能力アフター3話07
エンディングの
and forever、、、が、またいーのよ。
ピピ、ピピ、ピピピピピ、
枕元に置いた携帯がアラームを鳴らす。
「むにゃ、」
寝ぐせの少年が、のそのそと動き出す。
彼の携帯が小さな、少女の立体映像を浮かび上がらす。
「しん、、、、しん。起きて。おはよう。」
鈴を転がすような澄んだ美しい声だ。
「イブか、、、、、そういや、いよいよ、きょうだな、、、、楽しみ、、、だ、、、むにゃ、、、、」
また寝てしまう、少年。
立体映像の少女は、少し困ったような顔をして、少年を見つめている。
窓のカーテンから溢れる朝日は、暖かく部屋を照らしていく。
七号土手駅は、東京の最南端の駅らしい。
白衣の少年の家は、そのすぐ近くなのだが、23区内ではなく、川崎に位置している。
駅から、商店街、住宅地へ。
ゴロゴロと、キャリーケース、大きな荷物を抱えた少女二人が早朝の町を行く。
まばらな住人たちが、思わず振り向く、美少女たちだ。
ブラウンのフワリとしたセミロングの少女は、ダメージ入りのジーンズに、ダップリとしたクリーム色のニット。
プラチナのショートボブの少女は、ブラウンのベイカーパンツにトップスの黒ニットをインしたシャープなスタイルである。
不粋な大荷物を抱えてなかったら、ファッション誌から抜け出した、モデルそのものだろう。
天気は快晴。
汗ばむ季節に入ろうとしていた。
ピンポーーーーーン、
ブラウンのセミロングの少女が、インターホンを押す。反応がない。
ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、、、、、
、、、ピピピピピピピピピピピ、
連打する。
「うるさいよ!!」
ガチャリ、
と玄関が開き、白衣の少年が出てくる。Tシャツ、ジャージなのに、なぜか白衣は着ている。
「お前ら、本当に来たのか?」
若干眠そうである。
「あっったり前じゃん!」
ドカドカと荷物を置き、リビングを占拠する野川那智。
「、、、、、」
リンは無言で、大砲のような、一眼レフと、望遠鏡をセットしている。
目標は、隣のみず希家だ。
「しずくに、リンが異常を感じたんだ!絶対何かあるに決まってんじゃん!しばらく、張らしてもらうから!!」
腕を組んで宣言する、那智。テンションMAXの美少女だ。
風紀の警務から、張り込みセットまで、借り出して来ている。
昨日の今日でよく、手続きができたものだ。
「ほれ。」
ローテーブルにトントンと、ビン牛乳と、銀座、木O屋のアンパンを置く。
「張り込みなら、これだろう。」
サムズアップする少年。
「昭和かっ!」
文句を言いながら、モグモグと食べ出す少女。朝食はまだだったらしい。
那智は、三人掛け、リンは一人掛けソファーに座りパクパクとパンを食べている。
冗談で出したのだが、意外と好評らしい。
さすが、銀座、木O屋。
リクエストに答えて、パックのサラダとインスタントスープも用意する。
「あ!モゴモック!モモモグ!」
「食いながら喋んなー!」
リンのとい面のソファーで今時珍しい、紙の新聞を読み出す、少年。
「タマゴッチ、忘れた!」
ゴクゴクと牛乳を飲みながら、那智。
「なんだそりゃ。」
何世紀前のゲームだろう。久しぶりに聞いた。
「風紀の伝統だって。張り込み中に育てるの。歴代の先輩たちが育てたタマゴッチがデータベースに残ってるよ。」
張り込みセットのひとつだそうだ。
最近のはバックアップも、できるらしい。どうでもいいけど。
閑話休題、
「しずく、そういや様子が変だったな。那智、、、お前さあ、見舞いなら、直に行けよ。」
バッサバッサと、新聞をめくる少年。とても読んでるとは思えない。
「あんた、バカなの?ああ、バカだったよ!」
「なんやと!」
「どこに、菓子折りもって挨拶に行く、張り込みのデカがいるの!」
「う〜〜〜ん。」
どうも、本気で見張りをするつもりらしい。最近のJKはヒマなのだろうか。
まあ、確かに私服の彼女たちは、かなりレアだし、眼福ではあるのだが、盗撮などしたら殺されるだろうし、リターンよりリスクが高そうな二人なのだ。
それに今日は、別件の用事もある。
