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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
8:第四坑道・ミクヒィカ

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381/619

381:レッドクロック

 体が動かない。

 表示された状態異常の名称は停止。

 指先一つ動かないのは勿論のこと、重力やこれまでの動き的に動き続けているべき部位も、レッドクロックの能力が発動した瞬間から動いていない。

 とは言え、あくまでも停止しているのはゴーレムの肉体だけなのだろう。

 こうして思考をすることは出来るし、坑道の探索を諦めるぐらいの操作も出来る。

 目の前のレッドクロックが俺から離れていく光景はしっかりと見えているし、後方のレッドエンジンたちが操る車が前進を中止してバックする音も聞こえているので、周囲の状況の把握は可能である。


 で、この状況からの脱出だが……やっぱり魔物たちは俺に手を出す気はないようだ。

 完全に動きが止まって隙だらけなのに、何も近づいてくる気配がしないし、レッドゴリラやレッドドラゴンの転移攻撃が飛んでくる様子も見られない。

 まあ、このまま放置していれば、時間切れからの落盤で確実に俺を殺せるのだから、赤の魔物らしい妥当な判断だろう。


 では、動こう。


「……たが、対策成功!」

「チクタ!?」

 俺のシールドが少し削れて、停止の状態異常が解除された。

 そして、体が動き出すと同時に俺はレッドクロックに向かって二重推進で接近する。


「うおらあぁ!!」

「タックゥ!?」

 そうして無事に接近できたら、すぐさま左手をドリルの様に動かしつつレッドクロックに突き刺して削り、ある程度削れたところで『昴』を射出してシールドを剥がす。

 で、シールドが剥がれた時点でレッドクロックは吹き飛んで距離が離れてしまったので、サーディンダートを複数本素早く投擲してトドメを刺した。


「よし!」

『ブン。ギリギリでしたが上手くいきましたね!』

 俺は直ぐにエレベーターに向かって移動を再開する。

 背後では既に俺の復活に気づき、バックするのを止めたレッドエンジンたちが前進を始めている。

 レッドゴリラとレッドドラゴンにも、俺の復活は既に通知されているはずなので、何時攻撃が再開されてもおかしくはない。


『ブーン。しかし、よくあの局面で動けましたね』

「まあ、時間制限とクロック種の組み合わせの時点で警戒はしていたし、対策として考えてもいたからな。何とか間に合った」

 では、ここで俺がどうやって停止から逃れたのかについて。

 まあ、やったこと自体は極めてシンプルで、レッドクロックの能力が発動するよりも一瞬早く、自分の頭上に向かって起爆までの時間を必要な長さに伸ばしたグレネードを投擲。

 そして、停止した俺を巻き込むように爆発、そのダメージによって解除に外部からの干渉を要求する停止の状態異常を解除した。

 ただそれだけの話である。


「っ!? もう飛び始めてきたか!」

『ブン。急ぎましょう』

「「「ーーーーー!」」」

 複数の転移エフェクトが生じる。

 そして、その向こうからレッドドラゴンのホーミングブレスとレッドゴリラの投擲物として様々な形のレッドアームズたちが飛んでくる。

 が、俺はその全てを無視して駆ける。

 レッドクロックが居ないのであれば、戦えば戦うほどに危険が増していくのが現状だからだ。


「見つけた!」

 俺は次の部屋に飛び込む。

 そこには幸運な事にエレベーターがあった。

 エレベーターに魔物が一緒に乗ってしまうと、エレベーターの上でどちらかが力尽きるまで戦い続ける事になる。

 だが、エレベーターに乗り込んでしまえば、その時点でハプニングは終了。

 そこならば停止状態も……怖くはあるが、即死攻撃ではないので、その恐ろしさはだいぶ減じる。

 他の魔物にしてもレッドゴリラによる援軍の追加やレッドドラゴンによる支援砲撃もないので、だいぶ戦いやすくなるはずだ。

 だから俺はエレベーターに三重推進で素早く乗り込むと、『昴』を回収しつつ直ぐに下降を開始する。


 エレベーターの周囲を囲うように檻が閉じていく。

 俺を追っていたレッドエンジンとレッドアームズの集団は諦めた。

 今現在、エレベーター上には俺しか居ない。

 レッドドラゴンの最後っ屁としてホーミングブレスが飛んでくることもなかった。


「ちっ。来るか」

『ブン。来ますね』

 しかし、檻が閉まり切る直前。

 転移エフェクトが生じた。

 どうにもレッドゴリラがギリギリで動いたようだ。

 俺は戦いの構えを取る。


「ウホオオオオォォォォォ!!」

 転移エフェクトの向こうから現れたのは赤い毛並みのゴリラ……レッドゴリラだ。

 どうやらレッドゴリラがレッドゴリラを投げることによって、レッドゴリラ自体を送り込んできたらしい。

 そして、投げ込まれたレッドゴリラは無手では無かった。


「ブオオオオォォォォッ!」

「ウルウウゥゥミイイィィ!」

 レッドゴリラは両手で稼働中のチェーンソーを握っていた。

 腰にはウルミと呼ばれるよくしなるように作られた長剣が巻き付いていた。


「いやそれ、ルール的に白なのか? 微妙にバグ臭いんだが……」

『ブーン。持てる範囲だからセーフ。と言う事でしょうか?』

 だが、その二つとも道具ではない。

 チェーンソーはレッドエンジンが搭載されたものであるし、ウルミの方はレッドアームズなので、転移が完了した今ではもう堂々とレッドゴリラから離れて宙に浮いている。

 これまで一体ずつレッドゴリラが送り込んでいたのを考えると、仕様的に少々怪しい気もするが……まあ、来てしまったものは仕方がない。


「ウッホオオオォォ!」

「ブロロローン!」

「ウッルウウミイィィ!!」

「まあいい、もう追加は無いんだ。速攻で始末してやる」

 そしてレッドゴリラたちは俺に向かって飛び込んできた。

12/26文章改稿

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― 新着の感想 ―
[一言] >完全に動きが止まって隙だらけなのに、何も近づいてくる気配がしないし、レッドゴリラやレッドドラゴンの転移攻撃が飛んでくる様子も見られない。 居場所はわからないけど状態はわかるってちょっとズル…
[一言] おお、力技だけどレッドクロックの停止を解除出来た!あの一瞬でグレネードを上手く投げるトビィさんのプレイヤースキルは流石ですね!
[一言] 殺意高い林業ゴリラだなぁ…。
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