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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
3:第三坑道・アルメコウ
78/619

78:ドローンカメラとライブカメラ

「さて着いたな」

『ブン。着きました』

 俺が操るゴーレムは素材坑道・デイマイリに到着した。

 出現するマテリアルとして選択したのは前日と同じ、岩、銅、青銅、真鍮・電撃、金だ。

 これは新しい事を試す際に、破壊力関係では比較対象が欲しかったからだ。


「岩のマテリアルタワーが見えているが……早速試すぞ。ティガ、ドローンホーネット起動」

『ブン。ドローンホーネットをサポートモードで起動します』

 まあまずは破壊を伴わない部分からだ。

 という訳で、俺はティガに命じてドローンネストで待機しているドローンホーネットを起動。

 すると俺の視界の隅に小さな画面が表示され、そこには俺の後頭部が映っている。

 どうやらこれがドローンホーネットの視界のようだ。


『トビィ、この視界はトビィの好きなようにサイズや位置を調整できます。トビィの好みに合わせて配置してください』

「分かった」

 この時点で既にドローンホーネットの有用性は証明されたな。

 先行偵察は勿論の事、後ろを向かせて後方確認、上に飛ばして全体の確認など、見える範囲が広がるのはそれだけで力になる。


「なるほど。こう見えるのか。……ん?」

『トビィ?』

「いや、ちょっと待ってくれ。少し気になった」

 と、ここで少し気になった事があるので、俺は自分が配信している画面を出してみる。

 そこには俺を少し後ろから映している画面と、その画面の端に小さくドローンホーネットの視界を映している画面もあった。

 これが今、俺のライブ配信を見ているユーザーたちが見ている画面になるようだ。


「ティガ、今更なんだがライブ配信のカメラってどういうものなんだ?」

 俺は念のために頭を360度、横方向に一回転させてみる。

 ドローンホーネットの視界に動きはない。

 ライブ配信の画面にも動きはない。

 ドローンホーネットの姿は見えたが、ライブ配信の画面を映しているカメラは見えない。

 ライブ配信の画面のコメント欄が一気に騒々しくなったのは……無視だ。


『ブブ。いやそれよりも……いえ、ブン。トビィ、ライブ配信のカメラは非実体かつ認識不可能なものになっています。詳しくは資料をお渡ししますが、状況に応じて最も取れ高が高そうな角度からトビィを映すというのが基本になっています』

「ふむ、なるほど」

 俺がカメラの仕様を気にして動きがないからだろう。

 自然なカメラワークでもって、俺を正面から撮っている姿にライブ配信の画面は移っていく。

 しかし、俺の目にカメラは見えない。

 撮っている位置から逆算して、右手も伸ばしてみたが、ライブ配信の画面が俺の右手で埋まっただけで、何も触れることはなかった。

 で、ティガが渡してくれた資料を素早く読んで、それからライブ配信の画面を見て、一つの仕様を理解する。


「俺が見えていない……いや、認識できない範囲についてはぼかしとかの処理が入るんだな」

『ブン。その通りです。ライブ配信用のカメラを索敵に使われたのでは、ドローンの仕事がなくなってしまいますから』

 ライブ配信用のカメラはあくまでも俺視点の坑道内部を映している。

 だから、俺が認識していない、あるいは認識していても重要度のレベルが低いと俺が判断した部分については、ぼかしなどが入って、ライブ配信の画面にも映らなくなるようだ。


「まあ、ある意味当然の仕様だな。背後から不意打ちしようとしている魔物やプレイヤーの姿をはっきりと映したら、俺は不意打ちを防ぐ事が出来てしまうし、ライブを見ている側としては盛り上がるかもしれないが、不意打ちを仕掛ける側としてはたまったものじゃない」

『ブン。そういう事ですね』

 これ、地味にとんでもない技術を使われているな。

 俺の思考を読むのはフルダイヴVRであるから当然であるし、問題のない技術であるが、周囲の状況を正確に読み取る技術や、リアルタイムでの映像処理技術、他にも色々と使われていそうだ。

 それでも視野角の微妙な差などがあるから利用する方法がないわけではなさそうだが……そこまで考えるなら、素直にドローンを使った方が早いだろうな。


「じゃあ、ドローンホーネットを試すぞ。ティガ、次の部屋の中を偵察してきてくれ」

『ブン。分かりました』

 さて、ライブ配信のカメラについてはこれぐらいでいいだろう。

 俺は自分の視界内に存在するライブ配信の画面を閉じると、ドローンホーネットの試運転を開始。

 ドローンホーネットがドローンネストから飛び立ち、独特の羽音を立てながら部屋へと向かっていく。


「速さは人が全力疾走する程度。静音性は蜂だからか期待できず。視界は良好」

 ティガが操るドローンホーネットは部屋の中に入ると、軽く左右にぶれながらまずは周囲を確認。

 その後、少し高度を上げてから大きく横へ移動して、最初の位置からではマテリアルタワーの陰に隠れて見えなかった範囲を確認。

 それから俺の背中へと戻ってくる。

 うん、見事な動きだ。


『トビィ。どうだったでしょうか?』

「いい動きだったぞ、ティガ。敢えて詳しく命令しなかったんだが、ちゃんとマテリアルタワーの後ろを調べていたことも含めていい動きだった」

『ブン。喜んでもらえて何よりです』

 ティガの思考レベルが高いおかげだろう。

 これならば、戦闘中の援護含めて、少なくとも俺の邪魔になるような振る舞いだけはしないに違いない。


「ところでティガ。どうしてドローンホーネットは空を飛べるんだ? ゴーレムは体が坑道にくっついていないとマトモに動けるかも怪しんだが」

『ブーン。詳しい理屈は不明です。ただ、ドローンには核がありませんので、魔物と同じような扱いになっているのではないかと言う仮説はありますね』

「なるほど」

 なお、ドローンホーネットが空を飛べる原理は不明。

 原理不明であるため、ドローンホーネットを金属で作って、任意のタイミングで飛行原理を解除し、相手の頭に超高速の自由落下をさせるという戦術は使えないようだ。


「さて、グレネードとパンプキンアームも試さないとな」

『ブン。そうですね』

 では、ドローンホーネットについてはこれぐらいにしておくとして、他の武装について試すとしよう。

ちなみにライブカメラが映す画像はライブ配信者の反応速度も考慮に入れてます。

なのでトビィのカメラだと不意打ちは本当に直前まで映りませんが、一般プレイヤーのカメラだとトビィより少し早く映ったりします。

結果は変わらないから問題はないね、

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― 新着の感想 ―
[一言] >見事な動きだ ???「チューチュー。ドローン鼠ならもっといい動きをするでチュ」
[一言] >先行偵察は勿論の事、後ろを向かせて後方確認、上に飛ばして全体の確認など、見える範囲が広がるのはそれだけで力になる。 樽「視界の広さは正義よね」 >俺は念のために頭を360度、横方向に一回…
[一言] いきなり横方向に360度回転はできると知っていても驚きますな。 わあ、ドローン便利。
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