180:妖精とナマコの確認
本日は二話更新です。
こちらは一話目です。
「無事に着いたな」
『ブン。着きました』
フロア3.5に着いた俺はエレベーターの位置を確認すると腰を下ろし、これまでに回収してきた物の中から、詳細まで見る価値があるものを選び、見ていく事にする。
坑道予測は今回については後回しだ。
「んー……6個だな」
『6個ですか』
で、具体的に見る物の名前を挙げるなら……マテリアルの鋼・拒絶、設計図のフェアリーパウダー、ナマコノワタ、ナマコスキン、アドオン『致命被弾時緊急離脱』、特殊弾『緊急離脱』。
この6個になりそうだ。
では、見て行こう。
△△△△△
鋼・拒絶
種別:マテリアル
分類:鉱石系
鉄を主体とし、炭素を主に加え、その他微量の元素を加える事によって作られた合金。
強靭であり、加工もしやすいため、現代の世界で最も利用されている金属と言える。
加える元素や加工の仕方によって様々な性質を有する金属でもあるが、本作『Scarlet Coal-Meterra082』では一定の性質を有するように調整されている。
拒絶属性を有しており、攻撃に用いれば光の拒絶による追加ダメージを与えられ、防御に用いれば光の拒絶に対する防御を高める事が出来る。
▽▽▽▽▽
「まあ、特に特別な事は書かれていないな」
『ブン。そうですね。ちなみに何に使いますか?』
「現状だとナックルダスター、パンプキンアームLだな」
『ブン。なるほど』
現状、鋼・拒絶の数は27個。
これしかないなら、やはりナックルダスターとパンプキンアームL、エクステンドアイビーに使うのが妥当だろう。
で、別属性の鋼が手に入ったらシャープネイルをそちらに変え、パンプキンアームLとエクステンドアイビーは属性無しの鋼になるように再生成。
『昴』については素材坑道・デイマイリで十分な数が集まってからだな。
という訳で、我慢しろよと念じながら、『昴』の柄頭を軽く小突いておく。
「じゃあ次」
続けてフェアリーパウダーを見る。
△△△△△
フェアリーパウダー
種別:パーツ
部位:武装
対応:魔力-物理-外部-強化
蝶人間の鱗粉を模して造られた粉状の物体を詰めた袋。
燃料を消費する事で粉を生成し、自分または味方にかける事で『妖精の気まぐれ』と言うバフを与える事が出来る。
≪作成には同一のマテリアルが10個、特定物質:緋炭石が10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「『妖精の気まぐれ』……えーと、これか」
『ブン。これですね。どうやら極めて癖の強いバフ……バフですかね? これ』
「一応はバフだろ。一応は」
聞きなれないバフがあったので、ヘルプやら、コメント欄やら、検証班の作っているwikiやらを確認して、『妖精の気まぐれ』とやらの確認をする。
で、調べた結果だが……ティガの言うとおり、癖が強く、バフとは素直に言えない代物であった。
具体的にはこんな感じ。
・効果時間は60秒
・効果時間中、同じフェアリーパウダーからのバフは受け付けない。具体的には、効果時間の延長や効果内容の変更も起きない
・効果の内容は単純な攻撃力強化、防御力強化、シールドゲージの自然回復と言った分かり易いものから、重力異常の対象外になる、近くの敵の位置が分かる、反応速度の向上と言った普通ではないものまで……だけではなく、攻撃力の低下、防御力の低下、移動不能などなどのデメリットと引き換えに強力なバフをもたらすものまである。
「これは何と言うか、使っているプレイヤーを見かけず、交易所に出てこないのも納得だな。博打が過ぎる」
『ブブ。博打なのは否定できませんね』
要するに、何が強化されるのかは分からないし、代わりに何かしらの損をする事もある。
デメリットの中には俺のような特異なプレイスタイルだと致命的なものもあるし、メリットを完全に生かすにはありとあらゆるプレイスタイルをその場で出来ると言う現実的ではない構成である必要があるわけだ。
これだと、デメリット付きでも総合的にはメリットの方が上回る仕様になっていてもなお、博打だろう。
