597:ストロビハの憑依武装
「よっと」
では早速、十拳剣の性能を見ていこう。
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十拳剣
種別:パーツ
部位:武装
対応:虚無-魔術-内部-付与
とつかのつるぎ。
所有者の拳10個分の刃渡りを持つ、刃先から柄までが一体となっている構造の剣。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「んー、特別な機能はない感じかしら?」
「せやな。フロア10のブラックオニが落とした設計図にしては極々普通の剣と言う感じや」
俺はプレビュー機能を使って、十拳剣を目の前に出してみる。
見た目は……刃先から柄に至るまで一切の装飾がない、本当に普通で無骨とすら言える剣だな。
少し変わった点としては、何かを斬った際に使い手の手に伝わる衝撃を和らげるような仕掛けもなく、見方によっては金属塊から直接削りだしたようにも見えるかもしれない。
刃渡りは説明通りに俺の拳の幅、10個分。
持ち手は拳2個分少々なので、片手持ちだけでなく両手持ちも出来そうな感じ。
全長としては……鍔や柄の分も合わせて、俺の拳14個分にはギリギリならない感じか。
「いや、特別な機能はたぶんあるぞ」
「あら?」
「そうなん?」
とりあえず適当に木で作成。
で、持ってみたわけだが……非常によく手に馴染む。
まるで俺に合わせて拵えられたかのようだ。
「ハンネ、持ってみろ。その後はリツな」
「分かったわ。ん?」
「あ、これは確かに特別機能やな。おもろいなぁ」
俺はハンネに十拳剣を渡す。
するとハンネが持った瞬間、僅かに十拳剣が短くなった。
そして、リツが持つと、目に見えて短くなった。
だが、所有者との対比と言う点で見れば、十拳剣の大きさは変わっていないように見える。
つまり、これが十拳剣の機能であり、所有者の拳の大きさに合わせて十拳剣の大きさが変わるようだ。
「とりあえずコピーは1000枚くらい出しておけばいいか? 実を言うと、設計図のオリジナルについては使う予定がある」
「これは売れそうやな……と、そうなん? せやったらウチが資金は出すから、たっぷり5000枚くらいコピーしといてな。次に手に入る機会があるか怪しいし」
「そう言えば、この十拳剣、地味に特殊弾対応の属性に虚無属性も含まれているから、白紙の設計図の書き込める範囲を広げるという意味でも有用な品になるわね」
これは売れるとリツが判断をしてくれたので、俺はせっせと十拳剣のコピーを作ってはリツに渡していく。
なお、念のために俺自身の手元にもコピーの十拳剣の設計図は10枚ほど残しておくし、ハンネたちにも10枚ずつ渡しておく。
集図坑道・ログボナスでオニ種と戦ったからと言ってまた手に入るとは限らないしな。
「で、トビィはんが設計図のオリジナルを使うってことはそういう事でいいん?」
「ああ。実を言えば第五坑道・ネラカーンの攻略と共に『昴』に改修準備完了とか言う表示が出ててな」
さて、これで設計図の確認については完了。
という事で、俺たちは俺のラボに移動し、チェンジャーの前に立つ。
なお、この改修準備完了とか言う表示が出たために、大量の竜命金をロスするのは分かっていたが、第五坑道脱出時に『昴』を元に戻すことが出来なかった。
元に戻した結果として改修出来なくなったら……それこそ大損害だからだ。
「改修準備完了……ね。普通に考えれば、プラヌライの騎士武装がポリプーロの契約武装になったように、そのさらに一段階上に改修できるってことなんでしょうけど……求められているのは?」
「改修に当たって求められているのは『昴』自身、緋炭石1000個、任意のパーツの設計図……ただしオリジナル限定。要するにチェンジャーで『昴』の形状を変化させるのと変わらないな」
「ふーん。となると、チェンジャーの騎士武装周りについては、形状変更はおまけで、こっちの改修機能の方が本命なのかしら」
「かもな」
俺はチェンジャーを操作していき、求められている物や、どのように変化するのかを確認していく。
うん、問題は無さそうだな。
「じゃ、改修開始っと」
俺は『昴』をチェンジャーの竈のようになっている部分へと投入。
続けて緋炭石1000個も投入し、十拳剣の設計図のオリジナルをチェンジャーに読み込ませる。
そして、チェンジャーから何かが激しく燃え上がるような音や打ち付けるような音がしばらく響き……大きな排気音と共に静かになってから少し経った後に、それは出てきた。
