531:襲い掛かる鳥たち
本日は六話更新になります。
こちらは二話目です。
「スワッ!?」
「ちいっ!」
俺はイエロースワローの目前にまで移動し、二重推進の途中から振られていた拳は既にイエロースワローに触れる直前だった。
が、イエロースワローは素早く、そしてコンパクトなターンによって俺の拳を避けてみせる。
完璧に捉えたと俺は思っていたのだが、流石は鳥系の魔物、それもツバメと言う速さと小回りに定評のあるモチーフなだけあって、回避能力は極めて高いようだ。
「ピピピピピ!」
「スワッツバァ!」
「お、と、ちっ」
そして、俺が攻撃を空ぶった隙を突くようにイエローピトフーイが突っ込んできて、それを避けたところにオレンジスワローが風の刃を複数飛ばしてくる。
そのオレンジスワローの攻撃の大半は避けることが出来たが、一発だけ掠り、それだけでもシールドが三割以上吹っ飛ぶ。
こちらのシールドが今は銅製で、総量が少ないのもあるだろうが、流石に橙の魔物だけあって火力は高いらしい。
「だが理解した」
「スワッツバァ!」
俺が立ち上がると、十分に距離を取ったイエロースワローも風の刃を飛ばしてくる。
イエローピトフーイとオレンジスワローも次の攻撃の体勢に入っている。
レッドアルバトロスもだいぶ近づいてきている。
そんな状況下で俺は再びの二重推進で動き……。
「風の刃による攻撃の瞬間はその場で滞空する。なら狙うのはそこだ」
「スバメェ!?」
風の刃を放った直後だったイエロースワローの頭を殴り、『昴』の射出も決め、シールドを粉砕しつつ円盤の外にまで吹き飛ばす。
『トビィ、特殊弾『シールド発生』鉄を使います』
「頼む」
とは言え、相手が攻撃を仕掛けてくる中でカウンターを決める以上、こちらの被害も相応に出てしまう。
具体的にはこちらのシールドも剥がされてしまったので、特殊弾『シールド発生』鉄を使用して、シールドを再展開しておく。
総量はさっきより増えたが……二度三度と同じことを繰り返していたら幾つ特殊弾『シールド発生』があっても足りないので、ヒールバンテージによる回復が間に合うように頻度を落とすか、何かしらの搦め手を考える必要があるだろう。
「ピピピピピ!」
「スワッツバァ!」
そして、この間にもイエローピトフーイとオレンジスワローの攻撃は飛んでくるので、俺は円盤の上を転がって、出来るだけ燃費よく被弾を避けていく。
で、シールドが剥がされたイエロースワローが円盤の上にまで戻ってきたらトドメをと思っていたわけだが……。
「ドオオォォロオオォォスウウウゥゥゥッ!!」
「来たか……」
その前にレッドアルバトロスが突っ込んでくる。
十分にスピードが乗った状態で円盤の上に乗り、俺への攻撃を仕掛け、タッチアンドゴーで再び飛び立つといういつもの流れだろう。
「アボボボボッ!」
が、円盤に乗り込もうとしたところで、最初に白い雲を剥がした時のように電撃に撃たれ……レッドアルバトロスのシールドが一割程度削れる。
「アボァアアアァァァルウウウゥゥゥゥ!」
「ああなるほど。そういう仕掛けでもあるのか」
が、それでもレッドアルバトロスは突っ込んできて、その足で俺を蹴り飛ばそうとし、俺はそれを回避。
攻撃を回避されたレッドアルバトロスは勢いそのまま円盤の外に飛び出して行って、飛び立っていく。
さて、今のでシールドを剥がされた上で円盤の外に叩き出されたイエロースワローが実質的に戦力外になったことが確定した。
なにせレッドアルバトロスと言う巨体故に相応の量のシールドを持つ魔物でも、そのシールドが一割持っていかれるような電撃だ。
低耐久な鳥系の魔物では赤のランダム強化で防御の強化を引いていない限りは耐えられないと思っていいし、耐えられてもシールドなしでは半死半生にまで陥るだろう。
そして、イエロースワローの攻撃の射程では、彼我の位置次第ではあるが、円盤の外から円盤の中にいる俺の位置まで十分な威力の攻撃を飛ばすことは極めて難しい。
だからイエロースワローはもう戦力外だ。
『トビィ。円盤の外には間違っても出ないように』
「分かってる。スラスターが無い状態で出る気は無いけどな」
「ピピピピピ」
「スワッツバァ!」
だが、あの電撃はたぶん条件を満たせば、プレイヤーにも襲い掛かってくる。
しかも回避不能。
その後まで考えたら、俺が受けた場合にどうなるかなど考えるまでもない。
なお、レッドアルバトロスは……シールドが自然回復するので、被害なしで何度も襲い掛かってこれる。
実に嫌な話だ。
「ま、それはそれとして、それなら戦い方も変えるべきだ……なっ!」
「ピチーン!?」
「スバメェ!?」
なんにせよ、利用できるギミックは利用するべきである。
と言うわけで、俺は『昴』をバットの要領で振ってイエローピトフーイをとりあえず円盤の外へ。
オレンジスワローも風の刃の為に動きを止めたタイミングで全力で殴って、シールドを剥がしつつ円盤の外へ出す。
これでオレンジスワローは戦力外、イエローピトフーイは入ってこれるが、大ダメージを受けつつなので、相手の突入に合わせて攻撃を仕掛ければ簡単に倒せるはずだ。
「アアアアァァァァァルウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ……」
「まずは検証」
で、レッドアルバトロスだが……まずは検証と言うか念のための確認としてサーディンダートを円盤の外に居るイエロースワローに向かって投擲。
勿論、ただ投げただけで当たる事などなかったが、サーディンダートは問題なく円盤の外にまで出て行った。
「ヴヴヴヴヴヴゥゥゥゥゥ!」
「そして本命だ。眠って落ちろアホウドリ」
俺は特殊弾『睡眠』を発動させた上でサーディンダートを投げる。
シールドを削られつつ円盤に再突入し、俺に攻撃を避けられ、再び飛び立とうとしているレッドアルバトロスに向かってだ。
「トォ!? ZZZ……」
サーディンダートが命中し、特殊弾『睡眠』の効果によって眠り始めたレッドアルバトロスは羽ばたくことなく落下していき……。
「コッケコッコー!!」
「はああんっ!?」
「!?」
即死判定が出るエリアにまで落ちる前に、いつの間にか次の魔物として出現していたらしいイエローターキーの鳴き声がフロア中に響き渡った。
そして、その声に目覚めたレッドアルバトロスは慌てて態勢を立て直すと、再び空に舞い上がったのだった。
『ブ、ブーン……。タイミングが最悪でしたね』
「ああくそ。思わず変な声が出た……自動進行なんだから、そういう事もあるよな。畜生め……」
「「「コケエェェココココ」」」
「「ピピピピピ」」
円盤の上にはいつの間にか黄色、橙、赤のターキー種が一体ずつ。
橙と赤のピトフーイ種が一体ずつ居た。
円盤の外には黄色のピトフーイ種と、黄色と橙のスワロー種が一体ずつ、それに赤のアルバトロス種が一体居る。
合計で九体の魔物が居るとなると……急がないと拙そうなのは確かだった。




