能力アフター2話 05
血染め魔O
強すぎます。
部室練3階、超研部(仮)
部室にもどると、意外な人物に出会う事になる。
ポニテのみず希しずくとお茶している、プラチナショートボブの冬木リンだ。
「リンさん、アザ〜〜ス。」
違和感を感じながら、彼女に手をふって、次にしずくを手招きする。
「どうだった?風紀委員、何かわかった?ちょっ、、、、」
天文準備室の方へ彼女を、連れ込む。
「リン。どーしたんだ?」
小声でささやく。
「どうって、、、近い〜〜〜!!」
少年を押しのけるしずく。
大衆の面前でチュ〜した仲なのに。冷たいぜベイビー(バーチャルだけど)
「部室の前の廊下に立ってたのよ。」
「立ってたって、、、」
ネコの手も借りたそうな風紀委員に、そんなヒマがあるように、思えない。
それにリンはズルしてサボるタイプでもないだろう。
「様子が変なの。何かあったんじゃ?」
「ああ、、、って、ところでしずく。」
「はい。」
「なんで、お茶できてるの?」
「何でって、、、ああ!そういえば!」
そう、しずくのティーセット。調理道具は、まったく部室荒らしの被害に遭っていない。
考えてみれば、友樹のパソコンは、不自然に見えないよう、ついでに荒らされていたように見える。
犯人はここの内情に詳しい。
そして、那智には伝えていない事実がある。
徹底した、現場鑑識活動の結果、犯人の指紋は、すでに採取出来ているのだ。
問題は、アダム、3層のデータベースにアクセスできないこと。
Aクラス以上の能力者のデータは、国家レベルで厳重に管理され、ハッキングはかなりのリスクがともなう。やってみるのは、最終手段だろう。
つまり、ここに詳しい、Aクラス以上の能力者が犯人という事だ。
(ちなみに、しずくは除外する。Dクラスだった頃の指紋データが保存してあったので、照合済みだ)
「う〜〜〜〜ん。」
魂が抜けたように、紅茶を飲んでいる、リンの横顔が見える。
「しん!キミ、まさか、リンさんを、、、!」
ありゃ、そんなに、疑わしそうに見てたのか?
いや、それにしても、何でわかる?
「いや。ぜんぜん。」
マズイ
「疑ってる、、、彼女に何かしたら許さないからね!!」
何で人の行動をこんなに的確に予想するんだ。この地味子さん。
とはいえ、リンの指紋、採取するけどね。
しかし、この可憐で、無口な少女を疑うのは、さすがに、気が滅入る。
色々やる前に、少し、調べてみようと思う。
ところで、いつ、しずくはリンと仲良くなったのか。
なんで、そんなに庇うのかもわからない。
ネガティブキャラ同士、気が合うのだろうか。
ああ、スタイルも、、、、、
胸を凝視する視線に気づかれた。
バシン、
「セクハラ!!」
たたかれた。
一方、本校舎3階、風紀委員室前の廊下
「ン〜ムムム。ヌ〜〜。」
変なハミングをしながら窓際で、携帯をいじっている少女
しんのアドレスゲットが、けっこう嬉しいらしい。
もう、校舎にもグランドにも生徒はまばらだ。すぐに日が落ちる。
「野川さん。彼氏?」
「びヒャア!」
奇声をあげて、携帯をジャグリングする那智。
「ち、違います!」
クスクスと笑ってる先輩の風紀委員たち。
「早く帰りなさい。閉門だよ。」
「誰か待ってるの?」
「ええ、、と。リンを。」
ここなら、すれ違いはないし、廊下には、リンのロッカーもある。今日はまた、子猫を見せてもらう約束をしていたのだ。
「え、、、、リンさん。だいぶ前に帰ったはずよ。」
「ホント、、、ですか?」
どうなってるのだろう。最近、様子が変だし、連絡もつきにくい。このまま寮に押しかけようとも思ったが、今日は遅すぎる。あきらめて、帰るしかないだろう。
「野川さん!」
「那智さん!お帰りですか!一緒に、、、」
突如わらわら物陰から現れる、男子生徒たち。
「は〜〜い。最終下校時間ですよ〜〜〜。帰宅しましょう〜〜〜。」
有無を言わさず、まとめて連行していく、風紀の先輩達。実に手慣れている。
「まだ、湧くのか。こんな連中。」
「那智。気をつけて帰りなさいよ〜〜」
手を振っていってしまう。
とうの少女は、上の空だ。
想像の映像だが、
ネコとリンが遠くに去って行く。
「子猫〜〜〜〜〜〜!」
そういえば、まだ名前を聞いてなかった。
「う〜〜〜〜。ひどいよ。リ〜〜ン。」
先に帰るなら、連絡して欲しかった。
帰り道、ショートカットして帰ると、結構人通りの少ない河べりを歩くことになる。
夜は少し不気味だ。
まあ、近道しなければいいのだが。
京葉線の下を降り、緑地公園を抜け、複雑に絡む川の支流を渡っていく。暗い駐車場の先に柵に囲まれた、変電施設、鉄塔が建ち並ぶ。
ひどく、淋しげで、薄暗い。今にもなにか、なにかが、、、、
知らず知らずに、歩みが早まる。息が上がる。心臓が早鳴る。塗りつぶされた不安に、後ろを振り返った瞬間、高架の影から、男が現れた!
