217:どうやって対処する?
「とりあえず敵のタイプを絞るべきと言うのは分かった。分かったが、此処からどうするかだな」
「そうね。強化の種類は攻撃か防御、武装は近接戦闘に限る。此処まではいいと思うわ。戦う場所も集図坑道・ログボナスなわけだし」
「一応視聴者の方に説明しておきますわ。集図坑道・ログボナスでの戦闘は属性などで多少の変化はありますけれど、基本的には円形の闘技場であり、遮蔽物がありません。よって、相手が高機動かつ遠距離型の場合、最も戦闘難易度が高まると言えますわ」
フッセの言う通り、集図坑道ログボナスで遠距離持ちとやり合うのはかなりきつい。
これで黄緑や黄色ぐらいなら、相手の数次第ではあるが、無理やり真正面から押し通る事も出来るが、赤のランクで遠距離持ちとやり合うなら、かなり高位の装備か、俺の二重推進を鼻で笑えるレベルの機動力か、自前の遮蔽物のどれかは欲しい所だろう。
なので、先述のネルの言葉通り、現状では戦う相手の選別は必要になる。
「んー、相手は近接型に絞るんやろ? それやったら、いっそ銀製のグレネードで自爆とかどうなん? ミスリル製やと自分へのダメージも半端ないやろうけど、銀やったら許容範囲内やろ」
「それは……ああこれだ。グレネードについてはもう試していてな。本当にゼロ距離とか、拘束しているとかでなければ、爆発が見え始めてから避けれるみたいなんだよ。赤だと」
「うわ、ほんまや……エグイ速さやなぁ……」
「ただ、当たれば大ダメージではあるだろうから、専用ゴーレムには一応組み込んでる」
銀製グレネードの発想は悪くない。
ただ、当たらないだろうなぁ、うん。
ちなみにだが、パンプキンアームでの拘束は赤相手だと最悪手である。
一瞬で引き千切られた挙句に相手のシールドゲージは全快し、こっちのシールドは全損するからだ。
本当に出力差がエグイ。
「……。そもそもヴァンパイア種の弱点は拒絶属性、銀・ミスリル以外には無いの?」
「そうですわね。吸血鬼なら日光、ニンニク、十字架、流水などにも弱いのが定番ですけれど……」
「検証班に問い合わせてみたけれど、その辺はランクの上昇に伴って解消されていくみたいね」
ハンネの情報曰く、菫で日光が、青で十字架が、緑で流水が、黄緑でニンニクが弱点であるという話は消滅するらしい。
これらの弱点はヴァンパイアパーツにも付いてこないので、その点からも下位のヴァンパイアを狩り易くして基本的なパーツは回収しやすいようになっているのだろうとの事だった。
「あ、ちなみにやけど、ガーリックガスグレネードはウチの手持ちにも何枚か設計図があるから、ご入用の方は買っていってなー」
「……。宣伝乙」
「強烈な臭いと消毒能力を有するガスグレネードですので、煙幕効果も含めて案外有用な武装ではありますわ。私様は使いませんが」
「まあ、あの臭いはゴーレム越しであってもきつい人はきついでしょうね……」
「へー」
なんにせよ、レッドヴァンパイアを攻略しようとしている俺としては、ミスリルあるいは拒絶属性を有するマテリアルか、そのどちらかを使ったパーツで地道に戦うしかないのだろうな。
「話を戻して特殊弾はどうですの? 拘束系もそうですけど、拒絶属性で攻撃できるものもありますわよね?」
「あるにはある。が、相手のスペックがとにかく高いからな。当てるのも一苦労で、当てても状態異常系は化学原理のものでないと厳しそうとは言っておく」
「本当に圧倒的ねぇ」
後は特殊弾もそうか。
ただ、拒絶属性の特殊弾とそれに対応したパーツはどうだったかなぁ。
そんなに多くはない気がする。
なお、特殊弾『睡眠』や特殊弾『影縄縛り』について述べさせてもらうなら、前者は一瞬の行動阻害に二度だけなり、後者は効果すらなかったと言っておく。
「……。ミスリル・拒絶を交易所で買う事は可能?」
「あ、ネルはん。それは止めた方がええ。ウチでも破産しそうなレベルに高騰しとるからな」
「凄い値段になってるな……」
「あー、光属性の魔法銀って字面だけで惹かれる人は多そうよね」
「別口買取が行われている琥珀よりも高価になってますわね……」
なお、対ヴァンパイアを考えた時の最良のマテリアルは間違いなくミスリル・拒絶である。
が、現在こちらはミスリルバブルとでも言うべき現象によって、値段が跳ね上がっている。
よって買う事は不可能である。
「んー、こうなってくると、戦術面でどうにかするべきか」
「まあ、そうなるわね」
「そうなりますわね」
「……。仕方がない」
「戦術でどうにかなるレベルの相手なのかは正直疑問やけどなぁ」
では戦術でどうにかする方法を考えよう。
俺たちは十日間のログを見返し、議論を重ねていく。
とは言え、相手のスペックを考えれば、正直なところ対抗策なんてそう多くはない。
「やっぱりこうなるか」
「そりゃあそうよ」
「ある意味伝統と信頼の方法ですわね」
「……。これでもトビィの技術は必須」
「せやな。ウチだと同じ方法を使ってもサンドバッグや」
導き出された結論は、自前のバリケード……いや、ある種の建屋を持ち込んで壁際に設置。
相手が来る方向を限定してのカウンター戦術に、逃走を阻止する方法を組み合わせて倒し切ると言うものだった。
まあ、相手の方が速く、攻撃をまともに受けられない以上は、こうなるのも当然と言えるだろう。
なお、建屋はミスリル製にする事で対ヴァンパイア性能を持たせるつもりである。
「ちなみにフッセとネルだったらどうすれば倒せると思う?」
「私様なら拒絶属性のガスグレネードで牽制しつつ、圧倒的な弾幕による面制圧で怯ませてから、最大火力で撃破。と言うぐらいしか直ぐには思いつきませんわね」
「……。僕なら超遠距離からの狙撃連射。ただ、相手のヘイトを確実に切る方法が二つか三つは欲しいところ」
「トビィ? 私には尋ねないのかしら? 後リツにも」
「ハンネならどうするかは何となく分かるからな。リツは……挑むか?」
「挑むわけないやん。全身ミスリルで固めても、イエローまでや。ウチはそれ以上の魔物はトビィはんたちに任せるで」
ああうん、フッセとネルなら、準備を整えれば倒せる可能性はやはりありそうだな。
どうしても無理そうなら、フッセとネルにも試してもらい、上手く行ったら、その手段を俺も使わせてもらうという選択肢も一応考えておこう。
「では、此処からは私様たちの進捗にしましょうか」
「……。分かった」
では、俺の案件が一度片付いたところで、フッセたちの進捗状況を聞くとしよう。




