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能力アフター  作者: 佐藤同じ
18/55

能力アフター3話02

ゲームの通信障害が

ツライです。

定期メンテナンスしたらいいのに。

無茶するぜ、エニOス。

6月に入り、いきなりヘソを曲げたような、曇天の雨雲の下、

午前10時20分


東京都千代田区、永田町の、内閣庁舎は、突然のパニックに襲われていた。


ビル、2階分の高さのフロアの壁一面に設置した、

60インチのモニター、縦、4面、横、9面、合計36面が一斉に、レッドアラートを発する。


内閣サイバーセキュリティーセンター(NISC)が、近年稀に見る、規模のハッキングを受けていた。

 壁の監視モニターの前面に三列に並んだ、作業用コンソールがあり、数人のオペレーター達が、必死にクラッキングの可視化、停止を試みているが、効果は全くなかった。


「あ〜〜〜こりゃあ、ダメかな。」

ボサボサ頭、無精髭の副センター長の尾形は、頭を掻きながら、次の就職口を考えていた。


アダムのバックアップが期待出来るのなら、事態は簡単だろう。

文字通り、神の如きセキュリティーだ。

実際、ハッキングは、アダム一層の壁を、依然、こえられてはいない。


問題は、今だに統合が出来ていない、この国のインフラ事情だろう。

アダム以前の、古いシステムが各省庁ごとに、けっこう残り、セキュリティーの脆弱性となっている。犯人はそこを、執拗に攻撃し情報を盗もうとしている。


いくら、超絶の量子コンピュータでも、ウエルカム状態で、ドアを開けてる、マヌケな部分を攻められたら、もしかしたら、ハッキングを許すかも知れない。


各国間に取り決められる、アダムに関する国際条約規定において、

現在、日本は評価、Bマイナスの準加盟国。


アダムの積極的利用には、厳しい制限が定められている。


「あ〜〜ミドリちゃん。センター長どうしてるかな?」

ノンビリと、長官の所在をたずねる尾形。


「先週から、海外ですよ。首相にくっついて。」

忙しく、キーボードを叩きながら、黒髪、セミロングのメガネっ子のオペレーターが答える。


「外遊好きだよね。ホント。歓迎されるもんね、バラマキ外交。」

ブツブツ愚痴りながら、彼はやっと、ハッカーの傾向、目的が分かってきた。


「ミドリちゃん〜。オークリッジに回線、繋いでちょ。」

「今、忙しいです。」

ホントに忙しそうだ。

「今度、メシ奢るからさあ。」

「奥さんに言いつけますよ。」


それでも連絡を取り次げる、メガネっ子。


男のモットーは、ワーキングシュアだった。出来ないことは丸投げしようと思う。

「ハロ〜〜〜」

変な英語で話し出す。


その少し前、

午後9時、アメリカ、テネシー州、オークリッジ国立研究所。


すでに、人もまばらな、広いラボラトリーに、ひとり、コーヒーを入れる金髪の美女がいた。

絞りに絞った肉体は、まるで、一流のアスリートだ。研究者にはとても見えない。


彼女は、テレスティア マーレイ。

アラフォーではあるが、精悍な印象はとても若々しい。

「あら、今日のブレンドはうまくいったわ。」

専用のデスクの前で、香りを楽しんでいる。


「正確には6時間と21分34秒前に飲んでいますが。」

ロボットアームの付いた、人間くらいの大きさの筐体に台車が付いた奇妙なオブジェが、彼女に近寄りながら、アームの先端をクルクル回している。


「アバウトでいいのよ。うるさいわね、アダム。」


なにが面白いのか、月面のオーパーツ、スーパー量子コンピュータの擬似人格、アダム。これは、マン マシン インターフェース、OSのソフトの様なモノだが、彼が選んだアウトプット用のデバイスが、このアームだ。


