590:ブラックキーパー・ネラカーンω・虚光-6
(・ω・)<本日は四話更新となる。こちらは二話目だ。
「……!」
虚光の斧が迫りくる。
俺は一瞬とは言え身を強張らせてしまっていたため、回避のための動作を取れない状態。
防ぐのは不可能。
受けたら確実にシールドも体も持っていかれる。
理屈は分からないが、これはそういう一撃だ。
だから、避ける以外に生き残る道はない。
「『昴』!」
「ほうっ」
なので俺は意思一つで行える足裏からの『昴』射出と言う行為でもって跳躍。
『昴』本体も素早く体内に戻して、虚光の斧を寸でのところで避けることに成功した。
「完全に虚を突いたと思ったのだがな?」
「っう!?」
追撃、虚光は地面に叩きつけた斧を素早く返しつつ背中の竜巻で俺の眼前にまで移動してきて、反対側の刃で切り裂こうとしてくる。
だがその時には身の強張りも解けていたので、俺はヴァンパイアマントの機能で空中跳躍を行い、地面に向かって跳ぶことで回避。
そして、そのまま虚光から距離を取るように歩を重ねていくが……。
「だがそうでなくてはつまらない」
「こ、の……キーパーだからと言ってやっていい事と悪いことがあるだろうが!?」
距離が離せない。
俺が離れようとするほどに虚光も距離も詰め、斧を遠慮なく振るってくる。
だから俺は虚光の動きを読んで全力で刃を避け、さらには反撃も加える。
加えるが……虚光の動きが止まらない。
「何のことだ?」
「~~~~~!」
スタミナの概念などないと言わんばかりに斧を振り続け、迂闊に距離を詰めようとすればタックルを仕掛け、俺が連続攻撃の為に接近し続けようとすれば空いている左手で掴みかかろうとし、俺が足を止めたら足を踏みつけることで縫い留めを図ってくる。
そして、その全てが必殺であり、俺が削り切るまでに一撃当てれば十分と言う割り切りがされている。
さっきまでの素人拳法が嘘のような戦闘強者具合だ。
しかも、攻撃を当てた衝撃で得られる情報がおかしいのは変わらず。
監査入りなのが影響しているのだろうが、ちょっとは自重しろこの馬鹿、とか悪態を吐きたくなってくる。
現実には攻撃の回避と反撃で思考も体も限界となっているため、悪態を吐く余裕などないが。
「おっと、これで六割か」
「はぁはぁ……何をする気だ?」
不意に虚光の攻撃が止む。
そして、その隙を突くように俺は拳を繰り出すが、瞬間移動としか言いようのない挙動でもって虚光の姿は掻き消え、俺たちを取り囲んでいた魔物の一体の前にまで移動している。
どうやら虚光の奴は他の魔物へ関わる力として、シールドを張れるだけでなく、居る位置に転移する能力も隠し持っていたらしい。
で、虚光の残りシールドは60%か。
なんか嫌な予感がしてきた。
「いや、何をする気でもこっちのやる事に変わりはない!」
俺は虚光へと駆け寄っていく。
「なに、大した事ではない。貴様に利用されるからとフロア全域攻撃は控えていたわけだが、残りのシールドが六割ならば、貴様を倒すためだけに行使するのも悪くはない。そういう話だ。そういうわけだから、第一に在りしは火である。赤く赤く燃え上がれ」
虚光の背中の輪の一つに炎が灯った。
「ふっざけんな!」
「ふざけてなどいない」
俺は虚光へと拳を撃ちこむ。
斧を出す前までは、ここからの反撃はそこまでキレのあるものではなかったが……今の虚光は普通に反撃を仕掛けてくる。
「ああ、それと貴様らへの待機命令も解除だ。各自好きに暴れろ。さて、第二に在りしは風。新緑のように舞い上がれ」
「「「ーーーーー!」」」
「マジでふざけんな!」
それどころか、他の魔物たちも行動開始。
いや、むしろこれまでは俺を確実に包囲殲滅するために、待機の体で集まっていただけなのかもしれない。
