108:決闘坑道・コロマスン
「さてトビィ。決闘坑道・コロマスンに向かうなら、必要な情報を資料で渡しておきますね」
「おっ、ありがとうな」
決闘坑道・コロマスンは街坑道・ヒイズルガの中央、行政区に存在している。
と言う訳で、街坑道・ヒイズルガに移動した俺は歩きで行政区へと向かう。
で、その道中でティガから渡された資料を読み込んでいく。
「ブン。では、配信を見ている視聴者の方々にも決闘坑道・コロマスンの概要を説明させていただきますね」
「んー、まあ、俺が口で説明するより楽だしいいか」
ティガが視聴者に説明しているのは流すとしてだ。
決闘坑道・コロマスンについて。
決闘坑道・コロマスンはシミュレーターを用いて、任意の相手と戦える施設である。
魔物が相手ならば、集図坑道・ログボナスで戦える魔物に加えて、ヴァイオレットキーパー・レンウハク、グリーンキーパー・ケンカラシαとβと言ったキーパーたちも戦う事が出来る。
そして魔物だけでなくプレイヤーとも戦闘可能であり、PvPであるなら、任意の相手だけでなく、レートシステムを用いたランダムマッチングもあるとの事だった。
つまり、スコ82内で戦えるだいたいの相手と自由に戦える施設という事になる。
余談だが、PvPの任意対戦に限れば、二対二、四対四と言った複数人での決闘も出来るらしい。
そのうち『Fluoride A』の面々で挑むこともあるかもしれない。
「ふうん……」
そんな決闘坑道・コロマスンに持ち込めるゴーレムは、自分がいま所有しているゴーレム。
あるいは自分の手持ちのマテリアルと設計図で構築可能なゴーレムに限られている。
特殊弾やアドオンも勿論利用可能。
そして、先述の通り、シミュレーターを用いているため、マテリアル、燃料、特殊弾、いずれも実際には消費する事は無い。
だが、シミュレーターであるためか、戦闘に持ち込める特殊弾の個数については制限がかかっているようだ。
この個数についてはバランス調整の名の下に日々調整が行われているとの事で、決闘坑道・コロマスン利用前に確認する事が推奨されているそうだ。
「まあ、この辺は流石にそうか」
さて、そんな決闘坑道・コロマスンだが、利用のためには少量のSCあるいは緋炭石が必要になる。
これはシミュレーターを動かすのもタダではないし、シミュレーターばかり遊ばれていても困るという運営の判断だろう。
また、決闘坑道・コロマスンでは相手を倒しても設計図やマテリアルが手に入らない。
これもシミュレーターであるが故にだろう。
「そんな訳ですので……ブブ、着きましたか」
「そうだな。着いた」
さて、そんな事を確認している間に行政区に到着。
エレベーターに乗り、決闘坑道・コロマスンがある階へと移動。
「さて……人影はまばらぐらいか」
「ブン。仕方がないかと。まだ第二坑道・ケンカラシの攻略が終わっていないプレイヤーも多いですし。第三坑道・アルメコウに至ってはトビィも知っての通りですから」
「ま、それもそうか」
決闘坑道・コロマスンのある階はホテルのロビーと大型のゲームセンターを併せたような場所だった。
どうやらシミュレーターを使いたい場合は受付に居るNPCに話しかけて使用許可を貰い、ポッドの形をしたシミュレーターに入ればいいらしい。
観戦をしたい場合には、注目試合ならば大型モニター、個人的に見たい試合があるなら小型モニターで見ればいいらしい。
前者には当然ながら動きらしいものはなく、後者は大型モニターの前では数人が野次あるいは講評をしながら観戦し、小型モニターも結構な数が使われているな。
ちなみに、モニター観戦しているプレイヤー向けっぽいジャンクフードショップが数店舗並んでいて、いい臭いを漂わせている。
「トビィはん!」
「おっ、リツか」
と、此処で俺の方へと寄ってくるプレイヤーが一人。
魔女姿で独特の口調、俺と同じ『Fluoride A』に所属している、商人プレイヤーのリツだ。
いつも通りに、肩に黒いカラス姿のサポートAIデンクを乗せている。
「偶然……じゃないか」
「ちゃうなー。決闘坑道・コロマスンは多くのプレイヤーが集まる場所や。それすなわち商売の機会もぎょうさんあるって事や。そこへトビィはんがやってくるんよ。この機会を逃すわけあらへん」
そう言うとリツは自分の視界に浮かべているらしい、四つの画面を見せる。
そこには第三坑道・アルメコウをソロモードで探索しているっぽいフッセとネルの配信画面、第二坑道・ケンカラシで何かをやっているらしいハンネの配信画面、俺の背後から撮る形で俺とリツが映っている配信画面がある。
どうやらリツは商売のタネを逃さないためにも、『Fluoride A』の面々の配信は常に一緒に見ているようだ。
「なるほどな。ちなみにリツ自身の配信は?」
「勿論やっとる。けど、ウチのはある意味まとめ配信やし、淡々と商売しているだけやからな。視聴者は他の四人と比べたら月とすっぽんや。別にそれでええんやけどね」
さて、リツが此処に居るという事は……。
「で、トビィはん。PvPやりに来たんやろ? 買い取るで」
「自分を負かした装備の詳細は知りたいのが普通だもんなぁ」
「くくく、そういう事や」
俺のゴーレムを構成している設計図のコピーを買い取ってくれるようだ。
という訳で、コピー費用リツ持ち、売り上げもリツ行き、買い取りはそれなりと言う感じでもって、俺のゴーレムの設計図のコピーをリツに売り渡す。
「一応言っておきますが。トビィ、リツ、決闘坑道・コロマスン内での取引は全て自己責任でお願いします」
「分かってる分かってる」
「そんなん当然やん」
これまでを見る限り、リツならば、売ることは問題ないだろう。
問題は俺が勝てるかどうかだが……まあ、レートシステムが入っているなら、最初の数戦は何とかなるだろう。
「じゃ、ウチは小型モニターの方で実況やらせてもらっとるわ」
「分かった。ただ、つまらないと感じたら何時でも切ってくれて構わないからな」
「分かったわ。けど、トビィはんのPvPに限ってそれは無いと思うけどなぁ」
「そこは俺には分からないところだからな」
では、決闘坑道・コロマスンに挑んでみるとしよう。
とりあえず、負けるまではひたすら連続で戦闘だな。
開発「プレイヤー自身の経験値は掘れるので坑道です」(シレッ