61:第二坑道からの脱出
「修理完了だな」
『ブン。オークレッグは、ですが』
「まあ、モロトフラックは完全に壊れたからな……」
デイムビーボディの針攻撃によるデメリット、傷ついた右足の修理。
この二つが終わった事を確認した俺は壊れたモロトフラックを背中から外した上で立ち上がる。
「それにしてもアドオンなぁ……」
『ブン。重要な要素です。が、詳しい説明は坑道を脱出してからにしましょう。坑道の中にいる間は気にしても仕方がない要素に近いので』
「だろうな」
水の外に上がり、脱出ポッドがある部屋へと移動。
この部屋に繋がる通路は……緑キパβの居た部屋と空部屋の二つか。
で、空部屋からさらにブルーサーディンの居る部屋に繋がるっぽいか。
「さて、素直に脱出するか。正直なところ、精神的にもそろそろきつくなってきた」
『ブーン? トビィなら相手を殴れているなら元気だと思っていたのですが?』
「疲労の問題だから、こればかりはな。殴るためのエネルギーだってゼロから作れるわけじゃない」
さて、フロア6の探索を続ければまだまだ何か見つかるかもしれない。
が、それは脱出失敗のリスクを伴う事でもある。
緑キパβとの戦闘で少なからず疲れている面もある。
と言う訳で、俺は脱出ポッドに乗り込んで、脱出することにした。
≪3……2……1……脱出≫
「何事もなくだな」
『ブン。そうですね』
で、魔物に見つかっていない状態だったからだろう。
特に何事もなく俺は第二坑道・ケンカラシを脱出した。
≪第二坑道・ケンカラシからの脱出に成功しました≫
≪インベントリのアイテムをラボの倉庫に移送します≫
「さて、どれだけの話が入るだろうなぁ……」
『ブーン。雑談を挟みつつ聞きましょう。トビィ』
さて、報酬の時間である。
きっと長いのだろうなぁ……まあ、長くても雑談をしながらなら起きていられるだろう。
≪第二坑道・ケンカラシの踏破を確認≫
≪初回踏破報酬として設計図:アドオン『オートコレクター』が与えられます≫
≪初回踏破報酬として称号『マイナー』が与えられます≫
「ああ、これがハンネの言っていた奴か」
『ブン。重要なアドオンと言えます』
アドオン『オートコレクター』、マテリアルの回収がしやすくなるアドオンであるらしい。
後で詳しく見てみよう。
それと称号のマイナーは知名度が低い事のマイナーではなく、鉱員を表す方のマイナーであるようだ。
≪第二坑道・ケンカラシの番人、グリーンキーパー・ケンカラシβの撃破を確認≫
≪称号『フィッシャー』が与えられます≫
「これもしかしてαとかを倒した場合に別の称号が貰える奴じゃ……」
『ブーン。トビィとティガが持っている情報の範囲内では不明としか言えませんね』
あ、うん、絶対に貰える奴だ。
しかしこうなると……目的のボスが出てこないという沼に嵌まるプレイヤーも居るんだろうなぁ……。
まあ、スコ82の称号は他プレイヤーに見せるだけで、ゲームを有利にする直接的な効果は持っていないから、手に入らないなら手に入らないで諦められるプレイヤーも少なくはないだろうけど。
≪第二坑道・ケンカラシの単独制覇を確認≫
≪称号『キャンディデート』が与えられます≫
「おん?」
『ブン。ソロで攻略したからでしょう』
妙な称号が手に入ったな。
キャンディデート……candidateなら、候補者だな。
しかし、単独制覇ねぇ……踏破ではなく制覇。
わざわざ別の言葉を使ったという事は、ミスでなければ、その使い分けには意味があるという事。
となると、ソロモードで第二坑道・ケンカラシに進入し、グリーンキーパー・ケンカラシを撃破するなどの何かしらあるであろう条件を満たした上で、踏破する、と言うところだろうか。
バーサスやカオスでも同様の称号が手に入る可能性は勿論あるが……敢えて手に入らないようにしているかもな。
バーサスにしろ、カオスにしろ他のプレイヤーが居て、そのプレイヤーの行動が自分にとって不利になるとは限らないし、倒したプレイヤーから奪った物資による補充が持つ力は決して無視できるレベルではないのだから。
≪一定値以上の貢献が認められました≫
≪第三坑道・アルメコウへの進入許可が与えられます≫
≪素材坑道・デイマイリへの進入許可が与えられます≫
「第三坑道は次に行くべき坑道だとして、デイマイリ? なんか、一日に一度だけ挑めそうな坑道だな」
『ブン。その通りですよ。トビィ。素材坑道・デイマイリは一日に一度だけ挑めます。第三坑道・アルメコウ共々、ある程度の情報は文章を送っておきますね』
「分かった」
さて、新たに解放された二つの坑道だが……。
第三坑道・アルメコウは現在確認されている坑道では最も危険であるが、最も実入りがいいとされている坑道らしい。
ちなみに設定上は、第三坑道・アルメコウの最深部は誰も確認していない場所であるらしい。
で、素材坑道・デイマイリだが、こちらは本当に一日に一度だけ挑める坑道であるらしく、事前に設定したマテリアルのマテリアルタワーだけが出現する坑道であるようだ。
設定出来る対象は今までに一度でも坑道で入手し、ラボまで持ち帰ったことがあるマテリアルだけであり、入手したことがあれば金でも肉でも設定できるようだ。
なお、緋炭石は特定物質であり、マテリアルではないため、設定不可能であるとの事。
『ブ? ブン。トビィ』
「ん?」
さて、これで通達は終わりのようだ。
が、ティガからはまだなにかあるようだ、
『『デビュー』のハンネからメッセージが届いています』
「ハンネから?」
『ぶん。各種交換会へのお誘いとのです』
「ふうん……」
どうやら、ハンネからメッセージが届いたらしい。
では読んでみて、俺が参加しても問題が無いようなら向かうとしよう。
「あ、とりあえずゴーレムからアバターに移るか」
『ブン。そうですね』
という訳で、俺はゴーレムの挙動に多少の違和感を覚えつつ、とりあえず意識をアバターに移した。




