534:飛来する箱
本日は六話更新になります。
こちらは五話目です。
「クル……」
「『首刈り一閃』」
『ブブ。早いですね……』
新たな魔物が出現した。
それは良いのだが、イエローピジョンの姿が見えたため、俺は他の全てを無視して二重推進で飛び込み、特殊弾『首刈り一閃』発動からの一撃でイエローピジョンの首を刎ねた。
「ピジョン種に生存権はない」
「「「ピピピピピ!」」」
「「アアアアァァァァァァルウウウウウゥゥゥゥゥヴヴヴヴゥゥゥゥ!」」
それはそれとして、他の魔物は……ピトフーイ種が黄色、橙、赤の一体ずつで、俺の方に向かってきている。
それにさっきから居たレッドアルバトロスが無理やりに進行方向を変更してこっちに向かってきていて、新たに出現したオレンジアルバトロスもこっちに突っ込んできている。
このコースと勢いだと……。
「俺は避ければいいな」
「「アッホウゥ!?」」
俺は二重推進でその場から大きく避ける。
すると、この円盤の上に二体も居られるような魔物ではないアルバトロス種たちは勢いよく正面衝突し、大きな音を周囲に響かせつつ、どちらもよろめき、シールドも削れた。
これは……チャンスだな。
「「「ピピピピピ!」」」
「ターキー無し。どちらもよろめいていて……此処だ!」
「「!? ……ZZZ」」
俺はピトフーイ種の攻撃を走り回って逃げつつ、両方のアルバトロス種に一発ずつ特殊弾『睡眠』付きのサーディンダートを投擲。
どちらも眠らせて……眠ったアルバトロス種たちはそのまま円盤の外に落下する。
撃破だ。
「さて、後の事を考えるとお前らはきちんと倒した方がいいな」
「「「ピピピチーン!?」」」
ピトフーイ種たちについても普通に殴って撃破していく。
ただしシールドを剥がした後に円盤の外に出さないようには注意をする。
このフロアのラストが雷が落ちる中で、円盤の外に居る魔物たちが処理されるのを待つある種の耐久状態に入るのが既に予想出来ていて、その時間を短くするためにも円盤の外に居る魔物の数は出来るだけ減らしておいた方がいいからだ。
なお、ノーダメージで倒すのは無理だった。
流石に一対三で、ランダム強化で素早さ強化を引いたレッドピトフーイが居て、全ての攻撃を完全に避けるのは無理がある。
まあ、ヒールバンテージで問題なく直せる範囲だったので良しとしよう。
「ん? うおっ!?」
と、ここで唐突に視界に影が差してきたので俺は頭上を見上げ……見えたものを避けるべく後ろに飛び退く。
そして、見えたものは円盤の中心に落下、直撃し、轟音と振動を伴いつつも、無事に静止した。
「……。マテリアルタワーと言い、これと言い……魔物たちと同じくらいに回収物が危険なんだが……」
『ブブ。どれもこれも勢いが有りすぎですね……』
落ちてきたのはレコードボックスだった。
どうやら回収物らしい。
『またミミックでしょうか?』
「まあ、ミミックが出てくる前提で開けるべきだろうな」
俺はレコードボックスに手をかざす。
そして、選択肢を見ることなく後転し、レコードボックスがミミックであっても攻撃が当たらず、円盤の外に居るスワロー種たちからの攻撃も当たらない位置にまで移動する。
結果は……。
『ブ、ブブ。動きませんね』
「よし!」
どうやらちゃんとレコードボックスだったらしい。
と言うわけで俺は選択肢を急いで見る。
次の魔物が何時来るか分からないというか、だいぶ積乱雲にも近づいているからだ。
いつまた落雷がきてもおかしくはない。
≪設計図:特殊弾『根絶やし』≫
≪設計図:アドオン『シールド自然回復』≫
≪設計図:キュムロニンバス≫
≪設計図:特殊弾『根絶やし』を回収しました≫
「特殊弾『根絶やし』でいいな。名前だけでも明らかに強い」
『ブン。そうですね』
「後、ティガ。俺がミミックを引かなかったことで驚いていたのは分かっているからな」
『ブ、ブブ』
と言うわけで特殊弾『根絶やし』を獲得。
どういう効果なのかは分からないし、どれほどのマテリアルを消費するかも分からない。
今回の探索中に使いたいなら白紙の設計図を引く必要もあるだろう。
が、根絶の二文字が入っていて弱いと言う事だけはないだろうから、これは良いものを引けたと思う。
「さて次は……っ!?」
と、ここで唐突に俺の眼前に紫電が走る。
俺は反射的にその場に伏せ……。
「ピチーン!?」
『ブン。イエローピトフーイが撃墜されました』
「みたいだな……」
直後、いつの間にか右手側に来ていた積乱雲から紫電に沿って雷が放たれ、その進路上に居たイエローピトフーイに直撃した。
円盤の外に居る魔物たちはいずれもシールドを剥がし終わっている魔物だ。
そんな状態で属性耐性を加味してもなお一撃必殺と言えるような雷の直撃に耐えられるわけもなく、イエローピトフーイは絶叫し、黒焦げになって墜落した。
「と言うかだ。こうなるとここからは……」
円盤は積乱雲を進行方向右手に置きつつ、ゆっくりと積乱雲の周囲を回り、少しずつ高度を上げているようだった。
積乱雲は当然ながら、ゴロゴロと嫌な音を響かせているし、雷光も覗かせている。
そして、先ほど一発来たことからも分かるように……。
『ブブ。横からの雷の連打のようですね』
「完全にアクションゲームだな、うん」
俺の視界に幾つも紫電が見えた。
そのいずれもが右から左へと伸びていて、逃げ場は円盤の上の限られたスペースにしかなかった。
「ピチーン!?」
「スワッツバァ!?」
だから俺は逃げ場に駆け込み……雷鳴が響き、また紫電が迸って、俺は紫電がない場所に逃げて、次の雷光が輝いて、時折雷に焼かれた鳥たちの絶叫が響く。
それが何度も繰り返されて、俺の集中力とシールドを削り取っていく。
それはある種の地獄のようにも思える光景であり、俺に出来る事は全力で逃げ惑う事だけだった。
「はぁはぁ……いやこれ、強制進行のハプニングでもここまで酷いのは早々ないだろ……」
『ブン。そう思います……』
そんな地獄が落ち着いたのは円盤が積乱雲の上に辿り着いたところでだった。
既に円盤の周囲に居た魔物たちは全滅している。
円盤の下は台風の目のように雲一つない。
が……周囲の雲は相変わらず雷を纏っているので、目的地がこの積乱雲の下である事も含めて、まあ、この先についてはお察しだろう。
「さて何が来る?」
『ブブ。なんでしょうね?』
俺が身構えるのに合わせるように円盤は降下を始めた。
なお、レコードボックスは前回と同様に乱数生成をしたところ、92できちんとレコードボックスでした。
キュムロニンバス=積乱雲




