124:デイムビーゴーレム
「ブ……ブウゥン……」
≪設計図:デイムビーアームLを回収しました≫
≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫
「ようやく出たか」
『ブン。ようやく出ましたね』
コラボ配信から数日。
明日には第一回公式イベントを控えた日。
俺は集図坑道・ログボナスでようやくデイムビーの左腕を手に入れた。
という訳で、ラボに戻った俺は早速デイムビーアームLの詳細を確認した。
△△△△△
デイムビーアームL
種別:パーツ
部位:左腕
対応:火炎-物理-外部-特効
蜂人間デイムビーの左腕を模して造られたゴーレムの腕。
人間のものによく似ているが、甲殻などのパーツが人間のものでないことを表している。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「分かってはいたが、デイムビーアームRの左腕版に過ぎない感じだな」
『ブン。それはそうかと』
「そして、性能的にもパンプキンアームLとは比べ物にもならない、と」
『優秀ですからね。パンプキンアームLは』
まあ、使うかと言われたら使わない性能だな。
それでも俺は余っているマテリアルでデイムビーアームLを作成し、付けてみる。
≪条件を満たしたとして称号『デイムビー』が与えられます≫
「よし、ちゃんと貰えたな」
『ブン』
デイムビーアームLを付けると同時に、称号『デイムビー』が手に入った。
これは頭部、胴体、左腕、右腕、脚部をデイムビーの設計図から作ったパーツで揃えた場合に貰える称号である。
まあ、折角なので貰っておいた感じだ。
で、この体を構成するパーツを同一の魔物から得られた設計図で統一する行為だが、ささやかな特典が付いている。
「さて、検証班曰く、この状態ならデイムビーから攻撃されないようになるんだったか?」
『ブン。その通りです。ただ、他の魔物と戦闘している姿を見られたり、デイムビーに攻撃を仕掛ければ、次のフロアに移動するまで効果がなくなります』
その特典とはパーツ元になった魔物から、こちらが攻撃するまで攻撃されなくなると言うもの。
と言っても、他の魔物からは普通に攻撃を受けるし、坑道にデイムビーが現れるとも限らない。
そう考えるとだ。
「まあ、パンプキンアームLを使わないほどの価値はないな」
『そうなりますよねぇ』
わざわざ狙うほどのものではない。
仮に狙うとしたら、それこそ一体一体がパンプキン種のような戦闘能力を持つのに、サーディン種のように群れを成す、そういう魔物が出てくると坑道予測が入ったタイミングぐらいだろうか。
それでも事前に設計図を集めておく必要があったり、構成を変える事によって生じる戦闘能力の変化が受け入れられるかもある。
本当におまけに近い要素だな、うん。
「じゃ、戻すか」
『ブン』
はい、という訳で、構成を再変更し、元に戻した。
『さてトビィ。この後はいつものように第二坑道・ケンカラシですか?』
「いや、それよりも優先する事があるな」
さて、ここ数日だが、俺は第二坑道・ケンカラシと第三坑道・アルメコウからその時の気分で潜る方を選び、潜っている。
第二坑道・ケンカラシの踏破はもはや余裕であり、いい緋炭石稼ぎの場になっている。
対する第三坑道・アルメコウの踏破は……やはり厳しい。
未だにフロア3を抜けることに成功していない。
と言っても、情報は確実に集まってきているので、イベント後の突破は可能だろう。
第三坑道・アルメコウそのものの突破はまだまだ先かもしれないが。
「アバターに移動ですか」
「ああ。で、いつもの店に行く」
『Fluoride A』の他の面々も第三坑道・アルメコウには苦戦している。
フッセとネルは俺と同じような感じで、フロア3の突破が出来ていない。
ハンネは『キャンディデート』は獲得できたようだが、それはメタを張りまくった結果だったらしく、フロア2で既に厳しい模様。
リツは……まあ、そもそも商人なので仕方がない。
「来ましたわね。トビィ」
「おう、来たぞ」
さて、俺が訪れた店は北エリア近くにある俺が以前利用した飲食店であり、気が付けば『Fluoride A』の面々がいつの間にか普段から利用するようになっていた店である。
店名は甘味処『蛍石』。
他の店に比べて出てくる菓子が美味しいように感じるのだ。
まあ、此処はゲーム内の空間なので、現実に腹は膨れないし、美味しく感じるだけなのだが。
「で、他は?」
「私はもう居るわよ」
「リツは商談に時間がかかると言っていましたわね。ネルはリアルで少しごたつきがあったそうで、遅れるそうですわ」
「じゃあ、仕方がないな」
そんな甘味処『蛍石』の個室には現在、俺、ハンネ、フッセの三人が居る。
で、リツとネルは遅れる、と。
じゃあ、あちらは待ってくれないし、三人で進めるしかないな。
「ブーン。それで今回の集まりは結局何なのですか?」
「簡単に言えば観戦と作戦会議だな」
「そうなりますわね」
「楽しみよねぇ。いったいどうなるか」
俺たち三人はとある配信の画面を開く。
それは超大手の実況者グループオキシジェンホビィのトップ、サンソウのライブ配信だ。
内容はマルチでの第三坑道・アルメコウの攻略。
そしてメンバーは……。
『では改めて紹介を。オキシジェンホビィ所属、『刺突のキャンディデート』サンソウです。今回はカメラ係でもあります』
『タングススティック所属、『堅牢のキャンディデート』ビッカースだ。盾役だな』
『どうも、インジーゲームズの『束縛のキャンディデート』トヨハです。デバッファーですね』
『最後かな? 英雄譚吟遊団に属している『不眠のキャンディデート』ダクティーだ。今日はよろしく頼むよ』
四人全員がキャンディデートの上に、全員が国内でもトップクラスのプロゲーマーか、それと同等の実力を有するという、かなり豪華なものだった。
全身統一ボーナスはおまけぐらいの効果です。
04/25誤字訂正