ピンポーン、
インターホンが鳴る。
「あ、しずくだ。」
「わああああああ!!」
カメラと望遠鏡を抱えて、右往左往する那智。とても、面白い。
「ウッソ〜〜〜友樹たちだよ〜〜。」
両手を鼻に持っていって、ヒラヒラする少年。
彼も、大抵、こりないタチらしい。
「何やってんだ?しん、、、、」
あきれる、友樹。
リビングでは、しんが、新聞のハリセンで、バシバシ、那智に叩かれている所だった。
「ほむ〜〜〜わかりますぞ〜〜〜変態紳士のご褒美プレイですな〜〜〜でゅふふふふ〜〜」
巨体をゆらす、玄岳兄もいる。
「なんなの?あんた達!」
ハアハア息を切らしている那智。激おこである。
「ほら、ハドリア統括理事が、言ってたろ。次のイブの日にバイオコンピュータのクローン少女の起動実験をやるって。それが今日なんだ。」
友樹が説明する。
「簡単に言やあ、それの見学に行ってくる!」
嫁のDVから復活する少年。
「え、、、、ちょっと、、、、」
少女を無視して、ヒョイと隣の洗面所に消えるしん。
「まあ、しっかり、張り込みやっててくれ。しずく、体調不良で今日は一日、寝てるって言ってたけどさ。」
あの後、何がしら彼女と連絡を取ったのだろう。
制服のワイシャツとズボンに着替えてくる少年。洗面所に着替えが、置いてあったらしい。
「アンバー、、、、ね。」
てきめん、不機嫌になる野川那智。頭をクシャりと掻く。
ポスン、
と一人掛けソファーに座り込む。
「帰り、、、、いつ?」
いつの間にか眼前にリンが立っている。ネクタイを整えてくれる。
「お、、、おおう!昼には戻るまする!」
キョドりながら、変な日本語を返すしん。いつの間にかエプロン姿のリン。とても可愛い。
「早く帰ってね、、、、あなた。」
この子の場合、冗談か本気かわからないトコがある。とりあえず、流れに乗ってみる。
「んじゃ、お出かけのちゅ〜〜〜〜」
スパーーーーーーーン!バシ、バシ、バシ!
那智のブーストハリセンが乱舞する。とても痛い。
「は、な、れ、ろ!!このバカ!!」
ピンクのエプロン姿のリンは壊滅的に、キュートだ。
クロ兄を引きずって、車に放り込まなければならなかった。
「いってらっしゃい、、、、、」
玄関で見送る初々しい新妻の風情だ。いや、たまりませんな。
那智は引っ込んで出てこない。
「リ、、、リン様〜〜〜〜〜〜〜!!」
クロ兄、泣きながらの出発。
白いワゴン車は一路、環八に乗り、京葉線と並行する、アルカゲートブリッジへ。
流れる街並み。風が気持ちいい、ドライブ日和だ。
「そういや、しん、お前のイブちゃんもシミュレートしてもらえるんだって?」
助手席のしんのすぐ後ろの席から、友樹がたずねる。
「おう!苦節4年!我が集大成が、ついに日の目を見るのだ!ウハハハハハハハハハ!」
大喜びの白衣の少年。
「なんでござるか?それは?」
カーナビをいじりながら、クロ兄が聞く。
「これだよ!これ!」
自慢したくてしょうがなさそうな、白衣の少年。
彼の携帯が、立体映像の少女を映し出す。
「こん、、、、に、、、ちは、、、、、」
自宅ではないので、圧倒的にマシンパワーがたりず、フリーズ気味だ。
「おお!また、懐かしい!AI彼女でござるか!」
一発でわかるのだから、クロ兄も相当な猛者だ。
AI彼女。
10年ほど前に発売された、ど、マイナーな、恋愛シミュレーションゲームだ。
ヒロインのイブの初期設定を無限に構築、作り込む事ができ、自分だけの理想の彼女がつくれるという、オタク少年、待望の夢のギャルゲーだった。
が、しかし。
「その初期設定のおかげで、ゲームが重くなり、不具合も出て、あっという間に廃盤なったゲームでござるな。まさに、知る人は知る、でござる。」
感慨深く語るクロ兄。彼もユーザーの1人だったのかも知れない。
「そう!!あのゲームこそが!我が師匠が、全、すべてのユーザーの、夢と希望をすくい取って、実現させる!奇跡の結晶だったのっだ!!」
ビシ、
と、変なポーズを決める、しん。
「師匠でござるか?」
「ハドリア理事長だよ。」
友樹が補足する。
「な、なんと!あの、御大、ゲームも作った事があったでござるか!恐るべき多才っぷり!
