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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
10:第五坑道・ネラカーン

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522/619

522:暗中演武

「ホウ……!?」

「ホホウッ!?」

「「……」」

 残す敵はライムオウル二体とイエローニンジャ。

 なので、とりあえずライムオウルは速攻で落とした。

 近接戦を仕掛けてきたタイミングで叩き落として、踏みつけから『昴』、サーディンダート、グレネードで攻めればあっという間である。


 問題は……やはりイエローニンジャだ。


『ブブ。仕掛けてきませんね』

「だな。こっちの様子を窺っている感じだ」

 イエローニンジャはイエローヴァンパイアを仕留めた時点で空手の構えを取ると、ライムオウルたちが倒される中で何もせず構えを取り続けていた。

 こちらの様子を窺っているのは分かる。

 こちらの隙を見つけ出し、そこに攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろうとも思う。

 だが、それにしては動きが無さすぎて……違和感がある。


「……」

 俺は一歩近づく。


「……」

 イエローニンジャは一歩遠ざかる。


「……」

 俺が一歩引く。


「……」

 イエローニンジャは一歩近づく。


「ふうん。距離を保ち、十分な戦力が揃うまで待つ、とかか?」

『ブーン。嫌らしい動きですね』

 俺は『昴』を腰に付けると、拳で戦うための構えを見せる。

 たぶんだが、イエローニンジャは自分以外に黄色の魔物がやってくるか、黄緑以下でも十分な数の魔物がやってくるか、俺が大きな隙や弱った姿を見せるか、その辺りの条件を満たすまでは、距離を保って機を待つとか、そんな状態に入っているな。

 耐え忍ぶ者……正しく忍者ではあるので、納得のいく挙動ではあるな。


「じゃあ、これならどうする?」

 俺はヴァンパイアマントを起動すると、イエローニンジャに向かって、走り近づく。


「……」

「へぇ」

 が、対するイエローニンジャは空手の構えを保ったままバック走。

 綺麗に俺との距離を保つ。

 しかも、背を向けなかったこと、足音を立てなかった事からして、イエローニンジャの速力にはまだ余裕がありそうだ。


「じゃ、こうだ」

「……」

 ならばとサーディンダート、二種のグレネード、更には『昴』も投げつけた上で俺はイエローニンジャに駆け寄る。

 すると流石に逃げ場が無かったのだろう。

 イエローニンジャは俺の放った攻撃の全てを避けると、こちらへと向かってくる。


「……」

「さあ、殴り合い……」

 俺とイエローニンジャの距離が詰まる。

 先手はイエローニンジャで、真っすぐに指を伸ばし、貫手による攻撃を放ってくる。

 俺はそれを手のひらで受け止めて抑えようとし……。


「あぶねっ!?」

「……」

 イエローニンジャの指の先端が俺の手のひらに触れた瞬間。

 俺は反射的に受け止めるのではなく弾いていた。


「……」

「なる、ほど。流石は、ニンジャ!」

 タネが割れたと判断したのだろう。

 イエローニンジャの攻撃のペースが一気に上がる。

 貫手だけでなく、手刀と足刀による攻撃も行ってくる。

 俺はその全てをいなし、受けざるを得ない時も、出来るだけダメージを抑えられるように受ける。

 そして反撃で殴りにかかるわけだが、こちらの攻撃の大半は良くても掠る程度で、当たってもイエローニンジャはきちんとガードをし、クリーンヒットになる事はない。

 で、俺とイエローニンジャの手足が触れ合う度に金属音が周囲一帯に鳴り響く。


「体の一部に金属板を張り付ける事で、手刀と足刀が本当に切れ味を持つわけか。ちょっと興味が湧く武装だ。いや、手足のパーツか?」

「……」

 どうやらニンジャ種と言うのは、両手両足の一部に金属板を張ってあるらしい。

 量的にはたぶん手甲ですらない、本当にカッターのような僅かな量の金属板だ。

 そうすることで、攻撃力と隠密性を両立しているらしい。

 殴るのを阻害する事も無いようだし、使ってみたい武装ではあるな。


「「……」」

 現状はある種の組手のようになっている。

 どちらかが攻撃を仕掛け、それを避けるか、弾くか、いなすか、防御するかして凌ぐ。

 そして凌いだら、素早く反撃を仕掛け……次の攻防に移る。

 貫手、拳打、手刀、足刀、掴み、蹴り、当身、肘撃ち、全身を凶器として扱ってお互いに有効打を得るべく無言でやり合っている。

 そんな状態だ。


 そんな状態だがシールドの削りは同程度。

 俺はヒールバンテージで、イエローニンジャは黄色の魔物から得るシールドの自然回復でシールドを回復している。

 だが、俺のシールドは鉛製で量が少ないのに、イエローニンジャも同じぐらいの減り方と言う事は……ニンジャ種のシールド量はかなり少ないか、虚無属性による固定の追加ダメージが仕事をしていそうだ。

 どちらが正しいにしろ、一撃クリーンヒットすればシールドを割る事は出来そうだ。


「悪いがズルをさせてもらうぞ」

「!?」

 正直に言えば、純粋な殴り合いで済ませたかった思いはある。

 が、イエローニンジャはただの魔物で、ただの雑魚だ。

 楽しいからと何時までもやり合っているわけにはいかない。

 そう判断した俺は二重推進で距離を詰めると、イエローニンジャがガードをするよりも早く拳を叩き込み、宙に浮かせつつシールドを割る。


「楽しかったぞ。ニンジャ」

「……」

 そしてイエローニンジャが落ちるよりも早くグレネードを着地点に投げ込み、爆破。

 イエローニンジャは爆発四散したのだった。


≪生物系マテリアル:肉・拒絶を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:骨・拒絶を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:肉・拒絶を1個回収しました≫

≪設計図:コア『ニンジャ』を回収しました≫

「あ……」

『ブーン……』

 で、まさかのコアの設計図入手である。

 さてどうしたものだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] コア『ニンジャ』とか、ニンジャソウルとでもいうのかwww
[一言] >貫手、拳打、手刀、足刀、掴み、蹴り、当身、肘撃ち、全身を凶器として扱ってお互いに有効打を得るべく無言でやり合っている。 トビィがヴァンパイアヘッドに切り替えてなかったら、ほぼ放送事故で終了…
[一言] クオリア回収してるから問題ない
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