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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
10:第五坑道・ネラカーン

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519:駆けて駆けて

「坂が地味に怖い……!」

『ブン。滑りそうでハラハラしますね』

 俺が飛び込んだ通路は上り坂になっていた。

 勿論、床は流れのある僅かな量の水で覆われている。

 床そのものはツルツルではないが、ざらついてもいない、そんな普通の床だが……ほんの僅かな流水に足を取られ、滑ったら、水の影響で摩擦が少なくなっているだろうから、かなり派手に転ぶし、滑るだろう。

 そして、そんな事になれば、今も追いかけてきているライムロンに追いつかれ、一度か二度の被弾程度は避けられない事だろう。


 なお、これまでに水が溜まっている場所や流れる量が多い場所を見かけていないので、通路を覆う流水はその量が厳密にコントロールされているようだ。

 水没している場所がないのは救い……ではないか、出現している魔物に水中メインの魔物は居ないわけだし。


「次の部屋は……マテリアルタワーか」

『ブン。肉とクオリアです』

「じゃあ、クオリアだけ回収……だっ!」

 次の部屋にはマテリアルタワーが二本あった。

 肉・氷結とクオリア・氷結のマテリアルタワーで、前者は霜降り肉のような見た目で、後者は縁取りはぼんやりしているが、それ以外は極彩色のモザイクと言う見た目をしている。

 状況的に脚は止められない。

 だがクオリアは何処かで使う可能性もあるので、一応は回収をしておきたい。

 と言うわけで、俺はグレネード二つと『昴』を投擲し、クオリア・氷結のマテリアルタワーにダメージを与えておく。

 回収できる量はかなり減るだろうが、ゼロで無ければ十分である。


≪幻想系マテリアル:クオリア・氷結を38個回収しました≫

「おっ、意外と回収されたな」

『ブン。そうですね』

 次の通路に飛び込む。

 滝の中段とでも言うべき通路のようで、右の壁からは水が降ってきて、左の崖から下に向かって水が流れ落ちている。

 そして、その通路を走っている間にアドオン『オートコレクター』の効果でクオリア・氷結を回収。

 これでコアの交換をする必要が生じても対処できる。


「オウトゥウウウゥゥッ!」

「二体目か!?」

『ブン! イエローロンです!』

 と、ここで、前方、滝の上の方から降りて来た黄色い体表のロン……イエローロンがブレスを放ちつつ、俺が居る段にまで降りてくる。

 俺が進もうとしていた方向は既にブレスに覆われていて、当然ながら後方からはライムロンが追いかけてきている。

 確実な足止めの上での挟み撃ちだ。


「飛び降りる!」

 その光景を見た俺は、突破にかかるであろう時間と被害、その後の可能性まで考えて、下の状況を確かめることなく左に向かって跳躍。

 滝を飛び降りる。


「此処っ!」

 勿論、十数メートルの高さからただ飛び降りたら、よほど上のマテリアルで体が出来ていなければシールドは確実に吹っ飛ぶ。

 しかも坑道の構造としてそう言う物になっているのか、滝つぼのような便利なものもない。

 なのでヴァンパイアマントの機能を応用。

 一回の空中跳躍をブレーキのように展開、十分な減速をした上で、着地と同時に転がって衝撃を殺す。

 そして、転がった勢いを生かして立ち上がると、そのまま駆けていく。


「背後には……」

「「ロロロロロ」」

『ブブ。普通に追いかけてきてます』

 さて、空を飛べない魔物相手ならこれで完全に撒けたわけだが……。

 まあうん、ロン種は地面に触れている方が珍しい魔物なので、普通に追いかけてきているな。

 やはり最終的には煙幕くらいは張る必要がありそうだ。


「レコードボックスは……どうせミミックだ。無視!」

『ブーン。酸っぱいレコードボックスですね……』

 それはそれとして次の部屋に到着。

 レコードボックスがあったが、見ている暇なんてないので、当然ながら無視する。

 俺の運だ。

 どうせ中身はミミックに違いない。


「さて次の部屋は……」

 そんな事を思いつつ、俺は再びの上り坂を越えて次の部屋へ。


「「「テレッテース!」」」

「「コケエエェェコオオォォォッ!」」

「ああくそ。特殊弾『影渡り』使うか? いやまだ、切りどころじゃないな」

 待っていたのは、テレスコープ種たちとコカトリス種たちの特殊能力による出迎えである。

 幸い、テレスコープ種のビームは狙いが正確無比なので、その姿を認識した直後にアトランダムな挙動を挟み込むことで躱した。

 コカトリス種の石化ブレスも体に掠って、表面が岩になる程度の時間経過で直る範囲で済ませることが出来た。

 当然、戦っていられる状態ではないので、直ぐに次の通路に飛び込んで逃げる。


 ちなみに、呪鉄で作ったパーツがコカトリス種の能力で別のマテリアルに変換されても呪いは解除されない。

 呪鉄で出来ているから呪われているのではなく、呪鉄で作ったから呪われたと言う扱いらしい。


『ブーン。特殊弾『影渡り』……なるほど、何処かにステッカーを置いておいて、十分に離れたら、と言う事ですか』

「そういう事だな」

 閑話休題。

 次の部屋へ。

 そして、銅・氷結のマテリアルタワーと緋炭石のマテリアルタワーである。

 と言うわけで、さっきのクオリア・氷結と同じような方法でもって、緋炭石を回収する。


≪特定物質:緋炭石を43個回収しました≫

「このフロアで消費している分以上には回収出来てるな。と」

『ブン。ちなみに時間は現時点で9分経過です』

 で、さらに次の部屋に向かい……エレベーターを発見。

 だが、部屋の中には多数の魔物の姿があった。

 具体的に言えばグリーンロンの他、モールド種、マミー種、コカトリス種の姿が複数あった。

 どうやら、たまたま他の部屋に居た黄緑と黄色の魔物が通りかかっていた最中であったらしい。


「怯んでろ!」

「ロオオォォ!?」

 俺は即座に特殊弾『煙幕発生』を使ってエレベーター上に煙幕を発生させる。

 その上で二重推進とヴァンパイアマントの機能まで使った全力投擲で『昴』を投げ、グリーンロンの頭に直撃させて怯ませる。


「エレベーターを起動して……」

 で、グリーンロンが怯んでいる間にマミー種の包帯とコカトリス種のブレスは避け、モールド種の胞子はダメージを許容して突っ切り、ミネラルウォーターで増やした分のシールドが無くなるところでエレベーターに到達。

 俺は即座にエレベーターを起動する。


「ま、少しは乗り込まれるか」

「モモカビィ」

「マアァァ……」

 エレベーターが降下を始める。

 だが、エレベーター上には三体の魔物の姿があった。

 たまたまエレベーター上に居たらしいイエローモールド、グリーンマミー、そして……。


「ロオオォォォ……」

 『昴』を投げつけられた結果として怯み、のたうち回り、どうしてかエレベーターの上の空間に流れ込んでいたらしいグリーンロンだ。


「だがまあ、時間制限がないなら何とでもなるか」

 俺は三体の魔物を排除するべく、即座に動き出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一番高いのは補正込みでロンか……
[一言] 無視されたレコードボックス「実はミミックじゃなくて本物でした」だったりしてw お、なんとかエレベーターに乗れましたね 後は乗り込んできた魔物達を殲滅するだけ!
[一言] 無視したから逆説的に本物のレコードボックスだな!
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