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『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
3:第三坑道・アルメコウ
113/619

113:決闘を終えて

『トビィ。次の決闘に挑みますか?』

「いや、此処で終わらせよう。11連勝なら戦果としては十分だし、切り上げどころだろ」

 俺はシミュレーションを終了させ、ポッドの外に出る。


「ふぅ……しかし、流石にプロは強いな。あそこまでガチガチに堅めているとは思わなかったし、畳みかけられる時は一瞬だった」

「ブン。確かにそうですね」

 で、体を軽く動かし、体をほぐす。

 まあこれはゲーム的には意味がなく、癖でやっているようなものだが。


「ブーン、どうします?」

「とりあえずリツと合流だな」

 リツは小型モニターの方で俺の決闘を実況していると言っていたはず。

 なので俺は小型モニターの方へ向かっていこうとしたのだが……。


「こっちやトビィはん」

「リツ? どうしてこっちに?」

 リツはなぜか大型モニターの方に居た。

 しかも実況席っぽい椅子と机を用意し、周囲には複数人のプレイヤーが屯している。

 で、その複数人のプレイヤーたちは俺の姿を見つけると、何故か一斉に歓声を上げ、俺を歓迎している。


「何でも何故も、ウチが小型モニターの方で実況しとったら、七戦目くらいからトビィはんの決闘が大型モニターの方で実況されるようになったんや。で、それやったら大型の方が人も集まるさかい、ウチも大型の方に来て、実況をしてた感じやな」

「ふうん。なるほどな。ちなみに売れ行きは?」

「勿論上々や。ガッポガッポやで」

 そう言うとリツはいい笑顔をしつつ、手で輪を作る。

 うんまあ、俺も、リツも、観客たちも、視聴者たちも満足している感じだし、何も問題はないな。

 しかし七戦目と言うと……誰だったかなぁ?

 まあ、特に覚えていない辺り、大して殴り甲斐がある相手ではなかったのだろう。


「しかし、最後の決闘の話になるんやけど、流石のトビィはんでもプロ相手は厳しかった感じなんか?」

「そうなるな。ただ、プレイヤースキルを比較する前に、こっちの特殊弾と言うか装備がまるで足りていなかった感じではある」

「あー、確かにそうかもしれへんなぁ……。睡眠で動きが止めた後の一撃、あそこはやれるんやったら、特殊弾込みの一撃を叩き込みたいところやもんな」

「そういう事だな。理想形を言うなら、他の特殊弾でバフデバフを入れた上で、攻撃用特殊弾を乗せて一撃。と言うところだろう。まあ、それが出来るパーツと特殊弾を俺はまだ持っていないわけだが」

 で、12戦目の反省会としては……まず第一に装備不足としか言いようがない。

 まだゲームが始まったばかりに近く、装備が整っていない以上は仕方がない面もあるが。


「ちなみにリツの伝手で装備と特殊弾を揃えるのは?」

「不可能とは言わへんけど、相当のお金がかかるからオススメは出来へんなぁ。しかも金さえあればどうとでもなる案件でもあらへん。一つ二つくらいなら、事前に要望を聞いて、予算もはっきりさせておいてくれればウチの方で探したり確保したりも出来るやろうけど……」

「まあ、現状では厳しいよな。そりゃあ」

「厳しいで。商人専門プレイヤーでもオススメ出来へん」

 なお、やはりと言うかリツの伝手だけで揃えるのは止めた方がいいらしい。

 まあ、ゴーレム本体を構成するパーツで5つ、武装はプレイヤーのスタイル次第だが、少なくても2つか3つ、多ければ10を超える。

 そして、その全てに特殊弾を装填できるわけで、そうなると数が2倍に。

 加えてアドオンもあるわけだから、此処に現時点で2つ、先々では3つまでは確定、場合によっては4つ以上。

 合計すると……20は超えそうか。


 これを全部お金で集めようというのなら、うん、止めておくのが無難という事になるだろう。

 しかも現状は全てのパーツ、特殊弾、アドオンが明らかになっていない状態でもあるし。

 まあだからこそ、プレイヤーはフレンドを作り、そこで設計図の交換会をしろという事なんだろうな。


「まあ、それはそれとして。トビィはん、ビッカースはんの堅さの秘密って何なん? そこ、ウチには分からなかったんや」

「んー……そうだなぁ……あくまでも俺の予測だが」

 俺はとりあえずメッセージで、素手での打撃攻撃を強化できるような特殊弾の確保をリツにお願いしておく。

 なお、代金は俺の手持ちのSCと設計図のコピーの売り上げである。

 で、それはそれとして、ビッカースの堅さの秘密も話しておく。

 と言ってもだ。


「単純に盾の受け方が上手いと言うのが一つ。微妙に角度をつけて、衝撃を完全な真正面から受けてないんだよ」

「ほうほう」

「まあ、他にも鎧の下に粘土のスキンとか、被ダメージ軽減であろうアドオン、状態異常回復効果がありそうな特殊弾、それから……たぶん、自分の盾を透かして向こうが見れるアドオンもあるな」

「なるほどなぁ……これは売れそうやなぁ」

 まあ、大した話ではない。

 重装備系ゴーレムにとってはテンプレになるかもしれない構成だが、アレは坑道で使うには燃費が悪そうだしなぁ。

 あれで銃とか使ったら、アッと言う間にガス欠になるんじゃないか?

 そう考えると、決闘坑道・コロマスン専用構成とも言えるな。


 しかし、なんと言うか頭がよく回らないようになってきた気がするな……。

 微妙に手も震えているというか、イライラしてきているというか……急ぐか。


「ま、こんなところか。じゃ、俺はそろそろ自分のラボに戻ってログアウトするわ」

「分かったわ。トビィはんが求めている品が手に入ったら、連絡させてもらうで」

「よろしく頼む」

 さて、今日のところはこれくらいでいいだろう。

 という訳で、俺は足早にラボに戻ると、今日の配信を終えると、ログアウトした。

07/20誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >で、11戦目の反省会としては……まず第一に装備不足としか言いようがない。 12戦目の間違いですよね? タカシ戦の反省会をしてるわけじゃないですよね?
[一言] ああ、そりゃそうか。一戦ごとに回復する仕様前提の燃費にするよねプロであればなおさら。 継戦能力は度外視で良いんだものね。 うん?これは……禁断症状(殴り)かな?
[一言] 連勝していればそりゃあ注目度高いプレイヤーとして、大型モニタに回されますな。 殴った感触で大体の分析してるとか、流石に誰も思わないでしょうねえ。 そしてこの殴り中毒症状である。思うように…
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