577:フロア10リザルト
「「「ーーーー!?」」」
焼夷ガスの熱によってレキノーリ液が発火して燃え上がる。
俺はレキノーリ液の正確な性質は知らないのだが、石油っぽい見た目通りによく燃えるようだ。
「思ったよりもダメージにはなってないな。だが、相手のバフにもなっていないなら問題はないか」
『ブブ。相手のバフになったかもしれないと言うのは?』
「レキノーリ液は魔物側にとっての重要物資みたいだからな。それが燃えて、気化して、取り込んだなら……まあ、何かはあるかもしれないとは思ってた。何もなかったみたいだが」
だが、ブラックガーゴイルたちに与えるダメージが増えているようには見えないし、ブラックガーゴイルたちの動きが良くなるような様子も見られない。
焼夷ガスと発火したレキノーリ液を振り払うように三体とも暴れているだけだ。
それと、竜頭のブラックガーゴイルがレキノーリ液を吐き出すのを止めているので、そう遠くない内に燃料が無くなったことによる鎮火に至りそうではあるな。
「仕留めるぞ」
『ブン』
「ーーーーー!?」
俺は二重推進で飛び込むと竜頭のブラックガーゴイルを殴り、『昴』を撃ち、吹き飛ばして、首のない残り二体が振り回している武装に衝突させる。
「オラァ!」
「ガゴォ……」
そして続けて二度三度と殴ってシールドを剥がすと、体の中心部にあった核を打ち砕いて撃破する。
「で、残りも……もう終わりそうだな」
「「ーーーーー……」」
『ブン。同士討ちで削り合っていたようです』
竜頭を撃破したところで俺は一退避し、特殊弾『シールド回復』を使用。
細かい被弾、焼夷ガスのダメージ、ヒールバンテージの呪・でたらめ起動の影響で溜まっていたダメージを回復しておく。
その上で残りのブラックガーゴイルの様子を見るが、既にどちらもボロボロと言ってもいい状態になっている。
どうやら、お互いに攻撃しあってシールド消滅まで削り合ってしまったらしい。
「ま、トドメは貰っておくぞ」
『ブン』
「「ーーーーー!?」」
と言うわけでサクッと撃破して終了。
そして周囲を確認。
ブラックハウンドの追加は……まだ来ていないみたいだな。
≪幻想系マテリアル:隕鉄・浸食を34個回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨・火炎を1個回収しました≫
≪幻想系マテリアル:竜命金・浸食を3個回収しました≫
≪幻想系マテリアル:竜命金・浸食を3個回収しました≫
≪設計図:ガーゴイルヘッドを回収しました≫
≪設計図:アドオン『レキノーリ液無効化』を回収しました≫
『ところでトビィ。途中のブラックハウンドが来たのを感知したのは……』
「あれか? 竜頭のブラックガーゴイルの弾が他のに当たった場面が何度かあったんだが、その数が一度増えた感じがあってな。そうしたら案の定だった」
『ブン。なるほど……』
報酬も来たので、戦闘終了だな。
だがそれは水密扉が開かれ始めると言う事であり、他の魔物が何時入ってきてもおかしくない状況とも言える。
それで実際に魔物が入ってきてしまえば、決闘部屋の影響でエレベーターが動かなくなるかもしれないし、急いで乗ってしまおう。
そこまで考えて俺はまだ残っている焼夷ガスの中に踏み込んで、エレベーターの方へと向かう。
『ーーーーー……』
「ん?」
そうして焼夷ガスの中に入った俺の耳に何かが聞こえてきた。
「……」
よく見れば焼夷ガスの一部が人の頭蓋骨のような形をしている。
人が焼けるような臭いがしている。
手足に何かが纏わりついてくるような感覚がしている。
「はぁ……」
ああなるほど。
レキノーリ液が燃えても何もないのだと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
戦闘中はそう長く浴びなかったから分からなかったが、今は余裕があるから分かってしまったようだ。
『助けて、助けて、助ケテ……』
『痛い、熱い、手ガ脚ガ……』
『ドウシテ、コンナ目ニ、ドウシテ……』
耳を澄まさなくても、そうであると気づけば聞こえてくる。
助けを求めるような人間たちの声が。
『何が悪カッタノ……ねえ、何ガ……』
『俺には妻ガ……子供ガ……』
『殺さないで! 殺サナイデ! ナンデモスルカラ!!』
よく見なくても、そうであると気づけば見えてくる。
助けを求めてこちらに這いよる骸骨の群れが。
『私は愛サレテナイ! ナンデドウシテ!?』
『許せない。ユルセナイ……あの女ガ……』
『無視しないでよ! 無視スルナヨ! 私を見テ!!』
嗅がなくても、そうであると気づけば漂ってくる。
火葬されても隠し切れない、物理的なものすら伴う腐臭が。
『無関係ジャナイ! 妾を助ケヨ!』
『ミンナ、ヤッテイタ事ジャナイカ! ドウシテ僕ダケガ!!』
『救ッテヨ! ネエ、救ッテヨ! 救イナサイヨ!!』
