209:レッドキーパー・アルメコウ・虹蜂-4
本日は四話更新になります。
こちらは四話目です。
「ふははははっ! さあ、次は耐えられると思うな!」
蜂の毒は毒のカクテルと称されるほどに多様な毒を含んでいる。
普通のゲームでは再現されることが少ないそれを、虹蜂は複数の状態異常と言う形でもって再現してきたらしい。
そしてアナフィラキシーショック……免疫の過剰反応。
考えてみればゴーレムにも状態異常を自然に直す機構は搭載されているので、それを何かしらの方法によって暴走させる事が出来れば、再現する事は可能であるのかもしれない。
ただ、アナフィラキシーショックで拙いのは、これのダメージがシールドを貫通してくる上に、何故か爆発も伴っている事。
爆発については、たぶん生物学的な物ではなく魔術的なものであるからこそなのだろうけど、とにかく次に受ければ命が無いのは虹蜂の言う通りだろう。
「次……な」
俺は虹蜂が差し向けてきた色とりどりの三角錐を『昴』で切り裂いていく。
三角錐から放たれる光を二重推進でやり過ごしていく。
そして隙を見つければ、虹蜂本体をまだ痺れている左腕で殴り、シールドを少しずつだが削っていく。
「ほうっ、この状態でもまだ冷静に立ち回り続けるか! ふはははっ、分かってはいたが、貴様はやはり優れた戦士だなぁ!」
それにしても次に受けたら終わりか。
逆に言えば、俺を仕留めるためには、最低でももう一度クリーンヒットさせる必要があるという事だよな?
なるほどなるほど。
であるならばだ。
「悪いが冷静ではないな。我を忘れるほど興奮しているわけでもないが」
現状を改めて認めよう。
虹蜂のシールドゲージは残り20%未満で、三角錐を次々に生み出しては攻撃を仕掛けてきている。
俺のシールドゲージは各種状態異常で少しずつ削られており、ヒールバンテージと特殊弾『シールド回復』で補ってはいるが、いずれは無くなる。
が、そもそもアナフィラキシーショックを食らったり、白あるいは黒の三角錐の攻撃を胴に受ければ蒸発するので、有って無いようなものだと思ってもいい。
手数は微妙に足りていなくて、三角錐を倒し切れていない。
足場は問題なしで、蜜を避けるのは容易。
燃料は緋炭石消費による補給をところどころに挟んでいるので十分。
精神状態は平常運行であると認識はしているが……まあ、問題はないだろう。
「冷静ではない? よく言……う?」
俺は虹蜂を殴る。
その際に拳に返ってきた感触から、虹蜂が次に三角錐を生み出しそうな場所を把握し、そこへ『昴』を突き出して生成と同時に破壊する。
うん、出来た。
これが出来るなら……攻撃のペースを上げられる。
「偶然か? いや、待て、貴様まさか!?」
虹蜂が三角錐を生み出す。
それもこれまでのように手足の先の特定の場所だけではなく、ある程度体から離れたポイントからもだ。
恐らくだが、残りのシールドゲージが10%を切ったからだろう。
だが、何処に生み出すのかを分かっているならば、近くならば『昴』で斬ればよく、遠くならばサーディンダートで時間を稼ぐか、グレネードで爆破してしまえばいい。
幸いにしてパンプキンアームならば、蔓を一単位ずつ上手く動かせば、俺自身の挙動とは全く関係なく投擲が出来る。
「ふははははっ! これほどの……これほどの技量を人間が見せるか! 目か! 耳か! 鼻か!? これほどのものを見せられては、私としても称賛の言葉を贈らざるを得ないわ!」
虹蜂がさらに三角錐を生み出す。
だが、虹蜂の筋肉の動きから生み出す場所は分かっている。
だから二重推進ついでにグレネードを、切り返しの時にもグレネードを、殴る時にサーディンダートを。
あらゆる攻撃と回避のついでに投擲物を投じて、三角錐へと対処していく。
「だが、後一撃決めれば私の勝ちであることに変わりはない!」
俺の周囲に無数の三角錐が出現し、一斉に光を放とうとする。
当然の行動だ。
俺が三角錐の出現位置に先んじて攻撃を置くならば、置き切れぬほどの数を同時に出せばいいという、実にシンプルで、だからこそ対処が難しい攻撃だ。