しかも、有効な効果の延長も、不利な効果の打ち消しもフェアリーパウダー自身では出来ないというおまけつきだしな。
これは使いづらい。
「まあ、深層の魔物たちに対応するにあたって、どうしようもならない時の打開策としてはありなのかもな。頼らないといけない時点で半分詰みだとも思うが」
『ブン。そうですね。そういう状況の一発逆転には使えるでしょう。オススメはしませんが』
だが使いづらいだけで、使えないわけではないのが、また評価に困る。
まあ、確実な実用性を持たせるならマルチ四人でお互いに掛け合えば、まだマシなのかもしれないな。
「次は……先にナマコスキンにしておくか」
『ブーン?』
では次。
△△△△△
ナマコスキン
種別:パーツ
部位:武装
対応:物理-物理-内部-離脱
海鼠の表皮を模して造られた薄い物質。
トゲの生えた岩のような外見を持つが、実際に触ってみるとスポンジのように柔らかい。
製作後、貼り付けたい部位を指定することで使用可能。
着用者の意思で、ラボ外でも任意に着脱する事が可能。
≪作成には同一のマテリアルが1個必要です≫
▽▽▽▽▽
「んー……擬態能力が高く、好きに脱ぎ捨てる事も付ける事も出来る。と言う感じか?」
『ブーン、どうなのでしょうか?』
ナマコスキンは……リザードスキンとはだいぶ違うようだな。
迂闊に貼ると動きにだいぶ支障が出そうだが……いやでも、スポンジのように柔らかいし、着脱自由だから大丈夫なのか?
とりあえず上手く使えば変わり身の術だとか、浴びせられた酸をスキンをすぐに脱ぐ事で凌ぐとか、そういう細かい事が出来そうな感じはある。
「まあ、次を見て行くか」
なんにせよ、まだ見るものはあるので、そちらを見て行こう。
そして、この三つはまとめて見た方がいいだろう。
△△△△△
ナマコノワタ
種別:パーツ
部位:武装
対応:魔力-魔術-内部-離脱
海鼠の内臓を模して造られた綿状の物質。
燃料を消費して起動した後に攻撃を受けると、所有者を同フロアのランダムな地上にワープさせる。
効果発動後、この武装は消滅する。
≪作成には同一のマテリアルが20個、特定物質:緋炭石が50個必要です≫
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緊急離脱
種別:特殊弾
形式:時空-魔術-内部-離脱
作成者の操るゴーレムに撃ち込むことによって、同フロアのランダムな地上にワープさせる。
≪作成には同一の鉱石系マテリアルが50個、特定物質:緋炭石が100個必要です≫
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致命被弾時緊急離脱
種別:アドオン
称号:間髪の
適用したゴーレムがシールドを展開していない場合、核に攻撃を受けると、攻撃を無効化した上で、同フロアのランダムな地上にワープする。
この効果は一回の探索中に、アドオン一つにつき一度だけ効果を発揮する。
≪作成には特定物質:緋炭石が255個必要です≫
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「微妙に異なる緊急離脱三点セットと言う感じだな。共通項としては、どれも有用」
『ブン。そうですね。ワープした先が安全である保障はありませんが、どれも有用であることは確かでしょう』
ナマコノワタの見た目については、白い綿状の物体をまとめて作った小型盾と言う感じで、性能についてはカウンターでその場から離脱すると言う感じ。
特殊弾『緊急離脱』は任意タイミングで離脱できる便利な特殊弾だが、消費が重く、対応するパーツが必要。
アドオン『致命被弾時緊急離脱』はアドオン枠一つを使う代わりに、シールドを失った時の保険が出来る。
どれも微妙に効果が違い、最高に生かせる場面も違うが、どれもマトモに戦えないような魔物に対する備えの一つとして非常に有用だろう。
『さてトビィ。どれか作りますか?』
「そうだな……」
では、確認も終わったところで、次に移行しよう。
06/15誤字訂正