ため息する、女性。

「ポール エルデシュが言いました。科学者は、コーヒーを定理に変換するマシンである。」

やっと仕事がひと段落したのだ。

リラックスしているテレスティア。


「違いますよ。ティア。」

アームロボットが、メガネの痩せた、老数学者に変わる。

3Dの立体映像だ。

「それは、私ではない。同僚のレーニの発言だね。」

音声データがあったのか、骨格データからのシミュレーションか、エルデシュの声で語る。


「へーそうなんだ。知らなかった。」

「どちらかと言えば、私はコーヒーではなく、アンフェタミン中毒だよ。」

エキセントリックな人物像そのままに、奇怪に笑う。


「では先生。後学までに、量子ビットの最適な回路はどれですか?」

テレスティアの主の研究は、アダムの解析だが、同時に人の手による量子コンピュータの実現も手がけている。

月面の古代の超遺跡は、ほとんど正体不明のブラックボックスなのだ。人類が必死になってやっと利用できている領域はほんの1パーセント。

しかし、それだけで、世界のシステム、インフラは十分過ぎるほど管理できる。


ハード面において、世界各国の思惑も絡み、研究は中々進んではいない。


ソフト面において、あらゆるアプローチは続けられているが、残りの99パーセントの利用にはこれも繋がっていない。


天空の叡智は、柔和な英国の老紳士に、電子映像の姿を変え、答える。

「物理の原理をバーのウエイトレスに説明できないのなら、彼女ではなくその原理に問題があるのだよ。」

「ありがとう。原子物理学のお父ちゃん。」

その人物は多分、アーネスト ラザフォードだろう。


次に、変わるのは厳しい表情の丸眼鏡、エルヴィン シュレーティンガー博士だ。


「量子のもつれた状態、0または1が、0かつ1になるのは、極めて高次元的なモノに近いのじゃ。」

「非ユークリッドだって?」

顔をしかめる、テレスティア。


「そうじゃ。それをあんた達は、この世界に準じたシステム、ハード、ソフトウエアで扱おうとする。

するとどうしても、そこがシステムのボトルネックになるじゃろう。」

博士は楽しそうだ。

「そんな事いってもね。」

コーヒーがぬるくなっている。

「じゃあ、あんたの月のシステムは、何から何まで、エンタングルってんだ。」


「そうゆう事だね。」

今度はひたいの禿げ上がった、ポール ディラック博士だ。

「つまりそれが答えだよ。君達に我々の情報を伝えても、正確には理解できない。と言う事だ。」


最後に四人の博士の立体像が重複し、重ね合った奇妙な人物映像が、笑う。

「解決は、

人類のもう少し、高次元の存在へのシフトが、最低条件ではないでしょうか。」


アダムのマン マシン インターフェースを作った奴は相当な、ひねくれ者だ。

しかもユーモアのセンスも悪い。


「冗談はいいわ。アダム。

そんなの待ってたら、この宇宙、熱的、ご臨終を迎えて終わってるから。」

コーヒーを飲み干して、立ち上がるテレスティア。


「今日はこれまで。帰るわね。」


久しぶりの帰宅だ。そろそろノックビルへの道も空いてきているだろう。


その時である。

鼻歌まじりの彼女に、日本からの緊急コールが入る。


「ハロ〜〜〜〜」

変な英語の日本人が語るのは、日本のNISCがハッキングを受けて、ピンチなので、アダムの支援を受けたい。

との事だ。


「ガッッッデム!」

口汚く小さくつぶやく、金髪博士。


最悪だ。これで、貴重な休暇が潰れる。

マヌケなハッカーなど、どうと言うこともないが、準加盟の後進国に支援するには、一様不備の無いよう、政府に渡す、報告書を一通り用意しなければならない。


「なんで、コッチに回ってくんのよ!アダム!!」

本来、こんな案件は、アメリカ国家安全保障局(NSA)が請け負うべき仕事だ。


「NSAは日本の助けなど、真面目にしませんからね。

よって、ハドリアさまのツテで、こちらに連絡したのでしょう。」

ロボットアームの手が、楽しそうにクルクル回っている。


「あの紅茶の出がらしヤロウめ、、、、、いちいち面倒くさい事に!」

ハドリアを口汚なくののしる、テレスティア。

そうとう仲が悪いらしい。


「国際連携は大切ですよ。放っておけば、コチラにも被害がでます。」

大変そうにアームをジタバタしているアダム。


世界を網羅するアダムのネットワークだが、サイバー犯罪者や政府系ハッカーらは、セキュリティの弱い友好国のコンピューターや職員を利用してアメリカのシステムに侵入を試みる事がある。

