220:報告会の終わり
「まあ、そうは言っても、私の方から報告する事は殆どないのよね。現状は第三坑道・アルメコウの攻略中。特筆事項は特になし、と言う感じね」
「それはまあ、仕方がないんじゃないか?」
「そうですわね。第三坑道・アルメコウの攻略途中なら、攻略周りについては語れることは多くないと思いますわ」
「……。仕方がない」
「せやな。ハンネはんやし」
ハンネの進捗状況は……なんと言うか、可もなく不可もなく、普通の状況ですと言う感じだな。
まあ、問題はないだろう。
そもそもハンネの役割は戦闘面よりも情報面だ。
「いやぁ、フッセたちの理解度が高くて助かるわ」
そして、スコ82では情報面はむやみやたらと出していいものではない。
情報は最低限の人員でまとめて、伝えるべき人間にだけ伝えることが求められているのが現状。
で、『Fluoride A』でその役目にあるのはゲーム中ではハンネ一人。
そう考えれば、ハンネが伝えるべきでないと判断した情報は普段以上に不特定多数に伝わる今出す情報ではないだろう。
「それはそれとして。後一週間ほどで第三坑道・アルメコウが攻略できなかったら、トビィ、フッセ、ネルの三人に踏破を手伝ってもらっていいかしら?」
「俺は構わないぞ」
「私様も構いませんわ。と言うより、そういう事なら、ハンネの踏破状況に関わらず身内コラボをしていいと思いますわ」
「……。問題なし。そしてフッセにも同意」
「三人ともありがとう。それじゃあ、詳細は後で詰めるとして、お願いするわね」
とりあえず再びの身内コラボは確定、と。
しかし、マルチは四人までで、実力も併せて考えるとリツが外れてしまうわけだが……。
「ん? トビィはん。ウチなら気にせえへんでええよ。ウチはぶっちゃけ第四坑道・ミクヒィカには行けへんでも構わへんし。第三坑道・アルメコウの攻略をするならミスリル以上の何かが出て来て、それを集めればウチみたいのでも攻略できるようになってからや」
「なるほど」
リツ的には問題ないらしい。
それにしても、ミスリル以上なぁ……あるにはあるのだろうけど、宝石系マテリアル共々、一体どこにあるのやら。
まあ、十中八九第四坑道・ミクヒィカの奥地だろうけど。
「じゃ、次はウチの進捗な。まあ、順調に商いは進んでいるって感じやな。資金は問題なく増えてるし、マテリアルや設計図の買い揃えも十分や。求められたものはだいたい出せると思うで」
「ふむふむ」
「ただ、これはこれで楽しいし満たされるもんもあるんやけど、最近は研究方面にも手を出しとるで」
「研究……ああ、街坑道・ヒイズルガの範囲を拡張するための何それ、とか言う話ですわね」
「せや。此処で詳細を話す意味はあらへんから、何が得られそうかだけ話をするんやけど……近い内にゲーム内に事務所を構える事も可能やと思うで」
「……。それは期待」
「へぇ。それは楽しみね」
どうやら最近のリツは商売だけでなく研究の方にも手を出しているらしい。
何をしているのかは分からないが、ゲーム内事務所……ある種のクランのようなものを設けられると言うのは色々と気になる部分ではあるな。
「ああそれと。フッセはんの御父上、フッセはん、ハンネはんには既に相談して、了承も貰っている事なんやけどな」
「ん?」
「……。何?」
と、何か重要事項の通達があるらしい。
真剣な顔をしたリツが俺とネルを見ている。
「プロゲーマーチーム『英雄譚吟遊団』との取引は今後全面停止や。これはウチ一人だけや無くて、『Fluoride A』の総意に近いと思ってもらって構わへん。トビィはんとネルはんは通達が遅れてしもてごめんな」
「あ、はい。まあ、別に構わないぞ」
「……。後で経緯だけ教えて」
取引の全面停止か……。
詳細を知らない俺が口を出すのはどうかと思うので、何も言う事はないな。
だが思う事はある。
『英雄譚吟遊団』はリツに対して一体何をやらかしたんだ?
俺が知る限り、リツはかなり平和的と言うか、融和的と言うか、怒らないタイプであると同時に怒らせないタイプでもあるはず。
そして、多少の不愉快程度なら笑って流して、相応の儲けを得るような動きも出来るはず。
そんなリツが取引停止って……しかもそれが『Fluoride A』の総意になるって……ただ事ではないと思うんだが。
「んー。フッセ。喧嘩を売られたら買ってもいいんだよな?」
「買うのは構いませんが、売るのは厳禁ですわ。こちらには一切の非がない事を示す必要がありますから」
「分かった。状況が合えば合法的に殴れる相手と認識しておく」
「まあ、その認識で構いませんわ」
まあ、俺としては殴ってもいい相手が増えたくらいの認識で大丈夫だろう。
後、やっぱりこっちには非が無いような状況なのか。
本当に『英雄譚吟遊団』は何をやったのやら。
さて、俺が後気にするべきは組織力的に本格的な抗争になった際に対抗できるかぐらいだが……。
「トビィの懸念事項なら問題は無いから大丈夫よ」
「ええ、問題はありませんわ」
「ま、そうだよな」
ゲーム内ならともかくゲーム外まで含めれば問題はないか。
今の状況ならプロゲーマーチームには相応のスポンサーが付いているだろうが、それはこちらも同じことだしな。
「さて、これで全員の進捗状況は明らかになりましたわね。では、各自自分の目標に向かって頑張りますわよ。おーっほっほっほっ!」
これで報告会は終わり。
さて、普段ならばここから第三坑道か第二坑道に潜って稼ぎをしてくるのだが……今日に限ってはログアウトをする。
理由はシンプルで、現実の方でちょっとした仕事があるからである。
07/21誤字訂正