無視しようとしても、そうであると気づけば感じずにはいられない。
一方的にこちらにすがり、纏わりつき、救済と言う形でこちらからの搾取を試みる亡者の気配を。
ああ、全く以って……。
「くだらない」
『『『!?』』』
『昴』から俺の目にだけ見えるように炎が溢れ出して、亡者たちを焼き、消滅させていく。
俺は歩き続けてエレベーターに辿り着き、エレベーターを起動させる。
『トビィ? どうかしましたか?』
「いいや、何でもない」
エレベーターがフロア11へと移動を始める。
同時に思う。
レキノーリ液を燃やした影響は全く以って下らないものだった。
俺にだけしか感じ取れないようになっていたのは凄い話だが、内容そのものは下らないと言う他ない。
どうしてあんなもの……俺には縁もゆかりもない過去のどこかに居た誰か程度で俺の足を止めることが出来ると思っているのか。
どうして俺のように殴る事にしか興味がない人間が助けてくれると思っているのか。
「あと2フロア、どんな地獄になっているのやらと思っていただけだ」
『ブ、ブブ。……。ブン、そうですか。そうですね』
俺は殴りたいから殴るし、殴る時のために殴らないのだ。
そこを間違える気は無い。
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トビィ
称号:『マレディクタス』
燃料:97/100
コア:ニンジャ
アドオン:オートコレクター
アドオン:混乱無効
アドオン:睡眠無効
アドオン:軽装行軍時燃料消費軽減
頭部:エクソシストヘッド(呪鉄・虚無):物理-魔術-外部-ブレス(特殊弾『ドレイクブレス』0):呪・被ダメージ増加:左目破損
胴体:エクソシストボディ(呪鉄・虚無):拒絶-魔術-外部-回復(特殊弾『損傷回復』0):呪・属性耐性反転
右腕:ヴァンパイアアームR(玉鋼・電撃):侵食-化学-内部-付与(特殊弾『腐食性粒子』1)
左腕:ヴァンパイアアームL(フォッシル・火炎):魔力-魔術-境界-防御(特殊弾『シールド発生』金2、特殊弾『黄金障壁』0)
脚部:エクソシストレッグ(呪鉄・虚無):物理-物理-外部-即死(特殊弾『首刈り一閃』1):呪・攻撃力低下
武装:サーディンダート(オニキス・電撃):魔力-魔術-外部-拘束(特殊弾『睡眠』3)
武装:フググレネード(鉄・火炎):火炎-化学-外部-遮蔽(特殊弾『焼夷ガス発生』3)
武装:ヒールバンテージ(鉄):魔力-魔術-外部-回復(特殊弾『シールド回復』2):呪・でたらめ起動
武装:ヴァンパイアマント(鉄):侵食-魔術-境界-移動(特殊弾『影渡り』2)
武装:エンプティポット(銅):時空-物理-境界-防御(特殊弾『内外時間乖離』0):中身・レキノーリ液
武装:ピクトステッカー(オニキス・電撃):物理-物理-境界-防御(特殊弾『ダメコン・集中』2):残り5枚
武装:ポリプーロの契約武装『昴』(竜命金278):(火炎/侵食)-法則-異界-付与-『神降・火之迦具土神』
武装:簡易ラボ(岩):残数3:特殊弾未対応
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インベントリ 36/48
頭部:ヴァンパイアヘッド(フォッシル・火炎)
胴体:ヴァンパイアボディ(フォッシル・火炎)
脚部:ヴァンパイアレッグ(フォッシル・火炎)
右腕:エクソシストアームR(呪鉄・虚無) 呪・燃料消費増加
武装:簡易ラボ(岩):残数3
特殊弾『腐食性粒子』 1
特殊弾『シールド発生』金 2 呪われ
特殊弾『首刈り一閃』 1
特殊弾『睡眠』 3
特殊弾『焼夷ガス発生』 3
特殊弾『煙幕発生』 5
特殊弾『影渡り』 2
特殊弾『ダメコン・集中』 2
特殊弾『シールド回復』 2
鉱石系マテリアル:銅 6
鉱石系マテリアル:岩 52
生物系マテリアル:皮 53
鉱石系マテリアル:呪鉄・虚無 18
幻想系マテリアル:クオリア・氷結 37
幻想系マテリアル:エーテル・拒絶 8
幻想系マテリアル:隕鉄・拒絶 40
鉱石系マテリアル:鉄・拒絶 27
生物系マテリアル:骨・電撃 7
鉱石系マテリアル:玉鋼・電撃 2
生物系マテリアル:フォッシル・火炎 1
鉱石系マテリアル:金・浸食 137
生物系マテリアル:肉・魔力 3
鉱石系マテリアル:玉鋼・氷結 70
生物系マテリアル:甲殻・時空 2
幻想系マテリアル:隕鉄・時空 69
生物系マテリアル:琥珀・時空 120
生物系マテリアル:骨・浸食 4
生物系マテリアル:甲殻・浸食 3
生物系マテリアル:草・浸食 1
幻想系マテリアル:隕鉄・浸食 34
生物系マテリアル:骨・火炎 1
(枠外)特定物質:緋炭石 463
(枠外)白紙の設計図 1
(枠外)『第三次計画の計画書』 1
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