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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
4:『第一次防衛戦』
160/619

160:ナイダリアへ

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

「さて敵は……」

 俺はイエローナイダリアとその周囲に居る魔物たちに向かって駆け出す。

 と同時に、俺の背後からはフッセたちによる射撃が始まり、イエローナイダリア以外の魔物を撃ち抜いていく。


「ブモオオォォ!」

「イエローオーク……か」

 が、流石は大部分がライムで、一部がイエローのランクにあるだけあって、どいつもこいつもシールドの量が多く、俺が接敵するまでに倒れた魔物は極僅か。

 そして、遠くから撃ってくるフッセたちよりも俺の方が危険だと判断したのだろう。

 鉄とは少し違う金属で出来た盾で身を隠していたイエローオークが、散弾銃と思しき銃の銃口をこちらに向け……引き金を引く。


「ブッ!?」

「当たるかよ」

 だが、十分に距離が詰まっていたので、俺は左腕を振り上げる事で銃口を逸らして攻撃を回避。

 懐に入り込むと、片足を素早くすくって倒し、トドメは刺さずにイエローナイダリアへと向かっていく。

 直後、イエローオークの断末魔の叫びのようなものが聞こえたので、フッセたちによって集中攻撃され、撃破されたのだろう。


「……」

 さて、こうしている間にも周囲の魔物に向けてではなく、イエローナイダリアに向けての攻撃も行われている。

 これは全員が他の魔物を狙えるわけでもなければ、フッセたちと狙いを合わせるように命令が出ているわけでもないので、当然の事だろう。

 そして攻撃を受けたイエローナイダリアはその能力に従って、デバフ付きの反撃である針を飛ばす。

 飛ばすのだが……イエローナイダリアの被弾、反撃、再度の被弾と反撃を見ていて気付く。


「1秒、3秒、と言うところか」

『ブーン? 何がです?』

「イエローナイダリアが反撃するまでの時間と、また反撃できるようになるまでの時間だ。後者はもう少し短いかもしれないが」

『ブン。なるほど』

 イエローナイダリアの反撃は即座ではなく、無制限でもない、と。

 そうと分かれば、やれる事もある。


「「「ヂュッ!?」」」

「角度よーし、タイミングよーし。オラァ!」

 という訳で、偶々進路上に居たライムゴブリンたちの攻撃を回避して接近すると、勢いよく殴り飛ばす。

 飛ばす先は数瞬前に後方からの射撃が通った場所。

 必然、そこにはイエローナイダリアの反撃が通ることになり……。


「「「ヂュアアッ!?」」」

 イエローナイダリアの放つ針が何本も直撃。

 針が突き刺さったライムゴブリンたちは、痺れによって受け身を取る事も出来ず、毒によってシールドゲージが削られる。

 俺が確認できたのはそこまでだったが、あの状態と、全方位から攻撃が迫り、流れ弾も多数ある今の状況ならば、勝手に死ぬことだろう。


「よし決まった。じゃあ次はお前だぁ!」

「ブモウウッ!?」

『ブブ。トビィがまた妙な事を……いえでも、ブン。有効ではありますね』

 それよりもだ。

 イエローナイダリアの反撃の威力が十分であり、状態異常が魔物にも通じると分かったのなら、やる事は唯一つ。

 俺は近くに居たライムボアにタックルをかますと、イエローナイダリアに叩きつける。

 すると、これも攻撃であるから……。


「ブヒィ!?」

「はははっ! これは楽でいい!」

 当然、イエローナイダリアの反撃が炸裂して、ライムボアが倒れる。


「さあっ! お掃除お掃除ってなぁ!」

『ブン。流れ弾には気を付けてください』

「「「ーーーーー!?」」」

 俺は次々にイエローナイダリアの周囲に居る魔物たちをイエローナイダリアへとぶつける。

 あるいは魔物とイエローナイダリアの中間点に入り込んだ上で、サーディンダートを投げつけてイエローナイダリアへと攻撃。

 こうする事で、イエローナイダリアの攻撃によって魔物の数を減らしていく。

 普段の坑道でやったらあっという間にイエローナイダリアが多重ランクアップして手に負えなくなってしまうようなやり方だが、第一次防衛戦の最中は魔物のランク変化は起きないという仕様があるため、今はメリットしかないやり方であり、中々に楽しく、効率的だ。


「うおっと……だいぶ片付いてきたな」

 と、ここで俺の近くに大砲のような武装による攻撃が着弾。

 シールドゲージが少し削られると同時に、多少吹き飛んで距離が出来る。

 その際にイエローナイダリアの周囲を確認してみたが、他ならぬイエローナイダリア自身の攻撃のおかげで、周囲の魔物はだいぶ片付いてきたようだ。

 そのせいでイエローナイダリア狙いの攻撃も多くなり、その一つの爆風を浴びる事になった、と。

 まあ、これは仕方がないな。


 そして、こういう状況なら急がないと、イエローナイダリアの周囲に黒い雨が降り始めて、特殊弾が使えなくなるな。


「フッセ、大技を一度仕掛ける」

『分かりましたわ。お気をつけて』

 俺は配信を通じてフッセに呼びかけ、フッセからも配信を介して返事が来る。

 では、仕掛けるか。


「よっ!」

 俺はサーディンダートを投げると同時に、しゃがみつつ前進。

 サーディンダートがイエローナイダリアに突き刺さり、反撃の針が1秒前に俺が居た場所に突き刺さる。


「ぶち……かますっ!」

 そうして無事に針をやり過ごした直後に、左手で全力の掌底をイエローナイダリアに撃ち込み……左腕に仕込んだ『昴』を射出。

 放たれた『昴』はイエローナイダリアの体に深く突き刺さる。

 が、突き刺さったのは刃の根元までであり、イエローナイダリアの体の大きさからすれば大したものではない。


「徹底的になぁ!」

 だから左腕を解き、胴体であるデイムビーボディの針と『昴』の柄を正確に一直線に並べる。

 特殊弾『神経過敏(痛覚)』も発動。

 その上で発射。


「っう!」

 デイムビーボディの針を放った反動で俺の体は大きく吹き飛び、イエローナイダリアからかなり離れた場所で着地する。


「見事ですわね。トビィ」

「流石はトビィね」

「どうも。とは言え、撃ててもう一発ってところだろうけどな」

 その場所はフッセとハンネが居る場所の近くであり、デイムビーボディの針を使う際の副作用を知っている二人によって俺は即座に遮蔽物の裏に隠される。

 そして肝心のイエローナイダリアは……。


「ーーーーーーーー!!」

「「「!?」」」

 雷のような音を轟かせながら、あらゆる方向に向けて針のような弾丸を撒き散らし始めた。

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― 新着の感想 ―
[一言] >鉄とは少し違う金属で出来た盾で身を隠していたイエローオークが 合金なのかミスリルみたいな魔法的な金属なのか。 >イエローナイダリアが反撃するまでの時間と、また反撃できるようになるまでの…
[一言] 犬「ボスの取り巻きは投擲武器だよな」 >雷のような音を轟かせながら、あらゆる方向に向けて針のような弾丸を撒き散らし始めた 開発が発狂したかな? >常時昇華してるじゃないですかwww 猫「…
[良い点] 凄い効率的な事してる。これにはネルもにっこり。 でも乱戦時に何度も狙って出来る奴、ふつうはいねーから。 [一言] 最後、予告なく敵の全体攻撃誘発とか戦犯かな?
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