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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
4:『第一次防衛戦』
147/619

147:グリーンモール

「やっぱりこの辺は落ち着いているのか」

「最前線が頑張ってくれていますので。後逸させてしまった魔物も最前線の一つ後ろで問題なく処理できているようです」

 俺とGGGたち検証班四人は一緒に北区へと向かっていく。

 その道中には他のプレイヤーの姿やバリケードの類はあるが、彼らの雰囲気はよく言えば落ち着いているが、悪く言えば気が抜けている感じだ。

 とは言え、GGGの説明とティガが送ってくれた資料通りであるなら、気が抜けるのも仕方がないところではあるか。


「ちなみにこの辺の連中が前線に向かう事は?」

「勿論あると思います。前線の状況と上からの指示、シフト次第ですが」

 言ってしまえば、この辺に居るプレイヤーたちは半分休憩中。

 GGGの言うとおり、状況次第で彼らも前に出て来るし、此処も最前線になり得るという訳だ。

 だから、休んでいるプレイヤーたちの一部をよく見れば、決して銃から手を離そうとしない、最前線の方向を警戒し続けている、情報収集なのか複数の配信を視聴、バリケードのチェックをしている、何かしらのレーダーの確認をしている、と言った具合に警戒を解いていない姿が見える。

 たぶんだが、この場に居るだけでも何人かプロや『キャンディデート』も混ざっているのだろうな。


「そう言えばさっきから見ているレーダーで警戒しているのは……」

「こちらは対魔物用のレーダーです。方向性としては地下を重視して探っています。モール種対策ですね」

「モール……土竜か」

「その通りです。モール対策は他にも色々とあります」

 モール種は地面に潜って移動する事が出来る魔物だったか。

 潜っている最中はある程度の貫通性を有する攻撃を正確に当てなければ地上へと引きずり出せず、そうでない攻撃ではダメージを受けない。

 なるほど、この防衛戦では飛行系に並んで後逸させやすい魔物である。

 と言うか正にイベント開始前に俺が警戒していた魔物そのものだな。


「と、見えてきたな」

「そうですね」

 まあ、それはそれとして、俺は前線に到着。

 俺の耳に戦闘音が聞こえてくると共に、これまでに見かけたプレイヤーよりも明らかに戦意を持っているプレイヤーの姿が見えてくる。


「さて、フッセにハンネは……」

『ブン。アチラの方向です』

「なるほどアッチか」

 俺は他のプレイヤーたちの注意している方向や射線を把握して、それに割り込まないように注意しつつ、ティガが示してくれた方向へと向かおうとする。


「「「!?」」」

 が、その前に誰も注意を払っていなさそうだった方向で突如として爆発が発生する。


「グモー……」

 爆発の出元は地中。

 爆発による火柱と共に地中から飛び出してきたのは体長1メートル、体色が緑色っぽい、大きな鉤爪を持った土竜に似た姿の魔物。

 恐らくはグリーンモールだ。

 どうやら、上手く前線をすり抜けてきたが、地雷か何かに引っかかって打ち上げられたようだ。

 そして、魔物が相手ならば、こちらがやる事は一択である。


「そぉい!」

「モール発見! 処理します!」

 俺は『昴』を居合に近い動作で抜きつつ、空中に浮かび上がっているモールに向かって投擲。

 俺の後ろでは鉛色のゴーレムを操る検証班が素早く手持ちの銃を構えて射撃開始。

 GGG含む残りの検証班三人も、俺と鉛色に続く形で発砲。

 また、周囲に居るプレイヤーで交戦中でも警戒中でもなかった何人かは銃を構えるが、こちらは発砲までは敢えていかないようだった。


「グモォ!?」

 で、肝心のモールは検証班たちの銃撃のいくつかが命中してシールドを剥がされ、その直後に俺の投げた『昴』によって胴体で真っ二つにされて絶命。

