200:オレンジレオパルド
「グルルル……」
「手持ちで使えそうなのは……『影縄縛り』が1発だけだな」
オレンジレオパルドがこちらの隙を窺うように、ゆっくりと左右へ動く。
対する俺はオレンジレオパルドから目を離さないようにするだけでなく、必ず正面から受け止められるように体も動かす。
『トビィ。右腕の修復にはもう少しかかります』
「分かってる」
さて、これでオレンジレオパルドにシールド貫通能力が無ければ、パンプキンアームLを網状に広げてオレンジレオパルドを絡め取り、こちらにとって都合のいい体勢にした上でサンドバッグにしてしまうのだが……オレンジのランクの身体能力まで合わせて考えたら、止めた方がいいか。
「ガアッ!」
「っ……」
ここでオレンジレオパルドが飛び掛かってくる。
俺はそれをしゃがみ、跳び、オレンジレオパルドが先ほどまで居た位置に潜り込むように移動。
回避に成功する。
「ふんっ!」
「グルアッ!」
その上でパンプキンアームを伸ばし、足を引っかけ、転ばせようとしたが……弾かれた。
絡ませようとした瞬間にオレンジレオパルドは脚を動かし、単純なその力によって、シールドへのダメージと共にパンプキンアームは弾かれてしまったのだ。
そう、シールドへのダメージと共にだ。
「グルルル……」
「ふうん……やっぱり無条件ではないのか。そうなると口か、不意打ちか、時間か、不意打ちの方が何となくあり得そうだな」
今の状況、シールド貫通攻撃を持っているなら、使わない理由はない。
使えば俺のパンプキンアームは幾らか、シャープネイルに至っては完全に破壊されていたはずだ。
なのに使わなかったという事は、使えない理由があったと考えていいはずだ。
まあ、理由がどれかを探るのはまた後でいい。
重要なのは、条件を満たさなければ、シールド貫通攻撃は出来ないという事実。
それが分かったならばだ。
「ふん!」
「グルッ!?」
俺はフェアリーパウダーを使用しつつ、網状にパンプキンアームを広げて向かわせる。
オレンジレオパルドはそれを横に飛ぶ事で避けようとするが、その前にオレンジレオパルドの影にパンプキンアームが触れて、特殊弾『影縄縛り』が発動。
オレンジレオパルドの動きを止める。
そして、動きが止まったオレンジレオパルドに網が絡みつき、形が再構成して、自由な身動きが出来ないように縛り付けていく。
「ガアアッ! ニュアアアッ!」
「ぐっ、この……流石はオレンジと言うべきか!」
だが、そうして縛り付けて、シャープネイルと『昴』を突き刺し、重力異常も利用して体を押し付けて、抑え込めるだけ抑え込んでもなお、激しく暴れるオレンジレオパルドを完全に抑え込むことは出来ないし、シールドゲージも削られていく。
その削られ具合は凄まじく、ヒールバンテージだけでは間に合わず、特殊弾『シールド回復』も使わされている。
しかし、パンプキンアームが噛まれても切られていない辺り、やはりシールド貫通には不意打ちか長いクールタイムを必要とすると見た。
『トビィ! 右腕の修復は完全ではありませんが、戦闘は可能です!』
「それで十分だ!」
「グニャアッ!?」
俺は拳を振り下ろす。
与えたダメージは……10%未満、当たり前だが、オレンジのランクなので堅いし、シールドの自然回復もしてくる。
これではこちらのシールドが足りるか分からない。
「だったら……発射!」
「ーーー!?」
なので俺は特殊弾『神経過敏(痛覚)』込みのデイムビーボディの針を発射。
反動で俺の体が僅かに浮き上がるが、その衝撃と痛みでオレンジレオパルドは苦悶の声を上げ、シールドは一気に削られる。
「ーーーーー!?」
「ぐっ、この……大人しくしろ!」
どうやら、このオレンジレオパルドは痛みに応じて暴れるタイプだったらしい。
ますます激しく暴れ、俺にダメージを与えてくる。
上下が何度も入れ替わり、爪と牙が突き立てられる。
だがそれでも俺は低下したステータスで無理やりに抑え込み、拳を振り下ろし、締め上げをきつくし、シャープネイルと『昴』による突き刺しを激しくする。
「トドメ!」
「ニャアアアッ……」
最終的に、俺のシールドゲージは残り僅かとなったタイミングで、俺の拳がオレンジレオパルドの顔面に突き刺さってシールドが割れ、その直後に『昴』が心臓まで改めて突き出されてトドメとなった。
≪生物系マテリアル:骨・電撃を1個回収しました≫
「はぁ……ギリギリだったな」
『ブン。ギリギリでした』
オレンジレオパルドの体が消え、報酬が手に入る。
これでエレベーターはフロア9.5の現地ラボに到着出来る事だろう。
「しかし、こうなってくると、次の現地ラボできちんと特殊弾の補給をしても、フロア10ではマトモに戦うのは厳しそうだな。魔物はオレンジばかりで、キーパーに至ってはレッドだろうしな」
『ブーン。そうですね、戦わずに済むなら、戦わない方がいいでしょう』
俺が一息吐くと、エレベーターが現地ラボに到着。
俺は現地ラボに移動すると、思わず座り込んでしまった。
流石にフロア9は激戦であり、思うように殴る事も出来なかったので、精神的疲労が大きかったのだ。
「とりあえず確認をするか」
『ブン。そうですね』
十分に休んだ俺は、これまでに回収したマテリアルと設計図の中からめぼしいものを見る事にした。
ちなみにレオパルド種のシールド貫通攻撃の正解は不意打ち限定です。
自分が認識されていない状態からの攻撃で、シールドを貫通してきます。




