能力アフター3話05
モ、、、モOンジャ、可愛いよモモンOャ!
いつものように、部室練3階の部室に戻るのかと思いきや、白衣の少年は、天文部と階段を挟んだコンピュータ研究部に向かう。
彼からすると、当たり前のようについて来る、野川那智の行動がわからない。
「おい那智。なんでついて来る?」
もちろん、鼻の下をのばして喜びたいところだが、彼女の立場上、彼にとって命取りになりかねないのは事実だ。
「犯人、捕まえるんでしょ。一応、手を貸してあげるわよ。風紀委員だし!」
腕を組んで、自信満々に顔を寄せてくる。
フワリといい匂いがする。
「お、おう。」
どうにも最近、彼女の距離が近い。ドギマギを誤魔化すのが大変だ。
フランクすぎる美少女というのも、結構、困りものだ。
コンピ研のドアをノックすると、入り口が少し開き、巨大な影が現れ、小声でブツブツと話す。
「ん〜?」
何だとばかりに、また、顔を寄せて来る、那智。
コイツは、、、チューでもしてやろうか。
パチン、
とデコピンを喰らわす。
「あた!」
「ちょっと待ってろ。那智!」
スルリと室内に消えていく、白衣の少年。
「う〜〜〜。」
額を押さえて、リンと友樹をにらむ。
友樹は、肩をすくめて、手を開く。
リンは関心、無さそうに、ポツンと立っている。
しばらくすると、全員、室内に招かれる。
反対に、ゾロゾロと5〜6人の部員達が退出していく。念のための人ばらいだろう。
普通の教室を、半分にした広さの室内に、3列の机が並べられ、ズラリとノーパソ、デスクトップパソコン、モニターが並んでいる。
机は壁に一列、中央に二列がくっ付きその先頭に部長の席がある。
「げ、、、、」
思わずたじろぐ、那智。
その机の上に置いてある、デカい2台のディスクトップパソコンの表面には所せましと、半裸の美少女アニメキャラが貼られている。
いわゆる、痛パソというヤツだろう。とくに、偏見のない彼女だが、近づくのをためらわす、イヤな迫力がある。
机二つ分のスペース両側に、痛パソが鎮座し、モニターが二つ、アームにより、その上に二つ、合計四つのモニターが並ぶ。
その影に隠れて、ゴソゴソと何かやっていた大男が、姿を見せる。
「な、なんであんたが、ここにいる!」
ドン、ゴオオッ、
渦巻く熱波、ガタガタと机のパソコンが揺れる。今にも吹き飛びそうだ。
いきなり、戦闘モードに突入する那智。
「まて!まて!まて!違う!人違いだ!!」
こんな所で、ぶっ放されたら、たまったもんじゃない。必死で止める、しん。
「何が!!二高の変態、玄岳正夫でしょ!!」
「違うって!玄岳 良夫!アイツの兄貴だ!」
かつて、白衣の少年が手がけていた、アイドルJK能力者データ販売において、仲間だったひとりが、玄岳正夫。
天宮二高のビヤ樽のように太った、変態紳士だ。
天宮一〜四校の風紀は情報を共有している。犯行グループのトップは、要注意人物として、いまだ、目をつけられている。
その兄が、彼である。同じくビア樽のように太った巨漢。くろ兄だ。容姿もソックリ。那智が間違えるのも無理もない話だ。
「兄って、、、、あいつ、三年でしょ!」
「ダブってんだ。去年、脳梗塞で倒れて、生死をさまよってな。」
体型を見れば、さもありなんだ。暴飲暴食の当然の末路だろう。
「そう、、、、なんだ。紛らわしい!」
やっと落ち着く那智。能力の集中が解ける。どんだけ、ぶちのめす気満々だったのやら。
怯えきった巨漢が、冷や汗を拭う。
「コレだから、、、3次元の糞ビッチは、、、ゼイゼイ。」
ボソリとこぼす。
聞こえるか聞こえないかの小声だが、少女の聴覚は並みではない。
「あんだってぇ!!」
腕まくりする那智。もっとも、夏服に変わって、半袖なのだが。
まったく話が進まない。
間に入る白衣の少年。
「クロ兄氏!那智もやめろって!」
玄岳良夫は、見ての通りのアニメオタクだ。二次元嫁をこよなく愛し。3次元女子を徹底的に敵視する。過去に色々あったのかもしれない。そこら辺は推して知るべしだ。
「3次元の女はみんな、ダメなんだ。察してやれ!デリケートとなんだ。あれで。」
ヒソヒソと説得する。
「う〜〜〜〜〜。」
