することにする、玄岳 良夫。


「とにかく、大急ぎで家に戻らにゃなんねーんだ!悪いーがオレはいくぜ!クロ兄、友樹!」

白衣の少年が言う。自身のダメージなどどうでも良いらしい。たいした御仁でござる。色々と。なんだか、うれしくなるクロ兄。


「クロ兄殿。」

いつの間にか、アッシュブロンドの幻のような美少女が、覗き込んでいる。


「すまぬ。お主の車、壊してしまった。」

別に、彼女のせいではない。クロ兄は大人だ。

「気にしないでいいでござる。」

かっこいいぞクロ兄。


「あと、、、、、お主の車、借りて良いかの?」

奇妙なことを言う少女。

アレをどうするのか、

よく分からないが、彼女の頼まれ事を断れる男子はいないだろう。


「行くでござる。イブ氏。山下氏。リン様を頼みますぞ!」

「うむ!」

天使のように笑う少女。

「おー!」

那智、忘れてるぞと思う、しん。


「で、どーすんだ、お前。」

「任せておけ。主人どの。」


ドン、

逆さまになっているワゴン車を、ひっくり返すイブ。


ドライバー達、見物の歩行者達が目を剥く。2トンを越える重量を、華奢な少女が軽々と持ち上げたのだ。

次に彼女は、潰れた天井をベキベキと引き剥がしていく。

いや、ペーパークラフトのオモチャではないのだ。

度肝を抜かれる、ギャラリーたち。


即席のオープンカーが出来上がる。

「ゆくぞ!主人どの」

少し変形したシートを戻し、運転席に乗るイブ。

「オイ、、、大丈夫なん?これ、、、」

色々ビビりまくる少年。


「問題ない。このシャシー剛性はたしたものじゃ。」

さすが、ニッサO、脅威のメカニズム。


静かにコンソールに手を添えるイブ。

「頼むぞ。もうひと働きじゃ。」


オートパイロットが異音を立てながら、起動する。


『わかった、よ、お姉、ちゃん。がんば、って、案内、するよ。』

ぶつ切りの、ロリッコナビの音声。


「すまぬな。」

優しく笑うイブ。


「気を付けろ〜〜〜しん!」

「頼みますぞ〜〜〜イブ氏!」

二人を残し発進する、ボロボロのワゴン車。パトカーを避けながら、一路、川崎の七号土手へ。


風防の機能しないオープンカーで、高速を走るもんじゃないと思う少年。

ジェットコースター気分でアクアラインの、海底トンネルを、突っ走る。


「とにかく、状況確認が最優先だ!」

風切り音が大きく、結構、大声を出さなければならない。

「那智殿とリン殿の、安否確認じゃな!」

ハンドルを握るイブ。

運転できんのか、こいつ。


「ああ!場合によっちゃあ、四課か、制定部隊に連絡する!」

あの二人以上の敵を想定した場合、そうするしかない。

それでも、足りないだろう。そもそも、想定がありえないのだ。彼が行ったとしても何もならないかもしれない。

が、一切合切の躊躇、迷いは無い。細心の注意を拝し、最善の行動を選択していくしかない。


「な、、、、、、?」

その時、カレの携帯が、着信する。


野川那智からだ。


「那智!おい!大丈夫か!?」

叫ぶ、白衣の少年。


『助けて!しん! リンが大変なの!』


「たす、、、、、」

訳の分からない、違和感が、少年を襲うがそれどころじゃない。


「待ってろ!すぐ行くから!!おい、、、、那智!!」

プツン、

突然、携帯が切れる。


「クソ!切れやがった!」


おかしい。

逆は、幾らでもあり得ても、彼女が、彼に助けを求める事など、まずないだろう。


とりあえず、無事のようだが、嫌な予感がする。

と言って、迷っている暇もない。


ボロボロのワゴン車は、帰宅ルートの最速ラップを叩き出しながら、少年の家に到着しようとしていた。


「、、、、、、、、」

山下宅、リビングで携帯を手に、呆然としている那智。


「驚いた?ネェ、驚いた?」

隣りのシングルソファーから、楽しそうに覗きこむ黒髪、ツインテの紫煙。


「ただのマヒじゃないんだよ。私って、人間の脳も、ハックして操れんの。スキを上手くつけばAクラスでもね。」

彼女は、テレパスの干渉を受け付けない、Aクラスの精神パルス層を突破して干渉、操る事が可能らしい。

サイコジャックされた相手は、催眠とは違い、意識を残したまま身体の自由を奪われる。


実際、那智は、思考、五感はそのままに、自分の意識とは全く関係なく、携帯で山下しんと話していた。

自らの意思とは関係なく、発声、聞こえる自身の声は、とても気味が悪い。


「さあ立って!迎えに行こう。」

ニコニコと笑う少女。

なんの抵抗もなく、従う自身の身体。

「そんで、あの変態。サクッと殺しちゃって。ほら、ボンってサ!アハハハハハ。」


総毛立つ、那智。何を言ってるのか。しずく!いや、紫煙だったか?

