214:早速の反省会
≪核が破壊されたため、意識をアバターに移動します≫
「酷い目にあった……」
「ブン。酷い目にあいましたね……」
集図坑道・ログボナスでレッドヴァンパイアに挑んだ結果。
俺は見事に返り討ちにあった。
「まさか、赤のランクとは言え、あそこまでの実力になっているとは思わなかったな……」
「ブン。トビィが手も足も出ない……まではいかなくても、一方的に倒されると言うのは、ティガとしても想定外のレベルです」
それもコテンパンと言ってもいいレベルである。
うん、赤のランクである時点で強いのは分かっていたが、まさかあそこまで一方的な展開になるとは思わなかった。
しかもたぶんだが、俺が弱すぎて使う必要がなかっただけで、まだまだ手札は残していそうだったしなぁ。
「とりあえず反省会だな」
「ブン。そうですね」
では、破壊されたので保有していたミスリル・電撃を勝手に全て使い込んだ『昴』が手元にやってきたところで、反省会といこう。
配信画面を見返して、何があったのかをきちんと見て行くのだ。
まず相手は選択した通りにレッドヴァンパイアだった。
見た目は第三坑道・アルメコウのフロア5で戦ったライムヴァンパイアの服装を、ランク通りに赤を主体としたものに切り替えた程度で、そこまでの変化は無し。
武装は金属製の短弓を持ち、矢筒を腰に提げていた。
「とは言え……開幕から酷いな。うん」
「ブブ。自分で撃った矢に追いついていますね……」
「その矢は狙撃銃の弾丸並みのスピードで射られているのにな」
開幕は矢を同時に三本番えての水平撃ち。
射られた矢は狙撃銃の弾丸並みの速さで飛んできたので、俺は認識加速からの高速しゃがみで避け……その次の瞬間にはレッドヴァンパイアは自分が撃った矢の頭上で次の三矢を構えていて、しゃがんだ俺を狙っている。
そして、六本の矢が別方向から襲い掛かってくる中、慌てて逃げだした俺にあっさり追いついて、蹴りを中心とした近接格闘とほぼゼロ距離からの強弓による攻撃でアッと言う間にダメージが嵩み、一枚目のシールドが破損。
「反撃は出来ているが……回復されてるな」
「ブン。しかもこれは自然回復ではなく、吸収ですね」
勿論、即座にシールドを張りなおした俺は反撃を試みた。
が、反撃を当てる事自体は被弾覚悟のカウンターで出来たものの、そうして削ったレッドヴァンパイアのシールドは次のレッドヴァンパイアの一撃が俺に直撃した瞬間に回復して、無かった事にされてしまう。
で、結局、数分耐える事も出来ず、傷を残す事も出来ず、何か隠していそうなとっておきを出させる事も出来ずに、俺は蹂躙されたのだった。
これでは反省をしようにも、根本的に対策が足りていないという評価しか出来ない、と言う感じだ。
「この強さだと……拒絶属性が弱点と言う部分を克服したレッドヴァンパイアなら、虹蜂を圧倒できるんじゃないか? それくらいに強いだろ」
「ブーン。他の魔物でなら何を冗談を、と言うところですが、レッドヴァンパイアについてはそれも否定はできませんね」
ヴァンパイア種は弱点が多い魔物である。
が、弱点を突けない場合にはどれほど理不尽な強さを発揮できるのかを示したような戦いでもあった、と言うところかもしれないなぁ。
いやうん、本当に桁違いに強いな。
他の赤のランクの魔物と戦ってみなければ確証は持てないが、絶対にレッドヴァンパイアだけは格が違ってる。
そして何が恐ろしいって、少なくともこの上に後二つ、緋色と黒のランクが控えているというところなんだよな。
口には出さないでおくが。
「トビィ、倒せますか?」
「……。赤のランクはランダムに強化が入るから確証は持てない。が、攻撃に反応すること自体は出来ているから、倒せる可能性自体はあるはず。そうだな。ガチガチに対策を固めれば、何とかはなると思う」
「ブーン。対策……拒絶属性かミスリルでしょうか?」
「それもある。が、右腕、脚、武装の一部を琥珀・電撃製に変えて速度面の向上も必須だろうな。攻撃面は弱点を突けばそれでいいが、それだけじゃダメージレースになるだけで、レッドヴァンパイア相手のダメージレースじゃ勝ち目がないからな」
「特殊弾は?」
「ものによってはありだな。と言うか、相手のとっておき次第では、殴るついでに『睡眠』サーディンダートをぶち当てて眠らせ続けるくらいはしないと押し切れないかもしれない」
それでもまあ、対策をきちんとして、後を考えなければ、一体くらいは狩れるだろう、たぶん。
とりあえず設計図のコピーやら何やらを準備して、対レッドヴァンパイア用のゴーレムを後で用意しておこう。
毎日狩るのなら、それくらいは準備しても損はない。
「ブーン。それでトビィ。どうしてレッドヴァンパイアを選んだのですか? と言うより、何の設計図が目的だったのですか?」
「そう言えば、そもそもそこを話してなかったか。まあ、とりあえず目的としては右腕だな。ヴァンパイアボディの出力から考えると、右腕も得られれば、気持ちよく殴れそうだったし」
「ブン」
「後は空中機動に関わりそうなマント。吸収能力を持ってそうな鉤爪にアドオン。他の部位にしてもヴァンパイアのスペックなら、デメリット込みでも強いパーツっぽそうだろう?」
「ブン。そうですね。ですがそれなら、トビィが既に倒したライムヴァンパイア……いえ、1ランク下のグリーンヴァンパイアでも良かったのでは?」
「そこはほら、高いランクだけで出るレアな設計図とかがあるかもしれないからな。深部だからで出た感じがあるポケットアリーナの件も考えると、挑んでみる価値はあるだろ」
「ブン。なるほど」
仮にそれでも勝てなかったら……まあ、素直にライムから少しずつランクアップして挑むとしよう。
流石にそれなら何とかなるはずだ。
「さて、失ったパーツと特殊弾の作り直しやら、緋炭石のストックやらを考えると、第二坑道・ケンカラシに行って、稼いでこないとな」
「ブン。分かりました」
「質問会もあるし、サクサク行くぞ」
「ブン」
とりあえず余りの素材で作ったゴーレムで、俺は第二坑道・ケンカラシを蹂躙してきた。
そして質問会の時間がやってきた。




