523:暗中霊魂
『ブーン。どうしましょうか、トビィ』
「そうだな……クオリアもあるから、このフロア中にもう何度かニンジャ種と戦ってみて、そこで良さそうだと思えたらコア交換もアリなんだよな。このままコア『ドラゴネット』で進めると何処かでムカデ祭りとかありそうだし」
『ブーン。可能性は否定できませんね』
「ま、コアについては後でいい」
とりあえず戦闘は終了した。
コア『ニンジャ』の設計図は手に入ったが、まあ、それについて考えるのはまた後でいいだろう。
それよりも気にするべきは今回のフロア5をどう攻略していくかだ。
「それよりも気にするべきは何処から手を付けるかだ」
『ブーン? トビィ、何を警戒していますか?』
今回のフロア5は消灯のハプニング、拒絶属性、普通の岩製の坑道であり、罠のようなギミックの類はまだ確認されていない。
消灯のハプニングについてはヴァンパイアヘッドに変える事で解決した。
変えたことで属性相性は悪くなったが、交換前のエクソシストヘッドは呪鉄製で被ダメージ増加の呪いが付いていたので、実は差はないかもしれない。
ギミックの類はこの部屋にはなさそうだし、次の部屋以降で警戒すればいいだろう。
だから、後は回収できるもの……マテリアルタワーを回収しながら次のフロアへ向かえばいいのだが……。
「コ……」
「っ!?」
冷たいものが俺の脚に触れた。
そう認識するのと同時に、俺は足裏から『昴』を射出する事で追撃の回避と反撃を試みており、岩の地面から手を出した黄緑色の半透明のそれ……ライムゴーストの姿が炎によって照らし出される。
「やっぱり来ていたか」
『ブブ。なるほど、ゴースト種はこちらの位置を常に把握していて、寄ってきているのでしたね』
「「「コココココ……」」」
そして、一体のライムゴーストが姿を現したのを皮切りとするように、壁、床、天井をすり抜けて、何体ものゴーストたち……グリーンゴースト、ライムゴースト、イエローゴーストが姿を現す。
ゴースト種は常時、飛行能力持ちの魔物が露天に居るのと同じ扱いなので、他の種なら部屋の外に出て来ないグリーンゴーストまで居る。
「そういう事だな。で、そこら中から寄ってくるのなら……まあ、一体目と接敵したのなら、他のとも遭遇するだろうなとは思ってた」
「「「コココココ……」」」
ゴースト種に物理属性の攻撃は効かない。
が、『昴』には素で火炎属性と侵食属性による追撃能力が、投擲物には火炎属性が付いているので問題ない。
そして、エクソシストの両腕は虚無属性は……。
「「「ゴオオォォ……」」」
「あー、ゴースト種も素のシールドは多いと言えないし、虚無属性だと掠っただけでも致命傷か」
『ブーン。そのようですね』
どうやら極めて相性がいいらしい。
『昴』を振ったり、投擲物を投げるついでに肘を当てたり、蹴ったり、踏んだり、と言ったことをしているのだが、それらが掠っただけでもゴーストたちのシールドは割れ、シールドがなければ消し飛んでいく。
そんなわけで半分無双状態な感じで、俺はしばらくの間ゴースト種を狩り続ける。
その光景はゴースト種の見た目が半透明のゾンビとも言えるものなのもあって、まるでゾンビ映画の一幕のようになっている。
尤も、床下からの奇襲回避、攻撃モーションに入ったゴーストの見極め、お互いのシールドの状況把握など、色々と求められているものもあるので、実際には無双状態からは程遠いわけだが。
≪幻想系マテリアル:エーテル・拒絶を15個回収しました≫
≪設計図:ゴーストアームRを回収しました≫
≪設計図:スピアを回収しました≫
≪設計図:特殊弾『霊体干渉』を回収しました≫
「ふぅ、結局18体も倒すことになったみたいだな」
『ブン。そうみたいですね』
さて、報酬が手に入ったという事は一段落が付いたという事である。
が、このままここに居たら、第一波に何かしらの事情で間に合わなかったゴースト種や、黄緑と黄色の坑道を徘徊する魔物に襲われることになるだろう。
と言うわけで、俺は移動を開始、適当な通路に入る。
「それで、えーと、そうだ。一応、そのフロアで何を求めているのかとか、今後どうするかとかを話さないとな」
『ブーン。そう言えばフロア1でそんな事を言っていましたね』
とりあえず通路に敵影はなし。
まだ未確認の魔物も居るはずなので油断は禁物だが、とりあえずは大丈夫なようだ。
なので俺は少し口を開く。
「今回俺はフロア3の終わりで構成をエクソシスト一式に変えた。となると、フロア4、5、6の積み重ねでメタを仕掛けてくるだろうから……次のメタはフロア8くらいで来ると予想できる。ただ……」
『ブン。今居るフロア5で頭を交換していますから、その通りに来てくれるとは限らないと思います』
「まあそうなるな。でもまあ、とりあえず現状ではフロア7で第二メタに備えて、またゴーレムの構成を変える事になる。だから、フロア5・6・7でマテリアル集めだな」
口を開きつつ、情報の思い出しもする。
事前情報通りなら、フロア6とフロア7は黄色、橙、赤の魔物が出る。
そしてフロア8からは赤・緋色・黒の魔物が出る。
黒の魔物の強さは言わずもがなで、赤と緋色の魔物だって万全とは言い難い状況で戦いたい相手ではない。
となればフロア8からは基本的に逃げを優先した方がいいだろうし、そういう意味でもフロア7で構成は一度変えるべきかもしれないな。
「で、マテリアルについては性能的に最低でもダマスカス鋼以上が欲しいんだが……」
『ブブ。こればかりは運ですね』
「だなぁ。ちなみに竜命金が来たら片っ端から『昴』に注ぎ込む。分かり易く火力が伸びるからな」
なお、良いマテリアルが手に入るかは運である。
良いマテリアルが手に入らなかった場合は……特殊弾を中心にして、敵を倒すよりは行動不能にするのを中心とした立ち回りにするしかないか。
具体的には特殊弾『睡眠』、特殊弾『煙幕発生』、特殊弾『影渡り』、この辺りを中心とする事になるだろう。
「さて次の部屋は……マテリアルタワーがあるな」
『ブン。そうですね』
俺は敵影がないのを確認した上で、次の部屋に入った。
05/02誤字訂正