コートの前をはだけて、、、、、
「キャアアアアアアアアアーーーーーーーーー!!!!!」
「ウハハハハハハハハハハーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ズゥドドドドドドドン、ドドドド!
那智の爆裂が容赦なく炸裂する。
バラバラと砕けるアスファルトとともに、白衣の少年がひっくり返る。
「変態!変態!!ヘンタイ!!!、、、、あ!ヤッパ変態!」
「ウハハハハハ!夜道にひとりは危険ですよ。お送りしましょう。セニョリータ!」
ひっくり返っていても、結構元気な山下しんだった。
「ビックリさせないでよ。」
立ち上がる少年を見て、胸を撫で下ろす。
ちゃんと手加減出来たようだ。
次に率直な疑問が湧く。
「なんでわかったの?道、、、、」
自分の帰宅路だ。当たり前のように待ち伏せする少年。
「当たり前だろ。一時期、生徒会、風紀委員と敵対したんだ。主要メンバーの行動パターンは、調べておくだろ。」
「あんたね、、、、」
頭痛がする。当然のように何を言っているのか。
「なんだね、ここの連中、危機意識が足りてないって言うのか。帰宅路や行動がパターン化したら簡単に待ち伏せされるんだぞ!」
「はあ、、、、、」
どうもこいつは、本気で言ってるらしい。
「瀬里奈Sフィールズの、でかいリムジン!これもバカの象徴だ。VIPがどこにいるか、宣伝してるようなもんだ。登校ルートもワンパターン。狙ってほしいんかい!!」
とても、痛々しい人なのだが。まあ、一理あるような、気がしなくもない。
おとなしく聞いてると、だんだん乗ってきたようだ。
正面、左手に橋が見えてくる。2車線の道路が交差している。
「はい、野川君。前方交差点において、注意することは?」
なんだろう。リンの原付の問題集を、見せてもらった事があるが、そんな感じだろうか。
「えーと、一時停止して、車両の確認、かな。」
特に右側には、路線の高架が立っていて視界を遮っている。
「はい。減点です。」
「なんでよ!」
「前方に車が見えますね。」
確かに白い大きなワゴン車が、止まっている。
「エンジンかかってるだろ。」
そう言えば。人がいるのだろうか。
「アイドリングしている車には、不用意に近づかないように。簡単に拉致られ、誘拐されます。」
「え~~。」
路駐してただけで、犯罪者扱いされたら、たまらないだろうが、聞いたことがあるような気もする。
「あれは、バンタイプですが、犯行に利用される一番多いのは意外にも、セダンタイプです。
音楽を聴いたりスマホなど、ながら歩きの女性が狙われるようです。気をつけるように。」
「う、、、うん。わかった。」
「、、、、、」
彼女の場合、いらん心配とか、反発するとか思ったら、聞き入れたようだ。意外と素直な性格なのだろうか。
なにか、モジモジしている。
「心配、、、、なんだ。それで、、、送り、、、に?」
それで思い出した。
「そうだ!無駄話してる場合じゃない!リンの事を聞きに来たんだ!」
「リ、、、、、」
固まる少女
「あっそう!」
スタスタ行ってしまう。突然、不機嫌になる。ワケが分からん。
橋を渡って、川沿いの右の道を行く。こちらは、若干広めの道路だ。
通行人はほとんどいないが。
「様子が、おかしいんだ。何か知らないか?」
歩みをとめ、ため息する少女。
ユックリ流れる暗い支流を見つめる。
「わかんない。様子が変なのは、知ってるけど、理由は不明よ。」
一連の事件とは、別の苦悩の影が端正な横顔をよぎる。
相当仲はいいらしい。
彼女から、少し離れて、川を隔てる金網に白衣の背を預ける。
「リンもオレのヨメだ。昔と今、なにがあったのかな。」
最近とは別の、
彼女の変化の理由を聞いている。那智は答えてくれるだろうか。
ジロリとコチラをにらむ。
「ほんとに、、、心配してんだね。」
ウソだったら大変な事になりそうだ。
「もちろん。
オレのヨメに対するロイヤリティは、文字通り、地球より重い。信じろ。」
探るような少女の瞳が、迷いに揺れている。
