382:レッドゴリラ
「ウッホウゥ!」
「ブロロン!」
「さて、見た目のインパクトは大きいが……」
レッドゴリラがレッドエンジン搭載のチェーンソーを振り回す。
レッドゴリラの膂力とレッドエンジンのパワーが合わさった刃ならば、格上の金属である竜命金で出来ている俺に対しても十分有効打になる事だろう。
とは言え、その太刀筋と言うか振り回しは獣であるために単調で避け易く、実際エレベーター上と言う狭い場所でも問題なく避けられている。
「ウルミィ!」
「面倒なのはこっちの方だな」
だが、タダで避けることをウルミ型のレッドアームズが許してくれない。
こちらの回避に合わせるように鞭のような刃が鋭く繰り出されて、俺の体を浅く斬りつけてシールドを削り取ってくる。
ヒールバンテージによる回復だけでは微妙に間に合わず、本当に少しずつだが、確実にダメージを蓄積させてくる。
だが反撃をしようにもレッドゴリラが邪魔だし、レッドアームズも掴まれることを最も警戒しているのか、上手くはいかない。
うん、厄介な状況だな。
戦闘終了後に辿り着くのがフロア9.5と言う補給が出来る場所で、他の魔物からの援護がないという状況で無ければだが。
「とりあえず寝てろ」
「ゴリイイィィ……ZZZ」
俺はレッドゴリラの攻撃を避けた直後に懐へと飛び込む。
そして特殊弾『睡眠』込みのサーディンダートを左手に仕込み、殴る。
これによってレッドゴリラは眠り、使い手を失ったレッドエンジンも行動不能……。
「ブロオオロオォ!!」
「うおっと!?」
とはいかなかった。
レッドエンジンはチェーンソーの高速回転する刃をエレベーターの床に器用に当てると、その反作用でもって、回転しながらこっちに向かって飛んできたのである。
流石に使い手が居なくなった程度で戦闘不能になるような甘さはないらしい。
「ウッルウミイ!」
そして、当然のようにレッドアームズも追撃してきて、俺のシールドを削ってくる。
「ま、此処までだな」
「ブロウ!?」
「ウルミ!?」
だが、使い手が居なくなったレッドエンジンの行動はさらに単調なもので、レッドアームズの攻撃にもだいぶ慣れてきた。
であれば反撃は可能。
俺は特殊弾『腐食性粒子』を発動した上でレッドエンジンとレッドアームズを殴打。
金属で出来た彼らにとっては致命的あるいは特効を有する事になる腐食作用によるDoTを与える。
「ついでだ。腐食をもっと早めてやるよ」
「「!?」」
続けて特殊弾『焼夷ガス発生』も発動。
エレベーター中を焼夷ガスで満たし、その熱によって腐食作用を加速し、レッドエンジンとレッドアームズのシールドを一気に削り取るだけでなく、そのままトドメまで持っていく。
このコンボ、レッドエンジンには特に有効だろう。
なにせエンジンと言うものは、周囲の空気を吸って稼働するものであり、その空気が高熱になった上に適さない比率の気体にもなっているのだから。
「ゴホッ、ゴボッ!? ゴリイィィラァ!」
「おっと……野生の勘か?」
と、ここで焼夷ガスを吸い込んだことで大ダメージを受けたレッドゴリラが、見えていない割には的確にこちらへと拳を向けてくる。
だが、空を切る音が大きすぎて、避けるのは容易い。
既にレッドエンジンの稼働音は無く、レッドアームズが暴れている気配もない。
であれば残るはレッドゴリラ一体。
「次のフロア10では好きに戦う余裕はあまりなさそうだし、いい機会だ。気が済むまで殴ってやる」
「ウホウッ!?」
俺はレッドゴリラを殴る。
殴る。
ひたすらに殴る。
レッドゴリラの掴みを透かし、弾き、殴りをいなし、逸らし、生み出された隙に倍以上の拳を叩き込んで返礼にする。
『昴』の射出をせず、二重推進も使わず、本当にシンプルで原始的な、だが一方的に殴り続ける。
「おうっ……らぁ!」
「ウホウッ……」
そして、最後の一撃でもってエレベーターの檻に叩きつけるほどにレッドゴリラを吹き飛ばし、打ち倒した。
≪設計図:アドオン『停止無効』を回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:玉鋼・氷結を1個回収しました≫
≪設計図:エンジンユニットを回収しました≫
≪設計図:ゴリラスキンを回収しました≫
「ふぅ。これでようやくフロア9突破だな」
『ブン。おめでとうございます。トビィ』
報酬のアナウンスが入ってくる。
フロア9に入ってから戦闘状態が一度も途切れていない割にはアナウンスの量が少ないが、これについてはフロア9では逃げ回ってばかりで、倒した魔物がレッドクロックにエレベーター上の三体だけだから当然の事とも言えるな。
「ふぅ……。玉鋼か、赤の魔物が使っている金属がこれで出来ていると言う事だろうな」
『ブン。そうなると思います』
そしてフロア9.5につき、俺は一息つく。
さて、次はフロア10だが……フロア10へ行く前に、フロア7からフロア9まで手に入れたものの確認を済ませた上で、休憩を挟みたいところだな。
で、確認したいものとなると……アドオン『マテリアル変質無効』、特殊弾『武装奪取』、隕鉄・拒絶、アドオン『燃料消費軽減』、玉鋼・氷結、エンジンユニット……絞っても意外とあるな。
まあ、順に見ていこう。




