392:ドレイクの取り巻き
「ポットォ!」
「アンフォラー!」
「グルアァ!」
「お前らは後!」
スカーレットポットたちが突っ込んでくる。
だがその軌道はシンプルな直線であり、俺の二重推進にも追いつけないので、警戒する意味はない。
続けてドレイクが前足の片方を振り上げ、素早く横薙ぎにしてくる。
速さはスカーレットポットと同じくらいだが、鉤爪の鋭さや膂力の差を考えると、当たった場合にはただでは済まない一撃であるため、俺は大きく跳んでしっかりと回避する。
「最初はお前だ。スカーレットモス」
「モガー!?」
そうして回避した先に居たのはスカーレットモス。
部屋中にDoTをまき散らしてくる危険なものであり、出来るだけ後回しにしたくない相手でもある。
だから俺は回避のついでい接近し……。
「くたばれ」
「ーーーーー!?」
その接近の勢いのままに拳を叩き込み、『昴』を撃ち込み、左腕でシールドを吸収しつつ絡め取って引き寄せ、蹴りから『昴』の撃ち込みをし、突進してきたスカーレットポットにぶつけて削りと足止めをし、ドレイクの攻撃回避から飛び蹴りでもってシールドを剥がし、そのまま数度殴って仕留める。
「次はお前だ。さっきから鬱陶しいんだよ!」
「モモモガ!?」
そうして一体目のスカーレットモスを仕留めると、俺はそのまま二体目のスカーレットモスに襲い掛かる。
だがその頃には既にポケットアリーナで閉鎖された室内にはスカーレットモスの鱗粉が充満し、俺のシールドを削り始めていた。
一応、こちらが竜命金製であり、状態異常に強い事が功を奏しているのか、予想よりは2割ほど減りが緩やかではあるが、減っている事には変わりはないので、急いで始末したいところだ。
「グルアアアァァァッ!」
「アンフォーラー!」
「邪魔をするんじゃねぇ!」
が、勿論そう簡単にはいかない。
スカーレットポットの体当たりはどうでもいいが、スカーレットドレイクの攻撃は脅威だ。
特に脅威なのは……。
「スゥ……」
「げっ」
『トビィ!』
上体を起こしたスカーレットドレイクの喉が青混じりの白に光り出す。
光はやがて喉から口へと移動し、牙の間からは破壊的な光が漏れ出る。
「ガアアアアアアアァァァァァァッ!!」
「!?」
そして放たれたブレスは転移エフェクトと言う間に挟むものがなくなったためか、これまでよりも強い輝きと速さと氷雪を纏って俺へと直進。
俺はそれを紙一重で避けたが、次の瞬間には壁に着弾したブレスがまき散らす氷雪によって吹き飛ばされ、転がる事になった。
「すぅ、はぁ。これだけ強いと、味方も吹き飛ばす気しかしないな」
やはり特に脅威なのはスカーレットドレイクのブレスだった。
恐らくはドラゴンのものよりも直進性が強い代わりに威力がより高まっている特殊攻撃。
直撃していないにもかかわらず、シールドが半分近く持っていかれた。
仕様上、大丈夫だとは思っているが、直撃すれば、シールド全損で済むかも怪しいくらいだ。
『ブブ。実際、ただでは済んでいないようです』
「ポットォ!」
「アンフォラァ!」
「モモモガー!」
「みたいだな」
ブレスの余波から復帰した俺に向けてスカーレットポットたちが突っ込んでくる。
また、ブレスの余波で消し飛んでしまったスカーレットモスの鱗粉が再びばら撒かれていく。
だが、彼らのシールドはブレス前よりも若干削れてる。
当たり前のことだが、フレンドリーファイヤを防止するような能力がないのに、あれほどの規模の攻撃を室内で行使すれば、味方にも被害は出るか。
それと、あれだけの攻撃は流石にノーリスクではないらしく、スカーレットドレイクはまだ動きを止めている。
「ま、今はまだ好都合だな!」
「モモモガー!?」
と言うわけで、スカーレットドレイクの妨害がない間にさっくりともう一体のスカーレットモスも撃破。
部屋に敷かれているDoTの状態異常をもたらす鱗粉を排除した。
「で、次はお前らだ」
「ポットォ!?」
「アンフォラァ!?」
俺は続けてスカーレットポットたちの排除に取り掛かる。
と言っても、こちらは撃破されるまでは実質特殊能力なしであるため、ひたすらに攻撃を回避して反撃を叩き込んでいくだけだ。
「グルゥ……グルアアアァァッ!」
「よっ、ほっ、んー……」
勿論、スカーレットドレイクも攻撃を仕掛けてくる。
仕掛けてくるが、やはりこの速さならば対処は可能であるため、俺はスカーレットドレイクの攻撃を難なく避けて、何ならすれ違いざまに軽く殴りつけて相手の体も調べつつ、無事にスカーレットポットたちのシールドを削り切る。
そしてトドメを刺すわけだが……。
スカーレットドレイクを殴った時の感触から少し不安になった俺は一手打つことにした。
「お前は縛る」
「ポットォ!?」
まず、スカーレットポットの片方は特殊弾『影縄縛り』で縛った。
「お前は持つ」
「アアアフォ、アフォオ!!」
もう一体のスカーレットポットはパンプキンアームで拘束し、ヴァンパイアパーツの膂力も生かして持ち上げる。
「グルアッ!」
「さて折角何でな」
で、スカーレットドレイクの攻撃を避けた上で、持ち上げたスカーレットポットを拘束した方のスカーレットポットに向かって全力で投擲すると、スカーレットドレイクの体を跳び越すように移動して、その陰に隠れる。
「「「!?」」」
「っ!?」
『!?』
直後、本当に何がどうなればこんな事になるのかすら分からないが、スカーレットポットたちが大爆発を起こし、その内容物を衝撃波と共に部屋中にぶちまけ、先ほどのスカーレットドレイクのブレスが可愛く見えるような規模の爆風が部屋を蹂躙する。
「ふぅ。頑丈な遮蔽物があるってのは便利なものだ」
だが、俺の被害は先ほどよりもはるかに少なく、シールドがせいぜい一割削れた程度。
ただ、爆発に伴ってDoTを与えるような気体も生成されたのか、少しずつ俺のシールドは削れている。
ヒールバンテージは起動済みなので、直に直るだろうけども。
『ブ、ブブ……』
さて、そんな爆発ではあったが、坑道の壁や床は一部の攻撃以外では破壊できない仕様上、傷一つない。
同様にポケットアリーナにも異常はない。
酸っぽい液体が溜まった場所も床の一部にはあるが、そのうち消えてなくなるだろう。
問題はだ。
「グルルルル……」
「ただ、ここまで頑丈なのを手作業でどうにかしろと言われると、不便どころじゃないんだよなぁ」
そんな爆発を間近で直接浴びたにも関わらず、スカーレットドレイクのシールドはまだ三割程度残っていると言う、少々直視したくない結果だろう。