明らかに待機前よりも数が多い魔物たちが突っ込んでくる。
「「「ーーーーー!」」」
『トビィ!?』
「くそ、どうする? どうするか? こんなの一つしかないだろうが!」
「はははははっ! いいぞ! ハッタリだろうが諦めないのは好感を持てる!! 第三に在りしは水。青々とした奔流よ。渦を巻け」
飛びかかってきたブラックハウンドを蹴飛ばす。
ブラックニンジャの投げてきたクナイを掴んで投げ返す。
槍を構えて突っ込んできたブラックデイムビーは突撃槍の横を叩いて軌道を逸らす。
ブラックターキー、スカーレットクロック、ブラックコーラル、ブラックストロドルたちがシンプルに突っ込んでくるのは二重推進で逃げて避ける。
見つけたブラックドクターは殴り飛ばしからのドリブルで始末する。
そして、そんな俺の行動に挟み込むように攻撃を仕掛けてくる虚光の一撃を紙一重で避けて、反撃としてサーディンダートやグレネードを残して少しずつダメージを与える。
「だが、そのままでは遠からず破綻するぞ? 貴様はどうするつもりだ? 第四に在りしは地。黄金色の砂塵は万物を飲み込まんとす。ん?」
「はぁはぁ、どうするかだって?」
ここで虚光の背中の輪に四つ目の竜巻が現れる。
それこそが俺が待っているものであり、それを確認した俺はグレネードを踏みつけ、『昴』の射出も合わせた三重推進でもって、虚光を含む魔物たちの集団から素早く距離を取る。
そして、顔を魔物たちの集団に向け、口を開き……。
「こうするんだよ。特殊弾『ドレイクブレス』」
「「「ーーーーー!?」」」
俺の口から青白く、極寒の冷気を纏ったビーム状のブレスが放たれる。
放たれたブレスは、魔物たちを容赦なく飲み込み、吹き飛ばしていく。
勿論、あの場に居た魔物たちの多くはシールドを持っているため、これで倒れるようなことはない。
せいぜい、タフなコーラル種も含めて、シールドが剥がれるだけだ。
虚光にしても、虚無属性の性質とスペックを考えれば、10%削れるかどうか程度であり、痛手とは言えない。
「ああなるほど。これはしてやられた。だが、第五に在りしは空。ただ在りしものによって四大は至天の道を切り開かんほどに高められる」
「止められないもんなぁ。そうだよなぁ。そこの制限は生きていてくれて本当に助かる」
だがそれでいい。
たぶんだが、この場にはフロア12に居るほぼ全ての魔物が居る。
そのほぼ全ての魔物たちからシールドだけを剥ぎ取って、しかも虚光は全体攻撃を行う間近である。
「特殊弾『ダメコン・集中』発動」
俺は『昴』にピクトステッカーを貼った上で遠くへ投擲。
そして『昴』だけを手元に戻すことで、ピクトステッカーを遠くへと貼る。
その上で最後の特殊弾『ダメコン・集中』を発動した。
「故に逆巻け。在りしものが肥大するほどに、無きものもまたその域を広げるが世の道理。混沌反転し、虚無を招け、零に在りしものをこの地に招け。来たれ零に在りしもの」
「くたばれ、雑魚共」
「「「ーーーーー!?」」」
本日三度目の爆発がフロア12全域を覆う。
「さて……」
だが、俺は特殊弾『ダメコン・集中』の効果でピクトステッカー一枚と引き換えに爆発を凌いだ。
「ふむ……」
虚光も術者であるため、被害は全く受けていない。
「これで一対一の上にお前には危険なレベルのデバフ付きだ」
「見事だな。見事にしてやられた。だが、こうでなくては面白くないというものか」
そして、大量の魔物たちは奇麗に消え去って、代わりに虚光の全身には夥しい数の怨霊が纏わりついていた。
これならば、どんなカス当たりでも有効打になるだろう。
「殴り飛ばしてやる」
俺は虚光に向かって駆けて行った。