感服するでござる!」
『500メートル先を右だよ。お兄ちゃん。』
カーナビがロリッ子の声で告げる。
「ほむ、それをシミュレーションするとは?」
首をかしげる、巨漢。
「こいつ、その初期設定を、地球シミュレータばりのデーター量でつくったんだよ。3台のスパコン見たけど、あれでも動かせないんだと。」
肩をすくめる、友樹。
「、、、、、、、ほむ、、、、、何を言ってるのか、わからないでござるな。」
「だろ?ハハハ。」
クロ兄が思考停止を起こす。気持ちは分かる友樹だった。
スルスル、と白いワゴン車は、アルカ研究学区内、第二理科学研究所の、地下駐車場に到着する。
よっこらせ、と車から降りるクロ兄。
「では、理事長のいる、G棟、ターミナル実験室に行くのでは、無いのでござるな?」
ふうふう、と広い地下を行く巨漢。
「後で行くけどな、とりあえず、D棟のハイ、コンピューティング部門だな。アダムが正式運用のあかつきには、用済みになるだろうけど、現状、国内最高のスパコンが使える。」
スキップしそうな、白衣の少年。
「なんせイブの日だからな!どーせなら、アメリカ ウォーム ブート アプローチと師匠のイブ起動とあわせて、オレのイブも起動すんだ!」
ルンルンの少年。
「ところで、、、、、イブの日ってなんだ?」
プラプラと二人について来る、茶髪メガネが聞く。
「でゅふ、、、?」
「友樹、、、」
いまさら、何を言ってんだコイツと、二人ににらまれる友樹。
「イブの日?」
かなりのスピードのルームランナーで軽快に走る、黒髪ショートボブのエイダがたずねる。
時刻は少しさかのぼった早朝、
巨大な体育館といったスポーツジムだ。
各種の運動器具がズラリと並んでいる。
アルカのオフィス区域と商業リゾート地区の境の駅の近くある。
こんな時間でも、ソコソコ人が入っている。
「クク、アメリカさんの月の量子コンピュータ開発研究実験の日、だろ。失敗続きの。」
クロストレーナーで、ギッタンバッタンしている、黒い禿頭のジノ。
タンクトップが筋肉で、はち切れそうだ。
日本語が大分、上手くなってきている。
不知火あらたは、二人に背をむけ、ラットプルダウンを使用している。
ヒョロヒョロの腕で、かなりの負荷をこなしている。
「月のあれは、利用可能と言っても、1パーセントにも満たないお粗末な、稼働率だ。」
淡々と続けるあらた。
「なんとかしたいのも、わからなくもないが、ね。」
冷ややかな口調だ。
「厄介なのは、同時期にここのアルカのターミナルコアのテストもある。ハドリアはそれを利用して、アンバーを調べるつもりだ。」
「それ、マズくない。」
ストン、
とルームランナーから降りる、エイダ。赤いブラトップ、黒いロングタイツ、抜群のスタイルを余す事なくあらわにしている。
「問題はないさ。どちらにせよ、アンバーを調べてもらわないと困るわけだしな。それに、擬似人格は発見されても、それで、起動できるものではない。」
スムーズに器具をコントロールしながら、ジノ。
「我々は7月の式典を待つだけさ。なあ、あらた。」
ゴキン、
運動機器のプルダウンのバーが、唐突に、へし折れる。
なんの感慨もなく、立ち上がるあらた。
「あらあら、」
タオルで汗を拭きながら、苦笑するエイダ。
「楽しみですね。」
ガラス玉のような瞳の長身の痩せた青年は、笑ったような顔をした。
再び現時刻、川崎、七号土手、山下しん宅。
ポリポリと持参したお菓子を食べながら、三人掛けソファーでゴロゴロしながら、ファッション誌を読んでいる、那智。
もう機嫌は、直ったらしい。すっかり、リラックスモードに入っている。
「でも、、、、、」
