563:危機は来続ける
「っ!?」
「「「バウッ!?」」」
『これは……』
唐突な閃光。
それは……。
「核南瓜アアアアアアアァァァァァァァッ!?」
「「「ーーーーー!?」」」
フロアのどこかで発生したらしいブラックパンプキンによる核南瓜攻撃だった。
あまりにも突然で、当然ながら避けることも出来ず、俺もブラックハウンドも、他の魔物たちも被弾して吹き飛ばされ、その効果によって強制的にシールドをミリ残り状態にさせられる。
正に理不尽。
存在している事を知っていて、撃ってくるならこのタイミングであろうと予測出来ているならまだしも、今のような認知外の場所から突然すぎる爆発が迫ってくるのは流石に対処不能だ。
これがあるから、ブラックパンプキンと言う魔物は危険すぎるのだ。
「ぐっ、だがチャンスでもある!」
「ギャイン!?」
俺は特殊弾『シールド回復』を発動させてシールドを即時回復。
次の核南瓜を撃たれても大丈夫なように安全圏までシールドの量を増やす。
と同時に『昴』を二閃。
手近な場所に居たブラックハウンドを切り裂いてシールドを剥ぎ取り、トドメまで持っていく。
そう、ブラックパンプキンの核南瓜攻撃は敵味方関係なし。
俺のシールドがミリ残りの状態であるなら、他の魔物たちも同様の状態になっているのだ。
本当に理不尽!
「おらあっ!」
「バウッ!?」
「キャイン!?」
なのでそのまま他のブラックハウンドも撃破してしまう。
一体、ランダム強化の影響なのか食いしばり持ちも居て、反撃を試みても来たが、こちらの身のこなしには追い付けなかったので問題は無し。
「よし、このまま逃げるぞ」
『ブン』
≪生物系マテリアル:肉・氷結を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨・魔力を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨・拒絶を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:皮・火炎を1個回収しました≫
報酬が手に入ってくる。
どうやら一度完全に仕留め切ったという判定になったようだ。
なお、これでインベントリの容量は43/48となり、後五種類しか入らないので……ぶっちゃけヤバい。
いや、インベントリの容量がマックスになってしまっても、その場に1個しかないマテリアルを捨てて行けばいいだけの話なのだが。
「む……また大物が近づいてきているな」
『ブブ……何と言いますか、忙しいフロアですね。次から次へと問題が起こっているような気がします』
と、ここで自分に迫ってきている隕石がないか確認のために顔を上げてみたのだが……うん、また大きいの、フロア9が始まった当初にぶつかってきたものに匹敵するサイズのものがこちらに迫ってきている。
どうやら避難する必要があるようだ。
「実際、次から次へと問題は起こってる。と言うか、隕石も核南瓜も混沌属性ブラックハウンドも対処を間違えたら詰むような大問題。正直、悪態の一つや二つくらいは抑えきれずに出てくるレベルだな」
『ブブ。確かに出ていましたね』
正直に言えば部屋の中には入りたくない。
ブラックハウンドが何処からどう湧いてくるか分からない以上、迂闊に狭い部屋に入ってしまうと、四方八方から襲い掛かられて、そのまま食い殺されそうな予感がするのだ。
しかも、ブラックハウンドの転移能力的に壁を背にしていれば安全とか言う生ぬるい物でもないし。
だが、露天範囲全体を吹き飛ばす隕石が落ちて来る度に特殊弾を利用して防ぎ続けるのは、あまりにもコストがかかりすぎるし、次以降のフロアが厳しくなってしまう。
さっきの核南瓜のような突然すぎる一撃は仕方がないにしても、フロアのギミックだけで凌げるなら、そっちの方で凌ぐ方が長期的には良いはずだ。
「到着っと」
『ブーン。敵影はありませんね』
「だな」
アラームが鳴り始め、建築物の扉が閉まり始める。
そんな中で俺は塔の一本に進入し、素早く中の様子を確かめる。
とりあえず敵影はない。
マテリアルタワー、レコードボックスの類もない。
地下へと通じる階段やエレベーターの類も確認できず。
広さはそれなりで、ブラックハウンドが転移してきても、問題なく戦闘をこなせるだろう。
完全にただのちょうどいい空き部屋のようだ。
「なら、隕石着弾まで待って……」
建築物の扉が完全に閉まり、アラームが止む。
俺は念のために部屋の中心に立っておき、燃料の補充をしつつも、『昴』を油断なく構えておき、定期的に頭を横回転させて周囲を警戒する。
「ミイィィスゥゥ……」
「んなっ!?」
そして唐突に何かを脳天へと叩き込まれて、俺は床に顔から突っ込む事となった。
「何が起きて……っ!?」
「ミススス……」
俺は即座に床を横に転がると、放たれるであろう追撃を避けつつ相手の正体を確かめようと視線を動かす。
『トビィ。相手の名前はブラックミストと言うようです』
「ブラックミスト……ミスト種……新顔か」
そこに居たのは空中に浮かぶ、微妙に人っぽい形を取っている黒い霧の塊。
周囲に浮かんでいるのは氷の塊と時空属性のエフェクトがかかった魔力の塊。
どうやらゴースト種とは似て非なる新たな魔物のようだ。
「「バウバウッ」」
「キキキキキ」
そして、当然のようにブラックハウンドも壁と床の間から出現。
今度は火炎属性と物理属性のようだ。
「倒すしかないな」
『ブン。そうですね』
外で巨大隕石が着弾し、その衝撃で空間全体が揺れる中、俺は『昴』を手に駆け出した。