「ナマコノワタ」
「!?」
だから俺は前に出て、自分から三角錐に向かって手を伸ばし、手にしたナマコノワタを貫かせ、転移。
その場から消え去ることによって攻撃を回避する。
そして、本来ならば部屋の外へと超高確率で転移するはずの俺の体は、ポケットアリーナの効果によって部屋の中の別の場所へと転移。
「そこ……」
俺が現れた先は虹蜂の背後数メートル。
俺はフェアリーパウダーを使用してバフを発動。
効果は与ダメージ上昇だが、被ダメージ上昇も付いたものであり、大当たり。
そこから二重推進によって一気に駆け寄る。
「かっ!」
対する虹蜂は既に俺の位置を把握しており、三角錐たちをこちらに向かって突撃させつつ、切りかかってくる俺を自分の手でも迎撃できるように構えている。
このままでは間に合わないだろう。
だから間に合わせる。
「は?」
足裏でグレネードを爆発させ、前方の床に伸ばしてかけたパンプキンアームで体を引っ張り上げ、ヴァンパイアボディの出力も生かすようにミュルミドンレッグでしっかりと地面を蹴り、デイムビーウィングを一瞬の狂いもなく起動して噴射。
急造かつ粗製の四重推進に琥珀・電撃製になった『昴』の性能も合わさって、俺の体は虹蜂の想定よりもはるかに早く接近する。
そして『昴』を振り下ろし、虹蜂の体を両断し、シールドゲージを0にして消滅させる。
「まだ終わって……」
だが流石は虹蜂と言うべきか。
この状況でも俺を始末するための方法として、黄色を主体とした三角錐一つに動きを絞ることで、俺の次の攻撃が放たれるよりも早く、俺の左腕に黄色の三角錐を突き刺そうとしている。
俺の左腕の痺れはいつの間にか取れており、帯電の状態異常も解除されていて、一度受けた状態異常をもう一度受けることで発動しそうなアナフィラキシーショックの条件はまず間違いなく満たされている事だろう。
「いいや。終わりだとも」
「!?」
けれどそれは左腕で受ければこそ。
そしてゴーレムとは全身が繋がっているようで、別々のパーツであるため、虹蜂自身も言っていた通り、極度のアナフィラキシーショックは左腕で受けなければ起きない。
だから俺は左腕を自切し、バラバラにし、左腕ではなく胴体、それも腰の辺りで受ける。
当然、胴体でもこれまでの戦闘の都合上、状態異常は受けているのでアナフィラキシーショックが発生、爆発。
ヴァンパイアボディの拒絶属性弱点もあって、シールドゲージは吹き飛び、ヴァンパイアボディの脇腹が抉れる。
「ふんっ!」
「ーーーーー!?」
だがそれだけだ。
ヴァンパイアボディだからこそ、脇腹が抉れても、その能力によって即座に修復が始まる。
そして、一撃受けるだけの時間があれば、『昴』を突き出し、シールドをなくした虹蜂の鎧の隙間を縫うように心臓を貫く事は出来た。
それで怯めば、突き刺した『昴』を手放し、返す拳で虹蜂の首をへし折る事も出来た。
意識が薄れれば、トドメとしてグレネードを鎧の内側に押し込んで爆破する事も出来た。
「ふはっ……はははははっ……恐ろしい事だ……これほどの力を持っていながら、奪われる側、縛られる側、搾られる側に居るとはな……」
全ての三角錐が爆発し、虹蜂の体が蒸発していく。
ついでに俺の体が動かない。
どうやら末期の言葉、一種のイベントシーンのようだ。
「しかし……ああなるほど。やはり貴様は私たちの対極だ。貴様の名は後世に残される。浮かび上がる。名すら無い私たちと違って……な……」
そうして意味深な言葉を残して虹蜂は消え去った。
≪設計図:アドオン『拒絶強化』を回収しました≫
≪設計図:アドオン『DoT強化』を回収しました≫
≪設計図:アドオン『DoT耐性』を回収しました≫
「ん? いいのかこれ?」
で、何故かアドオンが三つも手に入り……。
「「「ブブブブブ……!」」」
「と、それどころじゃないな、これは」
『ブン。そうですね』
ポケットアリーナが解除されて、部屋の中に多数の魔物が入ってこようとしているのを感じたので、俺は素早く最後の煙幕を焚くと、半死半生に近い状態のままに駆け出した。
07/11誤字訂正




