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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
4:『第一次防衛戦』
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166:新コンテンツ

「ログインっと」

「ブン。来ましたね、トビィ」

 第一次防衛戦の翌日。

 昼食を食べた俺はスコ82にログインした。

 勿論リアルの方ではSNSでのみ騒ぎになっているが……運営である政府が何も言わず、『Fluoride(フロライド) A』のリーダーであるフッセと、そのスポンサーであるフッセの父からもプレイを止めるようになんて指示は出ていない。

 だったら俺は騒ぐこともなく、いつも通りにログインして、粛々とプレイするだけである。


「早速ですがトビィに一つ運営からプレゼントがありますので、お送りします」

「ん?」

 という訳で、いつも通りに配信を開始してから色々としようと思ったが、その前に何かあるらしい。

 ティガの言葉と共に俺の目の前に一つの細長いケースが出現する。


「プラヌライの騎士武装『昴』を収納するためのケースです。アバター使用中は緊急時を除き、この中に収納しておいてほしいと言うのが、運営側の意向になります」

「なるほど。どうしようかと思っていたんだが、対応してくれたのか。ありがたいな」

 それは『昴』を収めるのにちょうどいい大きさであると同時に、持ち運びやすいようにベルトも付けられたケースであり、フレーバー的なものなのかお札付きの南京錠がロック部分に付けられているものだった。

 これは実にありがたいものである。

 と言うのも、俺がログインしてから3秒ほどしたところで現実世界にあったはずの『昴』が俺の手元にワープしてきていて、その重量によって自身の存在を伝えてきていたからだ。

 対策なしでは街坑道・ヒイズルガを抜き身の剣を持ってうろつく危険過ぎる人物にならざるを得なかったので、本当に助かった。


「これでよし、と」

「ブン。収まりましたね」

 はい、そんなわけで『昴』を収納。

 まあ、このケースをこの場に置いて50メートル離れたら勝手に出て来るのだが、これで多少は安心できるな。


「じゃあ、配信開始で頼む」

「ブン」

 そして配信開始。

 いつも通りの垂れ流しだ。


「ゴホン。さて、無事に第一次防衛戦が終わって、今はもう通常のコンテンツも始まっているんだよな?」

「ブン。始まっています。それだけでなく、今回の防衛戦を受けて、新しいコンテンツも始まっています」

「新しいコンテンツ?」

 俺はアバターでエレベーターに乗り、街坑道・ヒイズルガに移動する。


「ブン。街坑道・ヒイズルガの修復と強化です」

「ああなるほど。こりゃあ確かに必要だ」

 そうして着いた街坑道・ヒイズルガは昨日の第一次防衛戦の影響で、幾つかの建物が損壊しているし、建造されたバリケードや塹壕もそのままの状態のようで、初めて見た時とはまるで別物な、はっきり言えば無残な姿だった。


「トビィ、具体的な説明は必要ですか?」

「必要だな。ただ、いつも通りに書面で頼む。長くなりそうだし」

「ブン。用意してありますのでご安心を」

 俺は『Fluoride A』の溜まり場である『蛍石』があるはずの方向に向かって移動を始める。

 と同時に、一応は新コンテンツであるらしい街坑道・ヒイズルガの修復と強化について確認する。


「ふむふむ」

 えーと、簡単にまとめてしまえば、新コンテンツは三つくらいに分けられるらしい。


 一つ目は行政区に行って、街坑道・ヒイズルガでの作業にのみ使える重機ゴーレムに憑依、操作。

 その後は指示に従って街坑道・ヒイズルガの修復と強化の工事をすると言うもの。

 早い話が土木工事・建築工事だ。

 ゲーム内なのにわざわざ建てる必要があるのかと突っ込まれそうな案件だが、プログラムだけで建てた建物は岩製ゴーレムの攻撃にすら耐えられない脆弱なものであるらしく、耐久度のある建物を建てるためには相応のマテリアルを消費し、工程を踏む必要があるらしい。

 これは道や壁、その他各種施設も同様であり、トーチカの類も当然ながら含まれる。


 二つ目は先述の建築のために必要なマテリアルの納品。

 これは普通のコンテンツで回収したマテリアルを運営に売却するだけだが、建物を建てたくても素材がないので出来ませんなんて事態にならないために重要であるらしい。


 三つめは……主に研究ではあるが、実際には何でもありの雑用か。

 これについてはよく分からないな。

 街坑道・ヒイズルガの範囲そのものを拡張するための何かだとか、自分たちの為の建物の建設に必要な何かだとか、色々と書かれてはいる。

 だがよくは分からない。

 前二つと違って直接的に修復と強化に繋がらないものは全部ここに押し込んで、具体性を持ったら独立させます的なアレだろうか?


「まあ、俺が関わるのは二つ目くらいだろうな」

「ブン。そうでしょうね。こう言っては何ですが、トビィほどの戦力を工事に使うのはもったいないと思います」

 まあ、俺がやる事と言えば、余っている素材をちょくちょくと納品するくらいになるだろう。

 SCはあって困るものではないし、通常よりも売却額が上乗せされるようだしな。


「さて『蛍石』は……仮設店舗状態か」

「ブブ。何処かで流れ弾の類を受けたようです」

「心当たりしかないのが申し訳ないところだな」

 そうこうしている間に、東屋みたいな状態になっている『蛍石』に到着。

 まあ、東屋みたいなのは見た目だけで、中身は変わっていないらしく、外からでは誰が何処にいるのか分からない個室は完備されているようだが。


「ま、それはそれとして、落ち着けるところに来て、甘いものと飲み物も揃ったし、報酬のチェックと行くか」

 『蛍石』に入店した俺は個室へ移動。

 いつも通りに注文を済ませると、目の前に二つの箱を出現させる。


「ブブ。いいのですか? トビィ。こう言うのは仲間と一緒にワイワイやりながらというものだと思っていたのですが……」

「20時からのは反省会だからな。報酬の確認は先にやっておいた方がいい。配信と言う形で記録も残しておくし、ちゃんと許可も貰ってるから大丈夫だ」

 箱の正体は第一次防衛戦の報酬であり、二つあるのは運営と開発、それぞれから別に送られているからである。

 ちなみに運営はほぼ全プレイヤーに報酬を贈り、開発は嫉妬心を煽るかのように極一部のプレイヤーにのみ報酬を渡していると言うあたりに、スタンスや性格、狙いの違いなどが出ているように思える。

 ま、なんにせよだ。


「じゃ、まずは運営からの報酬、20連設計図ガチャの時間だ」

「ブン。そうですね」

 パーツ10個、特殊弾5個、アドオン5個の計20枚。

 何が入っているか分からない運試しの始まりである。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばアウターワールドでガチャってほとんどなかったような? まあ、ランダム要素ならいくらでもあったか 霧「魔王化ガチャだ」 斧「ダンジョンは全部ガチャみたいなもん」 樽「自分の呪限無作成…
[一言] イベント報酬だし最低レア度保証とかレア率上昇とかダブリ無しとか欲しいなぁ
[一言] ガチャァ……ガチャァ……(人類悪ガーチャーの鳴き声) …………これ、この押し掛剣が類友を招き寄せたりしないよな……?
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