207:レッドキーパー・アルメコウ・虹蜂-2
本日は四話更新になります。
こちらは二話目です。
「ふはははっ! そうか! なら存分に楽しむがいい!」
両足を地面に付けた虹蜂が右上腕の拳を突き出す。
するとそれに合わせて、拳の先に浮かぶ赤の三角錐も突き出され、二度の素早い明滅の後に光が放たれる。
「ああそうだな。楽しませてもらうとしようか!」
が、光が放たれる直前に俺は二重推進で虹蜂の懐に入り込み、回避。
だが攻撃には移らなかった。
「ふははははっ!」
虹蜂の右下腕の拳が既に突き出され始めていたからだ。
だから俺は普通に一歩、斜め前に進むことで位置を調整すると共に、拳の先にあった橙の三角錐を側面から叩いて、光が放たれる位置をずらす。
「いいぞ! いいぞ! そうでなければな!!」
そして、二度の攻撃を凌いでもまだ俺が攻撃する余裕は生まれない。
脚が振るわれ、二本の左腕が突き出され、また右腕が突き出される。
こちらよりも大柄なのを生かしたタックルもしてくるし、尾部による薙ぎ払いのような動作も仕掛けてくる、全身が凶器であるかのような振る舞いだ。
で、その動作全てに三角錐からの光の射出が行われ、時には敢えて三角錐を自爆させて、こちらに手傷を負わせてくる事もある。
「っ、くっ、とっ、せいっ!」
対する俺はフェアリーパウダーによるバフをかけた上で、虹蜂の攻撃へと対処していく。
ただ避けるのではない、前後左右へ跳ぶのでもない。
時に三角錐を叩き、時に虹蜂の腕をはたき、時にパンプキンアームを操るかグレネードを投じるかして三角錐そのものを撃破する。
あるいは二重推進で背後に回り、ミュルミドンレッグの足を掴む力に任せて反転し、パンプキンアームで地面を掴んで自分の体を引き寄せ、足ではなく手で地面を蹴り、攻撃を避けていく。
それでもどうしても攻撃を避けられない時は、可能な限り掠るように、それ以上に胴体へは絶対に当たらないように受け止めて、反撃する。
「はははっ! 私の攻撃をこれほど真正面からいなし続ける人間は初めてだ! 流石はたった一人で私の前へと立つだけの事はある!」
「そうかい! 俺としても非常に愉快だよ! これだけ殴れる相手は久々だ!」
そう、反撃をしている。
少しずつだが、虹蜂の動きに目が慣れてきた。
だから、虹蜂の動きの隙間に差し込むように反撃をして、少しずつだがシールドを削っている。
ただ、赤のランクの魔物にはランダム強化一つとシールドゲージの自然回復がある。
素の虹蜂の能力が分からないので、ランダム強化が何かも分からないが、シールドゲージの自然回復は本当に厄介だ。
これまでに総量で言えば20%はシールドゲージを削っているのだが、その半分は既に回復していて、今も少しずつ回復が進んでいる。
「「はははははっ!!」」
なので俺は虹蜂に肉薄し、相手の攻撃を掻い潜って殴り返す。
お互いの高笑いを響かせながら、虹蜂はシールドの量と自然回復を頼みに、俺は攻撃のいなしとヒールバンテージを頼りに殴り続ける。
特殊弾?
