218:第四坑道・ミクヒィカとは
「正直なところを申し上げますと、私様の進捗……と言うより、第四坑道・ミクヒィカの攻略状況は何処もよろしくありませんわ。現状だと、よほどの幸運に恵まれない限りは攻略不可能であると断言できる程度には」
「……。同意。正直、宝くじの一等を引く方がよほど効率がいいぐらいだと思う」
「そんなに酷いのか、第四坑道は」
さて、俺以外の四人の進捗状況だが、フッセとネルの二人は既に第三坑道・アルメコウを踏破しているため、第四坑道・ミクヒィカに挑んでいる。
しかし、この第四坑道・ミクヒィカだが、現時点では踏破報告が世界中のどこからも上がっていないという、もはや曰く付きと言っても過言ではない坑道である。
「ええ酷いですわ。折角ですから、私様が把握している範囲で第四坑道・ミクヒィカについて説明をしておきましょうか。そういう訳ですので、ネタバレ否定派の方々は対処してもらえると助かりますわ」
「そもそもネタバレ否定は私たちの放送なんて見てないんじゃないかしら?」
「それでも形式上、こう言うのは必要なのです。おーっほっほっほ! こうした視聴者への気遣い! 流石は私様ですわー!」
「ブーン。あ、トビィはこちらをどうぞ。フッセからです」
さて第四坑道・ミクヒィカだが……まあ、坑道のフレーバーテキストから話を始めていくか。
フレーバーテキストはこんな感じだ。
△△△△△
第四坑道・ミクヒィカ
階層:10
一流のゴーレム使いが挑戦する未知なる坑道。
極めて不安定な構造をしているため、突発的な事象、存在しえない魔物、幻想領域の素材、救世に繋がる何か……つまりは、あらゆる幸福と不幸が多々発生する。
だが、あまりにも不安定であるため、発生した事象によっては脱出以外の手が事実上打てない場合も存在している。
幸運を掴み取るのは果たして誰であろうか?
▽▽▽▽▽
まあ、要するに何が起きてもおかしくないし、場合によってはクリア不可能状態もあり得るという事だ。
開発の性格の悪さが良く出てるな。
「フロア数については第三坑道・アルメコウと変わりありません。出現する魔物についてはフロア1では白のみです」
「白か。懐かしいな」
「ええそうですわね。白のランクはチュートリアル用のとても弱い魔物ですわ。でも、フロア1は。そう、フロア1は、です。フロア2では魔物は紫だけになります。そしてフロア3では菫だけになります。此処まで言えば察しのいい方なら分かりますわね」
出現する魔物のランクは、最初は白のみ、フロア2も紫のみ。
よって、一部例外は存在するようだが、フロア1とフロア2は……と言うより、フロア5くらいまでは魔物のランク的にはピクニック気分で潜れる。
問題はその先、1フロアで魔物のランクが1上がるという事はだ。
「ええそうですわ。現状誰も到達できていないので予測でしかありませんが、フロア7で黄、フロア8で橙、フロア9で赤、フロア10に至っては赤の一つ上で、キーパーは赤の二つ上が出現すると予測されていますわ」
そう、第三坑道までよりも敵のランクの上昇スピードも速く、ほぼ間違いなく緋色の雑魚敵たちと黒色のキーパーが存在していることになるのである。
当然ながら、それらの大半は今の俺たちの手に負えるような相手ではなく、逃げるが勝ちと誰もが判断するだろう。
が、そうは問屋が卸してくれない。
「そしてここに、第四坑道・ミクヒィカ特有の現象、ハプニングが加わります」
第四坑道・ミクヒィカにはハプニングと呼ばれる、フロア全域を対象に常時発動する罠のようなものがある。
フッセが渡してきた資料にはハプニングの一例が載っているのだが……まあ、中々に酷い。
火気を用いたら大爆発を起こして大惨事になるガス噴出。
フロア全域が徐々に水没していく漏水。
不意に金属パーツに電気が流れ、ダメージを負う事になる漏電。
などなど、厄介な現象が逃げようのない形で生じる。
だが、そんなハプニングの中でも別格に危険なものがある。
「例えば落盤。これは制限時間内に次のフロアにたどり着けなれば強制死亡と言うものであり深部の複雑化した広大なフロアで発生すれば、エレベーターへと一目散に向かう必要がありますわ。ですが、現状明らかになっている範囲で一番問題のあるハプニングがこれ……強制決闘ですわ」
その名は強制決闘。
内容は……敵のリポップが無くなる代わりに、部屋の中に敵対者が存在している場合、全ての敵対者を倒さなければ部屋から出られないし、入れないと言うものだ。
つまり、坑道の側からポケットアリーナを使用されるようなものである。
「視聴者の皆様が想像している通りですわ。もしもフロア7以降で強制決闘が発生すれば、その時点で並のプレイヤーには為す術はありません。真正面から黄以上の魔物を撃ち破れるプレイヤーなど、数えられる程度にしか居ませんもの」
まあ、極めてヤバい。
これは例え話だが、第三坑道・アルメコウで遭遇して逃げたイエロートレントとその取り巻きたちによる機動要塞。
アレを倒さなければ、部屋から逃げ出す事も許さないと言われたようなものなのだから。
「そしてだからこそトビィの活動に私様たちは期待を寄せているのですわ。レッドヴァンパイアを倒せるならば、一対一の状況にさえ持ち込めれば、並の魔物の赤の一つ上まで対処可能という事であり、踏破の可能性があるという事ですから」
あ、フッセ。
期待してくれているところ悪いが、レッドヴァンパイアを倒せても、緋色の魔物を倒せるかは別だと思うぞ。
たぶんだが、赤くらいからは相性ゲー、対策ゲーだろうし。
まあ、この辺は配信が終わってから話しておくか。
「では、これらを踏まえて、私様とネルの進捗ですわね」
それはそれとして、前提となる情報の共有は終わったので、本題である。
強制決闘は簡単に言えば、全部屋で簡易版のポケットアリーナが常時発動してます。(転移や壁掘りで逃げられますが)
07/02:後の展開都合でこの回に書いてある殲滅戦と言う語句を強制決闘に変更しました。




