396:緋色たちとの戦い
「モッガァ……」
「これでスカーレットモスは全部か」
『ブン。恐らくは』
煙の向こうにはスカーレットモスとスカーレットスライムが一体ずつ居るだけだった。
なので俺は速攻でスカーレットモスを殴り倒そうと思ったのだが、スカーレットモス自身のランダム強化の内容が防御特化であった事と、ランダム強化で指揮個体になった他の魔物からの強化が合わさる事で意外と粘られることになった。
「っ!?」
『トビィ! ブレスが来ます!』
そして今、スカーレットドレイクによる別の部屋からの支援攻撃が煙の向こうから伸びて来て、俺が展開した煙幕は綺麗に剥がされてしまった。
「「「ポトポト」」」
「「イルル……」」
「ま、ちょうどいい頃合いと言えば頃合いか」
体勢を立て直した俺は周囲を見る。
残す敵はスカーレットポット4、スカーレットイール2、それと恐らくだがスカーレットスライムが2だ。
スカーレットイールの数が増えているように見えるのは、煙の中で入れ違いになり、俺が気付かなかっただけだろう。
「「「ポットォ!」」」
「「ウナッギィ!!」」
スカーレットポットたちが攻撃を仕掛けてくる。
四体のスカーレットポットたちが代わる代わる体当たりを仕掛け、その隙を突くようにスカーレットイールが電撃を飛ばしてくる。
流石に攻撃密度が高すぎて避け切ることは不可能であり、俺のシールドは少しずつ削られていく。
しかし、この場において最も危険なのは、ポットとイールの陰に隠れ、少しずつ位置を変え、こちらが致命的な隙を晒すのを待っているスカーレットスライムたちだ。
まずは奴らを倒すか、無力化しなければ、致命傷になりかねない。
けれど、奴らの居場所は平時ならともかく、この激しい立ち回りを含む戦闘中に確定する事は難しい。
「っ!?」
『トビィ!?』
だから俺は敢えて隙を晒す。
スカーレットイールの残すぬめりのある液体に自ら足を乗せ、体を滑らせる。
「「「ポットォ!!」」」
「「ウナッギィ!!」」
「「ス……」」
すると直ぐに状況は変化した。
四体のスカーレットポットは一斉に俺へ向かって飛び掛かってきた。
二体のスカーレットイールは完全に足を止めて、最大出力で電撃を放った。
二体のスカーレットスライムは飛び掛かるポットたちの隙間を埋めるように体を広げながら、こちらに迫ってきた。
この攻撃の全てが決まれば、今の俺でもシールドを全損し、そのまま倒される事は間違いないだろう。
「分かり易くて結構」
「「「!?」」」
が、敢えて滑った以上、対処も当然考えている。
俺は特殊弾『睡眠』付きのサーディンダートを二本放ってスカーレットスライムを両方とも眠らせる。
そして、スカーレットイールのぬめりによる滑りをデイムビーウィングの起動によって加速すると、スライディングに近い姿勢でもって残りの攻撃を回避しつつ、スカーレットイールの片方、指揮個体へと接近する。
「……」
「イルウゥ!?」
『ブーン。トビィ?』
後はこれまで通り。
指揮個体は指揮能力分だけスペックが低いので普通に殴り倒し、眠っているスカーレットスライムたちも同様。
残すスカーレットイールも無難に片づけ、スカーレットポットたちは『昴』で切り刻むことによって容易にシールドを削り取っていく。
そう、順調に処理できている。
出来ているのだが……。
「ポットォ……」
「アンフォラー……」
「ツボー……」
「ジョジョモ……」
「少し集中するか」
『?』
正直な意見を言おう。
スカーレットスライムに特殊弾『睡眠』を使った時に、何か妙な気配がしたのだ。
だから俺は少し集中してから、特殊弾『腐食性粒子』を使う。
「「「ポットォ!」」」
「ちっ、そういう事か。まあ、おかしな話ではないな」
『えーと、トビィ?』
その瞬間に感じた。
ほんの僅かにだが、フロア10全域に漂っている嫌な気配が強まったのを。
その原因を俺はスカーレットポットの攻撃を凌ぎ、特殊弾『腐食性粒子』込みの攻撃を叩き込みつつ考え……結論付けた。
レッドキーパー・アルメコウβ・沌蚕が時間経過に伴って強化されるように、このフロアのどこかに居るブラックキーパー・ミクヒィカも特殊弾の使用によって強化される、と。
となれば、少なくとも黒キパに接敵するまでは特殊弾の使用を控えた方がいいかもしれない。
それでも使わなければならない場面では躊躇わずに使わなければいけないが。
『トビィ、説明が欲しいのですが……』
「後でな。今はポットたちの始末だ」
「「「!?」」」
俺はそんなことを考えつつも、全てのポットたちのシールドを全損させる。
その上で四体のポットに右手で優しく触れて、その体を構成している金属を腐食し始め、全力で逃走。
俺が通路に逃げ込んである程度以上離れたところで……。
大爆発。
「相変わらず、何が反応して、こんな事になっているのやら……」
『ブン。本当ですね』
そして、報酬が手に入らなかったので、部屋に戻って、シールドを再び得て生き残ってたスカーレットポットを始末した。
シールドを得ていたのは……たぶんだが、先に倒れたスカーレットポットの中に、他者にシールドを与えられる液体入りだったのが居たんだろうな。
≪設計図:スライムボディを回収しました≫
≪白紙の設計図を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:肉・氷結を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨・氷結を1個回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:隕鉄・氷結を1個回収しました≫
≪設計図:アドオン『爆発耐性』を回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:隕鉄・氷結を1個回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:隕鉄・氷結を1個回収しました≫
「さて、全ての黒キパに共通するのかは分からないが、少なくとも今回の黒キパは特殊弾の使用に応じて強化されるっぽいからな。出来るだけ特殊弾を使わずに進むぞ」
『ブーン? ブン!? トビィ、その、根拠は……』
「気配で何となくだな。まあ、いざ黒キパに出会った時は嫌でも特殊弾を使う事にあるだろうし、その時に正しかったかどうかは分かると思うぞ」
俺は次の部屋を目指しつつ、これまでにフロア10で使った特殊弾を指折り数え始めた。




