539:フロア7簡易ラボ・根絶やし
「さて、俺が思い描くようなものなら本当に有用なんだが、特殊弾『根絶やし』の実態は……」
『ブン。こちらになります』
では、特殊弾『根絶やし』の詳細を見てみよう。
△△△△△
根絶やし
種別:特殊弾
形式:(物理/虚無)-法則-外部-ダメージ
命中した魔物またはゴーレムを消滅させる。
その後、命中した魔物と同種の魔物を坑道を脱出するまで出現しないようにする。
または、命中したゴーレムと同種のコアを使用しているゴーレムを坑道を脱出するまで出現しないようにする。
この特殊弾は同時に一発しか保有できない。
この特殊弾を一回目の効果が残っている間にもう一度使うと、一回目の効果は無効化される。
この特殊弾は特定の坑道でしか使用できない。
この特殊弾は一部の魔物には効果を及ぼさない。
この設計図はコピーする事が出来ない。
≪作成には以下の物質が必要になる≫
異なる属性・異なる種類のマテリアルを各1個ずつ、合計9個
特定物質:緋炭石が10個
特定物質:レキノーリ液が1瓶
▽▽▽▽▽
「……。これはいわゆる産業廃棄物、産廃と言う奴では?」
『ブーン……ブーン……効果は凄まじいので、産業廃棄物と言うよりは放射性廃棄物の方が近いと思います。トビィ』
特殊弾『根絶やし』の効果を見た俺とティガの顔は、もしかしなくても何とも言えない表情になっているだろう。
「ああ確かに。放射性廃棄物の方が感覚としては近いか」
効果自体は優秀だ。
色々と条件は付いているが、要するに当てた魔物は、当てた回の探索中は二度と出て来なくなる、と言う事なのだから。
危険な魔物……例えばトリカブト種に当てることが出来れば、ケルベロス種による召喚も防ぐ形で根絶する事が出来るのだろう。
なお、当然ではあるが、キーパーは効果が発動しない魔物である。
「利用するために要求されているハードルの高さと言う意味でもな」
『ブン。そうですね』
問題は使うにあたって満たすべき条件の方だ。
まず装填できるパーツが白紙の設計図を使わないとほぼどうにもならない。
対応が(物理/虚無)の両方を要求されているし、法則原理なんて『昴』以外ではほぼ見かけたことがないからだ。
『でもトビィ。カオティックポットなら装填できますよ』
「……」
なお、何故か俺の手元にある設計図だと、何故かカオティックポットが条件を満たしている。
属性も原理も制限なし表記だったから、うん。
「作成に必要な物質も問題だな。異なる属性・異なる種類のマテリアルを各1個ずつ、合計9個ってなんだ?」
『ブーン。そうですね……』
マテリアル要求も厳しい。
これまでにない表記だったのでティガに詳細を求めたのが、返答はこんな感じだった。
例1
特殊弾『根絶やし』の作成に肉を使おうとする。
すると、肉・電撃や肉・火炎と言った、異なる属性の肉は特殊弾『根絶やし』の作成に使えなくなるらしい。
例2
特殊弾『根絶やし』の作成に骨・電撃を使おうとする。
すると、皮・電撃や鉄・電撃と言った、電撃属性の異なるマテリアルは特殊弾『根絶やし』の作成に使えなくなるらしい。
つまり、特殊弾『根絶やし』の作成には……物理、火炎、氷結、電撃、拒絶、侵食、魔力、時空、虚無の9つの属性で、被りが出ないように9種類のマテリアルを使う必要があるらしい。
それぞれの要求数こそ1個だが、集められるかは運もだいぶ絡んでくる事だろう。
とりあえず今回の探索中で揃う事は……手持ちが物理、虚無、氷結、拒絶、電撃の5属性、こことこの先のフロアで侵食、魔力、時空の3属性……。
あ、フロア10、11、12で火炎属性を引けば作れて……いや、ヴァンパイアパーツを一つ分解すれば、そこからフォッシル・火炎が少しだけ取れるから、属性は揃ってしまうな。
『ブブ、マテリアルが揃う可能性はありそうですね……』
「みたいだな……いやでも、種類被りの可能性が……」
いやでも、マテリアルの種類が被るよな。
えーと、まとめてみるなら……。
物理:銅・岩・皮
火炎:フォッシル
氷結:クオリア
電撃:肉・骨・玉鋼・オニキス
拒絶:隕鉄・エーテル・鉄
侵食:肉・木・甲殻・金(予定)・竜命金(予定)
魔力:?
時空:?
虚無:呪鉄、ストレジェット
「魔力属性と時空属性が被らなければ、揃うな……」
『ブン。揃いそうですね……』
どうしてだろうか?
なんか気が付いたらだいぶ条件を満たしているというか、ほぼ確実に条件を満たせそうな感じだ。
1個だけでいいなら、適当に魔物を倒していれば何かは手に入るだろうし。
「いやでもまあ、レキノーリ液と言う現地で回収するしかない必要素材があるから、結局は運だな。うん」
『ブン。そうですね。回収自体はエンプティポットがあるので出来ますが、出て来るかどうかは全く別の話ですから』
なんか背筋が冷たくなってきた気がする。
特殊弾『根絶やし』を使うために必要な条件はかなり厳しいはずなのに、なんでこんなに上手く行きそうになっているんだ……。
後はレキノーリ液さえ拾えれば製作が可能だし、使用する事も可能って、ちょっとどころでなく怖いぞ……。
ヒノカグツチノカミ様のお導きだとでも思っておけばいいのだろうか……。
「と、とりあえず確認は出来たんだ。今は竜命金・浸食の回収のために必要な換装をするか」
『ブ、ブン。そうですねー』
まあ、これからやる事に変わりはない。
俺はそう割り切ると、次に移る事にした。
誰に投げつけるかが非常に悩ましいもの。
なお、ブラックキーパーのように一部の魔物には通用しない特殊弾なのは本編表記通りですが、ムカデ種は特殊弾・特殊能力の無効化能力を何かしらの方法で封じる事で根絶やしが可能になります。
その何かしらの方法と言うのが、かなり面倒なものにはなりますが。




