インスタントフィクション 一
春時雨の我がままに嫌気が差す今日この頃、彼女は散歩しようと言った。
川沿いを二人で歩く。傘を持った手がだるい。本当は今日も絵を描いていたかった。綺麗な絵を。綺麗な彼女の絵を。
ぽっかりと大きく空いた空に向かって彼女が指を指す。大きな虹がかかっているようだ。僕にはアーチを描いたバーコードの様にしか見えない。ただの虹にはしゃぐなんて、全く子どものように思える。
虹の端と端には何があるんだろうね、と彼女に尋ねた。
「片方の端にはあなたが居て、もう片方の端にはわたしが居るの」
その瞬間、キャンバスへと向かった。自分の息で今にも倒れそうなキャンバスに色を重ねた。暴力的な七色で顔を埋め尽くす。ぐちゃぐちゃになった誰かが愚者に笑いかけてる。
愚者も笑い、今まで以上とも言える作品が仕上がったと思った。
彼女が帰ってきて殴った絵を見せ、笑ってみせた。
「私たちやっと一になれたね」