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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
3:第三坑道・アルメコウ
127/619

127:イベント詳細

『コチラは燃料を30消費した。そろそろ補給を頼む』

『分かった。今送っておこう』

『さて、消費量的にもそろそろ切り上げどころですかね?』

『そうですね。そろそろ頃合いかと』

 サンソウたちは直に第三坑道・アルメコウのフロア3に向かうだろう。

 が、そちらよりも今はハンネの言葉に集中するべきだ。


「さて、明日開催されるのは、『Scarlet Coal-Meterra082』の第一回開発主催イベント、『第一次防衛戦』」

 ハンネによる明日のイベントについての説明が始まる。

 と同時にティガとハンネの両方から、第一回開発主催イベントを文章の形でまとめたファイルが送られてくる。

 二人とも俺のことがよく分かっているようで何よりである。


「タイトル通りに防衛戦であり、防衛に失敗した場合にはゲームが一時的あるいは永遠にサービス停止になると告知されているわ」

 『第一次防衛戦』。

 敵が出現する期間は明日の10時から、翌日の10時までの24時間。

 しかし、運営の厚意により、明日の0時から事前準備をする事は許可されている。

 ただし、明日の0時の事前準備開始時点で、通常の坑道はイベント終了まで一時閉鎖となる。

 イベントの舞台は街坑道・ヒイズルガ全域。

 防衛対象は行政区にある何かであるが、その何かは運営からは発表されていない。

 まあ、FFがあるゲームなので……そういう連中対策として秘匿されていると言う事だろう。


「敵は街坑道・ヒイズルガの外壁である岩の壁の向こうから、通路となる穴を開けてやってくる。穴が開けられる場所は敵である魔物たちの最前線より後ろとされているわ」

 敵は魔物。

 ただし、相手のランクや種類などは非公開。

 ただ、最初の敵が外壁から、その後の敵は最初の敵よりも壁側の任意の位置、と言う風になっていることを考えると、ラグビーやアメフトのように敵が前線を上げて来るのを如何に防ぐかと言うゲームになることは容易に想像がつく。

 同時にアンテナである角を畳んでいる時のツリホッパのように、隠密能力に優れた魔物が居る事もだ。

 ちなみに、イベント中は魔物のランク変化は起こらない仕様になっている。


「今回のイベント中、私たちが操るゴーレムは燃料が常時満タン状態になる特別仕様。けれど、それと引き換えに制約もあるわ」

 敵が魔物である以上、こちらもゴーレムを操って戦う。

 燃料は街坑道・ヒイズルガの範囲内では常時満タン。

 特殊弾については基本的には自前のものを使用するが、作るのに必要なマテリアルがなくてもSCを支払えば作成可能だし、ラボに戻らなくても補給可能。

 ゴーレムの構成に用いられるマテリアルも運営持ち。

 しかし、ゴーレムのスタート地点は最前線よりも内側の地点に限られる。

 また、ゴーレムを破壊されたプレイヤーが再出撃出来るようになるまでには、そのゴーレムの構成に使用しているマテリアルの質と量に応じ、貴重あるいは強力なマテリアルを多く使っているゴーレムほど再出撃には時間がかかる。


「さて、こんなイベントであるから、私たち『Fluoride(フロライド) A』のように複数人のプレイヤーが集まって作られているグループやチームはそれぞれに対応する地域と時間を予め決めることになっているわね」

 うん、こうして改めて詳細を見ればよく分かる。

 かなり本格的な防衛戦だ。

 本気で防衛のラインを構築し、間断のない人員配置を行い、敵を適切に迎撃していく事が求められている。

 そして、それだけではなく、指揮系統の線の構築も必須であるし、最前線に見える位置よりも内側に敵が入り込んでいないかを索敵する部隊も居る。

 先日のコラボの時のリツのような補給専門のプレイヤーだって必要になるに違いない。

 ……。

 いやうん、これ、素人にやらせるようなものじゃないだろ。

 軍事訓練を受けた連中がやるような内容だろ、これ。


「配信を行っているので、他のグループやチームについては紹介しないわ。ただ、『Fluoride(フロライド) A』については基本的にはこのポイントで戦います。防衛戦の一員として、銃器をひたすら撃ち込む予定ね」

