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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
10:第五坑道・ネラカーン

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510/619

510:虚無の魔物

「セッチァッ!」

「「ブッヒィ!」」

『トビィ!』

 魔物たちが動き出す。

 グリーンムカデが突っ込んでくると同時に、左右にばらけたグリーンオークとブルーオークがそれぞれにショットガンを発射する。

 対する俺はオークたちの攻撃によって認識加速を発動し、その状態で動き始めたわけだが……。


「これは……ヤバいな……」

 認識加速の世界の中、オークたちの撃った弾丸を見て、俺は思わず呟いていた。

 なにせ、オークたちの撃った弾丸は飛んでいる途中で9つに分かれるだけでなく、その9つに分かれた弾丸が更に4つずつに分裂していた。

 つまり、一発の弾丸が36発もの弾丸にバラけ、まるで霧のような細かさになった上でこちらに迫ってきているのである。

 そして、その36の弾丸はいずれも虚無属性特有のエフェクトであるらしいノイズを纏っている。

 バラけた弾丸一個一個の質量や速度は控えめなので、物理的なダメージはそこまでではないだろうが……何か嫌な予感がする。


「だが……っ!」

 だから俺は『昴』を片方のオークが居る方に振って弾丸を切り落としつつ突貫。

 俺に当たるはずだった弾を斬り払いつつ、残りの弾丸とムカデの攻撃を避け、更にはブルーオークへと接近する。


「ふんっ!」

「ブヒィ!?」

 認識加速が途切れ、グリーンムカデが俺がさっきまで居た場所に突っ込み、当たらなかった弾が地面に着弾して、『昴』の二閃によってブルーオークのシールドが……剥がれ切っていない。

 おまけに俺のシールドは切り払いが成功したとは思えないほどに減っていて、もう一度同じようにしたらシールドが剥がれかねない状態だ。


「そういう事か」

「ブゴッ!?」

 とりあえず追加で蹴りと殴りを入れてブルーオークへのトドメは刺した。


「チチチチチッ!」

「ブッヒイィ!!」

『トビィ、そういう事とは?』

 残ったグリーンオークとグリーンムカデが再び攻撃を仕掛けてくる。

 それを俺はパリィも掠らせもせずに、きちんと全部避け切る。

 すると当然ながらシールドは削れない。

 ああうん、これでほぼ確定したな。


「虚無属性はたぶんだが、攻撃面では減算できない固定ダメージ。防御面では最終的なダメージから固定で幾らかダメージを引くとか、そういう性質を持っている特殊属性だ」

『ブ、ブーン?』

「あー、竜命金で攻撃を受けても、岩で攻撃を受けても、立派な盾で受けても、小さなナイフで受けても、属性部分のダメージはこっちも虚無属性持ちで無ければ、同じだけ受けるって考えればたぶん早い。だから、あのオークみたいな手数武器と虚無属性の組み合わせはヤバい」

『ブ、ブン。なるほど』

 虚無属性は特殊な属性だ。

 たぶん、一手の軽重を問わず、こちらの防御も問わず、とにかく当てるか否か、0か1かの属性なんだと思う。

 なので、大きい一発よりも、連続で攻撃を受ける方が危険になる。

 目の前のオークのショットガンや、ムカデの大量の足で踏まれるとか、何かしらのDoTとかな。

 対抗策は……たぶんだが、こっちも虚無属性を使えば、多少は軽減できるし、根本的には避けてしまえば何とかなる、と言うところか。

 いや、まだ何かありそうだな


「ま、俺はまだマシだな。ビッカース辺りが当たったら、相性最悪なんじゃないか?」

「ブッヒィ!?」

『ブーン。そうかもしれませんね』

 俺は弾丸を大きく避けつつ接近すると、グリーンオークを殴って斬って打ち倒す。

 やはり、普通の緑の魔物よりも虚無属性の分だけ堅いと言うか、ダメージが悪い感じだな。


「さて残すはグリーンムカデだが……」

「チッチチチチム!」

 だがそれでもオークたちは倒せた。

 これで残すはグリーンムカデだが……俺は突っ込んできたグリーンムカデを避けると、すれ違いざまに斬りつける。

 が、とにかく堅い。

 殴っても見たが、やはり堅い。

 シールドに与えたダメージはまるで橙色の魔物を攻撃したような感じである。


「セッチアアアァァァ!」

『ブーン。コア:『ドラゴネット』の影響ですか?』

「そうなるだろうな。ムカデ種はアドオン『竜種特効』をドロップする程度にはドラゴンに対して強いようだし」

 と言うか、下手な殴り方、斬り方をすれば、こちらにもダメージが来そうですらある。

 虚無属性と竜種特効が噛み合ってしまった結果だな、これは。


「ムッカァ!」

「だがまあ、まだ大丈夫だ。フロアに黄緑の魔物も空を積極的に飛ぶ魔物も居ないのなら、時間をかけてじっくりと攻め立てればそれで済む話だからな」

「チチチチチ……」

 しかし、取り巻きも増援もないし、シールドの自然回復もなく、動きも黒の魔物よりも弱いのだから、負ける要素自体はない。


「チチチチチ……」

「ふぅ」

 そんなわけで直撃を貰う事は一度もなく、無事に撃破。

 削れたシールドはヒールバンテージで回復させ始める。


≪生物系マテリアル:肉・虚無を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:甲殻・虚無を1個回収しました≫

≪設計図:ミストシューターを回収しました≫

「確認は……地味にラボ内でないと出来ないんだよな」

『ブン。インベントリの容量確認くらいは出来ますが、フレーバーテキストなどは見れません』

 報酬が入る。

 きちんと虚無属性になっているな。

 では、次の部屋に向かうとしよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、鑑定系なドロップは欲しいですねぇ。カジノで交換出来ないかしら(*^^*) フレーバーテキストあると、ないとじゃ、第5は特に、荷物整理で役に立つし。 [気になる点] 虚無属性。癖が強…
[一言] 虚無属性は追加で固定値の補正が入る属性なのか・・・これは間違いなく強いなぁ
[一言] あの性格の悪い開発がこんな強属性を通常では使わないのか・・・ 使えないのか使ったらヤバいのか 今回はバグだからノーコストなのか強制的にリソース使わされたのか 使えないし無理に使ったらヤバい…
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