146:再出撃
「ログインっと。ティガ、戦況は?」
「ブン。戦況はこうなってます」
18時。
少し早めに夕食を済ませた俺はスコ82にログインすると、まずは戦況の確認をする。
が、特に問題は起きていないようだ。
「配信開始」
「ブン」
続けて配信開始。
視聴者数が一人になったのを確認したところで、俺は配信のコメント欄は閉じて、俺には見えないようにする。
絶対にうるさい事になっているだろうしな。
「さて、まずはゴーレムの調整からだな」
「ブーン、どうしますか?」
「ほぼ鉄製の普段通りにする。つまりここからはノーデス前提で動く」
「ブン。分かりました」
俺は強硬偵察用にしてあったゴーレムの構成を、ほぼ普段通りのものに変える。
ただ、アドオン『オートコレクター』は付けないし、ドローンやイグジッターも無し、サーディンダートは案外役立ちそうなので肉製のまま、と言った具合に、普段とは少し違う面もある。
また、特殊弾についても補充をしておく。
そして、補充が終わったところで、ゴーレムに憑依する。
『それでトビィ。『昴』はどうしましょうか?』
「『昴』はなぁ……」
俺は自分の腰に提げている『昴』を両手で握ると、軽く何度か振ってみる。
重さ良し、長さ良し、重心良し、うーん……剣としては、やはり非常にいいんだよな。
ただ俺は斬るではなく殴るのが圧倒的に好みなので、使う気にはならないし、使うとストレスになるのだが。
なお、『昴』の外見だが、鍔と刃に六連星の模様があり、他の一般的な剣の武装とは明らかに違う外見をしている。
その内トラブルになりそうだが……なったら説明した上で殴ればいいか。
「とりあえず手持ちの鉄・侵食をキリのいい数で突っ込むか」
『思い切りますね』
「使用したマテリアルの数が多い方が強くなるってきちんと書いてあるんだから、ノーデス前提ならそれを生かす方向で動くさ」
俺は『昴』を構成しているマテリアルをただの鉄から、鉄・侵食だけに変更。
使った鉄・侵食の数は250個。
最大数の四分の一だがさて……。
「……。なんと言うか、微妙に見た目が禍々しくなったな」
『ブン。侵食属性の影響だと思います』
長さや重さ、重心と言った重要な要素は一切変わらない。
ただ見た目については、刀身が微妙に黒くなると共に、侵食属性特有の黒い靄をうっすらと纏っている。
この見た目だけでも魔剣、妖刀、呪われたアイテムと言う感じがあるだろうな。
「まあ、相応しい見た目か」
『ブン。そうですね』
なお、実際に呪われているとしか言いようがない性能をしているので、見た目詐欺でも何でもない。
ちなみに再出撃までの時間は『昴』のせいで12時間オーバーにすらなっているので、そういう意味でも呪われている。
△△△△△
トビィ
称号:『越禍のキャンディデート』
燃料:100/100
アドオン:広域攻撃耐性
アドオン:広域攻撃耐性
頭部:デイムビーヘッド(鉄):魔力-魔術-境界-防御(特殊弾『シールド発生』鉄4、特殊弾『シールド発生』金1)
胴体:デイムビーボディ(鉄):電撃-生物-外部-DoT(特殊弾『神経過敏(痛覚)』1)
右腕:デイムビーアームR(鉄):侵食-化学-外部-特効
左腕:パンプキンアームL(鉄):侵食-物理-内部-拘束(特殊弾『影縄縛り』3)
脚部:デイムビーレッグ(鉄):物理-化学-内部-強化
武装:ナックルダスター(鉄・火炎):電撃-化学-外部-強化
武装:シャープネイル(鉄・侵食):氷結-魔術-境界-強化
武装:グレネードホルダー(鉄):侵食-化学-外部-遮蔽(特殊弾『煙幕発生』10)
武装:ケットシーテイル(粘土):氷結-生物-内部-強化
武装:ケットシーテイル(骨):氷結-生物-内部-強化
武装:サーディンダート(肉):魔力-魔術-外部-拘束(特殊弾『睡眠』10)
武装:ヒールバンテージ(鉄):魔力-魔術-外部-回復(特殊弾『シールド回復』3)
武装:プラヌライの騎士武装『昴』(鉄・侵食250):(制限なし)-法則-異界-(制限なし)
▽▽▽▽▽
「さて、そろそろ上がるか。何処に出る事になる?」
『直前のトビィは燃料切れとは言え死に戻りした事には違いありません。また、マルチの為のパーティも組んではいません。なので、中央区からですね』
「分かった」
俺はエレベーターに乗って街坑道・ヒイズルガに移動。
現れたのはティガの説明通りに中央区だが、どうやら人通りの少ないポイントに現れたらしく、周囲に人影はない。
が、直ぐに俺の配信を見ていたらしいプレイヤーが複数人こちらに寄ってくる。
動きからして……生粋の検証班っぽいな。
「失礼いたします! 私、『シルバーバック』のプレイヤーでGGGと申します! トビィ様。お話よろしいでしょうか!?」
現れたプレイヤーは銀一色、筋骨隆々っぽい見た目のゴーレムが一体で、このゴーレムからは女性の声でGGGと言う名乗りがあった。
他のプレイヤーは……カラーリングが茶色一色で、両手両足にヒレが付いたゴーレムが1。
メタリックなカラーリングで踵に何かの尻尾を付け、頭部には鹿の角のようなアンテナを付けた、全体的に軽装な感じのゴーレムが1。
鉛色のカラーリングに昆虫系の六脚、そして複数本の銃器と小型の砲筒を持った、見るからに遠距離型なゴーレムが1。
「悪いが話をしている時間はない。これから北区に戻って、フッセたちの戦線に加わるか、少なくとも状況や情報のすり合わせはしないといけないんでな」
「そうですか……」
「そうでなくとも俺の情報は基本的にハンネ経由で検証班には伝わるようにしているから、気になる情報があるならそちらから得てくれ」
「分かりました。ではそうさせていただきます。ただ、それはそれとして、北区まで同行させてもらっても良いでしょうか? 不意の遭遇戦が無いとは言えませんので」
「それはまあ、好きにすればいいんじゃないか?」
「ありがとうございます!」
と言う訳で、俺は検証班らしき四人を連れながらフッセたちが居る場所へ向かう事にした。