「これは……」
新しい『昴』の見た目はそこまで大きく変わっていない。
刃と鍔にある赤い宝石による六連星の装飾や、炎を模した形はそのまま。
光の当て方次第で刃の色が微妙に変化する事や、炎や黒い靄が見えることもそのままだ。
違いは……長さだな。
使った設計図が十拳剣なので、刃の長さは俺の拳10個分になっているし、幅や持ち手の長さについても同様である。
それと、空っぽだった芯に何かが詰まったような感じがある。
少なくとも強化されたことは間違いないようだ。
「トビィ、詳細を見せてもらえるかしら」
「せやな。ウチも見たいで」
「分かった。今見せる」
では、詳細を確認してみよう。
△△△△△
ストロビハの憑依武装『十拳剣・冥煌六連星・昴』
種別:パーツ
部位:武装
対応:(火炎/侵食)-法則-異界-付与-『神降・火之迦具土神』
ポリプーロの契約武装『昴』が変化した武装。
可能性は定まり、その力の方向性も定まった。
そうであるが故に力の高まりはこれまでとは比較にならないほどである。
契約した神の名は『火之迦具土神』、親殺しにして神殺しの火を生まれながらにして持つ神である。
このパーツは常に所有者と共にあるため、インベントリに入っているマテリアルを消費して強制実体化する。
このパーツは常に所有者と共にあるため、破損した際にはインベントリに入っている適当なマテリアルを消費して強制修復する。
このパーツは常に所有者と共にあるため、インベントリに入っているマテリアルだけでは足りない場合、他のパーツを破壊して機能を実行する。
このパーツは常に所有者と共にあるため、所有者から10メートル以上離れた状態が1分以上続くと、所有者の手元に転移する。
作成時に使用したマテリアルの数が多ければ多いほどに性能は上昇する。
作成時に使用したマテリアルの数が多ければ多いほどに、特殊弾『神降・火之迦具土神』使用時の反動を軽減し、効果時間を延長する。
特定の施設で所有者の好きなように形状を変更する事が出来る。
このパーツによる攻撃には常に火炎属性、侵食属性、虚無属性による追加ダメージが発生する。
このパーツによる攻撃には常に状態異常:加具土命の火(火炎属性耐性低下+火炎属性DoT+シールド回復不能)を攻撃対象に付与する効果が発生する。
このパーツは燃料を消費する事によってエネルギー化し、所有者の体内に転移、一時的に収納する事が可能。
収納されたパーツは所有者の意思に応じて、体の好きな場所から再出現させることが可能。
この設計図はコピーする事が出来ない。
この設計図は破棄する事が出来ない。
この設計図はプレイヤーID[秘匿]のみ所有できる。
この設計図の所有権はプレイヤーID[秘匿]に紐づけされている。
≪作成には同一のマテリアルが10~9999個必要です≫
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「ストロビハの憑依武装。てか、名前も説明も長い。長くなる理由があるのは分かるけども」
「転移の条件が距離と言うより時間になったわね。後、虚無属性に専用状態異常もある。特殊弾の反動軽減もあるわね」
「作成に可能なマテリアル数の限界が9999になっとる。一昔前なら石油武器とか言われそうな奴やんけ」
まあ、性能については純粋な上位互換になったと言ってもいいな。
余談だが、十拳剣の形にするのを決めたのはヒノカグツチノカミ様である。
なんでも、由来上、相性がいいらしい。
「さて、また地道に竜命金を集めないといけないな」
「9999個……どれぐらいかかるのかしら?」
「専念してもエライかかることだけは確かやろうなぁ」
なお、改修をした結果、今現在の『昴』の構成マテリアルは岩10個に戻っている。
うーん、素材坑道・デイマイリで採掘用のアドオンをガン積みして、呼び出すものを竜命金に限定して……そうすれば一日に200個くらいは採れたはずなので、第四坑道で回収できる分も合わせるなら、一か月もあれば……まあ、たぶん行けるな、たぶん。
とりあえず第五坑道に再チャレンジしている余裕はなさそうだな。
今は……まあ、手持ちの竜命金を100個ほどつぎ込んでおけばいいか。
「じゃ、共同での配信はここまでだな。後はもう普段通りでいいだろ」
「そうね」
「せやなー」
そんなわけで、この場はとりあえずお開きとなった。
07/08誤字訂正




