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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
4:『第一次防衛戦』
171/619

171:第一次防衛戦の反省会

「おーっほっほっほっ! 反省会ですわー! 反省会ですけれど、お互いを褒め称える場でもありますので、さあ、私様を褒めるのです!!」

「いい指揮をしていたし、士気の上げ方も良かったわよ。フッセ」

「フッセはんのおかげで大いに儲かったわー。ありがとうなー」

「……。グッジョブ」

「フッセ。救援の時は本当に助かった。その他も含めてありがとうな」

「おーっほっほっほっ! 皆様の本気の称賛が心に染み渡りますわぁ!!」

 現在時刻は20時。

 場所はいつも通りに『Fluoride(フロライド) A』のたまり場となっている『蛍石』の個室である。

 そしてまずはフッセを褒め称える場となった。

 うん、あくまでも俺個人の意見になるが、フッセには本当に助けられたしな。

 礼を言って欲しいと言うのならむしろ言わせてほしいし、称賛だって素直に言える。

 それだけの活躍をフッセはしているので、この褒める行為には何も問題はない。

 絵面は高笑いする悪役令嬢に対して、取り巻きたちがおべっかを使っているようにしか見えないが。


「では、私様の称賛欲求も満たせたところで、真面目に反省会をしましょうか。勝ちは勝ち、褒めるべきところは褒める。ではありますが、失敗したところを見つけ、反省し、解決策を講じる事も重要な事ですわ」

「まあ、そうだな」

「ええそうね」

「せやな」

「……。正論。あ、一応言っておくと、解決策に精神論は非効率だから止めておいた方がいい」

「その言葉、金言として受け止めておきますわ」

 では反省会本番である。

 それぞれの視点で第一次防衛戦の様子を出し、目立った場面や気になる場面で止めて、あれやそれやを話し合っていく。

 まあ、大半の失敗はやらかした当人が失敗したと分かっているので、失敗しないにはどうすればいいのか、失敗をした場合どうやってリカバーをすればいいのか、そう言うどうすればいいかを五人で考えて話し合う感じである。


「さて、イエローナイダリアとの戦闘ですけど……これについてはまずトビィに改めて謝るべきですわね。攻撃に巻き込んでしまって申し訳ありませんでしたわ」

「気にしてないから大丈夫だ。絶好の攻撃の機会だったし、あれなら俺だって巻き込む覚悟で仕掛ける。ただまあ、謝罪を受け入れておいた方が後で揉めないのも確かだから、謝罪は受け入れる」

「ありがとうございますですわ。トビィ」

 イエローナイダリアとの戦闘の件は……アレは仕方がないなので、俺としては謝罪すら必要ない。

 が、世の中には面倒くさいのが居ると知っているので、そう言うのが付け入る隙を与えないためにも、俺はフッセたちからの謝罪を受け入れておく。

 これでこの件は完全に終わりだ。


「少し時間が余っとるな……折角やし、ちょっとした質問タイムでもやっていいんやない? 色々と聞きたいこともあるやろうから」

「……。確かにいいかも」

「まあ、答えられる範囲で答えるならいいんじゃないかしら?」

「そうですわね。明日以降はまた個人で自由行動ですし、ちょうどいい機会かもしれません」

「かもな」

 では反省会に続いて視聴者からの質問タイムだ。

 という訳で、配信画面のコメント欄から、適当に幾つかの質問をピックアップしていくわけだが……。


「えーと、現実に魔物が湧いている件についてはどう思うか? やって……」

「これについては私様たち『Fluoride(フロライド) A』から言える事はありませんわね。私様たちはただのプレイヤー。情報は何も持っていませんわ」

「強いて言うなら配信できないエリアに踏み込んだトビィからだけど……」

「言えるわけない。配信できないエリアってのは、口を噤めと言う無言の圧力だ。だから、あそこで何があったのかは、フッセたちにも話してないし、話す気はない」

「……。僕たちは僕たちに出来る事をするしかない」

 まあ、当然ながら現実の件は来る。

 こうしている今だって被害者も魔物の数も増えている現状だからな。

 なお、陽泉坑道・プラヌライの奥であった事は、この場に居る面子ではハンネにだけは話してるのだが、さっきのフッセたちと言う言葉にハンネを含んでいないだけなので、何も問題はないな。


「続く質問やな。ウチらがプレイしているから、あんな事になったんじゃないか? やって」

「あ、この件については私が少し情報をもっているから話すけど、本当に誰一人として『Scarlet Coal』をプレイしてなかった国でも第一次防衛戦は発生したし、今は魔物が湧き始めてるらしいわ」

「つまり、無抵抗なら蹂躙されるだけ、という事ですわね」

「……。むしろ、残された抵抗の場所が『Scarlet Coal』なのかも?」

「かもな」

 ハンネの言葉は……たぶん事実なのだろうな。

 此処に居る五人でその辺りに一番詳しいのはハンネだろうから。


「いずれにせよ、今後も私様たちが『Scarlet Coal』をプレイし続ける事に変わりはありません。私様たちは全力で戦い、敵の策を打ち破る。それしかありませんわ」

「だな」

「そうね」

「せやな」

「……。ん」

 なんにせよ、俺たちがやることに変わりはないだろう。

 これはそういう話だ。


「では、次の質問に行きますわ」

 その後も質問は続き、俺たちはそれに答えられる範囲で答えた。

 他にも報酬ガチャの結果を突き合わせたり、設計図の取引をしたりして、この日の配信は終わった。

 さて、明日からはこれまでは撤退を繰り返していた第三坑道・アルメコウの攻略再開である。

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― 新着の感想 ―
[一言] この言い方だと「あいつ何か知ったんだ」とか思われそうだけど 実は現実にモンスターが湧いた事については本当に何にも知らない っていうかそれ以外もほぼ何にも分からないっていう それなのに目を付け…
[一言] ハンネの言葉的に、ゲームに参加してない(政府はサーバーが自国にあることは知ってたかも?)でも問答無用でイベント起こって失敗からの現実で滅ぼされるのかぁ・・・うわぁ。 つまり、ゲームに参加し…
[一言] 反省会はサクサクとスムーズに終わって良かったですけど、質問コーナーのシーンで「Scarlet Coal」を一人もプレイしてない国でも防衛戦イベントが発生していて現実にも魔物が湧いてるのにはび…
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