119:ダイスロール
「さて、流石にシールドもない相手に真面目にやっても仕方がないですわね」
「まあ、流石にな」
「……。非効率」
「サックリで頼むわー」
次の部屋にはドローンホーネットで見た通りにパープルハウンドとパープルコボルトが居た。
が、知っての通り、パープルのランクの魔物はシールドを持たない。
ついでに言えば鉄の体に攻撃に通すような力もない。
さらに言えば護衛対象であるリツでも余裕で倒せる相手である。
「では、護衛対象の要望通りにサックリですわー」
「「「!?」」」
という訳で、部屋の入り口からフッセが両手に握ったアサルトライフルを発射。
発射音は一秒も続かなかったが……。
「「「……」」」
「こんなものですわね」
「流石としか言いようがないな」
「……。効率的」
「ん? 今のは何発撃ったん? ん? ん?」
一体のパープルハウンドと二体のパープルコボルトは揃って頭と胴体を撃ち抜かれて倒れた。
また、着弾音を聞く限り、三体の魔物に当たらず、床や壁に当たった弾もなかったようだ。
相変わらずと言うか、流石と言うか、どうやらフッセはアサルトライフルの反動を完全に制御し、放った全ての弾丸を相手に当てたらしい。
≪生物系マテリアル:肉を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:肉を1個回収しました≫
「んー。しかし、マルチで自分が討伐に一切関与していない相手からもマテリアルが得られるってのはいいのか?」
「その分、鉱石系は得られるのが少ないのですから、問題は無いと思いますわ」
「……。生物系の扱いの難しさを考えたら、問題は無いと思う」
「え、いや、今普通に超絶技巧の類が行われたと思うんやけど、あれぇ? ウチがおかしいんか? いや、うん。そうよな。ウチの反応の方が自然よな」
で、リツが何か騒がしいが……フッセは確かに難しい事はしてるが、不可能なことはやっていないのだし、俺が驚く必要はないと思うんだが?
「フッセはん! 今の銃撃っていったいどうやったん!?」
「ふっ、日頃の訓練の賜物ですわ。おーっほっほっほっ!」
「……。実際、よく知っていて、訓練もしているからこそ出来る事だから、秘密みたいなものが存在しないもの」
「せいぜいが普段から自分の体の状態と結果を意識して覚えておくぐらいか? 出来るアドバイスとしては。まあ、そう言われても全員が出来る奴じゃないのは知っているが」
「ネルとトビィの私様を褒める言葉は特に気持ちがいいですわー! おーっほっほっほっ!」
まあ、フッセは喜んでいるようだし、別にいいか。
それよりも、何時までもこの部屋で屯していても仕方がないので、次の部屋の先行調査だな。
次の部屋は……。
「次の部屋にはレコードボックスがあるな」
「あらそうですの。では、事前の取り決め通りに行きましょうか」
「せやな」
「……。ん」
「だな」
レコードボックスがあるようだ。
という訳で移動を開始。
「では、公開状態で1d100、つまりは100面ダイスを一回振りましょう。出た数字が一番大きい方が今回のレコードボックスを開けます。なお、00表示は100として扱いますわ」
「分かった」
「ええでー」
「……。振る」
そして、移動しつつ、誰がレコードボックスを開けるのかについてを事前の取り決め通りにダイスロールで決定する。
ちなみにこのダイスロール機能はマルチ専用の機能の一つとして公式に用意されているものである。
あると色々と便利という事で、運営が実装したそうだ。
「私様は[83]ですわね」
「たっか!? ウチは[53]や」
「……。[72]」
「俺は[06]だな」
はい、という訳でフッセがレコードボックスを開ける事に決定。
部屋に到着した俺たちは周囲の安全を確認した上で、フッセがレコードボックスを開ける。
手に入れたものは……纏っている空気的に、あまりいいものではなさそうだ。
まあ、此処は第二坑道・ケンカラシだし、第三坑道・アルメコウに挑んでいるようなプレイヤーが欲しがるような設計図は早々出てくるようなことはないだろうな。
「ついでにこの後のレコードボックスに備えて三回くらい振っておくか。えーと、[27]、[12]、[01]だな」
「トビィはんのサイコロ、壊れてへん?」
「……。低い」
「時々居ますわよね。妙に偏っている方」
「普段よりちょっと悪い感じだな。こりゃあ」
『ブブ。これで普段よりちょっとはおかしいと思いますよ。トビィ』
ドローンホーネットで偵察に出ているティガからすらツッコミが入ってきたが、実際俺の1d100の期待値は40は確実に切るからなぁ……。
こんなものだろ。
まあ、それはそれとしてだ。
「エレベーターを発見したぞ。次の部屋だ」
「分かりましたわ。では向かいましょう」
「……。即降り」
「今回はウチの踏破が目的やもんな。道中の回収はしても寄り道はなしや」
ドローンホーネットが次のフロアに繋がるエレベーターを見つけた。
なので、俺たちはそちらの方へと向かっていく。
今回の探索はリツの言う通り、リツの第二坑道・ケンカラシの踏破が目的であるため、事故の類を防ぐためにも余計な探索は無しの方針になっている。
「ブン。全員乗りましたね。では、フロア2へと向かいましょう」
という訳で、俺たち四人はそろってエレベーターに乗り込み、フロア2へと向かった。
リツは視聴者からのコメントを坑道探索中も読むタイプです