 消え去った。


「流石に速さで銃弾に勝つのは無理か」

「それは流石に当然だと思います」

 敵の後続は見える範囲ではなし。

 レーダーを持っているメタリックカラーの検証班も続く敵は居ないと首を横に振る。

 ついでに地面を軽く叩いてみたが、そちらからも妙な反応は見られず。

 どうやら今のグリーンモールは本当に偶々上手く前線をすり抜けてきただけのようだ。


「さて、フッセたちは……」

「トビィ様? 剣の方はいいのですか?」

「そこも含めて検証したいことがあってな……」

 という訳で、俺はフッセたちが居る方向に向かって移動を再開。

 なお、地雷については連絡を受けた専門のプレイヤーが直ぐに再設置にやってくるとの事なので、気にしなくていいだろう。

 で、俺は敢えて投げた『昴』の回収をせず、距離を取って行くわけだが……。


「と、なるほどこう戻ってくるのか」

「「「!?」」」

 50メートル離れた時点で唐突に俺の右手に侵食属性の黒っぽい靄のようなものが集まりだし、それが十分に集まると『昴』の形になって実体化。

 俺はそれを手に取ると、腰に戻す。

 なるほど、50メートル離れてから再実体化までの時間はおよそ3秒ほど、燃料やマテリアルの消費があるのかはイベントの仕様上不明、と言うところか。

 覚えておこう。


「……。トビィ様。さっき断られたのに再度申し出るのは非常に失礼な行為だとは分かっていますが、なにとぞ、なにとぞ概要だけでも構いませんので、その剣についてご教授願えると助かるのですが……」

「んー……」

 『昴』が唐突に俺の手元に戻って来る光景にGGGたちは唖然としていた。

 が、そこは生粋の検証班、直ぐに正気を取り戻すと、『昴』について教えて欲しそうにしてくる。

 ただ、『昴』は入手先も含めて色々と特殊だし、安易に教えるのは良くないと思うんだよなぁ。

 いやでも、このまま絡まれ続けても面倒だし、これだけは言っておくか。


「とりあえずコイツはユニークウェポンの類だから、他のプレイヤーが入手することは不可能。これだけは覚えておいてくれ。で、そろそろ前線なんでな。同行は此処までだ」

「ユニークウェポン!? と、分かりました。情報に感謝です。そして、ご武運を願っています」

 という事で、『昴』がユニークウェポンで、他プレイヤーは入手不可である事だけは明かした。

 これでだいたいは大丈夫だろう。

 これでなお寄ってくるなら?

 そう言うのは殴り飛ばすだけだ。


『トビィ』

「ああ見えてる」

 さて、GGGたちが去り、同時にフッセたちの姿が見えた。

 どうやら壁近くに築いた拠点でフッセとネルが攻撃、ハンネが上とのやり取り、リツが複数のドローンを利用して補給及びこの場にある他拠点とのやり取りをやっているらしい。

 敵はグリーン一色で、一応はまだ殲滅が間に合っている。

 ただ、中には拠点のバリケードに張り付くものや、塹壕の目の前にまでたどり着くものもいるようで、楽勝とはいかないようだ。


「じゃ、軽く殴り飛ばしながら行くか」

『ブン。分かりました』

 俺は僅かに弾幕が薄くなったタイミングで、バリケードから飛び出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] >潜っている最中はある程度の貫通性を有する攻撃を正確に当てなければ地上へと引きずり出せず、そうでない攻撃ではダメージを受けない 犬「ここか!(アイアンクロウからの噛みつき)」 >空中に浮か…
[良い点] 更新乙い [一言] ある意味では残弾数無限の投擲武器 剣を射出できる専用銃を作ってもらわなきゃ
[一言] 今回のストーカーソード引き寄せは受け取る側、トビィ視点だったけど逆にストーカー側だとどうなるんやろ? トビィ側にストーカーの靄がで出始めた時点でその場にないのかトビィ側に靄が出始めると同時に…
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