そして、
「、、、、、、、わかった。」
意を決して那智が、頷く。
ポツリとポツリと語られるリンの半生は、想像以上に過酷で悲しいものだった。
両親が病死して、死別した後、リンは親戚たちの間で、たらい回しにされる事になる。
当時でもAクラス能力者には、国からの莫大な援助金がでた。
たとえ、善意で彼女を引き取る人間がいたとしても、それは、無視できない事だ。
その頃、リンには自分の能力が制御できなかった。建前と本音。その全てが彼女に流れ込む。人間関係など維持、構築などできるワケがない。
いっそ、施設に預けられた方が、まだ救いはあっただろう。
しかし、親戚たちは、彼女を手放さず、拘束しては破綻を繰り返させた。数年後には明るい少女の面影は一切なくなり、無口で無表情、感情のない子供が出来上がってしまう。
「そして、最悪な奴が、リンを引き取った、、、、、」
ブラウンのフワリとしたセミロングが彼女の表情を隠す。バキバキと奥歯が欠けそうなほど歯を食いしばっている。
「ネグレクト、、、ただ、部屋にリンを閉じ込めて、ロクな食事も与えずに何年も監禁したんだ。その男はただ、自分がギャンブルや豪遊するために、ずっと、ずっと、、、、、薄ら寒い何もない部屋にずっと、、、、、」
掴む金網はひしゃげ、暗い支流の水面が彼女の怒りで波立っていく。
「ある日、酔った男がリンの部屋に押し入った。
そして、彼女を犯そうとしたんだ、、、、皮と骨だけになった、子供をね。
助けなんかない。だから彼女は、ただ、能力を暴走させていった。
サテライト サーチ。
世界中の人間の思考をスキャンし、読み込んでいく。
個人のキャパシティーを越えた情報は能力者自身を破壊する。
彼女は自分で自分を壊してしまったのよ。
まあ、、、ついでにその余波で、そのクズ男も意識不明で、今も病院に入院中だけども。
残念だよ。そうじゃなきゃ、私が八つ裂きにしてやるのに。」
むしろ静かに宣言する、野川那智。彼女の怒りは、誰にも推しはかれはしないだろう。
静かにマンションの明かりが、かわもに揺れている。
「その後、リンはアルカに保護された。
精神疾患の治療を続けてた、中学2年の頃、こっちに越してきた、私はリンに会ったんだ。少しずつ、少しずつ仲良くなって。ほんとは、とっても優しい子なんだよ。」
嵐のような怒りをなんとか、抑えて、彼女もクルリと体を回し、金網に背をあずける。
「皮肉なものね。壊れた心が、自閉症、、、、スペクトラム症が彼女の能力を押さえて、コントロールできるきっかけになってさ、
少しずつ、人との距離を保ちながら生活できるようになっていったんだ。」
遠く、電車の走る音が聞こえる。
「でもね、、、リンが言ってた。
記憶がところどころ、かけてるんだって、、、、
そして、
両親が自分を愛してくれていたか。霧のように霞んで思い出せないって。
それが一番悲しいって。」
体から力が抜けていく。なぜ自分は彼女の事を話してしまったのだろう。
この事は、姉としか話した事はない。それを、よりにもよって、こんな、、、、
でも、後悔と同時に、不思議と、唯一無二の正しい事の様な気がしていた。
しかし、、、
「なるほどな、」
ポツリとつぶやく、白衣の少年。
「リン、オレを恨んでるかもな。」
「なに、、、、を、、、、」
声が出ない。
「多分、オレとの接触で、彼女の能力は目覚めた。そのせいで苦労するハメになった。だろ?」
このバカは!この、、、
「バカにするな!!リンの能力は、そんな中途半端な力じゃない!あんたに会ってなくても開花した!そんな事が判断できないと思ってんの!リンを侮辱すんなら、絶対許さない!!もう最悪だよ!!せっかく、、、、この、、、バカしん!!!」
烈火の如く怒る少女は、嵐のごとく走り去ってしまった。
まあ、バカだってのはよくわかってる。
ただ、どうしても、考えてしまうのだ。
もしもオレに会わなければ、彼女はそんなクソみたいな目にあわなくてすんだのではないか、と。
また来週。