1人掛けソファーの小柄な少女を見る。
「フフ、リンも中々やるわね。見張りを口実に、押しかけるなんて、、、女の戦いをわかってるわ。うん!」
どうも、彼女はしずくの様子とかは、あまり本気にしていないようだ。
「、、、、、、」
無表情なリンが、困ったように眉をしかめる。
「那智、、、、本当に油断しないで、、、、、、彼女、、、、何かある、、、」
「へいへーい。あ!そーだ!後で、アイツの部屋、ガサ入れしなきゃ!」
とんでもなく、迷惑な事を言いながら、鼻歌まじりに、雑誌をめくる。
ため息する、リン
とりあえず、ここに居れば、もしもの時の対応もできるだろうし、何もなければ、それはそれでいい。
那智の事は放っておこうと思う。
彼女は小さなタブレットで、読書をしていた。
眠くなりそうな、暖かな午前の日。静かに文字列に視線を、戻す。
カチャ、
唐突にドアが開く。
「はーーーーい♡」
ポニテのみず希しずくが、明るく笑う。
これは、異常事態だ。冬木リンはここに来てから、一瞬たりとも、警戒を解いてはいない。
彼女のテレパス網に、なんらかの妨害をしつつ、彼女は、高速移動で、室内に入って来た事になる。
しかし、しずくは、能力によるブーストムーブは苦手としている。
では、コレは誰か。
「し、、、、しず、、、、」
那智が、何か言いかけた時、
グワラガアアアアアアアッ、
凄まじい放電が、リビングルームを包む。
100万ボルトの電圧、
電流は、致死量ギリギリに抑えられている。
何かがこげる嫌な匂いが立ち込める。
「う、、、、、、」
苦しげにうめく、リン。
いつに間にか、しずくの首に、彼女の手が、掛かっている。
それを乱暴に引き剥がし、元のソファーに投げ捨てるしずく。
しずくを押さえようとしたリンだが、寸前で電撃に阻止されたのだ。一瞬の出来事である。
「おっどろいた。なんて反応速度よ。ギリギリだったじゃん。さすが、風紀委員。」
パチパチと放電を続ける少女。
緑のリボンがちぎれ、ポニテがほどけ、黒髪が生き物の様に逆立つ。
首を振って、髪を広げ、それを、静電気除去のヘアバンドで、サイドでそれぞれ結ぶ。
ああ、それは、その顔は、白衣の少年が知る優しい少女ではない。
つりあがった、凶悪な瞳、全てを嘲笑する、歪んだ笑い。
「はじめまして。最強の炎姫。野川那智。神の目を持つテレパス、冬木リン。
私は、みず希しずくのもう一つの別人格。電気使いのAクラス。そして電脳の王、
みず希 紫煙だよ。よろしく。」
「し、、、、紫煙、、、、、」
つぶやくリン
「へーーー、驚いた!」
ジロリとソファーでグッタリしているリンを覗き込む紫煙。
「まだ、しゃべれるんだ。さすがリン。」
動けない彼女のアゴを掴み、乱暴に、観察する電気使い。
(う、、、、動け、、、ない、、、、、、?)
うめく那智。
コレは普通の電撃ではない。
彼女の能力が、一切発動しないのだ。麻痺ではない。身体の支配を奪われたような、経験した事がない状態だった。
指一本動かせず、長ソファーにうつ伏せる那智。
「ま、ちょっと待ってて。お二人さん。アダムをぶっ壊して来るから!」
鼻歌交じりに地下に消えていく紫煙。
ゴウン、
と起動する、3台の青いスーパーコンピュータ。
少年の仕掛けたさまざまな、トラップを簡単に解除して、あざ笑う紫煙。
「さあ!今日こそ、世界をもらう!」
ブレイン マシン インターフェースのヘッドギアを装着し、両手に電子機器に接続された、アームレストを装着する。
しんも、こんなデバイスが父の研究室に、あるのは知らないだろう。
機械と一体化したかのような少女。
カウントダウンが始まる。
また来週。




