595:ネラカーンリザルト・状態異常超特効
「確かに受け賜わりました」
「確かに渡しました、と」
翌日。
俺はハンネの指示に従って、スコ82の運営である政府に『第三次計画の計画書』を渡した。
これで後は政府の方で解析なりなんなりをする事だろう。
「さて、此処からは配信出来るわね」
「だな」
「待っとったでー」
では、此処からは『Fluoride A』としての配信を行いつつ、坑道探索後にやるいつもの活動である。
と言うわけで、ギルドホームに戻り、適当な甘味を飲み物を集め、俺、ハンネ、リツの三人で設計図の確認と売買だ。
「しかし、今回のトビィはんが回収した設計図。コピーできないものがちらほら混ざっとるのがつらいところやなぁ」
「特殊弾『根絶やし』、特殊弾『黄金障壁』辺りのことだな。まあ、この辺がコピーできないのは仕方がないだろ。明らかに他の特殊弾よりも数段階スペックが上なわけだしな」
「まあ、量産させたらいけないものなのは確かよね」
とは言え……今回はそこまで目玉になるようなものはないな。
対応している特殊弾が特殊弾『首刈り一閃』でないニンジャレッグやカオティックポットなど、売れるものはあるのだが、目玉になるようなものはだいたいコピー不可がかかっている。
これらは所有権の譲渡自体は可能だが、それで渡したら俺が使えなくなるからなぁ。
特殊弾『根絶やし』はまだしも、特殊弾『黄金障壁』はちょっと渡したくない。
「えーと、此処からは確認を配信環境ではしていない奴だな。見どころがありそうなのは……アドオン『状態異常超特効』、十拳剣、アドオン『虚無属性強化』、アドオン『虚無属性耐性』、アドオン『レキノーリ液完全無効化』。ここら辺か」
「そういえば今回のトビィはネラカーンω・虚光からパーツや特殊弾を取れなかったのね。ポケットアリーナまで使ってたのに」
「せやな。トビィはんなら一つくらいは持ってこれそうやと思ってたんやけど」
「運だろ。後は評価。それとどうにも第五坑道・ネラカーンの深部になるほど設計図そのものの入手率が下がっていたような気もするし……何か補正があるのかもな」
「あっても……おかしくはないわね。深部なら作れるか分からない設計図よりも、マテリアルの方が一般的には需要があるでしょうし」
「こっちに有利やけど喜びづらい仕様って奴やな」
さて、どこから確認していくか。
実は今挙げたもの以外に出さないと拙そうなものが一つあって、ハンネとリツは敢えてそちらへ視線を向けないようにしている状態なのだが……。
まあ、アレについては最後でいいか。
今はまずアドオン類と言う、結果が安定してそうなものから見ていこう。
と言うわけで、俺はハンネたちと雑談をしつつ、とりあえずアドオン『状態異常超特効』から見ていくことにする。
△△△△△
状態異常超特攻
種別:アドオン
称号:完全抹殺の
適用したゴーレムが攻撃を行う時、対象が状態異常を有していれば、状態異常の数×50%だけ与えるダメージが増える。
この設計図はコピーできない。
≪作成には特定物質:緋炭石が9999個必要です≫
▽▽▽▽▽
「は?」
「えっ、やばっ……」
「あかんやろこれ……」
一気に場が凍り付いた。
何なら配信のコメント欄も一瞬止まった後、今一気に流れ出した。
「あのゲニャゲニャ言ってた奴、本当に何だったんだ……」
「なにこの倍率……あ、しかも上限なし……状態異常さえ通ればとか……ええー……」
「このアドオンにDoTガン盛り武装を組み合わせれば、お手軽に最終ダメージが2倍、3倍になったりするってことやん……なんなんこれ……」
え、俺の普段の手持ちでも特殊弾『腐食性粒子』、特殊弾『睡眠』を合わせれば、それだけでダメージ2倍?
あ、しかも嫉妬パンチとはまた別だから、合わせれば平然と20倍、30倍になったりする……。
そりゃあ、コピー不可だし、作成に必要な緋炭石の数もこうなるというものだ。
作るのは相応の手間が必要になるが、手間以上の強さがあるのは明らかだ。
「そういえばトビィ。あのゲニャゲニャ言ってた魔物の正体は集図坑道・ログボナスで確認できたの?」
「まだ確認してない。確認会中断していいか? ちょっと見てくる」
「構わへんで。あ、ついでに隕鉄・虚無含め、虚無属性のマテリアルが回収できるか、素材坑道・デイマイリで回収可能かも見て来てほしいわ」
「分かった。回収可能でもキャンセルするから直ぐに戻ってこれるはずだ。行くぞティガ」
『ブン』
と言うわけで、ちょっと確認。
結果は?
「オニやストロドルの名前はあるが、見慣れない名前は無し」
『ブブ。隕鉄・虚無、竜命金・虚無だけでなく、虚無属性のマテリアル全般が選択不可能ですね』
見慣れない名前は集図坑道・ログボナスの選択肢には含まれていなかった。
どうやら、あのゲニャゲニャ言っていた魔物はその正体が分からないままに倒してしまったので、集図坑道・ログボナスの選択肢には追加されなかったようだ。
そして、虚無属性のマテリアルについても同様。
虚無属性の特殊性故にか、集めたいならば地道にかき集めるしかないらしい。
で、その結果をハンネとリツに伝えたところ、こんな回答が返ってきた。
「うーん、気になるわね……とは言え、幻惑無効を付けてカオティックポットを割り続けるというのも……」
「虚無属性マテリアル。高騰しそうやなぁ……」
「まあ、二人とも頑張ってくれと言う感じだな」
なお、何を頑張るのかは俺にはよく分からない。
では、アドオンの続きを見ていくとしよう。