 まあ、そんな俺の感想はさておき、『Fluoride(フロライド) A』は基本的に北区で戦闘。

 最前線で敵を後ろに通さないように弾幕を張るつもりらしい。

 活動時間は集中力の低下なども考えて、9時から12時、18時から21時、6時から10時までを想定。

 ただこの辺は状況によって幾らでも変わるとの事。


「さて、これで一通りね。何か質問はあるかしら?」

「関係があるかは分かりませんが、私様が以前渡した第一次計画の計画書はどうなりましたの? ハンネなら知っていると思うのですけれど」

「んー……今回のイベントに関係はしていたみたい。でもそれ以上の情報は入ってきていないわね」

「そうですの……」

 では細かい部分へ。

 まずはフッセの質問だが、関係があることは知っているが、詳細は不明、と。

 相変わらずのきな臭さだ。


「……。状況変化の時の命令は誰が?」

「『Fluoride(フロライド) A』の面々については私が、私に指示を出すのは検証班の中に居る指揮の専門家みたいね。かなりきっちり作られているみたいだから、この配信を見ている他のプレイヤーも、検証班の言葉には出来るだけ従ってもらえると助かると言っていたわ」

 指揮系統はハンネが言う程度には盤石。

 恐らくだが、プロの軍人も混ざっているのだろう。

 なら、ネルが内心で心配していそうな、指揮の乱れは起こらないだろう。


「報酬とか代金とかはどうなっているん?」

「そこはこっちの資料に書いてあるわ。私にはよく分からなかったから、詳しい交渉はリツが自分でやって」

「ん。分かったわ」

 リツの話は門外漢なのでスルー。


「さてトビィからは何かあるかしら?」

「まあ、あると言えばあるな」

「じゃあどうぞ」

 さて、この流れなら俺が質問をする事になるわけだが……。


「俺の役目に敵陣への突撃とあるんだが? これは具体的にどういう意味だ?」

 俺が渡された資料には、俺の役目が敵陣への突撃と書かれていた。

 どうやら他の面々とは違う仕事を任されるらしい。


「敵が侵入してくる穴の中を調べられるなら、トビィに調べてもらおうと思ったのよ。何かありそうだし」

「前線は良いのか?」

「銃を使う気がないトビィが居ても、スペックを生かしきれないじゃない」

「俺以外からの許可は?」

「フッセ、検証班、フッセのお父様、いずれからも許可は貰っているから、後はトビィが受け入れればOKよ」

「穴に入れなかったら?」

「その時は遊撃として暴れ回ってくれればいいわ」

「……」

 まあ、筋は通っているし、俺の能力と嗜好的にも都合はいい。

 要するにカメラを付けて、殴れるだけ殴ってこいと言う話なのだから。


「先に宣言しておくが、こういう指示を出すのなら、俺はイベント開始後は完全自由行動、上の指示は一切聞かず、全て自己判断で動くからな。それでいいんだよな?」

「勿論。期待しているわ。トビィ」

「頑張ってくださいませ。トビィ」

「……。頑張れー。トビィ」

「頑張ってなー。トビィはん」

 そんなわけで、俺はイベント中は単独行動をする事になるようだった。

04/27誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] FFってフレンドリーファイアでしたっけ?
[一言] >防衛対象は行政区にある何かであるが、その何かは運営からは発表されていない。 比較的穏当なのは現実とリンクするためのサーバー的な何かのゲーム側端末 過激なものだと破壊されるとリアルの国の地形…
[良い点] 扱いが完全に鉄砲玉で草
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