うなる少女。彼女からしたら、身に覚えのないヘイトだ。当然頭にくる。
「おでゅでゅ!リン様!!」
ここで、奇声を上げて、存在の薄かった、プラチナショートボブの少女に気がつく、クロ兄。
「さあさあ!ここに、お座りください!すぐにお飲み物をお持ちします!ゼイゼイ。」
巨体を揺らしながら、嬉々として、冬木リンを歓待する。
「おい。なんだ、あれ。」
殺意をダダ漏れにする、ブラウンのセミロングの少女。
那智とリンはどちらも、甲乙つけがたい、美少女だ。
しかし、両名の間には大きな隔たりがある。
「3次元がどーのこーの、どこ行った!」
那智が怖い。
「さっきな、協力のお礼に、リンのネコ耳データを渡したんだ。
クロ兄、狂喜してな、リンは、アイツの中では、 2•5次元の存在になったんだ。」
まあ、一般人にはよくわからない話しだろう。
依然、納得のいかなそうな那智。
これはヒソヒソ話しだが、冬木リンも聴覚はいい。
こちらに、グリンと顔を向ける。
「つまり、アイツはロリコンって訳だ!」
リンにサムズアップする、しん。本人は、誉めているつもりらし。
「いたい、いたい、いててててて!」
コマ落としのように、隣に立つリン。無言で少年の耳を引っ張っている。
まったく無表情なのが、かなり怖い。
「でゅふ、でゅふふ、山下氏!うらやまけしからんですぞ〜〜〜!リン様!!わ、私にも〜〜!」
地団駄ふむビヤ樽。
まったくもって、話が進まない。
閑話休題。
「で!なんだって、ここに来たの!」
腕を組んで仁王立ちの野川那智。
とりあえず、気を取り直した、輝くようなエネルギーを放つ少女。
「なにか、偉そうですな、、、ゼイゼイ。」
ブツブツ言うクロ兄を、那智の隣に座るリンが、にらむ。
「リ、リン様の、ご学友ですからね!わ、わかっておりまする!」
たじろぐ、ビア樽。
しかたなく、那智を許容する気になったらしいい。
後方に立つ、那智を避けて、机の右端の方に座るクロ兄。
リンに近寄ろうとするのを那智が、牽制しているせいでもあるが。
その隣に友樹が引っ張って来た、椅子に座っている。
「超研部のオレのパソコンだが、現在、証拠品として、警察に押収されている。」
かくゆう、白衣の少年は、現在、コンピ研、クロ兄部長の机のど真ん中を占拠している。
真後ろに、うさんくさそうに監視する、那智がいるわけだ。
「まあ、警察やNISCごときに、犯人が追えるとは思えねーけどな。」
繋がれたばかりの、足元のパソコンを立ち上げる少年。
「あ、、、れ?なんか見た事あるような、、、、」
つぶやく那智。4画面一杯、ゴチャゴチャとアイコンだらけの画面が現れる。
「そう、オレの部室のパソコンだよ。これ。」
画面を4分割し左上をワールドマップ、隣を近接データ
下2面を複数のプログラム、および、ソースコードが一面を埋める。
「おー4面、便利だな。」
ご満悦の少年。
「なんで?警察に偽物でも渡したの?」
当然の問いをする那智。
「クローンコンピュータだよ。定期的にクロ兄にオレのパソコンのクローンを作ってもらってたんだ。まあ、コピー、バックアップみたいなもんだ。」
キーボードをカタカタと作業に入る、しん。
「ふーん。」
なんとなく、納得する少女。
「以前、リンにパソコンぶっ壊されて、悲惨な事になったからな。その対策だ。」
「、、、、、、ごめんなさい、、、、」
後ろでリンが身を縮める。
「あんたね、いつまでもネチネチと!」
からむ那智
「言葉のアヤだって。むしろそのおかげで、こうして犯人を辿れんだ。感謝感激、雨あられ、だ。見つけた!」
どうやら、真犯人が彼のパソコンに仕掛けた細工が見つかったらしい。
「でゅふふ。中々の裏口ですな。これは、気が付かない。」
感心するビヤ樽。
「クソったれが!」
足跡を追う少年だが、予想通り、海外サーバー経由で遮断される。
「大体、なんで、いつ、誰がこんなバックドアを仕掛けられたんだよ!」
悩むしん。そういえば、以前、しずくにデータを抜かれた事があったが、これは難易度が違いすぎる。
「諦めた方がいいね。山下氏。これは、どうにもならないでござる、、、ムシャムシャ。」