馬鹿を言え。
この虹蜂の事だ、絶対に何かを隠しているに決まっている、こんなところで使っていたら、倒す事なんて出来やしない。
「かかっ……らないか!」
「当たり前だ!」
そして、俺と虹蜂の殴り合いはただ殴り合うだけじゃない。
虹蜂は少しずつ位置を移動して、蜜が流れ、網の目のように地面を覆っているエリアへと踏み込んでいた。
狙いは明白で、俺に蜜を踏ませることで拍子を崩そうとしているのだ。
が、それが見えていた俺は蜜を踏まないようにステップを刻み、殴り、ついでに近くに落ちていた『昴』も回収して左腕に仕込む事で火力を増す。
虹蜂本体と周囲の地面、両方を注意深く気にしろと言うのは中々に頭を使わされるが、これはまだ対応できる範囲だ。
「では、そろそろギアを上げて行こうか! シールドが削れて制約も外れてきた事だからなぁ!」
『トビィ! 暫く二重推進を控えてください! 燃料が危険域に近づいています!!』
「っ!?」
状況が動く。
虹蜂のシールドゲージが75%を切った事をトリガーとして、七つの三角錐が虹蜂の体の動きに合わせるのではなく、別々の動きを再び始める。
どうやら、近接戦闘状態だからと、三角錐の動きを縛る必要がなくなったらしい。
俺のゴーレムの燃料が残り少ない。
二重推進やグレネードでの消費だけでなく、漏洩の状態異常によってシールドゲージと共に燃料も削られていたからだ。
「さあ行くぞ!」
「やってやるよ!」
俺はまず真っ先に前へと跳び、フェイントもかけつつ虹蜂の背後に回り込む。
俺が動くと同時に虹蜂は拳を突き出したが、これは空振り。
2メートル半ほどの高さに浮かぶ三角錐たちから放たれた光線も、フェイントに騙されて見当違いの場所に突き刺さる。
「ただし、まずは面倒な取り巻きからだ」
「ほうっ……」
そうして両方の攻撃を凌いだところで、特殊弾『煙幕発生』によって視界を遮った上で、パンプキンアームを伸ばし、シャープネイルの爪を棘のように出し、『昴』も的確に刃を出し、微妙に異なる高さにあった三角錐を同時に撃破。
自爆ダメージは特殊弾『シールド回復』によって回復してなかったことにする。
「だがその取り巻きは、私が無限に生み出せる程度のものでしかないぞ?」
「っ!?」
煙幕の中で虹蜂に殴られ、何かしらの三角錐が右腕に突き刺さり、光によって貫かれる。
受けた状態異常が凍傷……DoTと行動阻害である点からして、青の三角錐だろう。
「問題ねえよ。幾つ生み出されようがな」
「なっ!?」
だが、右腕に突き刺さるという事は、今そこに三角錐があるという事。
そして煙幕の中であっても、虹蜂の位置を俺は正確に把握している。
なので俺は青の三角錐を引き抜くと虹蜂に突き刺し、そこで握り潰し、爆破。
俺と虹蜂、双方へのダメージを与える。
「こうして利用するだけだからな!」
そこから更に殴る。
殴り、蹴り、虹蜂の体に伝わった衝撃から虹蜂がどちらを向き、何をしようとしているかを予測して、これまでの行動とすり合わせ、三角錐を生み出した瞬間に虹蜂に三角錐を叩き込みながら爆破する。
ついでに二重推進を使わず、足を止める事で、緋炭石の変換による燃料のチャージも一気に進めていく。
「っ、くぅ、なるほど! この空間で貴様と戦うのは止めた方がよさそうだな!」
たまらずと言った様子で虹蜂が煙幕の外へと飛び出す。
「逃がすか!」
「安心しろ。逃げる気はない」
続けて俺も煙幕の外へと、直線ではなく、可能な限り姿勢を低くしつつ虹蜂が出た場所とは全く違う場所から飛び出す。
直後。
煙幕の中へと複数の三角錐が飛び込み、爆発し、煙幕は消え失せ、それと同時並行的に光が放たれて、真っすぐに虹蜂の後を追っていた場合に俺が居たであろう空間を貫く。
「ちっ、やっぱり持っていたか。まあ、虹の色なんて国それぞれらしいしな」
「ちっ、真っすぐに追ってきてくれていれば、今のタイミングで不意打ちを出来たのだがなぁ」
虹蜂のシールドゲージは残り50%と少し。
そして、虹蜂の背後には七つの三角錐が並んでいたが、そのうちの二つは虹の七色ではなく、白と黒だった。