今回も、そのケースらしい。日本の責任者は、それ故にコチラに事件を丸投げにするつもりらしい。まあ、正しい判断だ。なにか釈然としないが。


「いいわ、アダム。ブレイク ダウン!(ぶっ潰せ!)」

アダム使用権限において、彼女。ここの所長。テレスティア マーレイはアメリカのNASに匹敵する権限を持っていた。


とりあえずは、バカなハッカーに潰れた休暇の八つ当たりをする事に、決めたようだ。


同時刻 日本 内閣サイバーセキュリティーセンター


壁一面、36面のモニター一杯に点滅していた、レッドアラームが、消えて、一瞬の内に正常化される。

オペレーター達にどよめきが走る。アダムの介入だ。

まるで、何事もなかったように、ハッキングがブロックされ、プログラムが再構築されていく。

「こりゃ〜すげーな。」

開いた口が塞がらぬ、中年の尾形。

鎧袖一触とは、まさにコレだろう。あれだけ苦労した攻撃がいとも容易く退けられていく。


「ア、アダム!現在、犯人の特定に移っています!」

声が引きつっている、メガネっ子のミドリちゃん。異次元のオペレーションだ。無理もない。


だが、一番にその桁ハズレの脅威を味わっているいるのは、ハッキングを仕掛けた、犯人そのものだろう。


脳内のパルス信号を拾い、プログラムを構築、展開する、革新的スピード、正確さを誇るブレイン・マシン・インターフェースのヘッドギアが、悲鳴を上げる。


何百、何千と張ったダミープログラムも、ファイヤーウオールも一瞬の内に、溶かされ解体されていく。

「なんだよ!これわあぁああああ!!」

絶叫を上げる彼女。下手に神経ネットワーク接続の機器を使っていた為、凄まじい負荷が脳活動にかかる。アダムの演算の一端をモロに受信したのだ。並みの人間なら、精神破綻していただろう。

鼻血を噴きながら、回避プログラムを起動、なんとか追跡の回避に成功する。

「クソッタレめ、、、!」

鼻血を拭きながら、ヘッドギアを叩きつける。


「量子コンピュータ、アダムか、、、、」

憎しみと復讐を誓う瞳がギラギラと光る。


一方、千代田区のNISC、

「捕まえました!」

歓声を上げるミドリちゃん。

「場所は!」

ボリボリと頭をかく尾形。こっからはこっちの仕事だ。

警察は元より、市ヶ谷の自衛隊にも連絡はいっている。超国際的重大テロの犯人だ。

総力戦で叩かなければならない。


「行政特区、東アルカ!学園区内、天宮学園一高です!」

「アルカだと?」


シャレになってない。あそこには、集まれば、小国の軍隊に匹敵すると言われる能力者達がウヨウヨしている。下手をすれば、国家存亡の一大事だ。


「犯人は、、、学生のようです!使用パソコンは、超能力研究部の所有物と判定。所有者は、、、」



「山下しん、です。」

アダムがアームマシンの手首をクルクル回す。


「サ ノバ ビッチ!」

そいつが、彼女の休暇を潰したバカヤロウらしい。

憤懣やるさかないテレスティア マーレイだったが、明晰すぎる彼女の記憶には、娘の友人にそんな名前の日本人が、昔いたのを思い出す。


「まさか、、、、ね。」


つぶやく、オークリッジ国立研究所、所長。


その少し後、日本、東アルカ


ガタ、

「う、、、、あ、、、、?」

手酷く、机に足をぶつける。

少女は混乱の中、周囲を見回す。

教室の中、生徒達がそれぞれに、リラックスしながら談笑している。

もう少しで、叫び出しそうだった。


それ以前の記憶が無い。

朝起きて、家族と朝食を食べていた所までは、憶えていた。

それが、突然、天宮学園一高の教室にいる。正面の時計を見ると、どうやら、もう放課後のようだ。パニックの寸前だ。動悸が早まり、冷汗が流れていく。


「どーしたん。しずく。」

隣りの窓際、最後尾の席の、白衣の少年が、ソックリ返りながら聞いてくる。

彼女の席は最後尾、二列目だ。

「し、、、、しん、、、わ、、、私どうして、、、、?」

何と説明したらいいのか、どうなってるのか、全く、分からない。


「変なヤツ。遅刻して来たと思ったら、なんか様子が変だし。変なモン食ったか?」

ガタガタと適当に、ショルダーバッグに教科書を放り込んでいる。


「遅刻したの、、、私?」

前髪で表情がわかりにくい、黒髪ロング、ポニーテールの地味子さん。AAクラス気象コントロール能力者は、いつも以上に、挙動不審だ。


「記憶でも、無くしたか?そりゃ、人生辛いこともあるけどさ、人間、逃げてばかりじゃいけねーよ。」

よく分からない、説教を始める。

彼が、何かに気を取られて、気もそぞろなのを、直ぐに感知するしずく。

こんな時に、マトモな話など、出来はしない。

あせる少女を尻目に、適当に去っていこうとしている、少年。


「七転び八起き。ネバギバーだ!お嬢ちゃん。グッドラック!」

「ちょっと!、、、しん!」

しずくを置いて、行ってしまう。

訳もわからず、立ち尽くす少女。


これは、完全に少年の判断、選択ミスだ。事態は暗転を始める。


また来週。

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