おもむろに、コンビニ袋から取り出した、チョコパンケーキを食べだす大男。
クロ兄も容疑者として考えられるが、彼はクロ弟、同様、自分とは、同じ穴のムジナなのだ。色々と。
捜査協力もしてくれているし。
「う、、、、、」
確か、肥満のため、脳梗塞で倒れたって言ってなかったっけ。
ドン引きする那智。
バームクーヘンやら、マドレーヌを次々と平らげていくビヤ樽。
食事制限とか無いのだろうか。
「しゃーない。別ルートで行ってみよう。」
スルスルと、ワールドマップで追跡が始まる。
ブホッ、
とマドレーヌが吹き出る。
「だぁっ!汚な!」
飛びずさる那智。
「な、、な!ゲホッ、ゲホッ!なんでござか!山下氏!それは!!ゼイゼイ、」
激しくむせりながら、身を乗り出すクロ兄。
「汚いって!クロ兄氏!」
なんかの菓子片が飛んでくる。点々と液晶にツブが付く。
「学園のグローバルキャンパスネットに侵入して、アダムにアクセスしてんだよ。信頼度満点のネットワークだからな。かなり無理がきくんだ。って!落ち着け!」
誤嚥でチアノーゼを起こしてるビア樽の背中をバンバン叩いてやる。
天宮のグローバルキャンパスネットは、各国アルカをネットワークする専用のラインだ。あらゆる、学術機関や研究施設に繋がり、セキュリティーも、通信速度も通信量も全ての面で優遇されている専用ラインだ。
準加盟国の東アルカは、今年、7月のターミナルタワーによる、正式のアダム接続まで、そのネットワークは使用できない。
白衣の少年がやっているのは、不正アクセスという訳だ。
「デイ、デイ、ディィ、」
奇怪な呼吸音を立てながら、イスにもたれかかっているクロ兄部長。
「ありえない、、、表層どころか、アダム2層のセキュリティーを突破しなければならないはずでござる、、、、ゼイゼイ、」
冷たい汗が流れていく。こんな事はあってはならないのだ。目の前の現実を受け入れられない、玄岳兄。
「ホントに、、、、、アダムのセキュリティーを?」
立ち尽くす那智。
「だって、、、イクエちゃんだって無理だって、、、、」
思わずつぶやく。
「制定部隊のオペレーターごときと一緒にすんなって。那智。」
ニヤニヤと振り返るしん。
「な、、、、、、」
何を言って、、、、いや、なんでコイツが彼女を知っている?PMCナーブの情報を一般人が知るわけはないのだ。
「あんた、、、、ね、、、」
改めてこの少年の危険性を認識する那智。本当に野放しにして、いいのだろうか。真剣に悩んでしまう。
「イオタチームの高坂ヒロミとは同期だな。最年少隊員同士で仲が良い。どちらも優秀なオペレーターだ。」
なにやら、補足説明をしている少年。
個人情報もなにもあったものではない。
「凄い、、、、あってる、、、」
素直に肯定してしまうリン。
「リンーーーーー!!感心しないーーーーー!!」
嘆く那智。頼りの相棒がこれでは、将来を悲観してしまう。
てな事をやっているうちに、犯人の追跡はワールドマップをアチコチと巡り地球を一周しようとしていた。
のんきに、世間話をしながら、忙しくプログラムをいじっていた少年がつぶやく。
「そろそろだ。近いぞ〜〜。」
「ぼホホホ、」
なんとか気を取り直したクロ兄が身を乗り出す。
「日本じゃない?これ。」
つぶやく那智。見慣れた、弓なりの形の列島が、ズームされて行く。
「関東だな、、、」
久しぶりに会話に加わる影の薄い友樹。伊豆半島と房総半島が大きくなっていく。
「ホントに近いな。」
続けるしん。東京湾の人工島が拡大されていく。
「それた、、、、」
ポツリとつぶやくリン。
アルカから、少し外れ、川崎の多摩川沿いに。
「んーーー?」
うなるしん。
七号土手の住宅地。見覚えのある屋根の家屋がポイントされる。
「あれ、、、、オレん家だ。これ。」
アングリと口を開けるしん。
「はん!」
パンと手を打つ那智。
「なーーーんだ!やっぱ、犯人あんたじゃん!」
なぜか勝ち誇る少女。
「ははは、、、、そーーだなぁ、、、って、、、
なんだそりゃああーーーーーーーーーーーーー!!」
少年のノリツッコミが冴え渡る、放課後の天宮学園第一高。
事態は迷走を続ける。
また来週。