訳がわからない少女。もうひとつの人格って、一体なんだそれ!冗談ならやめてほしかった。

このままだと、ホントに自分は、、、


「やめ、、、、なさい、、、、」

止めたのは、シングルソファーでグッタリしている、プラチナ、ショートボブの少女だ。

意外そうに足を止める紫煙。


「彼は、、、仲間にした方が、、、、得、、、、あなたの、、、力なら、、、、」

「驚いた。まだ喋れるんだ。どういう精神強度してんの?」

原理上、紫煙の支配下になった人間は、指一本自分では動かせないはずなのだ。


それを、リンは喋ってみせている。彼女を単純なAクラス、テレパスと考えるのは危険かもしれない。


パチン、

と指を鳴らす紫煙。

「寝てなさい。すぐ、済むから。」

大脳新皮質を解離させ、意識を失わせる。いわゆる、麻酔だ。


「どう、、、して、、、、」

必死の抵抗虚しく、気絶するリン。


「アハハハハハハハハハハ!」

はじける様に笑い出す、紫煙。

「決まってんじゃん!

私は、世界に存在を知らしめたいの!私って人間、私、自信を!

今までずっっっっっと!

この、どんくさい女の中に閉じ込められてたんだ!私はみず希紫煙だ!もう、何にも縛られない!私の自由は誰にも邪魔させない!!」


何かうったえる様に、彼女を見つめる那智。

「フフフ、あの変態は、いらない。気持ち悪いもん。」

楽しげに玄関に向かう。


(そん、、、、な、、、、)

少女の胸に絶望がつのる。


「私がやってもいーけど、アンタの方が手っ取り早いでしょ。チリも残さず燃やしちゃって。最強の炎姫さん。」


カチン、

と玄関を出て、門扉を開ける紫煙。


「来た来た、車だ。早い早い。」

どんな原理かわからないが、しんの居場所を捉えている紫煙。多分、レーダーか何かだろう。

そのうちに、那智にもエンジン音が、聞こえてくる。


「さあ!迎えてあげちゃって。那智!そんで、消しちゃって!」

クスクス笑う紫煙。


道に出ようとする自分。なんの抵抗もできない。

自分の能力が、なんの問題もなく使えるのは、本能的にわかっている。多分、自分は簡単に白衣の少年を焼き尽くしてしまうだろう。


(イヤだ、、、、、イヤだ、、、、、イヤだ!)


墜落したグランドで、やっとあのバカは、私を思い出してくれた。

上空1000メートルから、落下する自分を、命がけで助けてもくれた。まあ、あのバカが原因でああなったんだけど。


親友のリンを守ったのもアイツだ。私はもう少しで彼女を吹き飛ばす所だった。

リンは、最近、ホントによく笑う。それは本当に、かけがえの無いものだ。


いくつも考え、挙げ連ねてみるも、多分、人を好きになるのに、理由はいらないのだろう。

それを、その大事なモノを、破壊すると認識した時、彼女はパニックを起こした。

とても、正常な判断ではない。衝動的な自己破壊。


ガツ、


彼女は、舌をかみ切った。


いや、正確には噛み切ろうとした。


「あれ〜〜〜〜?自殺なんて、できると思った?」

那智の舌を引き出しもてあそぶ、紫煙。

支配下の人間の行動、神経パルスの動きを正確にトレースできる彼女は、何を那智が望んだか正確に理解する。


「舌、かみ切ったくらいで、人が死ぬ訳ないじゃん。時代劇かよ。」

せせら笑う紫煙。

「大体さ、あんた、油断しすぎ。アッチのテレパスはまだマシだったけど、あんた、だらけきって、グダグダだったじゃん。

実際、マトモにやったら勝ち目、有ったかわかんなかったのにさ〜〜〜〜。」


紫煙のサイコジャックもAAA相手には、普通とてもではないが、通じないだろう。

彼女は、千載一遇のチャンスを掴んだと言える。


「ホント、こんな簡単にいくなんてさ〜〜〜〜マヌケすぎ〜〜〜や〜〜〜い。ば〜〜〜か

ば〜〜〜〜か。」

実に楽しそうな紫煙。

「ほら、泣けよ。ば〜〜〜か。」

彼女の感情をトレースし、涙腺を解放する。


ポロポロと涙を流す那智を、弄い続ける。紫煙。正視に耐えない場面と言える。


「オイ、オマエ、、、、、それ以上そいつに手を出したら、殺すぞ。」


車の音とは、別方向。後方の屋根の上からの声。

白衣の少年が、銀色の髪の少女と共に、グレーの断熱素材の屋根に、降り立つ。


「な、、、、に?」

まったく察知出来なかった、紫煙。

(し、、、、しん!?)

我が目を疑う、那智。


また来週。

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