533:積乱雲
本日は六話更新になります。
こちらは四話目です。
「ーーーーーーー!?」
『トビィ!?』
電撃と衝撃が全身を駆け巡り、視界が激しく明滅し、聴覚が吹き飛ぶ。
そしてそれら全てを無かった事にするべく、満タン状態だったシールドが剥がされた。
「当たり前だが……直撃は……駄目だな……」
『ブブ。特殊弾『シールド発生』鉄を再使用します』
勿論すぐに特殊弾『シールド発生』鉄は再使用し、シールドを展開する。
その上で今さっきの雷を思い返す。
まず威力は言わずもがな。
放たれてから避ける事は不可能と言うか、何処からどういう軌道で撃たれたのかも分からなかったレベルなので、見てから対処は出来ない。
だが前兆は……あった。
円盤から放たれた紫電。
あれが前兆であり、雷の落ちる先を示していた。
ならば……。
『トビィ!』
「来たか!」
円盤から紫電が放たれた。
それを見た瞬間、俺は紫電が放たれた場所から離れるように後方へと転がる。
「っう!?」
直後、紫電が放たれた場所に向けて雷が落ち、激しい閃光、轟音、衝撃が周囲一帯に放たれる。
シールドは減らなかったが……それでも一瞬、眩暈を覚えそうなほどだった。
この衝撃を思えば、魔物たちが逃げ出すのも仕方がないと思えるほどだ。
『トビィ、極めて危険な状況ですが……』
「嫌がらせか。嫌がらせだな」
そんな状況だが、周囲の黒雲から柱状の雲が飛んできて、飛んできたそれは円盤の縁に着いたところで円盤からの電撃によって雲が剥がされ、中身が円盤の上に着陸する。
肝心の中身は……緋炭石のマテリアルタワーだった。
回収せざるを得ない。
雷に打たれるリスクはあるが、今後の燃料補充を考えたら、見逃すという選択肢はない。
「やったらぁっ!」
俺は自身の後方に雷が落ちるのを音と衝撃で認識しつつ、緋炭石のマテリアルタワーに殴りかかる。
接触制限を確認する暇など当然ないので、グレネード、殴打、『昴』射出、裏拳と叩き込んでいく。
「っお!?」
そして、そこまで叩き込んだところで目の前の緋炭石のマテリアルタワーから紫電が放たれたので離脱し……落雷。
緋炭石のマテリアルタワーは完全に破壊された。
と同時に、俺の眼前に次のマテリアルタワーとして銅・電撃のマテリアルタワーが突き刺さる。
これ、もしかしなくても、マテリアルタワーが設置される際も気を付けなければ、飛んできたマテリアルタワーが直撃して大ダメージとかあるのではなかろうか?
いや、たぶんダメージはあるな。
きちんと逃げておこう。
それと……。
「雷は金属に落ちるんじゃなくて、通電しやすいところに落ちるんだったか!?」
目の前の銅・電撃のマテリアルタワーからは既に紫電が放たれていた。
なのでそう言う意味でも俺は逃げた。
各関節を回転させることでクイックターンを決め、ヴァンパイアマントを起動した上で二重推進で飛び、銅・電撃のマテリアルタワーから距離を取った。
で、直後に落雷。
銅・電撃のマテリアルタワーは破壊されて……代わりと言わんばかりに玉鋼・電撃のマテリアルタワーが円盤に突き刺さる。
「こっちは回収!」
玉鋼・電撃のマテリアルタワーから紫電は出ていない。
それを認識した上で先ほどのように殴りかかったが……『昴』射出のところで玉鋼・電撃のマテリアルタワーは消え去ってしまった。
どうやら接触制限の回数が三回までだったらしい。
「さて、どれぐらい回収できたかは後のお楽しみだな」
『ブン。強制進行のハプニングなので、リザルトは最後にまとめてです』
そうして砕いたところで今度は俺が居る場所の左手側に紫電が見えたので、右手側に向かって素早く転んで落雷を避ける。
「で、ようやく積乱雲終了か」
それが最後の雷だったのだろう。
雨、風、雷の全てが止み、周囲を覆っていた黒雲が晴れて、青空が広がる。
「「「ピピピピピ」」」
「「スワッスワッ」」
円盤の下方に隠れていたピトフーイ種とスワロー種たちも俺の視界範囲内にまで戻ってくる。
ただ戻ってきただけで、俺に届く攻撃も円盤の縁から放たれる電撃対策もないため、円盤の周りをグルグルと飛びつつ、遠巻きにこちらを見ている感じだ。
レッドアルバトロスは……こちらの位置を把握できていなかったからだろう、少し遠くに居るな。
あの分なら戻ってくるまでに少し時間はかかるだろう。
『トビィ』
「ああうん。もう一度来るみたいだな。しかもそこまでに敵を殲滅できて居なかったなら、ギミックで仕留めると言わんばかりだ」
『ブーン。そういう事ですよね。あれは』
で、そうして周囲を見ていて気が付いたのだが、積乱雲がもう一つあって、円盤はそちらに向かっている。
それに積乱雲の下方には俺が乗っている円盤が綺麗に収まりそうな大きさの筒が虚空から生えている。
推測になるが、あの筒が次のフロアに繋がっていて、目的地になるんだろうな。
となれば、あそこまでに戦闘を終わらせなければ雷が降り注ぐ中で戦闘をさせられるわけだ。
それは一見すると俺にとって不利に働きそうな話だが……たぶん、今の状況のように、円盤の上に乗り込めなくなった魔物たちを処理するための仕掛けでもあるような気がするな。
「アアアアァァァァァルウウウウゥゥゥズゥヴヴヴヴウゥゥゥゥ……」
「さて、レッドアルバトロスはやっぱりタイミングを合わせて来ているな」
俺が考えている間にも円盤は空を進んでいく。
そしてレッドアルバトロスが円盤の上に突っ込んでくる姿勢を見せると共に、魔物入りであろう雲の塊が五つこちらに近づいてきている。
突っ込んでくる方角もそれぞれ違うし、やはりタイミングを合わせる事で自分たちが有利になるように動いているようだ。
『ブーン。特殊弾『睡眠』による墜落は狙いますか?』
「止めておく。またターキーが出て来て無駄遣いさせられるのは嫌だしな」
「トオオオオォォォォロオオォォォスウウウゥゥゥ!」
そうしてレッドアルバトロスが突っ込んできて、それと同時に新たな魔物が姿を現した。




